本年(2023年)3月7日、英国営放送BBCのドキュメント映像『PREDATOR』 が放映されて以降、すでに故人であるジャニー喜多川の「名誉」は地に堕ちた。ギネスブックからも記載を抹消されたという。わが国もこの半年余り日々マスメディアを中心に狂騒状態にあり、ジャニーズに関する報道を見ない日はない。以下、四半世紀にわたりジャニーズ問題に関わってきて、あらためて今思うところを申し述べておきたい。

◆私たちはなぜ、ジャニー喜多川による未成年性虐待とジャニーズ事務所の横暴を追及してきたのか?

1995年、発行予定の書籍『SMAP大研究』が出版差し止めにされて以降、ジャニーズやこの創始者ジャニー喜多川について私たちは告発系、スキャンダル系の出版を続けてきた。『週刊文春』が故ジャニー喜多川による未成年性虐待を追及するまでに実に15点の書籍を刊行し、文春に繋げた。『週刊文春』という、日本を代表する雑誌、その母体の文藝春秋社もまた、芥川賞・直木賞を実質的に主催するほどの日本を代表する出版社だ。告発を始める前に連絡があり、私たちよりももっと大手の雑誌がジャニー喜多川による未成年性虐待を追及することを聞き、内心嬉しかった。それまで私たちが書籍でやってきたことが報われた気がした。

爾来、告発系、スキャンダル系の出版は継続してきていたところ、3年前(2020年)に突然、極秘にしてほしいが英BBCがジャニー喜多川による未成年性虐待告発のドキュメントを制作するので手伝ってほしいという連絡が、BBCの日本のエージェントを務めていた女性から連絡があった。前年ジャニーは亡くなっているし、死人に鞭打ってどうなのか。手伝ってほしいと言われても、私たちは被害者ではなく、私たちの生業は出版社であり、私たちが出版してきた書籍や資料などを送り、また体験から知りえたことをレクチャーするぐらいだった。それでも少しは役立ったのであれば損得なしに嬉しい。謝礼など一切受け取っていないし、また要求もしていない。

私たちが最も精力的に出版していた時期は1990年代の後半だった。孤独な戦いだった。当時、これは「アリが象に立ち向かう」ようなものだ、しかし「アリの一穴」でダムが決壊することもあるのだ、と強がってはいたが、四半世紀を経て、今のような情況になるとは予想だにしなかった。

鹿砦社が刊行してきたジャニーズ問題「告発本」

[右上段]原吾一・著『二丁目のジャニーズ』(3部作)[右下段]平本淳也・著『ジャニーズのすべて』(3部作)[左上段]『ひとりぼっちの旅立ち』『ジャニーズ帝国崩壊』『ジャニーズの欲望』[左中段]『ジャニーズの憂鬱』『ジャニーズの躓き』『ジャニーズ・プロファイリング』[左下段]『ジャニーズ・ゴシップ・ワールド』『ジャニーズ・スキャンダル』『スキャンダルの中のジャニーズ』

しかし、微かながら期待もあった。今話題になり高額な古書価が付いている木山将吾著『SMAPへ ── そして、すべてのジャニーズタレントへ』を出版した2005年、これまでに私たちは、大手パチスロメーカー「アルゼ」(現ユニバーサルエンターテインメント)とこの創業者・岡田和生を告発する書籍を4冊出版し、これが刑事告訴され、また賠償請求3億円もの巨額民事訴訟も起こされた。出版差し止めはなされ、私は逮捕、半年余りも勾留された。結果は懲役1年2カ月(執行猶予4年)の有罪判決、また600万円余の賠償金を課せられた。

その後、舞台は暗転する。ロイター通信が、件のアルゼのフィリピンでのカジノ建設にまつわる政府高官への贈賄容疑を追っているので協力を要請された。ロイターの記者はたびたび本社の在る関西まで足を運んでくれた。これに応え、私は所有してきた資料のコピーを渡し、パチスロ・パチンコ・ゲーム業界の事情をレクチャーした。こうしたことで、件のパチスロメーカーの創業者社長は海外で逮捕され、その前後に社内で実の息子や妻、子飼いの社長らによるクーデターにより、自らが作り育てた会社から追放されるという事態になった。

ちなみに、本件を指揮した神戸地検特別刑事部長・大坪弘道は、のちに大阪地検特捜部長に栄転するが、「厚労省郵便不正事件」に関与し証拠隠滅の科で逮捕され失職している(しばらく無職だったが、大阪弁護士会が入会を許可し今は弁護士をしている。大阪弁護士会の見識を疑う)。

BBCから協力要請があった時、このことが過った。結果はご覧の通りである。──

◆最大の問題はジャニー喜多川が死んでいることだ

異常な未成年性虐待事件で、最も悪いのはジャニー喜多川であることは言うまでもない。しかし、彼はすでに亡くなり、「死人に口なし」といわれるように、今後真偽を見極める際に、大きな障害となるだろう。「被害者」と偽り賠償金を請求してくる輩が出てこないとも限らない。この点で、これまで黙認し放置してきた責任が、ジャニーズ事務所、マスメディア、広告出広企業にもある。

今はジャニーズ事務所ばかりが責め立てられているが、同等にマスメディアや広告出広企業も責められるべきだ。彼らは責任をジャニーズ事務所にばかり押し付けているような感がある。みずからに責任が及ばないように、これでもかこれでもかとジャニーズ事務所を責めていると感じられるが、長年細々とながらジャニー喜多川やジャニーズ事務所を追及してきた私たちには違和感がある。当初は、「おお、やってくれているね」と思っていたが、次第次第に違和感を覚えていった。

◆ジャニーズ事務所の責任

創業者で、亡くなるまで社長を務めた者の性犯罪である。事務所や親族(藤島ジュリー景子)の責任がどこまであるのか、無限なのか有限なのか、判断は難しい。社長を引き継いだジュリーがどこまでジャニーの性犯罪を認識していたのか、私は、ある程度は認識していても、お嬢様であるからして深くは知ろうとしなかったのではないか、と思う。

創業者で社長時代の性犯罪で、これを会社として黙過・黙認していたのだから、一定の責任は当然免れない。だからといって、無限ではない。会社として相当の資本や資産を蓄積してきたのだから、不動産の一つでも売却するなりして、ケチらず100億円ぐらいポンと出して、これで真の被害者へ補償し、残ったならば再発防止の基金にしたらいいだろう。

また、ジュリーの責任を法外に追及する向きもあるが、犯罪者の親族であっても、別人格なので、刑事責任はない。例えば殺人犯の息子であっても、息子に罪はないのと同様だ。

おそらくお嬢様として育ち修羅場の経験がないジュリーの今現在の精神状態は尋常ではないことは想像がつく。それでもわが国を代表するエンターテインメント企業の代表取締役として、ここは真正面からぶつからないといけない。要はジュリーが人間として誠実に対応すべきとしか、言葉の上ではいえない。嘘偽りなく人間として誠実に対応すれば、道は必ず拓けるであろう。

◆マスメディアの責任

周知のようにマスメディアは、この問題について、文春、それ以前の私たち鹿砦社、35万部のヒットを記録した北公次の『光GENJIへ』を出版しパイオニアの「データハウス」、時に告発記事を掲載した『噂の眞相』など告発系、スキャンダル系の書籍を出したり記事を掲載したりし、メディア人であれば100%に近くジャニーズ事務所という「少年愛の館」で、未成年性虐待が行われてきたことぐらい知っていたはずだ。

マスメディア(人)には、これを黙過・黙認し放置してきた責任がある。「知らなかった」とか「責任がない」などとは言わせない。

4時間余りの長時間にわたった9月7日のジャニーズ事務所の記者会見での質疑応答を見たが、気分が悪くなった。マスメディア(の記者)は、時に横柄で、これまでジャニー喜多川の未成年性虐待を黙過・黙認、放置してきた反省がほとんど感じられず違和感ばかりが募った。記者会見としては異例で、4時間という長時間を費やした。ジャニーズ事務所側としては、短時間で打ち切って反感を買うよりも、マスメディアの記者たちに、喋るだけ喋らせ「誠意」を見せようとの作戦だったのだろうか。

下記の画像を見ていただきたい。一つは現在先頭になってジャニーズ追及を行っている朝日新聞社系列の『週刊朝日』(2019年7月26日号)の表紙と、民間企業ではないが法務省の肝入りで制作された映画『少年たち』(製作総指揮・ジャニー喜多川)のフライヤーと推薦のツイッターだが、シュールと言おうか、失笑をさえ禁じ得ない。特に映画『少年たち』を推薦する法務省のツイッターは性犯罪を後押しするようなもので法務省の見解をぜひお聴きしたいものだ。

こうしたジャニー喜多川の性犯罪を、ちょっと調べれば判るものを、調べもせずに安易に持て囃したことこそ厳しく糾弾しなければならないだろう。

[左]現在先頭になってジャニーズ追及を行っている朝日新聞社系列の『週刊朝日』(2019年7月26日号)の表紙。[右]法務省の肝入りで制作された映画『少年たち』(製作総指揮・ジャニー喜多川)のフライヤーと推薦のツイッター

3月7日から9月7日までと、これ以降も、マスメディアによるジャニーズ事務所追及の記事が、どんどん溢れ、3月7日以降、少なくないマスメディアの記者らから問い合わせなどあった。NHKの記者など2人、わざわざ東京から関西まで来てくれ、それはニュースや『クローズアップ現代』で放映された。世代が離れた若い記者たちは、私たち老人とは発想も違い、やる気が感じ取られた。実際に、これまでにない展開が拓けた。しかし、これを「メディア・スクラム」というのかどうか知らないが、どこの社も日々ジャニーズ事務所追及やジャニーズ関連の記事が溢れるとウンザリする。辟易感といおうか違和感といおうか、こうした気持ちはどこから来るのだろうか?
 
◆広告出広企業の責任

これまで主にテレビを中心として、日本を代表する多くの企業がジャニーズタレントを起用してきたが、ここにきてジャニーズ事務所との契約打ち切りを決定したというニュースが続々報じられている。沈みつつある泥船から逸早く逃げ出し、知らぬ存ぜずを決めようとの感がする。嫌な気分になる。

これもおかしな話だ。ジャニー喜多川による未成年性虐待の実態は、ネットですぐ調べられる時代、検索して、かつてのデータハウスや鹿砦社などの書籍を取り寄せて読めば、わけなく判るはずである。大金を投じて広告を制作するのだから、これぐらいはやるべきだったのではないか。

◆告白者/被害者、そして賠償金や利権に蠢く者たち

このかんジャニー喜多川による性被害をカミングアウトする者が続々登場して来ている。賠償金の支払いをジャニーズ事務所が公にした以上、今後も増えるだろう。まずはこの真偽をきちんと審査し決めなければならない。似非も出てくるだろうが、ここは厳しく排除すべきだ。

また、巨額の賠償金が予想され、さらに再発防止のための基金も囁かれる中で、今後これに群がる者が必ず出てくるだろう。先に述べたように、それ相当の賠償金は拠出すべきだが、会社とは離れた組織で厳密に審査し判断すべきだということは言うまでもない。それはすでに、「被害者救済委員会」として開始されているが、下手に「被害者」と称する者と直接交渉すべきではなく、100億円なら100億円と一定の金額をジャニーズ事務所に拠出させ、これから厳密な審査を経て真の被害者個々人に渡すべきだろう。

人を疑うわけではないが、大金の臭いがする所には必ず似非被害者やよからぬ人物が寄ってくるのが常だ。これは断固排さなければならない。

 

鹿砦社特別取材班『暴力・暴言型社会運動の終焉』

ここで懸念するのは、「PENLIGHT ジャニーズ事務所の性加害を明らかにする会」なる「ジャニーズをこよなく愛する者たち」と称する人たちである。彼ら/彼女らがジャニーズファンではなく、むしろKポップファンで、韓国の慰安婦支援団体の流れを汲み、さらには、いわゆる「しばき隊」に繋がる人たちだということが明らかにされている。私たちは2016年から大阪・北新地で「しばき隊」メンバーによって起こされた「大学院生集団リンチ事件(しばき隊リンチ事件)」の被害者支援と真相究明に関わった。

李信恵ら、この凄惨なリンチ事件の加害者、これに直接・間接的に繋がる人物が複数人、「賛同人」に名を連ねている。被害者支援、真相究明、これに関連する複数の訴訟に昨年末まで実に7年間も関わり、関連書も6冊出している。なので、彼らの素性や背景、繋がりには、それなりに詳しいと自負する(「李信恵」「しばき隊リンチ事件」で検索すれば事件の概要は判るだろう)。

彼らは「当事者の会」にも近づき入れ知恵しているという情報も入ってきているが、これが事実であれば、こういう活動家とは即刻手を切るべきだ。海千山千のプロの活動家にとって、政治運動を知らない者は赤子の手を捻るようなもので、必ず食い物にされる。

おそらく今後、巨額の賠償金や利権のおこぼれにありつこうと、こうした徒輩が蠢くものと思われる。くれぐれも要注意だ(「しばき隊リンチ事件」については、私たちが出版した6冊の本、とりあえず『暴力・暴言型社会運動の終焉』一冊でも読んだら概要は判るだろう)。

◆LGBT関係者はどう考えているのか

本年前半、この件と重なって大きな社会的関心事となったのがLGBT理解増進法制定をめぐる問題だった。「G」とは言うまでもなく「Gay」のことだが、本件はLGBT当事者の犯罪でもある。「性の多様性」でGayが私的に性を謳歌するのはよしとしても、こんな異常な性犯罪を起こしてもらっては、真にLGBT問題を理解するためにも非常に困る。

LGBT理解増進法をめぐり、あれだけ騒いだLGBT当事者はどう考えるのか? LGBT利権団体、活動家、これらと連携する者ら、また、これらから距離を置くLGBT当事者らの率直な意見を聴きたい。私の知る限り、まだまともな意見は出ていないようだが、みずからに都合の悪いことでも、きちんとコミットしないとLGBTについて真の国民的理解は得られないであろう。LGBT当事者が社会的にマイノリティであるにしても、だからといってLGBT当事者の性犯罪が許されるわけではない。ここまで踏み込んでの議論が必要なのではないだろうか。

◆私たちにとってのジャニーズ問題の〈総決算〉

本年3月7日以降、主だったマスメディアの多くが、ジャニー喜多川による未成年性虐待とジャニーズ事務所の横暴についてヒトとカネを使い大掛かりな取材に動き出した。日々、新聞もテレビも、ジャニーズに関する記事やニュースで溢れ返っている。もう私たちの出番でもないだろう。私たちの役割は終え、(ご都合主義ということはあるが)大手メディアに繋げた。3度の出版差し止めにも屈せず、地道にジャニーズ告発の本を出し続けた甲斐があろうというものだ。少しは報われた感がする。

筆者も老境に入り、体力的にも新たな取材に動けなくなった。目の疾患も酷くなって、ちょっとした書類も拡大コピーしないと読めないほどだ。昨年来ほとんど編集実務から離れてきたが、ここは、これまで四半世紀余りにわたるジャニーズに対する告発系、スキャンダル系の出版活動の〈集大成〉の本をまとめることにした。おそらくこれが長く続いたジャニーズ追及の最後の書籍となるだろう。28年、長かったな。

老境にあることで体力的、気力的にも弱っており、加えて重篤な目の疾患などで編集作業にもかなり苦労した。

そうした想いで取り組み、ぎっしり詰め込みA5判、320ページもの大部の本になった。取材には動けなくなったが、今でもこういう本を出せるのはまだ私たちしかないという自負はある。

書名は『ジャニーズ帝国60年の興亡』とした。10月半ばの刊行予定である。

本書では、ジャニーズ事務所が創業者・ジャニー喜多川の未成年性虐待問題で初めて記者会見し公式に謝罪した2023年9月7日までの記述でとどめている。ジャニー喜多川の性犯罪告発は現在進行形で展開中だ。今後、ジャニーズや芸能界がどうなっていくのかわからないが、もうジャニーズというタブーはなくなったのだから、大小問わず出版やメディア、ジャーナリズムに関わる人たちには本書を超えるジャニーズ告発本をどんどん編纂し発行してほしい、と切に願う。(本文中敬称略)

鹿砦社代表 松岡利康

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

◆代理“核”戦争国化の鍵、「有事の際の核使用協議体」

日米韓キャンプデービッド首脳会談を前にした本連載(8月5日付けデジタル鹿砦社通信)で次のように書いた。

“主要議題について「“核の傘”を含む米国の拡大抑止の強化も議論するとみられる」とすでに報道にあるように、日米韓“核”協議体創設について何らかの合意をめざす、これが米バイデン政権の狙いであろう。”

でも今回、このような合意は見送られた、しかし何としてでもこれを実現したい米国はきちんと布石を打ってきた。このことを以下、見てみたい。

なぜこれほど米国は日本の代理“核”戦争国化、そのための「有事における核使用に関する協議体」創設にやっきになるのか? 焦るのか? このことは8月5日付け本連載で詳しく述べたが、重要な問題なので視点を変えて、まずこのことを考えてみたい。

日本の代理“核”戦争国化は、米国にとって米中新冷戦戦略に必須不可欠の死活的課題だ。その理由は、対中対決で米核抑止力、特に戦域核領域、具体的には核運搬手段である戦術ミサイル(中距離ミサイル)分野では質量的に中国、朝鮮に圧倒的に劣り、「抑止」が効かない、つまり「威嚇」になっていない、そして戦争になれば必ず負けるというコンピューターシュミレーションの結果も出ている。

この劣勢挽回の切り札が「日本列島の中距離“核”ミサイル基地化」だ。

米国は戦略核ミサイル、ICBM(大陸間弾道弾)を使えば自国が核報復攻撃で壊滅的打撃を受けるから使う気はない。だから対中対決最前線と位置づける「日本列島の中距離“核”ミサイル基地化」が死活的課題になっている。

すでに岸田政権が閣議決定した「安保3文書」で敵基地攻撃能力保有、自衛隊に地上発射型「中距離ミサイル部隊」新設が決まった。最後に残った課題は、「核共有」論に基づく自衛隊の核武装化、そのためのNATO並みの「有事における核使用に関する協議体」創設だ。その切り札が韓国を巻き込んだ日米韓“核”協議体創設だと米国は考えている。

一言でいって、いまこの“核”協議体創設こそが対中対決で生死を決める最後の課題として残った。だがこれが簡単でないこともわかる。だから米国は必死だ、いやいまは焦っている。

では今回のキャンプデービッド会談でいかにその道筋をつけたか? このことについて見てみたいと思う。

◆「前のめりの米国」と書いた朝日

キャンプデービッド会談を評して朝日新聞(8月20日付け)はこう小見出しに書いた。

「前のめりの米 日韓のズレに懸念も」

「前のめり」ということは事を急いでいる、焦っているということだ。米国は何を急ぎ、なぜ焦るのか?

別の記事の見出しにはこうあった。

「日米韓、核戦略では温度差」

その内容はこうだ-「日本では核関与に前のめりな韓国への警戒心が強い」、首相官邸のある幹部は「(韓国に)取り込まれすぎるわけにはいかない」-要は「北朝鮮の核」対抗に積極的で「有事の核使用に関する協議」に前のめりの韓国に日本が引っ張られることへの警戒心が日本政府内にあるという「日韓のズレ」がある。この問題ではいちばん「前のめりの米」という朝日の評価は、「日韓のズレ」がわかるだけに「日米韓“核”協議体創設」合意を急ぎ焦らざるを得ない米バイデン政権の悪あがきを反映したものであろう。

非核を国是としてきた日本政府はできるなら国民の反発を受けるこの問題を避けたい、しかし岸田政権はこれが避けられない米国の強い要求であることもわかっている。本音は国民を説得する(世論を欺く)時間的余裕がほしいということだろう。

しかし「時間的余裕」はない。日米韓首脳会談を前に「日米韓でも拡大抑止(核)の協議を進めたい」とバイデン政権高官は述べた。そしてすでに4月末の尹錫悦((ユン・ソクヨル)大統領「国賓」訪米時、米韓間には米韓“核”協議グループ(NCG)新設が合意され7月には実務協議も稼働した、これに日本を引き入れ「日米韓“核”協議体」に発展させる、これが米国の最終的狙いだ。

このための仕掛けはすでに準備されている。

◆「仕掛け」役・尹錫悦(ユン・ソクヨル)

米国の狙う日本の対中・代理“核”戦争国化、その仕掛け役に任じられたのが韓国の尹錫悦大統領だ。

周知のように日韓関係「改善」を主導したのは尹大統領だ。彼は元徴用工賠償金問題で最悪化した日韓関係を「打開」すべく「賠償金の韓国立替」という離れ業をやった。このような韓国国民の猛反発を呼ぶ「売国行為」を敢えて犯してまでも日韓首脳会談開催につなげた。

 

『核の傘』日米韓で協議体創設、対北抑止力を強化……米が打診(2023年3月8日付け読売新聞)

尹大統領の「勇断」(バイデンの言葉)によって日韓首脳会談のメドが立った3月6日から二日後の8日、読売新聞は米国が日韓政府にこのような打診をしてきたことを伝えた。

「“核の傘”日米韓で協議体の創設」を! 

これを受けた尹大統領は4月末の「国賓」訪米時の「ワシントン宣言」に米韓“核”協議グループ(CNG)創設を謳った。これが日米韓“核”協議体創設の布石であろうことは明白だ。

今回のキャンプデービッドでの米韓首脳会談ではこのCNG稼働をバイデンが高く評価し、先述の言葉「日米韓でも拡大抑止(核)の協議を進めたい」を米政府高官に言わせた。

すでに韓国は「対北朝鮮・代理“核”戦争国化」に一歩足を踏み入れた。次ぎにこれを日本の「対中・代理“核”戦争国化」につなげる、その「仕掛け」役を「確信犯」尹大統領が果たして行くであろうことは疑いない。

◆「日韓を固定し米国を固定する」の意味

米国の執拗さと焦りの表現としてあるのが、今回の会談で日米韓首脳会談、閣僚級会談の毎年定例化、次官級協議の不定期定例化を「制度」として決めたことだ。

これを「日韓をフィックス(固定)し、米国をフィックスする」ことだと米政府高官は述べた。英語で「フィックス」は「動かないようにする」という概念だ。日本側からすれば「動けないようにされる」、縛り付けられるということになる。

読売社説はキャンプデービッド会談の意義を「今回の合意が極力継続するよう(日米韓)協力の枠組みを“制度化”したこと」としたが、制度化(固定化)しなければ揺らぐほど日米韓協力はもろいものだということの裏返しの表現でもある。

「日韓のズレ」は根強い、今回の日米韓首脳会談を論じる「プライムニュース」出演の日本の識者、政治家は「日韓の壁」「朝鮮半島の軍事は鬼門」「韓国とリスク共有は“?”、つまり疑問」とすべて悲観的だ。米国からすれば、だから日韓を「固定化」(会談の制度化)し「韓国とリスク共有」を渋る日本の尻を叩く必要があるということだ。

また韓国の尹錫悦政権は脆弱だ。大統領選でも僅差でやっと勝った、また国会は野党、共に民主党が絶対多数を占め政権側の法案も否決される場合が多い。それを強権で乗り切っているのが尹錫悦大統領だ。次期、大統領選では政権が変わる可能性が高い。だから政権が変わっても「今回の合意が極力継続するよう協力の枠組みを制度化」(読売社説)したのだと言える。

キャンプデービッドで日米韓「固定化」を強要したのも米国の焦りの表現だ。

今回、日米韓“核”協議体創設合意は見送られたが、「制度化」された首脳級、閣僚級会談、次官級協議で日本をフィックスし、がんじがらめに縛り付けた上で日米韓の「有事に関する核使用に関する協議体」創設は強引に進められるだろう。

◆「無理心中」同盟

いま西の米国の対ロ対決・代理戦争、ウクライナ戦争での米国の敗北は避けられないものになっている。

5月頃から「反転大攻勢」のかけ声勇ましいゼレンスキーだが、最近の「南部戦線でロシアの第一防御線突破」報道はあったが地雷原を越えた程度であり、2.5メートルという深い塹壕戦防御陣形をとるロシア防御線の戦車突破は至難の業だ。新聞報道ではもしこのまま冬が来ればぬかるみになる戦場で戦車も動かせなくなる。だから「戦果」を焦る米国はウクライナ軍を分散配置ではなく南部に集中させることをゼレンスキーに「勧告」、その結果がこの程度の「戦果」だ。ぬかるみが固まる来年春か初夏までゼレンスキーには何の「戦果」も得られない、「反転大攻勢」は空文句に終わる。このままでは来年以降の欧州諸国の「ウクライナ支援」は確実に動揺する、そう報道は伝えている。

ウクライナ国防相解任があったが兵士用の食糧、衣服が市場価格の2~3倍で購入され差額は汚職されたからだ。徴兵募集当局もワイロで「兵役免除」汚職蔓延で更迭改編されるなど醜態の続くゼレンスキー政権が国民から見放される日も遠くはないだろう。こんな代理戦争で誰が愛国心に燃えて「祖国防衛戦争」に命を懸けられるというのだろう。

フランスのマクロン大統領は訪中後、「欧州は対米従属を続けるべきではない」と言明して世界を驚かせた。英国を除く他の欧州諸国も心の中ではそう思っている。

ウクライナ戦争での敗北は米覇権の衰退滅亡を早める。それだけに東の米中新冷戦戦略実現に米国は自己の覇権の死活を賭けてくる。その矛先は対中対決・最前線とする日本の代理“核”戦争国化だ。

いまや「米国についていけば何とかなる時代ではない」どころか「覇権破綻の米国と無理心中するのか否か」が問われる時代になった。

今回のキャンプデービッド会談は日米韓「無理心中」同盟を日本に迫るものになったとも言える。

焦れば焦るほど米国の強引さは苛酷になるのは必至だ。岸田政権にこれを拒む力はないだろう。現在のままの野党政治勢力に期待するのも難しい。では希望はないのか?

◆希望はある

いま国民の間でタモリの「新しい戦前」という言葉が共有されつつある。これは日本という自分の国の運命を憂える心、自身の運命を日本に重ねる憂国、愛国の心の萌芽とも言える。この「新しい戦前」の正体が対中・代理“核”戦争国化、米国と「道連れ心中」の道であることが国民の共有する「身に迫る危険の正体」の認識になって、この憂国、愛国の心が大きな塊になれば、「新しい戦前」阻止の力になるだろう。


◎[参考動画]タモリ「(来年は)新しい戦前 になるんじゃないですかねぇ」(テレビ朝日『徹子の部屋』2022年12月28日放送)

いま政界再編に向けた動きが活発化している。その動きの底流には「新しい戦前」阻止の政治勢力の存在がかいま見える。

最近、岸田派(旧宏池会)古参幹部のハト派、古賀誠氏が次のような発言で岸田政権を批判した。

「日米安保に引っ張られすぎるのは危険だ」と。

古参の自民党政治家には「新しい戦前」の正体が何かはわかっているはずだ。

いま政界再編は二つの「改革」を巡るものになる可能性を秘めている。

一つは親米「改革」、日本の対中・代理“核”戦争国化、そのための日米統合「改革」推進勢力だ。

いま一つはその逆の改革を志向するいわば「新しい戦前」危惧の憂国、愛国の政治勢力だ。それはまだ萌芽にすぎないが、この政治勢力と「新しい戦前」危惧の国民の声が合体すれば大きな力になる可能性を秘めるものになる。

希望はある。だから希望実現に少しでも力になれるよう私たちも「ピョンヤンから感じる時代の風」発信を続けていく。

若林盛亮さん

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)さん
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

今回も前回に引き続き、地域医療に尽力する医師・松永平太氏の著書、『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』(幻冬舎)の書評の第2回目をお届けする。

 

松永平太『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』(幻冬舎)

第1回目、「家族の介護を大前提とする、いくつかの描写や意見・感想」に違和感を抱くが、「さまざまな現実に真剣に向き合ってきた松永氏の考えは実際、わたしとまったくかけ離れていることはない。また、彼が手がけていることは、まさにコミュニティでのケアを理想的な形で実現させるためのものなのだ」と記した。

これに関し、松永氏に改めて確認したところ、「これから日本は、独り暮らし、認知症の高齢者がドンドン増えてきます。認知症の独居を想定した看取り文化を創りたいと考えています。なので、家族介護が必須要件とは考えておらず、おひとり様でも地域で最期まで生き切ることのできる社会を目指します。中に、田舎には婆ちゃん独り、都会に子供たちパターンで、最期の1週間だけ最後の親孝行をするため帰郷して満足死を達成する実例を出していました。家族がいなくても私たちが愛しますので、独りぼっちにさせません」というメッセージを届けてくれた。

◆孤独死を除く在宅死亡率は1割未満

さて、本書に戻る。前回も触れた介護保険の問題を象徴することとして、松永氏は、「介護保険が導入されて二十数年が経つにもかかわらず、逆に家で死ねない時代になっているのです。数十年で病院の死亡率は80%弱とあまり変わりはなく、施設で最期を迎える人が増えているのです」と訴える。

また、在宅死亡率は全国平均で15.7%だが、ここにはいわゆる孤独死が含まれているため、「自宅にいて家族や訪問看護師、医師らに看取られた患者の割合は在宅死亡率の6~7割ほどではないかと考えています」と伝える。つまり、9.4%、1割未満というわけだ。平均寿命は、平安時代が26歳、江戸末期でも31歳とのこと。これが現在では84歳(厚労省の発表によれば2022年の男の平均寿命は 81.05年、女は87.09年)にまで延びている。

本書では取り上げられていないが、たとえばインターネット上では、高齢者を既得権者として敵視するような論調を目にすることがある。自らの悩みや貧困の原因は、余裕のある年金生活を送り、旅や趣味を楽しみながら悠々自適な生活をして、政治にもいうことをきかせている。高齢者があぐらをかき、のさばっている。そのような語り口だ。

しかし、このような世代間論争とは本当の既得権者によって対立をあおられているようなものであり、どの世代にとっても社会はよいものとならない。

松永氏は、常に地域の高齢者を診ている。だからこそ、彼らのために現実的に自分ができることを、次々と実現させていく。診療所だけでなく、2000年の介護保険法が施行される際に訪問看護ステーションとヘルパーステーションを設立し、02年にはデイサービスセンターを設置。また、06年には老人保健施設とグループホーム、認知症対応型デイサービスも開設した。彼は本書に、「地域住民の命を元気にさせ、命を輝かせるツールはほぼできあがりました」と記す。

◆予防医療の導入によって目指す「穏やかな最期」

松永氏が医師になったばかりの頃は、「穏やかな最期を迎えることは難しく、みんなが同じように病院で死んでいた時代」だったそうだ。

わたしが12歳、1984年に父ががんで亡くなる前は、痛みに苦しんで叫び続け、モルヒネだか痛み止めを使用。きれるか慣れて効かなくなるとまた叫んでいた。最期は、機器を見ると止まった心臓が再び動いたようだったが、臨終だといわれてすべてが終わった。母は疲弊しきり、火葬場では「後を追って死ぬ」と叫んだ。その瞬間も悲劇的だった。母は、その後、父は過労死だと口にしていた。症状は現れていたはずだが、耐え続けて病院に行くのが遅く、また当初の誤診もあった。

松永氏が医師になった1992年頃でも、そのような悲劇的な最期を迎えるような状況に大きな変化はなかったのだろう。ただし、そのような時代でも本書によれば、長野県では予防医療が進んでいたという。彼は、その後これを千倉に導入し、定期的な検査・看護師による生活支援・在宅医療を施すようになった。「体を動かす習慣をつけたり、社会活動に参加したりといった生活環境も重要」なので、「健康講座の開催や、地域の人が互いにつながる地域活動にも力を注いで」いる。(つづく)

◎地域医療の最先端モデルに学ぶ ──《書評》松永平太著『笑って、食べて、愛されて 南房総、在宅看取り奮闘記』
〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=47434
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=47628

▼小林 蓮実(こばやし・はすみ)
1972年生まれ。フリーライター。現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『紙の爆弾』『NO NUKES voice(現・季節)』『情況』『現代の理論』『都市問題』『流砂』等に寄稿してきた。フリーランスの労働運動・女性運動を経て現在、資本主義後の農的暮らしを実現すべく、田畑の作業、森林の再生・保全活動、釣りなども手がける。地域活性に結びつくような活動を一部開始、起業も準備中。

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

これが決定打か? 佐々木勝海の右ヒジ打ちが宗方の顔面を掠めた

新人から王座を見据える立場へ。

佐々木勝海はタイを含むヒジ打ち有効3回目の試合は、切られて打ち返して逆転TKO。

小林亜維二も成長著しく、的確なパンチと蹴りのヒットでKO勝利。

◎DUEL.28 / 9月10日(日)GENスポーツパレス18:00~20:37
主催:VALLELY / 認定:NJKF

◆第10試合 65.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級2位.宗方888(キング/64.95kg)11戦4勝(3KO)6敗1分
        VS
NJKFスーパーライト級5位.佐々木勝海(エス/65.1→65.0kg)9戦7勝(2KO)1敗1分
勝者:佐々木勝海 / TKO 2R 2:57 /
主審:北尻俊介

ヒジ打ちの攻防。打たれたら打ち返す。

昨年10月16日のDUEL.25で、ちさとkiss Me(安曇野キックの会)に攻め倦んだ判定勝利から、今年2月5日には宗方888と引分け、今回が再戦となった。

タイで試合して来たという佐々木勝海は慣れていなかったヒジ打ちの向上と、スピード増した素早い動きが印象的である。

宗方888と佐々木勝海の接近戦、一瞬のヒットが運命を分ける

逆転TKOに歓喜する佐々木勝海

開始からパンチと蹴りの攻防は互角ながら、宗方の圧力掛けた前進が目立ち、更に第2ラウンドに組み合った接近戦でのヒジ打ちが佐々木勝海の右眉尻をカット。更に接近戦が続くと逆に佐々木勝海がヒジ打ちで宗方の鼻を曲げてしまった。鼻血が激しく、ドクターの勧告を受け入れた北尻俊介レフェリーが試合をストップした。

佐々木勝海は「前回の宗方戦で結構殴られて負けに近かったですけど、対策はヒジやローキック、前蹴りを念入りに練習しました。最初はヒジで切られて、一か八かでやってみたヒジ打ちがヒットしました!」と言う。それも練習の成果。タイでの経験も活かされただろう。

また「更に上位の選手と戦いたいです!」という意欲的な発言は、ファンも楽しみなところでしょう。

敗れた宗方は「最初にヒジ打ちで切ったのが分かったので、このラウンドで決めようと雑に突っ込み過ぎたらカウンターでやられました!」と残念そう。

長身の徹平の右ミドルキックがヒット、主導権支配した展開が続いた

宗方の所属するキングジムの羅紗陀会長は「宗方の動きはキレがあって良かったんですけど、佐々木がヒジ打ち狙っていたのが分かったので、不用意に行くなと言ったけど、その声は届かなかったですね!」と語った。

◆第9試合 52.0kg契約3回戦

徹平(ZERO/51.65kg) 4戦2勝2敗
      VS
悠(VALLELY/51.9kg)7戦2勝4敗1分
勝者:徹平 / 判定3-0
主審:宮沢誠
副審:小林30-28. 北尻30-28. 中山30-27

徹平が長身を活かしたハイキック、首相撲からヒザ蹴りの見映えが良かった。ノックダウンには至らなかったが、主導権支配した流れを維持。

◆第8試合 ウェルター級3回戦

和弥(ZERO/65.75kg)2戦1勝(1KO)1敗
      VS
亜維二(新興ムエタイ/66.45kg)7戦4勝(2KO)2敗1分
勝者:亜維二 / KO 1R 1:18 / 3ノックダウン
主審:児島真人

2019年8月のWBCムエタイジュニアリーグU15の55kg級で優勝している小林亜維二。
パンチ連打と蹴りの連係技が速く鋭く上達したノックアウト勝利。

最初と2回目のノックダウンは左フック。3回目のノックダウンは右ハイキックヒットだった。

小林亜維二のパワーある左フックで和弥が倒れる

◆第7試合 58.0㎏契約3回戦

長友亮二(キング/57.7kg)2戦2勝
      VS
カルロス(新興ムエタイ/57.3kg)1戦1敗
勝者:長友亮二 / 判定3-0
主審:小林利典
副審:宮沢29-28. 北尻29-27. 児島29-28

4月23日がTITANS.32に於いてのデビュー戦で、中村哲生(伊原)に完封TKO勝利している長友亮二。リング上で、年齢は「3度目の成人式です!」と応えた長友亮二。なんと60歳である。アマチュア版「ナイスミドル」出場経験があって、テクニックとスタミナはある展開で相手の消耗もあったが、右ストレートでノックダウン奪って判定勝利。

60歳のラーメン店マスターがノックダウン奪って判定勝利

◆第6試合 女子(ミネルヴァ)54.0kg契約3回戦(2分制)

珠璃(闘神塾/53.4kg)3戦2勝(1KO)1分
      VS
RUI・JANJIRA(ジャンジラ/53.65kg)2戦2敗
勝者:珠璃 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

パンチと蹴りの圧力と組み合ってのヒザ蹴りが優った珠璃が順当な判定勝利。

珠璃のヒザ蹴りがRUIにヒット

最軽量級の戦いながら蹴りの攻防は激しく、愛の右ミドルキックが江口紗季にヒット

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)42.0kg契約3回戦(2分制)

愛(STLIFE/41.75kg)4戦3勝1敗
     VS
江口紗季(笹羅/38.75kg)2戦1勝1敗
勝者:愛 / 判定3-0 (30-29. 30-29. 30-29)

最軽量級のほぼ互角の展開は愛が僅差で勝利。ウェイト差がやや攻勢を導いた。

◆女子(ミネルヴァ)52.5kg契約3回戦(2分制)

響子JSK(治政館)vs坂本瑠華戦は坂本瑠華の欠場で中止。

-エキシビジョンマッチ1R-
響子JSK(治政館)EX SAHO(闘神塾)

昨年11月13日にS-1バンタム級世界王座奪取したSAHOが緊急エキシビジョンマッチ出場。ちょっと遠慮がちながら好調さを見せた。

◆第4試合 ライト級3回戦

本多秀典(拳友会/61.0kg)5戦1勝4敗
      VS
須貝孔喜(VALLELY/60.95kg)3戦1勝2敗
勝者:須貝孔喜 / 判定0-3 (26-30. 26-30. 26-30)

◆第3試合 52.0kg契約3回戦

煌(KANALOA/51.8kg)2戦2敗
      VS
永井雷智(VALLELY/51.85kg)1戦1勝
勝者:永井雷智 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 29-30)

◆第2試合 スーパーバンタム級3回戦

久住祐翔(白山/55.2kg)1戦1敗
      VS
遠山哲也(エス/55.05kg)2戦1勝1敗
勝者:遠山哲也 / 判定0-2 (28-29. 29-29. 29-30)

右眉尻を切りながらインタビューに応える佐々木勝海

◆第1試合 70.0kg契約3回戦 須藤雅人(OGUNI)欠場で大谷真弘代打出場

大谷真弘(BRAVE FIGHT CLUB/70.0kg)
       VS
TOM・JANJIRA(ジャンジラ/70.0kg)2戦2敗
勝者:大谷真弘 / KO 1R 2:58 /

代打出場だったが、重いパンチのヒットで3ノックダウンを奪った大谷真弘。

《取材戦記》

昨年、まだ新人的存在だった佐々木勝海は急成長した1年で、ヒジ打ちで顔面切られるピンチからの逆転は会場を盛り上げました。

小林亜維二もインパクトあるパンチとハイキック攻勢でノックアウトに繋げ、今後はタイトルに絡んで来そうな二人の存在である。

午前から夕方にかけて行われた第1部が、NJKFアマチュア部門の「EXPLOSION.38」。小学校高学年から中学生まで15階級の優勝者が誕生した模様。次のステップはWBCムエタイジュニアリーグになるでしょう。

ジャパンキックボクシング協会で「CHALLENGER興行」を打っていた武田幸三氏がここに登場。ベストファイトに送られる「武田幸三賞」も登場しました。

最近、各団体で人やジムの移動が見られますが、触れられるところがあればまた語りたいと思います。

「NJKF 2023.4th」は前回告知どおり、9月17日(日)に後楽園ホールで開催です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

2023年9月11日は、アメリカでの同時多発テロ事件から22年。このテロを悪用してアメリカはアフガニスタン、ついでイラクを攻撃。アメリカこそ、核兵器は使わなかったものの、劣化ウラン弾やバンカーバスターなどを使用し、多くの罪のない市民も殺戮しました。そして、もうひとつ、忘れてはいけないのが50年前の1973年9月11日にチリで行ったアメリカ自身による「911テロ」です。

アメリカCIAの手先であったアウグスト・ピノチェト元被告人は、民主的に選ばれたチリのアジェンデ政権を打倒し、多数のアジェンデ支持派を虐殺しました。他方で、日本で言えば竹中平蔵さんや広島県の湯崎英彦知事・平川理恵教育長が進めているような「新自由主義」政治を世界に先駆けて1970年代から実践しました。銅山を除く多くの公営事業を民営化。一時的には「チリの奇跡」と言われたのですが、実際にはGDP成長率の平均値3.7%は、クーデター以前の平均値3.86%を下回ってしまいました。格差も拡大し、今は左派政権が後始末に追われています。

二つのテロの記念日に、筆者は、湯崎英彦知事の新自由主義と岸田総理の原発推進に抗議する行動を行いました。

◆社民党市議とコラボで暴走・湯崎英彦知事を批判

 

県立広島病院

この日の朝は、広島市南区の県立広島病院=県病院周辺で、湯崎県政を批判するチラシを配布。そうこうするうちに、社民党の有田優子市議が、定例の朝の街宣を電停前の空間で行うために見えられました。

有田市議は2023年4月の統一地方選挙の市議選で南区から立候補。湯崎英彦知事が強引に推進する県病院やJR病院、中電病院、舟入病院小児救急などを統合する新病院構想を厳しく批判し、社民党の基礎票を大きく上回る得票で当選されました。

9月8日(金)に湯崎知事が病院の基本構想を発表してから最初の週明けです。1300-1400億円かかかるというこの構想。先端医療や過疎地で働く医師の育成など、夢のような機能を持たせるという。

しかし、本当に湯崎知事が言う通り、新病院に過疎地で働くような若い医師が来るのでしょうか? 広島駅近くという都会を好むタイプの方が過疎地で働くというイメージはない。また、新病院は公立ではなく独法です。先端医療と言っても待遇が不安定化する中で腕の良い医師が来るのかどうか? また、築10年もたっていないJR病院を駐車場に変えるのももったいない。疑問は尽きません。

 

社民党の有田優子市議と筆者

有田市議は出勤途中の病院の医療労働者などに対して、「県病院の統廃合計画。意見を聞いた上で計画をつくるべき。今回も湯崎英彦知事が勝手に発表しているだけで何も本当は決まっていない。あきらめてはいけない。」と訴えました。

マイクを渡された筆者はこの日が、チリで起きた911クーデターから50年だと紹介。ピノチェトの新自由主義独裁政治の概要を説明した上で、

「知事の湯崎さんは、ピノチェトのような虐殺はしていないが、県民の言うことを全く聞かないという意味ではピノチェトとそっくりだ。その上で、ピノチェトが国民向けサービスをカットしたように、湯崎知事も農業ジーンバンクや県立高校をろくに住民の声も聴かずに潰した。ピノチェト同様、削ってはいけないコストを削り、ホーユーのような業者に給食を委託して大騒動になっている。」

「三原の産業廃棄物の問題でもすでに汚染水が出ているのに裁判所の判決や住民の声を無視し動かない。企業ベッタリだ。この地域では県病院の問題でも声を聴かずに暴走し、大変なことになりかねない。」

「わたしは東区民で県病院を潰してできる新病院は近いけど、歓迎はできない。東区は渋滞が常にひどく、救急車をさばききれるか不安だ。」

と湯崎知事の新自由主義政策を激しく批判し、定例県議会を前に湯崎知事へのチェックをするよう県民に呼びかけました。

◆伊方原発のある佐田岬半島の岩盤はひび割れだらけ

筆者はこの後、自転車で中区の広島地裁に移動し、伊方原発広島裁判の口頭弁論に原告として参加しました。

この日は構造地質学、岩石学、岩石年代学者の早坂康隆さんが原告側証人として証言しました。伊方原発のすぐ北側600mの海底にある中央構造線は危険な活断層であること。そして、伊方原発のある佐田岬半島は、岩盤がひび割れだらけの「ダメージゾーン」だと早坂さんは証言しました。四国電力は、「地震を起こすのは伊方原発8km北方の活断層」「伊方原発は岩盤の上にあるから安全だ」と主張してきたのですが、それを覆すものです。

要は、中央構造線自体が、1億年程度活動している日本を大きく分ける壮大なプレートの境界で、いわゆる中央構造線から南側の外帯はかなり南の海上に浮かんでいたそうです。そして、現在では中央構造線を境に伊予灘は沈降するハーフグラーベン構造をしているのですが、中央構造線の南側もそうした地殻変動の力を受けて岩盤が傷んでいるのです。

大浜寿美裁判長は、早坂さんや、早坂さんに質問した原告・被告双方の弁護士に対して細かく発言内容について確認をされていたのが印象的でした。

 

伊方原発広島裁判口頭弁論後の報告会

また、裁判終了後、弁護士会館で早坂さんが出席しての報告会がありました。早坂さんは40年前から伊方原発に関心を持って、伊方原発近くの中央構造線について研究をされておられます。山口地裁岩国支部での裁判にも証人として出廷経験があります。

広島大学で早坂さんは、50年前に提起された伊方原発1号機の許可取り消しを住民が求めた裁判で、裁判所命令での鑑定である越生鑑定書(裁判長交代でなかったことに)を補佐した小島先生の「三波川帯」についての最終講義に感銘を受けられたそうです。越生鑑定書はこんな岩盤がひび割れだらけの場所に伊方原発許可した国に怒りを向けていたそうです。つまり、40年以上前にすでに今回の早坂さんの法廷での証言と同趣旨のものが、裁判所に提出されていたのです。

早坂さんはその後、大学―大学院と古い時代の石の研究に熱中されたそうです。安佐北区では姶良カルデラの火山灰を発見したそうです。花粉分析で天気や季節も分かったそうです。細かいことがわかるのがこの分野の研究の面白さということです。「裁判を闘っている人には失礼だが楽しんで研究」されているそうです。

次回は10月4日(水) 13時半から原告本人尋問です。

 

9月5日から閉鎖中の裁判所の食堂

◆裁判所の食堂も「ホーユー」でした

この日は、裁判所の食堂で昼食にしようと思ったのですが、写真の通り、9月5日から閉鎖中でした。

経営破綻したホーユーがこの裁判所の食堂も運営していたためです。労働者にろくに連絡していないこの会社は大問題です。ですが、他方で、経営が成り立つはずもない価格で県は県内の多くの高校の食堂や議会の食堂を委託していたのです。一定の価格を下回っても失格にするような制度にしていなかった。そんなネオリベ県政に改めて怒りを覚えました。

◆昼休み時間帯に岸田総理の事務所に申し入れ

裁判が昼休みの時間帯、筆者は友人二人とともに、岸田文雄衆院議員事務所に「フクシマ処理汚染水の海洋放出の中止および上関中間貯蔵施設建設を含む原子力政策の抜本的転換を求める要望書」を提出しました。女性スタッフが一人で事務所番をされていたので、あまり突っ込んだやり取りにはなりませんでした。それでも、この日は福山市で市民運動の仲間が処理汚染水放出反対の街宣を実施。また、「韓日市民行進」の皆様が国会前に到着し、請願行動をされました。9月11日という同じ日に、東京と広島、同時多発で総理の核政策に抗議の声を上げることができました。

 2023年9月11日 

衆議院議員 岸田文雄様

衆議院広島県第1区 有権者有志
連絡先 佐藤 周一 
hiroseto2004@yahoo.co.jp
090-3171-4437

フクシマ処理汚染水の海洋放出の中止および
上関中間貯蔵施設建設を含む原子力政策の抜本的転換を求める要望書

内閣総理大臣としての貴職と東京電力は2023年8月24日から東電福島第一原発におけるALPS処理水(処理汚染水)の放出を開始しました。貴職はご自身の政治活動用ポスターで「地域の声で新たな日本へ」で選挙区である広島1区の有権者に呼びかけられています。

しかしながら、福島の漁業者の皆様も納得していない中で福島原発からの処理汚染水を放出した結果、9月8日には差止め裁判が起こされています。「地域の声」を活かすというなら、処理汚染水の海洋放出は中止してください。

そもそも、核燃料に直接触れた水を放出しているのは世界広し、といえども日本だけです。トリチウムだけでなく半減期が100年にも及ぶような他の核種もあり、「ただちには影響」がないにせよ、処理汚染水の放出が長期に渡れば食物連鎖による濃縮は十分に考えられます。

そして、今回の放出には中国だけでなく、マーシャル諸島など過去に大国の核実験で被害を受けた太平洋の島国の議会からも反対の声が上がっています。被爆地、それも爆心地である広島1区を選挙区とする総理が核実験による被爆経験がある国の意見を無下にして良いのでしょうか?

処理汚染水については、モルタル固化や本格的な大型タンクでの保管などの手段を議論しなおしてください。

また、廃炉の在り方も現行のデブリを取り出す方針の是非も含めて議論しなおしてください。

なお、一部中国人によるとみられる過剰な抗議活動は問題ですが、過剰反応しても問題解決にはなりません。威力業務妨害罪などで捜査すべきは捜査するとして、日本は自分自身の課題解決を冷静に考えていくべきです。

また、上関町では、中国電力と関西電力が共同で核のゴミの中間貯蔵施設の調査を8月2日に表明し、上関町長は議会の議決もなしに調査を受け入れました。しかし、周辺自治体の首長からは懸念の声が上がっています。現在、核のゴミの最終処理のやり方も決まっておらず、中間貯蔵は最終貯蔵になりかねません。また、輸送にともなう事故のリスクは上関町だけにとどまらず広島県内も含む周辺自治体に及びます。核物質を拡散することがそもそもリスクです。

そもそも、貴職が制定した自称・GX法により、関西電力が高浜原発など老朽原発を再稼働したことにより、核のゴミが増える見通しとなったことが、自称・中間貯蔵施設計画の背景にあります。そもそも、原発も温排水などの問題があり、本当のGXにはなりません。

貴職におかれては自称・GX法を撤回するとともに、再生可能エネルギー、スマートグリッド、蓄電池など、真のGXへ方向をすべきです。

また、国が国策として原発を推進してきた以上、問題解決を小さな自治体と電力会社に任せずに、国が責任を持つべきです。

よって、以下、要望します。

要望事項

1、東京電力福島第一原発の処理汚染水の海洋放出を中止してください。
2、汚染水を発生させてしまう現状の廃炉方針を根本から見直してください。見直しの期間に発生する汚染水については大型タンクなどで保管し、放出を避けてください。
3、海や魚の放射性物質による汚染状況については、長期にわたりお手盛りでない方法で調査し、公表してください。
4、中国の禁輸に伴う十分な補償を福島だけなく北海道など全国の漁業者に行ってください。
5、核のゴミを増やす自称「GX法」による原発推進政策を撤回してください。
原発は推進した国が責任をもって廃炉し、再生可能エネルギー、蓄電池、スマートグリッドに国として重点を置いてください。
6、広島から82kmしかない上関町への関西電力・中国電力による核のゴミの「中間貯蔵施設」については、上関町だけでなく、影響を受ける地域の住民・首長の声を聴いて対応してください。
7、一部中国人による過剰な抗議活動によるとみられる過剰反応せず、日本自身の課題解決を優先してください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2023年10月号

30%を切る支持率、40%をこえる不支持という凋落の中、岸田文雄総理が第三次の内閣改造を行なった。改造による支持率回復をテコに、秋の総選挙を展望し、その「勝利」をもって、来年の自民党総裁選挙を単独再任で乗り切るのが政権の戦略である。

さてその改造内閣だが、女性5人を入れる「変化」を目玉にしているが、右派議員の就任が目立つ。いま失っている岩盤保守層の支持回復がその狙いであるのは言うまでもない。その目玉が木原稔の防衛大臣起用、高市早苗の留任である。とりわけ木原は右派中の右派ともいえる、再軍備論者・改憲論者である。その過去の言動をお伝えしよう。

◆木原稔という政治家

いよいよこの男が防衛大臣になった、と危機感を持っていうべきであろう。15年の安保戦争法を安倍政権下(首相補佐官)で推進し、メディア統制を提唱してきた木原稔である。

まずは過去の言動から紹介していこう。自民党青年局長時代の2015年6月、木原は文化芸術懇話会なる団体を立ち上げ、党内の右派系議員を結集したのだが、講師に呼んだのが百田直樹だった。

百田尚樹は、集団的自衛権の行使容認に賛成の立場を表明し、政府の対応について「国民に対するアピールが下手だ。気持ちにいかに訴えるかが大事だ」と指摘した。「日本を貶める目的をもって書いているとしか思えないような記事が多い」と持論を展開した。


◎[参考動画]内閣改造で熊本1区選出の木原 稔衆議院議員を防衛相に起用 (TKU official 2023/09/13 19:00)

◆青年局長更迭

これを受けた参加者の発言には、愕くべきものがあった。

大西英男衆院議員(東京16区)「マスコミを懲らしめるには、広告料収入がなくなるのが一番。政治家には言えないことで、安倍晋三首相も言えないことだが、不買運動じゃないが、日本を過つ企業に広告料を支払うなんてとんでもないと、経団連などに働きかけしてほしい」

井上貴博衆院議員(福岡1区)「福岡の青年会議所理事長の時、マスコミをたたいたことがある。日本全体でやらなきゃいけないことだが、スポンサーにならないことが一番(マスコミは)こたえることが分かった」

長尾敬衆院議員(比例近畿)「沖縄の特殊なメディア構造をつくったのは戦後保守の堕落だ。先生なら沖縄のゆがんだ世論を正しい方向に持っていくために、どのようなアクションを起こすか。左翼勢力に完全に乗っ取られている」

主催者の木原稔は会合後、記者団に「党所属国会議員として、党や政府が進めようとしていることを後押しするのは当然だ」と強調したが、この会合は「自民党を後ろから撃つもの」として青年局長を更迭されたのだった。

高市早苗の総務相時代のメディア統制発言と双璧の、広告によるメディアの締め上げ戦略である。

菅義偉元総理の学術会議任命権発言も同様だが、政権に批判的なメディア・研究者の存在こそが、政権の政策をより優れたものにする担保なのである。木原をはじめとする右派政治家たちは、自分がロシアや中国の専制体制を是とする立場になっていることに気づいていないのだ。

◆明文改憲への戦略

木原は2018年1月に櫻井よしこ氏が理事長を務めるシンクタンク「国家基本問題研究所」が開催した月例研究会では、憲法改正への戦略を語っている。これは安倍政権の解釈改憲を、さらに明文改憲へ煽るものと言えよう。

「私の理想は2012年の自民党改憲草案、二項を削除する改憲案だ」

「安倍総理が、二項を残すという決断をされました。それは、いろいろなことを慮ってのことです。選挙は勝たなければいけません。国民投票も勝たないと意味がない。改正もされない」

「もし、憲法改正は一回しかできないという法律なら、二項削除で戦うしかないと思っています。しかし、憲法改正は何回でもできる。一度、改正に成功したら、国民のハードルはグッと下がると思います。そして、一回目の改正を成功させたあとに、二回目の改正、三回目の改正と、積み重ねていけばいいと思っています。最終的には前文も当然、改正しなければいけない」

憲法9条を尊重できない人物に、その9条が最も表象する自衛隊の文官トップ・防衛相が、務まるはずがないではないか。

◆沖縄でのデマ

木原はまた、デマゴーグでもある。

2015年6月に行われた沖縄全戦没者追悼式で首相の安倍晋三に怒号が浴びせられたことについて、木原はこう述べている。

「主催者は沖縄県である」

「たくさんの式典や集会を見ているから分かるが、明らかに動員されていた」

「そういったことが式典の異様な雰囲気になった原因ではないか」

などと、やじを飛ばしたのは県の動員による参列者であると断言したのだ。

主催した県は「動員などはあり得ない」。主催者の一人である県議会議長の喜納昌春は「いくら何でもひどすぎる。ゆゆしき発言で、悲しくなる」「自民党に沖縄のことを何も知らない議員がいることが問題。末期的だ」と木原を批判した。

◆統一教会との関係

木原と統一教会の関係も疑惑が多い。

2012年の衆院選の際に提出された選挙運動費用収支報告書に、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の関連団体「世界平和連合」から10万円の寄付を受けたことが記載されていたのだ。

2018年には、統一教会の関連団体「天宙平和連合(UPF)」が主催する自転車イベント「ピースロード」の実行委員に就任。以後、2021年まで実行委員を務めている。

2019年1月26日には、木原は統一教会熊本教区長の永井義行、日韓トンネル推進熊本県民会議の事務局長の佐藤民雄とともに駐福岡大韓民国総領事館を訪問。孫鍾植総領事と、韓国九州の交流増進案について話し合いをしている。

まるで実現性がなく、単に統一教会への資金カンパの口実にすぎない日韓トンネルの推進者と同席すること自体に、政治的なセンスのなさを露呈したのだ。

▼横山茂彦(よこやま・しげひこ)
編集者・著述業・歴史研究家。歴史関連の著書・共著に『合戦場の女たち』(情況新書)『軍師・官兵衛に学ぶ経営学』(宝島文庫)『闇の後醍醐銭』(叢文社)『真田丸のナゾ』(サイゾー)『日本史の新常識』(文春新書)『天皇125代全史』(スタンダーズ)『世にも奇妙な日本史』(宙出版)など。

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世界の原発は、スイスのベツナウ原発が53年運転しているなど、長期間運転は普通だといった認識が原子力関係者にはあるらしい。確かに米国には原子力規制委員会が最長80年まで運転できる許可を出している原発がある。

しかし実際に60年以上も運転している原発は存在しない。80年の許可を得ているのに経済性がないなどで早期廃炉になった原発もある。

日本の原発は、当初は輸入品だった。米国から「ターンキー方式」で導入された原発が福島第一原発であり、1号機から3号機まで連続してメルトダウンを起こしたのは偶然ではない。

加えて、今から40年以上も前に建設された原発は、今では使用できない可燃性のケーブルが使われていたり、地震想定などが極めて甘かったり、圧力容器や格納容器やコンクリート材の材質が悪いなど、安全性に重大な問題がある原発ばかりである。

これをさらに長期運転するとしたら、安全性はどうやって確保するのか。その責任を負うのが規制委だ。しかし、原子炉等規制法に定める運転期間を超える運転を経産省が許可しても、規制委が厳しく審査するというのだが、信じることはできない。

新たな規制方針は30年目に高経年化評価を行い、その後は10年ごとに稼働できるかどうか審査するとしている。しかしこの方法は震災以前に行っていた高経年化評価と同様のサイクルである。内容はいまだ分からないが、今の20年延長運転許可でさえ、可燃性ケーブルのままだったり地震・津波・火山対策の評価が甘いなどの問題がある。これが抜本的に変わるなどは、今の規制委の姿勢では考えられない。

一方、運転期間の延長に際し、諸外国では運転期間の制限を設けていないと主張する人には、では日本ほど地震や津波の脅威がある原発が世界にどれだけあるのかと問いたい。また、日本の原発はすべて海に面して建てられており、海沿いの原発では常に塩分の影響を強く受けているので、劣化も早い。一度海水が炉心まで浸入すれば使用不能になる。

日本以外でも海岸立地の原発はあるが、加えて地震の影響を受けている原発はほとんどない(台湾くらい)。

原発から30キロ圏内に90万人を超える人々が住んでいる原発もない。さらに日本海側の場合、豪雪の影響も受ける。これは避難路を断ち、外部電源系統を遮断し、救援も阻むリスクがあるが、これらがすべて重なっている原発は日本以外には存在しないのである。

このような現状に対し、規制委は60年超の規制緩和について予め反対しないことを決めていた。

原子炉等規制法には明確に40年+20年を原則として明記されているにもかかわらず、それを超える期間運転することを認める経産省の方針を、利活用を決めるのは規制委ではなく経産省であるとして、規制委は関与しないとしているのだ。

安全神話により原発震災を引き起こしたことを反省して運転期間を最長でも60年に制限することで老朽原発の持つリスクを減らそうとしたにもかかわらず、これが規制ではなく利活用方針の変更であると勝手に決めて更なる延長を認めること自体が規制側の責任放棄だ。

現在でも規制委が「規制の虜[注]」(国会事故調委)となり、機能不全に陥っているのに、さらに運転期間を延長することを認めてしまうのだから、その姿勢は厳しく批判されなければならない。(つづく)

[注]「規制の虜」とは、規制当局の側よりも規制される側が専門知識や情報を有していることで、規制側が事業者の言いなりになり、規制そのものが機能しなくなることを指す。それを排するためには、規制側にも高い知識と能力が求められるが、20年運転延長問題の時にも審査書及びそれに至る審査会合で事業者の主張がまかり通るケースをしばしば見てきた。

本稿は『季節』2023年春号(2023年3月11日発売号)掲載の「『原発政策大転換』の本命 60年超えの運転延長は認められない」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

◎山崎久隆「原発政策大転換」の本命 60年超えの運転延長は認められない
〈1〉唐突に原発推進が目玉政策に
〈2〉原発の運転延長の狙うものはなにか
〈3〉規制委も「規制の虜」に

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ── 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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河井案里さんが当選無効となり、筆者もその再選挙に立候補した参院選広島2019を舞台とした河井夫妻による大買収事件。中国新聞の9月8日付けの報道によると、黒幕はやっぱりこの方でした。そう、故・安倍晋三さんです。

2023年9月8日付け中国新聞

◆「安倍さんから」はリップサービスではなかった!

9月8日、中国新聞が河井克行受刑者の「総理2800、すがっち500、幹事長3300、甘利100」というメモを2020年1月に検察が押収していたことを報道しました。安倍晋三さんら当時の自民党幹部が現金を河井夫妻側に提供していた、ということです。

買収資金の出どころは、政党交付金を原資とする河井案里さん陣営への1.5億円の振り込みなのかどうか、ということも論議を呼びました。しかし、その1.5億円ではなく、現金を政府・自民党幹部からもらった上で、それを買収資金に充てていたことが明らかになったのです。

筆者の知り合いにも「安倍さんから」と言われてお金をもらってしまった議員(その後辞職し、不起訴)もいます。その「安倍さんから」というのはリップサービスではなかったことの傍証に、このメモはなります。

おさらいしますと、参院選広島2019では、改選数2の自民党現職の溝手顕正さん、野党系現職(立憲、国民、社民推薦)の森本しんじさんに対し、自民党が執行部主導で元県議の河井案里さんを擁立しました。案里さんは元々、ご本人も国政への野望は強く、県議としての選挙区であった安佐南区以外でもよく筆者(参院議員か知事を念頭に政治活動をしている)とイベントなどで鉢合わせしました。そのことにも便乗して安倍晋三さんが、個人的なうらみのある溝手さんを落としにかかったというのが地元での大方の見方でした。従って、安倍さんらがお金を克行受刑者に渡したことは全く不思議ではありません。

安倍さんの狙い通り、案里さんが当選し、溝手さんが落選。しかし、ご承知の通り、案里さんは夫の克行受刑者とともに逮捕、有罪となり、当選無効になったわけです。

◆安倍晋三さん暗殺でやっと出てきた?

しかし、なぜ、今頃になって、そんなメモがあったことが明らかになったのでしょうか?もちろん、中国新聞記者の金権腐敗打破へ向けた粘り強い努力があったのは事実です。

しかし、一方で、「安倍晋三さんが亡くなった今だから出せた。」のではないかという疑念がぬぐえないのです。家宅捜索があった2020年1月はまだ安倍晋三さんが現役の総理でした。そして、案里さんが猶予付き有罪判決を2021年1月に受けそれを受け入れて翌月当選無効になった時も、2021年6月に克行受刑者に地裁で実刑判決が出た段階では前総理とは言え、まだ隠然たる影響力を党内で持っていました。

当時は、安倍晋三さんへの忖度が検察にも働いていたのではないか?検察は、安倍晋三さんをお金の原資提供の容疑で調べるべきだったのにしなかったのです。

そして、むしろ、当初は不起訴となったお金を受け取った地方議員らの起訴へエネルギーを割くことになります。2022年1月28日に多くの議員が検察審査会(不起訴処分を不満とする多くの市民の申し立てを受けて)により「起訴相当」になります。この時点でも安倍さんはまだご存命で、もちろん、絶大な影響力をお持ちでした。

◆不自然だった河井夫妻の「潔さ」

もうひとつ、疑問点がありました。河井夫妻が意外とあっさり議員を辞めたことです。2021年初の時点では、正直、案里さんも、克行受刑者も、たとえ地裁で有罪になっても、控訴して、それこそ、最高裁で有罪が確定するまで議員でいて給料をもらい続けるのではないか?という予測が当時は強かったのです。ところが、あっさりと、両者は判決を受け入れたのです。

これは、裁判が長引けば、上記のメモに書かれていたような安倍晋三さんに都合が悪い「余計なこと」を案里さんや克行受刑者もしゃべってしまうリスクがあったからではないのか?

そこで、安倍晋三さんの影響力が強かった自民党中央サイドから「いい加減にしとけよ」という圧力が河井夫妻にあった可能性は否定できません。夫妻の不自然な「潔さ」はその傍証です。

◆検察の忖度が安倍さんの命を奪う皮肉な結果

しかしながら、安倍晋三さんが亡くなられた今となっては、検証は難しくなってしまいました。検察は、2020年1月当時、名前がメモに上がった安倍さんらから事情を聴くことはしませんでした。なぜ、安倍さんの生前に、安倍さんを追及しなかったのでしょうか?イスラエルと比較しても日本の検察の異常さは明らかです。

イスラエルでは、安倍晋三さん同様に政治を私物化していたネタニヤフ被告人が現職総理のまま起訴されています。妻のサラ元受刑者も安倍昭恵さんと似たことをしていましたが、有罪になり、罰金を払っています。

なお、ネタニヤフ被告人はいったん、野党共闘に打倒されましたが、政権を奪還後、イスラエルの司法を、日本のように行政に忖度するようなものに改革しようとしています。日本の司法が悪いお手本になっています。

それはそれとして、日本では憲法上、国務大臣の訴追は総理の同意なしには無理です。安倍さんが自分の起訴に同意することはあり得ませんが、起訴する構えを見せるべきだったのではないか?あるいはひょっとしたら、さすがの日本国民も怒りが爆発し、安倍さんは総理退陣に追い込まれ、退陣後に検察は安倍さんを逮捕できたかもしれません。いずれにせよ悔やまれます。

正直、安倍さんが国葬なんてされる対象ではなかったことがさらに明らかになったでしょう。いや、そもそも、むろん、検察が本気を出して安倍さんを逮捕していれば、山上被告人に暗殺されることもなかったでしょう。安倍さんは刑務所の中の可能性もあるし、出所していても選挙の応援演説なんて誰も頼まないでしょう。

今回の安倍さんが黒幕だったという趣旨の報道を受けて、お金を克行受刑者にもらって辞職した元議員は「悪いことばかりして結局天罰が下ったのではないか?」と吐き捨てました。

◆検察の「暴走」と「不作為」

既報の通り、検察は対地方議員ではこの事件で暴走しました。

当初、検察は、「先生を起訴することはないから」と議員に対して「お金のわいろ性を認める」供述を誘導したのです。また、克行受刑者の裁判に当該議員が証人として出廷するときも、検察に都合のよい証言するよう、口裏合わせをしていたのです。

しかし、お金をもらった側が不起訴になったことに、当然、市民の不満が高まり、検察審査会に申し立てが行われ、起訴相当の議決が出ます。検察もそれを受けて議員を起訴したわけですが、議員は議員で怒るのも当然です。

もちろん、信念があるなら、克行受刑者を起訴するための検察の捜査の段階で、わいろ性を否定する答弁をしておくべきだったということは言えます。自分だけ助かって、克行受刑者を陥れることに検察と共謀したという批判ももちろんあります。こうした議員たちの行動はお金をもらったことも含めて決して褒められたものではありません。だが、検察のやり方は強引でした。

また、当初からわいろ性を認めなかった議員に対しては、お金を政治資金収支報告書に載せないように求めた。そして、そのことを今度はやり玉に挙げて「政治資金収支報告書に載せてないからわいろの認識があった」と主張する。そんなだまし討ちを検察はしています。そして、裁判所も検察の言うことうのみです。

起訴されて、地裁では有罪判決を受け、高裁に上告中のある現職議員は筆者に対して「検察の前では人権がないことがよく分かった。」と憤慨していました。

一方で、当時の安倍総理に対しては忖度していたのです。暴走と不作為。これが検察の問題です。

◆暴走する岸田総理や県知事・市長を救う効果も

さらにうがった見方をすれば、今頃になってこんな情報が出てきたことは、安倍さんが悪であることを今頃になって印象付けて、岸田総理を相対的に持ち上げる、政治的な効果もあるのです。岸田総理がマイナンバーカード問題なども含めてピンチだからこそ、「安倍さんは悪だった」ということで目をそらすことができます。

もうひとつは、今回の事件で起訴された市議や県議の多くが、市議会では松井一実市長、県議会では湯崎英彦知事に批判的な保守系の議員が多かったことです。広島では新自由主義で暴走する市長や知事に対して、立憲民主党の方がべったりの地方議員ばかりです。そして、自民党・保守系の方がむしろ中には批判的な議員もそれなりにおられるという皮肉な状況があります。

例えば中央図書館の強引な移転には、共産党と並んで保守でも克行受刑者からお金をもらった議員が反対している場合が多かったのです。そうした中で、市長や知事に批判的な人が打撃を受けたことで、市長や知事の暴走が加速している感があります。もし、事件がなければ、共産党+一部の保守という構図で暴走を止められた課題もあったかもしれない。しかし、共産党もお金をもらった人とは絶対に組めません。結果として市長や知事の思い通りの展開になります。

いずれにせよ、検察の動きは、結局、総理、知事、市長という時の権力者のためになっている。そのことが、河井事件で改めて見えてきたことではないでしょうか?

袴田事件でも明らかになった検察や司法の在り方の問題。改革は一朝一夕にはいきません。しかし、常に疑いの目を向けていく。このことが大事ではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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目玉政策の「原発の運転延長」とは、どのような仕掛けだろうか。それは2022年12月23日付けの原子力関係閣僚会議作成「今後の原子力政策の方向性と行動指針」に記載されている内容で分かる。

まず、「運転期間の延長など既設原発の最大限活用」として、以下の項目が設定されている。

「運転期間の取扱いに関する仕組みの整備」 「立地地域等における不安の声や、東電福島第一原発事故を踏まえて導入された現行制度との連続性、技術的な新陳代謝の確保等にも配慮して、現段階における仕組みとしては、引き続き運転期間に上限を設けることとする」とし40年規制が生きているかの印象を与えている。

これは、原子炉等規制法改正時に20年の延長申請ができる規定を設けた際に、例外的として延長を認めながら、美浜3、高浜1・2、東海第2の延長を次々に許可してきた規制委の現状を見れば形骸化することは明らかだ。

この結果、既存の原発はすべて60年超運転を行おうとする。延長の条件としてあげているのは、「電力の安定供給の選択肢確保への貢献、電源の脱炭素化によるGX推進への貢献、安全マネジメントや防災対策の不断の改善に向けた組織運営体制の構築」だという。

前の2つは、そもそも原発政策の大転換をもたらした所与の条件である。これらの事情がなくなったと認めるときには期間延長を止めるのかというと、そんなことはありえない。一度決めてしまえば、ずっと延長を認めることになるから、条件ではなく延長する理由を書いているにすぎない。

「延長を認める運転期間については、20年を目安とした上で、以下の事由による運転停止期間についてはカウントに含めないこととする」との記載こそが延長期間の定義だが、あまりにもあいまいで、どうとでも導き出せてしまう。

具体的に指摘する。

その1「東日本大震災発生後の法制度(安全規制等)の変更に伴って生じた運転停止期間(事情変更後の審査・準備期間を含む)」について

原子炉等規制法の改正法は2012年9月19日に、条文の多くが施行されているが、特定重大事故等対処施設(特重)については5年間の猶予が設けられていて、その間に短期間再稼働した原発もある。

では基準日は2017年9月以降を指すのか、判然としない。震災で止まったものはその日だとしたら、制度改正までの空白期間はどう考えるのか。

計算可能な最大期間を取れば東海第2が震災で止まって以降動いていないので2011年3月11日を基準日とすると、仮に2024年9月に再稼働をした場合13年6月を加算して実に73年6月も稼働することができるということになる。

その2「東日本大震災発生後の行政命令・勧告・行政指導等に伴って生じた運転停止期間(事業者の不適切な行為によるものを除く)」について

事業者の不適切な行為以外で、行政機関が「運転停止」を命じたり、指示したりするなどあり得ないし、できない。法律の根拠もなく、そのようなことをしたら訴訟になるだろう。

これまでの経過で考えられるのは浜岡原発が民主党政権時代に菅直人首相の要請で停止したことくらいだが、これもその後、炉規法改正によって止まっているのだから、わざわざこんな規定を設ける理由がない。これは意味がわからない規定だ。

その3「東日本大震災発生後の裁判所による仮処分命令等その他事業者が予見しがたい事由に伴って生じた運転停止期間(上級審等で是正されたものに限る)」について

脱原発を目指す訴訟による差止(本訴では勝訴しない限り止められないし、それで止めた例はないが、仮処分の場合は即時止めることができる)への対抗手段として出てきたものだ。しかし上級審で覆されたとしても、いったんは司法の場で差止の判断が成されたことを、遡って事実上訴訟の効力がなかったことにしようとするものであり、三権分立の司法権への侵害で違憲だ。(つづく)

本稿は『季節』2023年春号(2023年3月11日発売号)掲載の「『原発政策大転換』の本命 60年超えの運転延長は認められない」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

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〈1〉唐突に原発推進が目玉政策に
〈2〉原発の運転延長の狙うものはなにか

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たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ── 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

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岸田政権にはまったく理性がありません。原発の四十年越え運転のみならず、60年越え運転まで認めてしまいました。岸田最悪政権によるとんでもない判断により、日本で再び原発事故が発生する可能性は、さらに増してしまいました。

 

『季節』2023年秋号

福島第一原発事故被害者の厳しい現実(生活破壊・甲状腺がんなどの健康被害)を、この国の政府やマスコミは全力で隠蔽しようと血道を上げています。東京五輪開催やリニアモーターカーの建設、そして軍事費の倍増が、被災地の復興と関係があるでしょうか。まるで原発事故などなかったかのように、政権やマスコミは虚飾にまみれた日常を演出しています。意図的に原発事故の忘却を進めようとする連中の行為は、原発事故を引き起こした人間たちの責任と同様に極めて重大です。そしてあろうことか岸田最悪政権は「福島第一原発汚染水」(「処理水」と国やメディアは報じますが欺瞞です。「汚染水」であることに間違いありません)の海へ垂れ流し(海洋放出)を8月24日に国内外の圧倒的反対を無視して開始する暴挙に出ました。

個人の興味や趣向は様々で人間は多彩です。しかし、原発事故による被害はどんな人であろうと平等に襲いかかります。本誌をご覧の皆さんには当然の道理かもしれませんが、日本に住む多くの人は「原発事故が起きれば国家を失う一歩手前であった」2011年3月11日の経験を忘れさせられています。

今号では特集で、元京都大学原子炉実験所助教小出裕章さんと元福井地裁裁判長樋口英明さんに「原発問題の本質を論じる」対談をお願いしました。今日誰一人の例外なく、わたしたちが直面させられている「原発」や「戦争」の危機についてお二人には5時間以上にわたり対談していただきました。予定調和の対談ではありません。危機の時代にあって個人がどう考え、どう行動すべきか、への示唆がふんだんに盛り込まれた対談は必読です。

そして、読者の皆様に編集部からのお願いです。本誌は発刊以来、今日まで多くの皆様に支えられ発刊を続けておりますが、決定的な弱点があります。それは読者数が増加しないという現実です。これにはもちろんわれわれの努力不足もありますが、読者の皆様にもお力添えをいただけないでしょうか。まず本誌のご愛読者には一名で結構ですのでご友人かお知合に本誌の購読をお勧めいただきたくお願い申し上げます。あるいはご近所の図書館に、本誌の定期購読をお申込みいただくことも、読者増のためにはとても有益です。

自然の季節は移ろいますが、原発を巡る季節は好ましからざる停滞を強いられています。わたしたちはすべての原発廃炉が実現する日まで『季節』を発刊し続ける所存です。皆様のお力添えを重ねてお願いいたします。

2023年9月 季節編集委員会

〈原発なき社会〉を求めて集う
不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2023年秋号

通巻『NO NUKES voice』Vol.37
紙の爆弾2023年10月増刊
2023年9月11日発行
770円(本体700円)

《グラビア》真の文明は、海を荒らさず ── 福島の漁師と船上の民俗学者
「おれたちの伝承館」

《コラム》川島秀一(民俗学者)
海を回るもの 循環と放棄の違い

《インタビュー》小野春雄(福島県・新地町漁師)
海はつながっている。だから福島の漁師だけじゃなく、
全国の人たちが、人間として反対の声を上げてほしい

《対談》樋口英明(元福井地裁裁判長)×小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原発問題の本質を論じる
原発と戦争をなぜ止められないのか

《インタビュー》木幡ますみ(福島県・大熊町議)
転居八回当選二回
この十二年間でどれだけ暮らしが変わったか

《報告》尾崎美代子(西成「集い処はな」店主)
「おれたちの伝承館」ができるまで

《講演》コリン・コバヤシ(ジャーナリスト)
福島12年後 ── 原発大回帰に抗して【後編】
最新フランス原子力事情と日仏の原発回帰

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
原発事故は国の責任です
最高裁判所の判例変更を成し遂げるために

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
老朽化原発の安全確保の理屈が成り立たない理由

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
汚染水海洋放出(投棄)と反対運動 
 
《報告》原田弘三(翻訳者)
グレタ・トゥーンベリさんへの手紙

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
電気自動車(EV)は原発で走る

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
ジャニーズよ 永遠なれ

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
「不沈空母」タエタニップ号の沈没
~ヤマんト魂一本槍で沈没に突き進む米国隷属「会社主義」国家ニッポン

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子が語る世界〈21〉
文化に人権の香りがない国・日本

再稼働阻止全国ネットワーク
汚染水を海へ捨てるな!
原発再稼働反対! 福島第一原発大惨事忘れない
《女川原発》舘脇章宏(「ストップ!女川原発再稼働」意見広告の会)
女川原発再稼働に反対する意見広告=紙面デモにご協力を!
《福島》黒田節子(原発いらね!ふくしま女と仲間たち)
知っていますか? 汚染水は減っています!
《反原発自治体》結柴誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
「福島を忘れない」取り組みを再開! 原発推進法の実施許さない闘いを!
反原発自治体議員・市民連盟第一三回総会で闘う方針を決定
《常陽》渡辺寿子(元・核開発に反対する会)
高速実験炉「常陽」運転再開の意味するもの
《東海第二》志田文広(とめよう!東海第二原発首都圏連絡会)
11・18首都圏大集会に向けて
《汚染水》柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
東電本店合同抗議行動「汚染水の海へ投棄反対」で盛り上がる!
トリチウムなどを含む「処理水」は「陸上保管が望ましい」……経産省高官発言
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
「老朽原発うごかすな!」 闘いの報告と今後の闘い
岸田政権は「原発依存社会」に向かって暴走
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
島崎邦彦の責任を糾弾する
~原子力規制委員会地震学者初代委員長代理が今の日本をもたらした!
《読書案内》天野惠一(再稼働阻止全国ネットワーク事務局)
今田高俊・寿楽浩太・中澤高師『核のゴミをどうするか もう一つの原発問題』

反原発川柳(乱鬼龍 選)

書=龍一郎

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