地元住民や地元市議会の反対も押し切って三原市の水源地のど真ん中に広島県(湯崎英彦知事)が許可してしまったJAB協同組合が経営する本郷産廃処分場。2022年9月から一部操業してしまいました。そして6月には住民側調査で基準越えの汚染水も確認されました。
◆断罪された広島県の「穴だけ」産廃行政
その産廃処分場の設置許可取り消しを住民らが湯崎知事に求めていた裁判で7月4日(火)広島地裁の吉岡茂之裁判長は知事に対して許可取り消しを命じる判決を言い渡しました。おさらいしますと、法によれば調査しないといけない処分場近くの井戸を調査せず、また農業用水に使われている川への影響調査も不十分なことが「県知事の判断の過程に看過しがたい過誤・欠落がある」と指摘しました。「ザル」というよりも「穴だけ」の行政が断罪されました。
◆原告の要請受け、県も重い腰
原告住民側は4日の判決後、県庁を訪問。広島県(湯崎英彦知事)に対して判決を受け入れて産廃処分場設置許可を取り消すとともに、操業を今すぐ止めさせること、排水の水質検査をすることなどを要求しました。
その際、廃棄物対策課長にも汚染水の匂いをかいでいただくとともに、産廃処分場の様子を撮影したビデオを視聴していただきました。そして、7日(金)には、廃棄物対策課長が住民側に回答。それによると、国の基準を上回る排水が県の検査でも出たため、6月29日に県の東部厚生環境事務所が産廃搬入停止を行政指導していたとのことです。県の内部ですでに29日にやっていたことを、4日の時点で本庁の課長が把握していなかったというのもちょっと呆れた話ではあります。情けないことではありますが、一応、県としてやっと重い腰をあげたということです。
◆行政指導無視し、産廃の搬入
しかしながら、原告団共同代表の岡田和樹さんによると、7月8日(土)も、産廃の搬入は続きました。(右写真)。この日の午前中に県が電話で午後に立ち入り検査をする旨伝えたところ、県職員が行ったときにはゴミはすべて土で覆われていたそうです。まさに、業者は完全に県をなめています。
◆安佐南区上安でも広島市民に大迷惑をかけた事業者
産廃処分場を運営するJAB協同組合は東京に本社があります。広島の政治を仕切っている宏池会系の議員がこの組合のトップを務めたこともあります。このJAB協同組合は1993年に広島市安佐南区上安に産廃処分場を設置。やはり国の基準を上回る汚染水を流出させるなどの問題を起こし、指導を受けました。さらに、その近隣に熱海土石流(2021年)の三倍もの不適切な盛り土が1998年ころまでに行われていました。
その「犯人」は不明とされています。しかし、そんなことをする動機や能力がある主体は周辺ではJAB協同組合しかない、と地元住民はいいます。
そして、同組合は2016年、2020年にその不適切な盛り土の上に産廃処分場を拡張。所有権を外資系企業に売却しています。
外資系企業は盛り土のことはしらなかったと主張。また、盛り土の大部分が所有者不明のため、広島市は、とりあえず3000万円を負担し、緊急に安全対策工事を行うことを7月7日(金)、発表しています。
もちろん、盛り土を不問にしたうえ、市に情報共有しなかった県、十分に確認しなかった市にも問題はありますが、JAB協同組合が金儲けの為なら何でもあり、のような開発を続けていた企業体質も問われます。
◆産廃業者に舐められる湯崎県知事、しゃんとせい!
広島県の湯崎知事は、11日の記者会見で「排水についてはきちんと是正して、基準内に収まるようにしないといけないし、住民にも説明していきたい」と述べています。しかし、上記にみられるように、当該の産廃業者は、県の指導を無視していますし、安佐南区・上安の処分場でも見られるように反省が見られません。是正とか説明とか、そんな生ぬるい言葉が通用するような相手ではありません。
◆間髪入れず、住民ら「処分場の土地買い上げ」など知事に要請
こうした状況の中、原告住民も迅速に行動しておられます。原告団は11日、湯崎知事に対して判決に従って改めて処分場許可の取り消しをするよう求めました。
さらに、処分場の土地を県が買い上げることで水源の保全をするよう求めています。そして、水質汚染の原因究明と水質の改善、さらには環境手続条例の制定を求めています。
土地の買い上げについては、判決後最初の週末で、原告側内部で話し合い、要望事項として決めたものです。
岐阜県御嵩町の産廃問題では、最終的に処分場の土地を業者が県に無償寄附するという決着となりました。ただ、今回の広島・本郷産廃処分場の場合、県が違法とは言え、許可を出してしまい、それにより、業者も操業してしまったという既成事実があります。なかなか、無償寄附しろと言われても業者は同意しないでしょう。残念ながら買い上げと言うのが一定の落としどころではないか。筆者そう考えます。その際、県知事や知事をチェックできなかった県議らの給料を連帯責任でカットして一部を充てる、引退した元議員には自主的なカンパ(引退していれば公選法上の問題はない)を求めるというのも一案ではあると考えます。
◆県知事に舐められる議会、そして県民
県民を代表して知事をチェックすべき議会もほとんど機能していません。そもそも、議会が機能していれば、議員提案でも、産廃処分場を厳しく規制する条例を出して可決していたでしょう。4期目に入った湯崎英彦知事も議会を完全に舐めています。だから、JAB協同組合のような問題のある事業者の処分場を水源地ど真ん中に許可するという愚行が起きる。もちろん、知事は、県民も舐めていると言わざるを得ない。地元住民が猛反対して三原市議会、竹原市議会が全会一致で反対決議を出したものを平気で許可したことにそれは現れています。
最近の知事は、農業ジーンバンク廃止も一方的に決めて一方的に説明、病院統廃合問題も一方的に案を決めて、一方的に説明など、木で鼻を括る対応が目立ちます。
こうした構造を打破しなければならない。産廃問題はとくに、待ったなしです。原告住民の行動に敬意を表します。
◆知事に控訴断念求める署名を!
現在、インターネット上でも知事に法令順守の産廃行政にするとともに、控訴断念を求める署名運動が起きています。知事が業者に行政指導を無視された状態で、控訴して許可を取り消さない、という判断を知事がすればますます、知事は産廃業者に舐められる。それを県民が許せば、ますます知事は県民をなめてしまう。そんな悪循環を止めましょう。右のQRコードからもご賛同いただけます。
【賛同いただきたい要望事項】
1.広島県行政として、法令遵守に立ち返り、県民の信頼回復に努めること。
2.控訴せず、直ちに許可取り消し処分を行うこと。
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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