剛腕・畠山隼人が倒された。
優心、渾身のヒジ打ちで逆襲ドロー。
真美、執念のS-1世界王座制覇。
◎NJKF 2023.4th / 9月17日(日)後楽園ホール17:25~20:55
主催:ニュージャパンキックボクシング連盟 / 認定:NJKF、ソンチャイプロモーション
◆第9試合 NJKFスーパーライト級タイトルマッチ 5回戦
第5代選手権者.畠山隼人(E.S.G/63.15kg)36戦21勝(11KO)13敗2分
VS
挑戦者同級1位. 吉田凛汰朗(VERTEX/63.35kg)23戦10勝(3KO)9敗4分
勝者:吉田凛汰朗 / TKO 2R 1:22 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗
5年に渡りNJKF王座に君臨する畠山隼人は昨年11月13日、第8代WBCムエタイ日本スーパーライト級王座決定戦で、真吾YAMATOを初回KO勝利で上位王座戴冠。
両者、ローキック中心の様子見の中、吉田凛汰朗の左ジャブが牽制パンチで軽いヒットだが畠山隼人の顔面を捕らえた。更にロープに詰めて連打。主導権を握りつつあったが、畠山の返しの剛腕左フックもあって深追いはしない。
しかし、第1ラウンド終盤、その畠山の左フックで吉田がノックダウン。足が揃って後ろに倒れたが、効いた様子はほぼ無い流れでラウンド終了。
第2ラウンドもパンチとローキックの攻防では吉田の勢いがある中、吉田の相打ち気味の左フックが畠山にヒットすると脚に来た畠山は後退。そこを逃さず、吉田が飛びヒザ蹴りでコーナーに追い込むと強烈な右ストレートで畠山がノックダウン。
目はしっかりしていたが、ヤバイといった表情。更なる吉田の右ストレート、左右フック連打で畠山が前のめりに倒れると、まだ意識はあって立ち上がるも多賀谷敏朗レフェリーはダメージを見て試合ストップ。畠山隼人は5年に渡るNJKF王座から陥落となった。吉田凛太朗は初戴冠。
VERTEX若林会長の喜びようは、これが満面の笑みかという表情で、「吉田と研究して練習重ねた結果が出せて良かったです!」と語っているうちに祝福に訪れる関係者にも応対。会場を去るまで忙しい様子だった。
◆第8試合 NJKFフライ級タイトルマッチ 5回戦
第13代選手権者.優心(京都野口/50.8kg)15戦6勝6敗3分
VS
挑戦者同級1位.谷津晴之(新興ムエタイ/50.8kg)16戦8勝(4KO)4敗4分
引分け 0-1
主審:椎名利一
副審:竹村48-48. 多賀谷48-49. 児島48-48
両者は2021年12月5日にもタイトルマッチで激突しており、優心が2-0の僅差判定勝ちで王座初防衛(暫定から正規へ)。
初回、両者のローキックでの様子見から、谷津晴之がパンチを加えた前進が目立つも、優心も冷静に対抗し、互角の攻防が続く。
第3ラウンド半ば、優心が谷津の蹴り足を抱えて2歩以上前進しての蹴りで、椎名利一レフェリーの「再三の注意に従わず減点」という裁定を受けてしまう。漠然と見ている側からすれば、あっけなく見える中断ではあったが、さほど流れは変わらない展開は続く。
第4ラウンドには組み合った展開で優心のヒジ打ちが当たったか、谷津が鼻血を流す。接近戦での蹴りとパンチの攻防が続き、第5ラウンドには優心が減点を撥ね返すTKOを狙ってのヒジ打ちで谷津の左眉尻がカット。
パンチで打ち合いに出る谷津との攻防が激しくなるが、少ない観客席でも会場が大声援で盛り上がって終了。減点がなければ僅差ながら勝利を導けた流れも引分けに終わった優心。辛うじて2度目の防衛成った。
優心は「谷津はリベンジでグイグイ来てたんで、どうやってテクニックで往なすかがポイントでした。減点は“あ~取られるんや”という感じ。焦りました!」
最終ラウンドは「ヒジ打ちで切りまくろうかなと。その攻勢で印象点取れればいいかなと思いました!」と語った。
◆第7試合 S-1レディース世界ライトフライ級(-48.98kg)王座決定戦 5回戦(2分制)
セーンガン・ポー・ムンペット(タイ/49.78→49.68kg=計量失格、減点2)58戦41勝17敗
VS
ミネルヴァ・ライトフライ級選手権者.真美(Team lmmoRtaL/49.25→5回目で48.96kg)
17戦13勝(3KO)4敗
勝者:真美(=まさみ) / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:椎名46-48. 多賀谷45-50. 児島47-48
セーンガンはSEA Games(東南アジア競技大会)2022年マレーシア大会銀メダリスト
セーンガンは前日朝11時計量開始5分前の予備計量で790グラムオーバー。30分ほどで100グラム落としたが、そこで諦め陣営が棄権を申し出た。すぐに水を飲み始めたセーンガン。リミットまで落とす気が無いのか、諦めるのが早い印象。
対する真美も270グラムオーバーで、ジャケットを着て縄跳びを始めた。10分ほどで本計量に臨み、100グラムほど落ちたが、そこからスムーズには落ちない。結局1時間ほど掛かった5回目でリミットを20グラム下回る計量パス。両者ともスンナリいかない計量だったが、タイトルマッチ成立を懸けて踏ん張った真美。試合もこんな踏ん張りが活きそうな雰囲気は漂った。
しかしセーンガンは19歳ながら戦績豊富で、「パンチと蹴りをバランスよくこなす強い選手で、真美は楽勝とはいかないだろう。」という関係者の前評判だった。
試合はセーンガンが先手の蹴りから入るが、真美も怯まず前進し、パンチから蹴りと首相撲に入っても組み負けずヒザ蹴り。セーンガンの蹴りにキレや重さは感じられないが、要所要所で的確に印象点を導く上手さはあった。真美が主導権を奪った流れの印象は強いが、タイで行なわれていれば難しい採点の流れだったかもしれない。
真美は「今日、世界チャンピオンになったんですが、まだまだ上を目指していきたいと思います。」と語った。世界チャンピオンになって更に上を目指すとは何を指しているかは、まだ数ある最高峰への通過点であることだろう。
◆第6試合 54.5kg契約3回戦
NJKFバンタム級3位.嵐(キング/54.2kg)11戦9勝(2KO)1敗1分
VS
NKBバンタム級1位.海老原竜二(神武館/54.45kg)27戦14勝(7KO)13敗
勝者:嵐 / 判定3-0
主審:竹村光一
副審:椎名30-27. 多賀谷30-28. 中山30-27
海老原竜二は、2021年にNKBバンタム級王座決定トーナメントを制し、第9代チャンピオンとなったが、昨年10月29日、森井翼(テツ)にTKO負けを喫し王座陥落。
開始から両者蹴りの様子見。海老原竜二はローキックで距離を保ってハイキック。嵐はフェイント掛け、タイミングずらした右ストレートから連打、海老原にプレッシャーを与える。
素早いヒザ蹴りで海老原のボディーを攻めると効いた様子で後退、一気に攻める嵐だが、掻い潜って凌ぐのが上手い海老原。更に蹴りからパンチのコンビネーションで立て直すも、嵐の右ボディブローヒット。
圧倒する嵐は次第に攻め切れなくなる流れで手数が減り、海老原の蹴りとパンチのコンビネーションの勢いを許してしまうが、ポイントを失う流れは許さず大差判定勝利を拾う。嵐はノックアウトしたい思惑はあるものの、倒せない反省を述べていた。
◆第5試合 61.0kg契約3回戦
NJKFライト級1位.HIRO YAMATO(大和/60.9kg)28戦13勝(4KO)12敗3分
VS
NJKFスーパーフェザー級5位.龍旺(Bombo Freely/60.85kg)8戦6勝(2KO)1敗1分
勝者:龍旺 / 判定0-2
主審:児島真人
副審:椎名28-29. 多賀谷28-28. 竹村27-30
HIROは昨年5月21日、NJKFスーパーフェザー級王座奪取も階級変更で後に返上。
初回から両者のパンチと蹴りの様子見から組み合って崩しやヒザ蹴りはHIROの圧力がやや優ったが、最終ラウンド残り4秒で龍旺の左ストレートがヒットでHIROがノックダウンを喫してしまう。立ち上がるも時間切れ。HIROは惜しいポイントを失った。
◎第8代NJKFスーパーバンタム級チャンピオン、日下滉大が引退テンカウントゴングに送られる。
リング上で「キックを続けて来れたのは自分がビビりで強さに憧れて来たんだと思う」ということ、そして「4度目の挑戦で王座奪取出来たことで続けて来て良かったです!」としっかり語った。
◆女子エキシビジョンマッチ2回戦(2分制)
泉あお(-無所属-) EX小倉えりか(DAIKEN THREE TREE)
◆第4試合 スーパーフェザー級(-58.967kg)3回戦
NJKFスーパーフェザー級10位.コウキ・バーテックスジム(VERTEX/58.7kg)
10戦4勝5敗1分
VS
匠(キング/58.65kg)5戦3勝(2KO)1敗1分
勝者:匠 / 判定0-3 (27-30. 27-30. 28-30)
◆第3試合 アマチュアOver40ミドル級(-72.57kg)2回戦(2分制)
森直樹(DAIKEN THREE TREE/71.05kg)
VS
榊秀則(元・NICE MIDDLEミドル級C/笹羅/71.95kg)
引分け 1-0 (29-29. 30-29. 29-29)
◆第2試合 85.0kg契約3回戦
NJKFスーパーウェルター級2位.佐野克海(拳之会/84.1kg)19戦11勝(6KO)6敗2分
VS
福士“赤天狗”直也(天狗工房/82.5kg)1戦1敗
勝者:佐野克海 / KO 1R 0:45 / テンカウント
◆第1試合 65.0kg契約3回戦
上杉恭平(VALLELY/64.45kg) 3戦1敗2分
VS
崚登(新興ムエタイ/64.85kg) 2戦1勝1分
勝者:崚登 / TKO 2R 3:03 / カウント中のレフェリーストップ
(戦績はプログラムより、この日の結果を含みます。)
《取材戦記》
ロッキーのテーマ曲に乗って入場した畠山隼人。結構インパクトあり、実績が伴う選手が入場するとしっくりくる名曲である。ロッキーのテーマは永遠の入場行進曲でしょう。
タイトルマッチにおける王座交代劇は衝撃的な悲壮感と歓喜に湧くドラマがあります。こういうチャンピオンシップ制度はやはり必要で、過去にも使った文言ですが、王座目指す挑戦権争奪戦と、王座をより長く防衛する努力や、強いチャンピオンから王座奪取する交代劇を今後も見たいものです。
真美の計量は女性だけに難しさがありました。身に纏う上着を量って、それを着て秤の出た目からその分を差し引く流れ。JBCならもっとスムーズにやっているだろうなという印象。計量会場となったキングジムには笑顔で入って来た真美だったが、僅かが落ちない苦悩は可哀想な状況。でもこれがプロの義務と厳しさでしょう。
次回、NJKF本興行“2023.5th”は11月12日(日)夕刻、後楽園ホールで開催予定です。
11月19日には岡山県倉敷市マービーふれあいセンター『NJKF拳之会主催興行21th~ NJKF 2023 west 5th ~』が開催予定です。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」