私は冤罪事件というと狭山事件の石川一雄さん、袴田事件の袴田巌さん、和歌山カレー事件の林真須美さん、それぞれの支援運動の末席におらせてもらい、そして原発反対運動の中で滋賀の仲間から西山美香さんのことをその都度教えてもらって、この国ではそういうことが警察、検察、裁判所の手によって起こっていることを知ってきました。
その私にとっても、尾﨑さんのレポートは驚きの連続でした。これだけの「取材」をされたご苦労を感心します。
読んだ感想というか、一言で言って日本の警察、検察、裁判所の悪どさ、というのでしょうか。別にこれら司法に関わる人々は「正義の人」でもなんでもない、権力を自らの手に持ちながら、自らの出世に汲々とする普通の大人だということでしょうね。
同時に、戦前からの歴史の中で、敗戦という事態の中で何一つ変化することもなく制度として明治以来の権力機構としての体制が維持され、「おい!こら!」の精神で、とりわけ組織防衛にその忠義心を投入することを暮らしの生業とする人たちなんだと改めて思いました。
日本の権力機構が、裁判所も含め、軍隊を除いて(自衛隊が生まれるまでの事ですが)、戦前の機構をそのまま残して戦後の政治の中で生き残ってきた、人的にも戦前、戦後が連続的に維持されてきたという私なりの想いをある意味確認する書でもありました。
「冤罪」は、こんな支配体制のもとであれば、その体制を維持するために、どんどん起こされていく。それがある意味、理の当然ではないでしょうか。こんな歴史の先に、私たちの未来はないとあらためて思います。
(松原康彦)
尾﨑美代子=著
四六判 256ページ カバー装 定価1760円(税込み)
「平凡な生活を送っている市民が、いつ、警察に連行され、無実の罪を科せられるかわからない。
今の日本に住む私たちは、実はそういう社会に生きている。」(井戸謙一/弁護士・元裁判官)
労働者の町、大阪・釜ヶ崎に根づき小さな居酒屋を営みながら取り組んだ、
生きた冤罪事件のレポート!
机上で教条主義的に「事件」を組み立てるのではなく、冤罪事件の現場に駆け付け、
冤罪被害者や家族に寄り添い、月刊『紙の爆弾』を舞台に長年地道に追究してきた、
数々の冤罪事件の〈中間総括〉!
8月に亡くなった「布川事件」の冤罪被害者・桜井昌司さんが死の直前に語った
貴重な〈遺言〉ともいうべき対談も収める!
【主な内容】
井戸謙一(弁護士/元裁判官) 弱者に寄り添い、底辺の実相を伝える
《対談》桜井昌司×尾﨑美代子 「布川事件」冤罪被害者と語る冤罪裁判のこれから
[採り上げた事件]
湖東記念病院事件/東住吉事件/布川事件/日野町事件/泉大津コンビニ窃盗事件/
長生園不明金事件/神戸質店事件/姫路花田郵便局強盗事件/滋賀バラバラ殺人事件/
鈴鹿殺人事件/築地公妨でっち上げ事件/京都俳優放火殺人事件/京都高校教師痴漢事件/
東金女児殺害事件/高知白バイ事件/名張毒ぶどう酒事件