私が編者をつとめた『人権と利権』(鹿砦社、税込990円)は、おかげさまで5月23日の発売直後より話題の書となり、ネット書店では幾度も品切れと入荷を繰り返し、6月末に配信開始のKindle版をはじめとする電子書籍も、売れ行き好調と聞く。
寄稿や対談でご協力くださった方々と共に力を合わせ、俎上にあげたのは、弱者の人権保護を叫ぶ次の三つの勢力だ。
① 若年被害女性支援団体である一般社団法人Colabo。そして、若草プロジェクト(一社)、BONDプロジェクト(NPO)、ぱっぷす(NPO)。
② LGBTの人権のために闘うLGBT活動家とLGBT団体。
③ 在日外国人差別に対抗するために生まれた、旧レイシストをしばき隊(現C.R.A.C)。別名カウンター、ANTIFA。
出版妨害を警戒しての緊急出版だったが、抗議らしい抗議は、鹿砦社に届いた一通のFAXのみだったと聞く。
ところが、発売から一ヶ月近くが経過した6月19日、突然、Colabo代表の仁藤夢乃氏が、ツイッターで『人権と利権』の表紙を批判(ウェブ魚拓https://archive.md/jVcWu)。しかも、私をブロックした状態で、だ。
ちなみに、ツイッターで著名人がこのような名指しの批判をした場合は、それが「犬笛」の役割を果たし、手下のような有象無象が対象の人物を叩こうと群がり、ネットリンチ状態になるのが常ではあるが、どうしたことか、私のところには一人も批判者は来なかった。
それに続き、今度は、「週刊金曜日」が『人権と利権』の広告を掲載したことを仁藤氏に抗議されたとかで、植村隆代表が謝罪。その様子は、仁藤氏が6月27日に写真つきで誇らしげにツイート。
そして、植村氏は「週刊金曜日」におわび広告を出したうえで、コラム「ヒラ社長が行く」でもColaboに謝罪し、『人権と利権』を重ねて批判。
7月7日にはわざわざ兵庫県西宮市の鹿砦社を訪ね、旧知の間柄であった松岡利康代表に絶縁宣言。つまり「今後は広告掲載はお断り」ということだ。なんだそりゃ?(苦笑)
植村氏の弱腰かつ非礼な対応に関しては、鹿砦社松岡代表が、次の記事で批判を展開している。
【緊急報告!】『週刊金曜日』6月16日号掲載の鹿砦社広告について──『金曜日』への筋違いの抗議に抗議し、一方的に「おわび」文を掲載した『金曜日』のメディアとしての自律性と主体性の喪失を批判します!
【緊急報告!】さらば、『金曜日』! 「私はあなたの意見には反対だ。 だがあなたがそれを主張する権利は命をかけて守る」(ヴォルテール)『週刊金曜日』6月16日号掲載広告問題続報
また、ルポライターの黒薮哲哉氏も、「MEDIA KOKUSYO 」にて「週刊金曜日」とColaboを批判、植村氏と仁藤氏に質問状をメールしている。
◎『人権と利権』の書籍広告をめぐる『週刊金曜日』植村社長の謝罪、市民運動に忖度してジャーナリズムを放棄
◎『人権と利権』の「差別本」認定事件、Colabo代表・仁藤夢乃氏と週刊金曜日・植村隆社長に質問状を送付、具体的にどの箇所を問題視したのか?
◎『人権と利権』の「差別本」認定事件、週刊金曜日・植村隆社長から回答、Colabo代表・仁藤夢乃氏は回答せず
そして、こちらは、『人権と利権』で私と対談してくださったジャーナリスト・須田慎一郎氏の動画。人気You Tube番組「別冊!ニューソク通信」の一本だ。
◎[参考動画]【左派VS左派】仁藤夢乃・Colabo問題が原因で左派分裂!?リベラル本「週刊金曜日」が窮地に追い込まれた“お詫び騒動”とは?
『人権と利権』にご寄稿くださった三浦俊彦東大教授も、須田氏の動画をブログ「三浦俊彦@goo@anthropicworld」でご紹介したうえで、皮肉たっぷりにコメント。
広告:サラシ・ノゾキ・ヤラセ・オワビ・トリケシ
https://blog.goo.ne.jp/3qaiujrrwc87ph/e/1fb94a7b1a7d22037918360842a83629
黒薮氏に遅れて私も、コラム「ヒラ社長が行く」の中で特に理解に苦しむ点をピックアップし、植村氏に質問状をメールしたので、皆様にもご覧いただきたく思う。以下がその文面である。
植村 隆 様
はじめまして。
『人権と利権』(鹿砦社)の編者を務めました、作家の森奈津子と申します。
突然のメール、失礼いたします。
貴誌「週刊金曜日」が『人権と利権』の広告を掲載したことで、多くの抗議があり、また、Colabo代表の仁藤夢乃氏からの抗議に対しては植村様直々に謝罪されたとのことですが、残念ながら、私はツイッターでは仁藤氏にブロックされているため、他の方々からその「事件」をお知らせいただきました。
仁藤氏にブロックされていることからもおわかりいただけるかと思いますが、私は仁藤氏から直接の抗議は受けておりません。
そんな状況の中、私は「週刊金曜日」7月7日号掲載の植村様のコラム「ヒラ社長が行く」vol.223を拝読し、首を傾げざるをえませんでした。
大変失礼ながら、理解不能な点だらけでしたが、お忙しいことと存じますので、以下5点に関し、質問をさせてください。
質問1
コラム「ヒラ社長が行く」の中で植村様は、『人権と利権』を「一般社団法人『Colabo』の仁藤夢乃代表やLGBT関係者を誹謗中傷する書籍」と評されていますが、Colaboの会計に不明な点があることを指摘・批判するのは、決して誹謗中傷ではないと、私は考えます。確かにColaboが掲げる若年被害女性支援の理念は素晴らしいものです。しかし、だからといって、全面的に礼賛しなくてはいけないとなると、それは単なるカルトではないのでしょうか?
一体『人権と利権』内のどの部分が仁藤夢乃氏への誹謗中傷であると、植村様はお考えになりますか?
また、「この部分は誹謗中傷ではなく、正当な批判や論評」とご判断する部分がありましたら、ご教示いただければと思います。
質問2
植村様がコラム内でおっしゃっている「LGBT関係者の皆様」とは、どなたのことですか?
「異性愛者関係者の皆様」「シスヘテロ関係者の皆様」という表現同様、「LGBT関係者の皆様」などという言葉は、私は見たことも聞いたこともございません。植村様は、同じ表現を、「週刊金曜日」のおわび広告でもされていますので、ケアレスミスのたぐいではなく、本気でそのような表現をされているのだと、私は判断しました。
なお、私は90年代なかばにバイセクシュアルとしてカミングアウトした作家です。デビューは1991年ですが、それ以前には、会社員をしながら、ゲイ&レズビアン解放運動の末端で活動をしてきました(当時はLGBTなどという言葉はありませんでした)。その後も、東京都青年の家事件の抗議集会に参加したり、性的マイノリティ団体の会合に出席したり、団体が発行するミニコミ誌を購読したりしてきました。
およそ35年前から性的マイノリティの運動に関わってきた私ですら、「LGBT関係者の皆様」などという表現は見たことも聞いたこともありません。『人権と利権』で誹謗中傷された「LGBT関係者の皆様」とは一体何者なのでしょうか?
どうか、私が納得できる形でのご返答をお願いいたします。もし、可能であれば、その方々のお名前もご教示いただければ、幸いです。
質問3
『人権と利権』の表紙デザインに関し、植村様のコラムには「同書の表紙には、Colaboのバスの写真。それが傷つけられているように見える」とありますが、実際には、バスの写真の前に置かれたガラス板が割れたデザインであると私は判断しますが、いかがでしょうか?
また、ある方は次のようにツイートしています。
「人権と利権」。Colaboバスが破壊されていると見間違えて糾弾しているアホが多い。実際は手前に配置されたガラスだけが割れてる。近年「不可侵と信じられてきたものをガードしているバリアが崩壊しつつあり、不可能だった議論もできるようになった」現状をよく表現できている優秀な作品だろう。
https://twitter.com/nekohachi1/status/1671080920219279365
(ウェブ魚拓)https://megalodon.jp/2023-0710-1752-13/https://twitter.com:443/nekohachi1/status/1671080920219279365
他にも、バスの背後に巨大なレインボーフラッグが配置されていることから、「LGBTの人権を叫ぶ者たちが、女性の人権を叫ぶ者を抑圧している状況(=女性スペース問題)を示している」と解釈した方もいました。割れたガラスから「利を求める者たちがColaboに群がり、ピザを切り分けるようにColaboを切り分けようとしている状況」と解釈している方も、ネットで目にしました。
デザインはひとつでも、解釈は様々です。植村様は、これを「傷つけられたバス」と解釈し、さらには、「ナイフでバスが傷つけられた事件は実際に起きており、それを想起させる」とまでおっしゃっていますが、それはいささかうがちすぎであり、印象操作であるとのそしりもまぬがれないのではないかと、私は愚考いたしますが……。
なお、Colaboのバスが傷つけられた卑劣ないやがらせは私も存じあげていますが、それがナイフによる犯行であると、なぜ、植村様はご存知なのでしょう?……という些末な点は、置いておくといたしまして。
植村様は、『人権と利権』表紙デザインに関してご自身とは違う解釈をされる方々に対しては、どうお考えですか? 愚かであると思われますか?
あるいは、解釈は様々であるとご判断されますか? だとしたら、『人権と利権』の表紙デザインを悪意があるものと決めつけるのも、早計ではございませんか?
その点をどうお考えであるのか、植村様の解釈をお聞かせいただければ、幸甚です。
質問4
植村様は『人権と利権』に関し、「同書は、LGBTは『生産性がない』という趣旨の発言で批判された杉田水脈氏を繰り返し擁護する」と記されていますが、それのどこがいけないのでしょうか?
拙稿「LGBT活動家としばき隊の蜜月はどこまで続くぬかるみぞ」では、杉田水脈議員批判が、立憲民主党の尾辻かな子議員(当時)の印象操作ツイートによる大衆扇動であることを、きちんと証拠を並べて論じました。まさに、植村様による批判「同書は、LGBTは『生産性がない』という趣旨の発言で批判された杉田水脈氏を繰り返し擁護する」というような、特定の人物を悪魔化して一切の擁護を受けつけない姿勢をこそ、私は批判しております。
また、LGBT当事者である私が、LGBTの運動にしばき隊/C.R.A.C./カウンター/ANTIFAと呼ばれる過激な活動家が入り込み、LGBT当事者をおびやかしている現実を憂い、LGBTの運動に自浄作用を求めて、なにがいけないのでしょうか?
LGBT当事者すらLGBTの運動を批判してはならないというのであれば、それこそカルトではないのでしょうか?
その点について、ぜひとも、植村様のご見解をお聞かせください。
質問5
「ヒラ社長が行く」vol.223では触れられてはいないことですが、植村様のご見解をうかがいたい「事件」がございます。
『人権と利権』で私と対談してくださった加賀奈々恵(ななえ)富士見市議に対し、Colabo支持者(しばき隊系活動家含む)から激しい集団ネットリンチがなされ、それは加賀市議が新型コロナで療養されている間にも続きましたが、これを植村様はいかがお考えですか?
この集団ネットリンチには、Colabo弁護団の太田啓子弁護士も加わっていたと、私は聞き及んでおります。「聞き及んでおります」というのは、私はツイッター上では太田弁護士にブロックされているからです。つまり、太田弁護士からは私へは、一切の抗議はありませんでした。
なお、植村様は把握されていることと存じますが、『人権と利権』では加賀市議は主に埼玉県のLGBT条例と女性スペースについて問題提起されており、Colaboや仁藤夢乃代表に関しては一切触れてはおられません。真っ向からColabo問題をとりあげ、批判したのは、ジャーナリストの須田慎一郎氏です。
以上、お忙しいことと思いますが、ご返答をお待ちしております。
まことに勝手ながら、お返事は一週間後の7月18日までにお願いいたします。
2023年7月11日
森奈津子
amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0C5GCZM7G/
▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。ツイッターアカウント:@MORI_Natsuko
https://twitter.com/MORI_Natsuko