凄いニュースなのに、大きなメディアではほとんど報道されない。既に死刑が執行された飯塚事件の再審請求審で、次々と死刑執行された男性が犯人でない可能性のある証拠が出ているのに。話題にならないとは?

32年前福岡県飯塚市で女児2人が失踪、翌日遺体が発見された飯塚事件、私はこの事件を詳しく見ていなかったが、今回改めて調べてみた。事件発生から2年後久間三千年さんが逮捕。久間さんは一貫して否認していたが、2006年最高裁で死刑が確定、そのわずか2年後2008年に死刑が執行された。

実は同じ年、飯塚事件で用いられたDNA鑑定と同じの手法で実施されていた足利事件のDNA鑑定が間違っているのではないかと問題になっていた。(実際足利事件の菅家さんは2009年4月にえん罪と判明した)。久間氏の死刑執行はそれが判明して1週間後だった。

2009年10月28日、久間氏の遺族は福岡地裁に第一次再審を請求。足利事件のDNA再鑑定を行った大学教授による鑑定書を新証拠として提出した。しかし2014年福岡地裁は再審請求を棄却、2018年福岡高裁も即時抗告を棄却し、最高裁も特別抗告を棄却した。

2021年7月9日、遺族は第二次再審を請求した。新たな証拠として、事件当日、後部座席に女児を乗せた車を目撃した男性Aさん(74歳)の証言が出された。Aさんは、2023年5月31日、非公開の証人尋問のあと、弁護団とともに実名・顔出しで会見に応じた。Aさんは、女児2人が失踪した日、女児を後部座席に乗せた白いワンボックスタイプの車を目撃したと証言した。運転していたのは、久間さんではない、30~40歳位、色白、5分刈の短髪、頬身の体形だったという(当時久間さんは50歳)。女児の一人は恨めしそうな今にも泣きそうな表情だったという(20年あと女児の写真を見たAさんはあの時の子だと確認する)。

実はAさんは、ニュースで女児2人が行方不明になったことを知り、すぐに警察に通報していた。2月26日か27日に事情を聴きにきた警察官に、Aさんが見た白い車と運転していた男の話をした。しかし、警察はAさんに「紺色のワンボックスカーではないか」と聞いたという。

3月2日、女児らの遺留品発見現場の近くで久間さんの車と特徴が似ている車を見たという男性Bさんが現れた。つまり、2月26日か27日にAさんに「紺色の車ではないか」と聞いた警察は、その証言者が出てきた3月2日前から犯人は紺色のワンボックスカーに乗る人物と目星をつけていたことになる。久間さんの車はそれと同種だった。Bさんの供述は3月9日以降「車種はトヨタや日産ではない」「後輪がダブルタイヤだった」「ガラスにフィルムを貼っていた」など、どんどん久間さんの車と細部が似ている供述にかわっていった。捜査員は、最初から久間さんを犯人ときめつけていたのだ(それには理由があるが、ここでは省く)

しかも、そのAさんは気になり、その後久間さんの初公判を傍聴した。前から2列目の席からだ。被告人席には、白い車に乗っていた男とは別人の久間さんがいて、驚いたという。

実は2月15日、再審請求審の三者協議でまたまた新たな証拠が出された。女児2人が失踪した日、通勤途中に登校中の女児2人を見たという、実質、被害者の最後の目撃者だった女性が、当時の証言を翻し、「(女児を)見たのは別の日で、その日は見ていないと伝えたが、捜査員に『いや見たんだ』と押し切られたという事実だ。証言を「翻す」というより、捜査員に見ていないと伝えても『いや見たんだ』と押し切られていたことを明らかにしたということだ。

これは実によくあることだ。京都俳優放火事件で無期懲役を下された平野義幸さんは、自宅の2階で火災が発生、前日から泊まりにきていた彼女が2階にいる。あれこれ消火活動を行った平野さんだが、表に出て周囲に助けを求める。一方、平野さんは何度も燃えさかる家に入り、彼女を助けようとする。

しかし、それ以上中に入ったら、平野さん自身が危ないと考えた近所の人たちが「このままではよし君(平野さん)が危ない」と皆で平野さんの背後から「膝カックン」して倒したりした。よくケンカするなどで、評判がそうそうよくなかった平野さんだが、近所の人たちは必死で平野さんを守ろうとした。そのことを警察に話したが、判決は平野さんが何もせず、彼女を見殺したかのような内容になっている。

あるいは、姫路の花田郵便局強盗事件で犯人とされたジュリアスさんは、ジュリアスさん所有の倉庫は、昼間鍵がかけられず、誰でも入れた状態だったのに、裁判ではジュリアスさんしか鍵を開けれなかった、ほかの人は入れなかった、だから倉庫内に盗んだ現金などを隠せたのはジュリアスさんしかいないとされた。のちに倉庫の貸主の女性が、「入口は開いてて、誰でも入れた」と証言している。

桜井昌司さんが「逆えん罪」と称した、西成の女医矢島祥子さんの不審死事件では、取り調べられた彼女の関係者の話を直接聞いたことがある。仕事を休んで警察にいくと、捜査員から「矢島さんは自殺したんだが……」云々で始まる調書を取られたという。知人女性は矢島さんの死が自殺とは思えないため、何度そう言われても否定していた。しかし、「矢島さんは自殺したんだが……」を認めないと取り調べが終わらない。彼女は何度も警察に呼ばれ、そのたび仕事を休まざるを得ない。仕方なく、最後はその調書にサインしたという。

それにしても、この冤罪事件はどう決着つけるのか? 久間さんはもう国に殺されている。

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

 

悠の入場シーン、雄叫びを上げて気合いを入れた入場

まだ新人でも、ここまで来る間に入門から多くが振り落とされる長い道程。
チャンピオン目指す悠は4勝目でランキング入り確定。

◎DUEL.29 / 2月4日(日)GENスポーツパレス18:00~19:28
主催:VALLELY / 認定:NJKF

◆第6試合 スーパーフライ級3回戦

悠(=吉仲悠/VALLELY/ 52.15kg)9戦4勝4敗1分
     VS
清水健人(白龍/ 51.8kg)6戦6敗
勝者:悠 / TKO 2ラウンド1分32秒
主審:椎名利一

下がり気味の清水健人にやや手を焼いた悠。第2ラウンドにパンチで牽制して攻勢を掛け、コーナーに追い込みパンチ連打で倒した。清水は立ち上がろうとするもカウント中にレフェリーストップされ終了。

悠は「ちょっとやり辛かったですけど、2ラウンド目に相手が前に出て来たので、そこでパンチの打ち合いに持って行って倒せたので良かったです!」と感想を述べてくれました。

VALLELY米田貴志会長は「清水にステップワーク使われて攻め難かったところはありましたけど、もっとガツンとインパクトある勢いで倒せればよかったですね。」と語った。

悠が前蹴りで牽制、距離感を掴みパンチに繋いでいく

インターバルで米田貴志会長のアドバイスを聞く悠

◆第5試合 72.3kg契約3回戦

風成(エス/ 71.15kg) 2戦1敗1NC
        VS
木戸翔太(テツジム関西/ 71.75kg)3戦2勝(1KO)1分 
勝者:木戸翔太 / TKO 1ラウンド2分14秒
主審:宮沢誠

蹴りからパンチのアグレッシブな展開から木戸翔太の強い右フックで風成がノックダウン。再開後も木戸がラッシュを掛け、再び右フックで崩れ落ちた風成。

すぐ立ち上がるもレフェリーストップと成り、あっけなく負けとなった風成は呆然とした表情も負けを受け止めリングを下りた。木戸翔太はテツジム関西から出場で今日が誕生日、41歳になった。

「オヤジも頑張れるんで、オヤジのアマチュアキック団体の強さ見せたいと思います!」とマイクでアピールした。

木戸翔太が右ストレートで威嚇、ノックアウトへ繋いでいく

マイクを持った木戸翔太、関西弁で元気に語った。今日誕生日でした

◆第4試合 63.0㎏契約3回戦

須貝孔喜(VALLELY/ 63.0kg)5戦2勝(1KO)3敗
        VS
関龍之亮(士道館植野/ 63.0kg)3戦2勝1敗 
勝者:関龍之亮 / 判定3-0
主審:児島真人          
副審:椎名26-30. 井上26-30. 宮沢26-30

パンチ打ち合いに繋がる至近距離の主導権争いが続き、第2ラウンドには関龍之亮がハイキックをヒットさせて徐々に攻勢を維持する流れ。

悠と同じVALLELYジムの須貝孔喜、インターバルで米田会長のアドバイスを聞く

終始打ち合いの間合いは続き、第3ラウンドには関が連打でノックダウンを奪うと須貝は立ち上がるも更に関が連打で追い、時間はほぼ無い終了手前に連打で2度目のノックダウンを奪う。

立ち上がったところで試合終了となるところが、ゴングを鳴らすタイミングが遅いが為、更に追撃を貰ってしまう須貝。打ち合いは須貝の逆転のチャンスもある流れで好ファイトとなった。

終盤に関龍之介が攻勢を掛け、右ストレートが須貝孔喜にヒット

ラウンドガールとツーショットは勝利者の特権、関龍之介のポーズ

◆第3試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級3回戦(2分制)

YURIKO・SHOBUKAI(尚武会/ 52.1kg)7戦4勝2敗1分
        VS
MIKU(K-CRONY/ 52.05kg)4戦2勝2敗
勝者:YURIKO・SHOBUKAI / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名29-28. 児島30-28. 宮沢30-28

蹴り中心の攻防からパンチも加わっていく中、第2ラウンドに効果的なYURIKOの右ストレートヒットでMIKUがノックダウン。最終ラウンドはMIKUが次第に立て直すも差を縮めるに至らず終了。

終盤はMIKU(右)も盛り返したが、ノックダウン奪ったYURIKOが(左)が勝利

女子キックはYURIKOが判定勝利

◆第2試合 ライト級3回戦

渡部瞬弥(エス/ 61.05kg)8戦1勝6敗1分
      VS
属増壱(拳友会/ 60.95kg)1戦1分
引分け0-0 (29-29. 29-29. 29-29)

蹴りからパンチに繋ぐも効果的なヒットは無く、接近戦すれば首相撲からヒザ蹴りと鬩ぎ合う中、第2ラウンドに渡部瞬弥が取り、第3ラウンドに属増壱が取り返す三者同一採点の引分けとなった。

◆第1試合 スーパーバンタム級3回戦

古山和樹(エス/ 55.3kg)3戦1勝2敗
      VS
久住祐翔(白山道場/ 54.9kg)2戦2敗
勝者:古山和樹 / 判定3-0 (29-28. 30-28. 30-29)

第1ラウンド、久住祐翔のパンチで古山和樹が右眉尻をカットし、2度のドクターチェックを受けるが続行可能、手数で巻き返した古山和樹が判定勝利。

《取材戦記》

最終試合でTKO勝利した悠は今回が4勝目で、これでNJKFのランキング入りは確定するという。昭和時代も“4勝で5回戦昇格”というシステムはありましたが、層が厚いと即ランキング入り出来る訳ではなかったでしょう。

ランキング10位以内に入れない選手は、いわゆる“ノーランカー5回戦”でした。現在は団体乱立していて一団体だけでは人材不足でランキングも埋まらない現状。更に“5回戦昇格”という文言も使えないほど3回戦制が定着してしまっている現状である。

2003年10月25日、北海道札幌市出身の悠は本名が吉仲悠(よしなか・ゆう)。地元の佐藤友則が運営するGRABSジムに小学校3年生で入門し高校1年生でプロデビュー。2戦して高校卒業後上京。米田貴志氏が運営するVALLELYジムに移籍。佐藤友則氏と米田貴志氏の関係は共に小国ジム所属で2000年代の同時期に活躍した選手である。

悠は昨年9月28日のDUEL.28で徹平(ZERO)に判定負けの後、12月10日にはジャパンキックボクシング・イノベーション興行で、JKIランカーの亜々斗(井上道場)にパンチ連打で効果的に攻め判定勝利と調子を上げています。

悠の「今後NJKFフライ級チャンピオンになるので宜しくお願いします!」というアピールはリング上やインタビューで発言しているので、その自信で実現目指していくことでしょう。米田貴志会長も「先ずNJKFチャンピオンには成れると思います!」と不安は無さそうでした。

この団体のチャンピオンとなった場合の先からが真の日本チャンピオンへ真価を問われる存在となるので頑張って貰いたいものです。

過去にも述べていますが、正月は昭和時代なら豪華カードやタイトルマッチが揃った時代でした。現在は正月はコロナ禍の影響もあってかプロ興行も休む傾向があり、今年も静かな年明けでした。

その中で、最近は無名のイベントを追うこと多く、アマチュアやプロ新人戦の中からテーマを拾っていますが、ここにも埋もれた実力者が居る。負け込んでいても突然化ける選手も居る。そんな閃いたテーマから選手やイベントは、今後もあらゆる視点で追っていきますが、それなりに御注目ください。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

おばんです。ちょっと言わせてください。あのですね、大阪万博をこのまま強行すれば、東京五輪の時以上の過労死者や自殺者がでますよ。新国立競技場の現場で若い現場監督が自殺したではないですか? 現場監督は、大きな現場の全体を把握してないと勤まらない。店に来る職人さんが少し大きな現場に入ると、監督が良いか悪いか、よくわかると言います。今日ある場所でコンクリ打ちするからミキサー車が入るというのに、入る予定のゲート付近に、ほかの業者が資材を山積みしているなんてことがあるそうです。「何やってんだ!ミキサー車来てるぞ、早く片づけろ!」と怒鳴り声が飛ぶわけです。

これは福島第一原発の収束・廃炉作業の現場を知るなすびさん(被ばく労働ネットワーク)も言ってました。福一の現場ではそれこそ毎日多種多様な作業が行われています。ある工事を行う作業員が現場にいくと、別の作業をやっている人たちがいて、自分たちはそれが終わるまで、被ばくしながら待たなくてはならないとか……。

広い現場の全体を把握できる人間がいないということです。しかも万博の現場、なかで作業が遅れているのを見せたくないためか、周囲をぐるりを囲む大屋根が先にできましたが、そうすると、中の工事に資材を搬入するなどの作業がやりにくい、やりにくい。違いますか?

◆ゼネコンの人間は、コンクリ打ったり、鉄骨組んだりできません

あと、万博の建設現場に中に入るゲートが少ないですね。以前、大阪の堺市で大きな電気関係の工場現場があったのですが、誰も行きたがらない。何故かというと、現場へ入るゲートが一本しかないため、行き帰り、とくに早く帰りたい帰り道、ゲートが混んで混んでなかなか出れないらしい。職人さんはキツイ仕事終えて早く一杯やりたいので、現場から戻るのに何時間もかかる現場はいきたがらない。
 
あと、皆さん、万博は大手ゼネコンが請け負うから、優先的に仕事が進むはずと考えていませんか? ゼネコンの竹中、大林に勤める人間がとつぜんコンクリ打ったり、鉄骨組んだりできませんよ。現場で働くのは下請けの作業員、その人数は限られていますよ。その人たちを奪い合うわけですよ。

さっき言ったように、キツイ仕事終わったら早く帰りたい、いっぱい飲みたい、風呂浸かってゆっくり休みたいと思うのが普通でしょう。だって人間だもの……(相田みつお風)。

誰が、帰りに何時間もかかる現場に行きたいと思いますか? 例えば、釜ヶ崎で、手に専門職をもたず、穴掘りなど土工の仕事しかできない人でも、当然ですが、労働者としての「誇り」があります。

阿倍野ハルカスの現場に穴掘りの土工さんとして入った人でも(失礼な言い方ですが、この人たちがいないと現場は始まらない)、「ママ、あのハルカス造ったの、俺だぜ」と自慢するのです。

それが、造っても半年ほどで解体する万博の現場に、「おれ、すごいだろう」と自慢して入れる人はどれくらいいますか? それなら、「能登に行って仮設住宅作って、えらい喜ばれたわ」という現場の方がナンボやりがいがあることか?

だから万博の現場に人は集まりません。首に縄着けて引っ張っていくのなら話は別ですが……。それでも金借りた、昔親方に世話になったなどの理由で現場に行かざるを得ない人、めっちゃ大変ですわ。私だったら単価が多少安くても能登の片づけ作業、解体作業そして仮設住宅造りにいきますわ。

だって、人として、人のためになることをやりたいじゃないか(相田みつお風)。


◎[参考動画]【万博間に合う?】「手が足りない」「めっちゃ急かされる」建設作業員たちの本音 工期遅れで残業やむを得ない状況も…大阪・関西万博の会場建設の現状(MBS NEWS 2024/02/11)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

◆ガラス固化体の地層処分を押しつける「科学的特性マップ」

ガラス固化体埋設立地点については、日本のどこが「適地」であるかを示す地図が2017年9月に経産省により公開された。これを「科学的特性マップ」という。

 

[全国]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

しかしこの地図に科学的根拠は乏しい。200万分の1という荒い地図では、適地と判断した理由はほとんど分からない。機械的に海岸線から一定の距離に線を引き、火山エリアとして火口周辺15キロを除外した程度にしか見えない。活断層に至っては長さの100分の1の幅を除外したというのだが、何の根拠もない。

例えば、三浦半島が全域「好ましい地域」とされているように見えるが、ここには関東大震災を引き起こした断層があり、多くの活断層が半島を切り裂いている。一体どうして「適地」になるのか。

糸魚川静岡構造線(糸静線)がある新潟県糸魚川市姫川付近も「適地」とされている。糸静線はフォッサ・マグナの西縁にあたり西南日本と東北日本が現在の位置に移動した時に形成された大断層である。「糸静線の北端は新規の断層により北側が500㍍以上落ち込んでおり、『糸魚川』地域の海岸付近における糸静線は地下深部に埋没されていると推定」そして「現在も傾動隆起の傾向」(産総研2017)とされている。つまりずっと活動を続けている。こんな地域が「適地」なはずがない。

この地図は結局地層処分を前提として、どこが良いかといっているに過ぎない。そのような仕掛けで立地地点の自治体に立候補させたり、全国的な議論を巻き起こそうとしても不可能だ。

[北海道]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

[東北]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

[関東・中部]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

[関西・近畿・中国・四国]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

[九州・沖縄]科学的特性マップ(出典=経産省資源エネルギー庁)

◆「地層処分」とは何か

ガラス固化体は、強い放射線を出すため、人間の環境から10万年以上隔離しておかなければならない。そこで「多重バリアシステム」という仕組みで隔離する。

この多重バリアは、ガラス固化体と金属製容器(オーバーパック)と緩衝材(容器を包む粘土)の組み合わせで形成される「人工バリア」と周囲の地層により遮蔽する「天然バリア」からなる。

放射性物質とガラスを混ぜて固めれば放射性物質の漏えいが防止でき、オーバーパックは約1000年間は地下水とガラス固化体の接触を防ぎ、腐蝕した後は緩衝材と天然バリアが放射性物質の地下水への漏えい、環境中の移動を押さえるとされる。

しかし10万年規模の遮蔽性能など実験で確認できるわけもなく、さらに地層の天然バリアに至っては、仮説の域を出ない。

原子力発電環境整備機構(NUMO)は地層処分を行う公益法人だが、そのホームページでは地下深部について「物質を長期にわたり安定して閉じ込めるのに適した場所」として埋め捨てを合理化している。

埋め捨てを国の方針としたいきさつについて、ある論文から紹介する。「1999年11月に日本原子力研究開発機構が原子力委員会に提出した『わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性・地層処分研究開発第2次取りまとめ』では、地質環境・工学技術・安全評価の3つの観点から日本でも地層処分が可能であるとした。

それを受けて、2000年6月に『特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律』が成立し、10月には処分事業の実施主体として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。

『第2次取りまとめ』は日本の地質環境について、地震・断層活動、火山・火成活動、隆起・沈降・浸食、気候・海水準変動を検討し、『将来10万年程度にわたって十分に安定で、かつ人工バリアの設置環境および天然バリアとして好ましい地質環境がわが国にも広く存在すると考えられる』と結論した」(学術の動向「変動帯の日本列島で高レベル放射性廃棄物地層処分の適地を選定できるか?」石橋克彦2013より)。(つづく)


◎[参考動画]“核のゴミ”全国適正マップ 初の一般向け説明会(2017/10/17)

◎山崎久隆 核のごみを巡る重大問題 日本で「地層処分」は不可能だ
〈1〉震災後も核燃料サイクルが残った
〈2〉再処理工場は稼働できない
〈3〉科学的根拠に乏しい経産省「科学的特性マップ」の異常さ
〈4〉放射性廃棄物「地層処分」を白紙にし、本当の議論を

本稿は『季節』2023年冬号掲載(2023年12月11日発売号)掲載の「核のごみを巡る重大問題 日本で『地層処分』は不可能だ」を本通信用に再編集した全4回の連載記事です。

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

『季節』2023年冬号

〈原発なき社会〉を求めて集う
不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2023年冬号

通巻『NO NUKES voice』Vol.38
紙の爆弾2024年1月増刊
2023年12月11日発行 770円(本体700円)

2024年の大転換〈脱原発〉が実る社会へ

《グラビア》
「東海第二原発の再稼働を許さない」11・18首都圏大集会(編集部)
福島浪江「請戸川河口テントひろば」への道(石上健二)

《インタビュー》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
必要なことは資本主義的生産様式の廃止
エネルギー過剰消費社会を総点検する

《インタビュー》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
「子ども脱被ばく裁判」と「311子ども甲状腺がん裁判」
法廷で明らかにされた「被ばく強制」 山下俊一証言のウソ

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
【検証】日本の原子力政策 何が間違っているのか〈1〉
無責任な「原発回帰」が孕む過酷事故の危険性

《報告》木原省治(「原発ごめんだ ヒロシマ市民の会」代表)
瀬戸内の海に「核のゴミ」はいらない
関電、中電が山口・上関町に長年仕掛けてきたまやかし

《報告》山崎隆敏(元越前市議)
関電「使用済燃料対策ロードマップ」の嘘八百 ── 自縄自縛の負の連鎖 

《インタビュー》水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
反原発を闘う水戸喜世子は、徹底した反権力、反差別の人であった
[手記]原発と人権侵害が息絶える日まで
       
《インタビュー》堀江みゆき(京都訴訟原告)
なぜ国と東電に賠償を求めるのか
原発事故避難者として、私が本人尋問に立つ理由

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
原発賠償関西訴訟 提訴から10年
本人調書を一部公開 ── 法廷で私は何を訴えたか?

《報告》平宮康広(元技術者)
放射能汚染水の海洋投棄に反対する理由〈前編〉

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
「核のゴミ」をめぐる根本問題 日本で「地層処分」は不可能だ

《報告》原田弘三(翻訳者)
「気候危機」論の起源を検証する

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
汚染水海洋放出に対する闘いとその展望

《報告》佐藤雅彦(ジャーナリスト/翻訳家)
フクシマ放射能汚染水の海洋廃棄をめぐる2つの話題
映画になった仏アレバ社のテロリズムと『トリチウムの危険性探究』報告書

《報告》板坂 剛(作家・舞踊家)
再び ジャニーズよ永遠なれと叫ぶ!

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
山田悦子の語る世界〈22〉
甲山事件50年目を迎えるにあたり
誰にでも起きうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか〈上〉

再稼働阻止全国ネットワーク
岸田原発推進に全国各地で反撃中!
沸騰水型の再稼働NO! 島根2号、女川2号、東海第二
《東海第二》小張佐恵子(福島応援プロジェクト茨城事務局長/とめよう!東海第二原発首都圏連絡会世話人)
《福島》黒田節子(原発いらね!ふくしま女と仲間たち/「ひろば」共同代表)
《東京》柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
《浜岡原発》沖 基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
《志賀原発》藤岡彰弘(命のネットワーク)
《関西電力》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
《中国電力》高島美登里(上関の自然を守る会共同代表)
《川内原発》向原祥隆(川内原発二〇年延長を問う県民投票の会事務局長)
《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)

反原発川柳(乱鬼龍 選)

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私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

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政治評論家の本澤二郎さんがご自身のブログ「日本の風景」(2024年02月09日)で月刊『紙の爆弾』を紹介してくれました。以下、同記事を転載させていただきます。(編集部)

◆鹿砦社『紙の爆弾』はタブーなしの国民向けの月刊誌

「ろくさいしゃ」と読むそうだが、現物を見るまではよく分からなかった。その本物の雑誌が自宅に郵送されてきた。さっそく日刊ゲンダイでも「コメントが出た時は知らせてほしい」という、なんともうれしいファンに電話した。心が美しく優しい女性であるT君に、年に一度は電話して無事を確かめ合っている仲だ。先日電話に出なかったので、気になっていた。昨日はつかまえてほっとした。

彼女には、関西で生活していた、彼女にも似た優しい妹思いの兄が一人いた。2年前にコロナを心配して妹の様子を確かめようとして上京した。当時、彼女はコロナに感染していて自宅で寝込んでいた。念のため兄も診断するため病院に行った。これが兄妹の最期の別れとなってしまった。コロナ利権で笑いが止まらない製薬メーカーや医師会、関係行政官僚と打て打てと発破をかけてきた議会人の責任が問われている。それにしてもこんな悲劇も珍しい。兄はそこで入院し、妹の住む実家に戻ることができなかった。コロナワクチンが人を殺すことなど、多くの庶民はいまだに知らない。

悲劇は誰にでもどこにでも起きる。自分もそんな人間の一人だが、T君もまた運命の人だったのか。寂しくてカルト教団に引きずり込まれていないか、今も心配ではある。

念のため鹿砦社の電話番号を教え、よかったら買って読んで、と頼んでみた。こんなことは初めてのことだが、この『紙の爆弾』は、国内で発行されている雑誌の中ではぴか一ではないかと判断したからである。推薦してくれた青木泰さんに感謝したい。130ページの紙面には、詐欺まがいの広告が全くない。それに言論の自由を放棄したような新聞雑誌の日本だというのに、タブーがないのが最大の特徴であろう。この国の言論界は、編集者泣かせのタブーがいっぱい詰まっている。この雑誌にはそれがないのだ。編集人にとって最高の出版社といえる。

思い出した。以前、鹿砦社の責任者から「本を書け」とボールを投げてきてくれたことがあった。当時は日中友好の旅や中国人学生の講義を引き受けたり、日本の若者を南京や盧溝橋に案内したりしていて時間が取れなかった。多忙を口実に失礼してしまった。猛省しきりである。

◆『紙の爆弾』3月号は国民の知るべき内容がびっしり

国際ジャーナリストの藤原肇さんも『紙の爆弾』に書いたという知らせを受けたこともあったのだが。振り返る必要もない事実だが、国民のための読売新聞や日本テレビなどを乗っ取った渡辺恒雄は、もういないといっていい。彼が読売新聞を制圧するや、誰も見たことも聞いたこともない改憲論を公開したり、中曽根内閣が誕生すると、まるで自身が天下を取ったかのようにはしゃぎまわって「中曽根新聞」に変身させた。

そのナベツネの時代も終わったと繰り返したい。糧道を断たれた筆者も元気に生きている。パソコンに「本澤二郎の日本の風景」を毎日打っているではないか。恩師である宇都宮徳馬さんを裏切って「忘恩の徒」と断罪されたツネはいなくなった。

日本新聞協会・日本記者クラブも変わるだろう。変わらねばならない。NHKにも、もはや「岩田明子」のような○○記者は生まれない。公共放送に変わらなければ、解体されるだろう。

A級戦犯の岸内閣は、読売の正力松太郎と連携して危険すぎる原子力発電所を、巨大地震国の狭い列島にハリネズミのように建設した。それを中曽根康弘が継承した。財閥のための経済政策は、利権そのもので、岸の孫の安倍・清和会を通じて、日本を亡国の淵に追い込んでしまった。宏池会の岸田文雄も、この軍事経済に傾斜した安倍・軍拡に背乗りしたもので、第二の3.11に怯える日本国民も哀れすぎよう。

『紙の爆弾』3月号では、日米言論界が強引に「泡沫候補」にしているロバート・ケネディJrの躍進ぶりを書いている。彼の台頭に多くの国々の人々は拍手喝采している。アメリカンリベラリストと無党派層・若者を結集するであろうから、ワシントンは行儀がよくなるに違いない。彼が政権を担当すれば、いずれ沖縄の米軍基地も消えるだろう。

安倍や高市らの「台湾有事」は、改憲軍拡のための危険すぎる策略であるが、そのことも表紙の見出しから記事化されている。大阪万博は安倍の東京五輪利権に代わる、安倍の維新向けの利権行事に過ぎない。直ちに中止すべきであるが、このことも遠慮なく言及している。

◆「能登半島の志賀原発が危ない」に共鳴する核汚染ごみで泣く房総半島の市民

表紙をめくると、脱原発専門の季刊雑誌を発行している。すごい。国民の目線にぴったりと合っているのではないか。原子力マフィアに鉄槌を加えるのであろう。

人間が操作できない原子力発電所は、作ってはならない。それを建設する輩は、まさに「今だけ自分だけカネだけ」の利権屋でしかない。国民は誰でも知っている。日本国民と憲法の名において、原発は有害無益である。筆者は日頃から「帆船日本丸」を説いているのだが。

次ページのグラビアも見事な編集に拍手したい。能登半島の志賀原発は、あやうく第二のフクシマになるところだった。原子力マフィアの規制委が再稼働に踏み切る寸前だったという。

全然知らなかったことだが、今回の能登半島地震で陸地が隆起し、高波に表れて住宅が倒壊した「珠洲原発」が、地元の住民の反対で2003年に凍結されていた! 関西・中部・北陸の利権にまみれる電力会社が強行していたら、間違いなくここも第二のフクシマを再現したであろう。

珠洲市など能登半島の理性の反対運動に、この機会に心から敬意を表したい。原発推進者の正力松太郎は、確か北陸の人間だと記憶している。日本に原発を持ち込んだ岸信介にほれ込んだ人物、政界では「サメの脳みそ」と俗称されてきた利権屋のドンである森喜朗その人である。市民は手の届かない高級老人施設に入って、分厚い高級ビフテキを平らげる森も、ナベツネ同様に車いす生活。

悪党の天下を終わらせる正義の言論『紙の爆弾』に栄光あれ、である。核汚染ごみと足尾の鉱毒に羽交い絞めにされている房総半島から、連帯の声援を送ろうと思う。

出る杭は打たれるが、出過ぎた杭は打たれない。青木本から学んだ教訓である。

2024年2月9日記(日本記者クラブ会員・反骨ジャーナリスト・政治評論家)

◎本澤二郎の「日本の風景」(5069)より転載

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

『紙の爆弾』2024年3月号

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ISF独立言論フォーラム編集長の木村朗さんから、動画出演の依頼を頂いたのは昨年11月だ。元鹿児島大学で教授をされてた木村さんは、その後ジャーナリストとして、様々な平和問題に携われ、同フォーラムでそれぞれの運動に携わる方々を取材した動画を公開している。

私の場合、拙著『日本の冤罪』のなかから、一つ一つの事件について木村さんからインタビューを受けることとなった。ちなみに木村さんは、鹿児島大学に赴任中、冤罪・志布志事件の支援に関わっておられたそうだ。

1回目(昨年)は、『日本の冤罪』の冒頭に掲載された桜井昌司さんとの対談と「布川事件」、そして木村さんからのリクエストで「高知白バイ事件」についてお話させて頂いた。全4回にわかれていますが、何しろこうした取材は初めてなので、不慣れなしゃべりとなっております。

2回目(2月7日収録)では、「湖東記念病院事件」について話して下さいとリクエストを頂いた。その際、木村さんから「ちょっとわかりにくい点があるんです」と何点か質問を頂いていた。木村さんが質問された内容は、たしかに本著では書ききれていない。本著の記事については、湖東記念病院事件の主任弁護士の井戸謙一弁護士に最終確認はしているが、字数の関係などで全て書き切れておらず、なかなかわかりにくい点があった。

木村さんの質問になるべく答えるべく、収録までの数日間、私は必死でそれまでの関係資料を読み込んだ。特に読み込んだのは、動画内で紹介している『冤罪をほどく “供述弱者”とは誰か』(中日新聞編集局 滋賀・呼吸器事件取材班デスク秦融氏)だ。この事件が「冤罪」であると社会的な世論が高まる前に、西山さんのご両親から西山さんの手紙をみせてもらった中日新聞記者らが「彼女は犯人ではないのではないか?」と思ったところから、取材は始まった。

表紙にある「私は殺ろしていません」という文字に表れているように、送り仮名に間違いはあるものの、西山さんは患者さんを殺害していないことを、手紙で必死に綴ってきた。そこから、取材班は家族、弁護団と連携しながら、刑務所内での精神鑑定を実現し、西山さんに軽度の知的障害や愛着障害があることを解明していく。そして、西山さんの自白調書が滋賀県警の山本誠刑事に恣意的に作成されたことを……。山本誠刑事の劇画チックかつ盛りに盛りすぎた調書が全く嘘であったことがばれていく……。

そんなお話をさせて頂きました。ぜひ、ご視聴をお願いいたします。


◎[動画]日本の冤罪(2)湖東記念病院事件~再審無罪後も続く警察・司法の違法な追い打ち~[前半]独立言論フォーラム(ISF)


◎[動画]日本の冤罪(2)湖東記念病院事件~再審無罪後も続く警察・司法の違法な追い打ち~[後半]独立言論フォーラム(ISF)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◎鹿砦社HP https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000733

2024年の春闘が本格化しています。岸田総理の選挙区で筆者の地元・広島でも連合広島は2月5日春闘をスタートさせました。

連合広島の大野真人会長は8日には、各経営者団体などに対し、「デフレ経済からの脱却には、労働者の7割を占める中小企業や非正規雇用の労働者の賃上げが重要」とし、「2023年を上回る5%以上」の賃上げを要請しました。

こうした中、筆者もよく利用するスーパー「ハローズ」(本社・福山市)が4月から全社員の基本給を3万円引き上げると発表しました。ハローズさんは物価の高騰の中、従業員の生活を支援する、としています。

この20-30年、まさに労働者虐待政治とでもいうべき状況が続き、日本の労働者の実質賃金は主要国でも唯一伸びていないという有様です。一人当たりGDPではイタリアに抜かれ、日独伊のいわゆる第二次世界大戦のいわゆる枢軸国でも最下位になってしまいました。そもそも、「賃金が伸ない」というのは、通常は失礼ながら内戦が続いたアフガニスタンやリビアなど、いわゆる失敗国家状態の国の現象であり、日本のような戦争も革命も起きていないような国で起きること自体が異常です。

こうした中で、韓国や中国よりは緩いとはいえ少子化の激化、外国人労働者も日本を敬遠し、日本人でも若手女性を中心に海外へ流出するなどの現象もみられます。こうした中で、賃金を上げていくこと自体は大いに結構です。連合広島は、筆者も2000年~2011年の広島県庁在職時代は組合員でもあり、筆者は連合OBでもあります。鹿砦社刊『労働貴族』の中でも苦言は呈してきましたが、そうはいっても、OBとして労働者のために頑張っていただきたい。筆者は、現在は「広島県労連」系広島自治労連の幹部を拝命していますので、お互いの持ち場で労働者のために頑張っていきたいものです。

今回の春闘では、とくに中小企業の賃上げを、大手企業が発注単価の引き上げという形で支援するという構造も連合広島はつくりたいとのこと。これは、大手企業に組合を持つ連合広島にがんばっていただくことが実現への必要条件です。

◆置きざりにされる介護労働者 賃上げ2.5%

しかし、介護福祉士として介護現場で働く筆者は、自分自身も含めて、介護労働者が置き去りにされていることに危機感をおぼえます。

すなわち、厚生労働省が1月に発表した2024年度の介護保険についての省令では、介護労働者の給料は2024年度2.5%、2025年度2%というベースアップを想定しています。

ただでさえ、介護労働者の月給は、全産業平均より4万円低い状態(2022年12月現在)です。そのことを背景に、2022年はついに初めて介護分野から労働者が流出超過となってしまいました。このままでは、さらに全産業平均と介護労働者の格差は拡大してしまいます。

広島では、介護分野では外国人労働者も流出しています。いったん広島に配属された「特定技能」の外国人労働者も、東京の給料が広島より高いと知れば、結局東京へ行ってしまう。その繰り返しです。東京の介護施設に行く場合もあれば、それ以外の業種へ行く場合もあります。

今回の春闘2024を経て、4月以降、その傾向が激化することは間違いありません。

◆報酬本体引き下げの訪問介護は崩壊の恐れ

特に危機的なのは「訪問介護」です。在宅で過ごしたいという高齢者や障がい者の皆様に不可欠です。もし、「訪問介護」がなくなれば、ご家族が仕事や勉強を犠牲にして要介護のご家族を介護せざるを得なくなります。今でも深刻ないわゆるビジネス・ケアラー(仕事をしながら介護)、ヤング・若者ケアラー問題が大変なことになります。ヘルパー不足は高齢者・障がい者だけの問題ではなく、社会全体の問題です。

しかし、広島都市圏も含めた一部の地域では、人手不足から事業者がサービス提供をお断りするケースも続出しています。若い人もなかなか介護、とくに訪問介護で働こうとせず、職員=ホームヘルパー自身の多くが後期高齢者という事業所もあります。それこそ、ヘルパーがぶっ倒れてお年寄りが救急車を呼ぶという、笑い事ではない事態も発生しています。そして、2023年には訪問介護事業者の倒産・廃業が過去最悪を記録しました。

原因は、あまりにも低賃金で労働基準法違反が横行していることです。例えば、本来、労働基準法では労働時間に入るべき移動時間や待機時間、キャンセル発生なども労働時間に入らず、給料をもらえない実態があります。その原因は、あまりも介護報酬が低いために適切な給料を事業者が払えないからです。厚生労働省は、きちんと給料を払うように、と通達を出すだけで、有効な対策を取らないできました。

そうした中で、2024年度からの報酬改定では「平均的に見ると訪問介護は儲かっているから」という理由で、報酬をカットされてしまいました。利益が出ている事業所もありますが、そうではない苦しい事業所も多いのです。平均値だけを見て、報酬カットとは言語道断です。

◆ホームヘルパー国賠訴訟、控訴審で介護現場の惨状認定 ボールは総理の手に

そこで、現役のホームヘルパー3人が、国を相手取って、介護保険制度が違法であるとして、損害賠償を求める裁判を2019年11月1日に東京地裁に提起しました。2022年11月1日、東京地裁は原告の訴えを全面的に退ける不当判決。原告は東京高裁に控訴し、2024年2月2日、控訴審判決が言い渡されました。

判決は、賃金未払いなどの問題が解決されていない「訪問介護員の現状(権利侵害)」に言及し、「賃金水準の低さとこれを一因とする慢性的な人手不足が長年にわたり問題とされながら、いまだ問題の解消に至っていない」状況を認めました。損害賠償請求そのものは認められませんでしたが、介護現場の惨状を司法が認定した形です。

司法が事実を認定した以上、ボールは為政者である総理の手にあります。岸田総理は、今回の東京高裁の判決を受け、厚労省に対して訪問介護報酬カットの撤回、そしてさらなる抜本的な介護労働者の給料アップを指導するとともに、今からでも、2024年度予算案にしかるべき修正をすべきです。

そもそも、介護保険制度では介護サービスの維持が難しいというなら、さらなる国費投入もすべきです。また、介護保険制度導入の前は、訪問介護は、広島市では市の公社が、東京23区でも公務員ヘルパーが担っていた時代がありました。特にサービス提供が民間では困難な地域では、公務員としてヘルパーを雇い、サービス提供を保障することも選択肢とすべきです。

◆総理は「日本だけが大損」の「軍拡・台湾介入」より「介護現場防衛」を

岸田総理に申し上げたい。台湾有事に備えた軍拡のために、社会保障費を削るなどやめていただきたい。また、少子化対策と称した、社会保障支出カットも止めていただきたい。

そもそも、米国でさえ、中華人民共和国が中国を代表する政府と認めています。何かあってもせいぜい武器を中華民国=台湾に送るだけで米国自身が表で闘うなどあり得ません。そんな中で、国共内戦の延長に日本が首を突っ込み、中華人民共和国への敵基地攻撃でもした日には、それこそ、中国への侵略と受け取られ、中華人民共和国による日本の侵略への反撃と称した日本攻撃の口実を与えるだけです。日本には平和的な問題解決を言い続けるしか選択肢はないのです。「日本だけが大損をする」台湾有事介入。そしてそれに備えた軍拡などおやめなさい。選挙区・広島も含めた介護現場の崩壊を防いでください。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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3月16日に初陣興行が控える中、昨年8月の全日本キックボクシング協会設立後、3度のアマチュア大会が行われています。

元・日本ライト級チャンピオン飛鳥信也さん出場。昨年からのこの大会での栗芝貴代表と飛鳥信也さんは、目黒ジムの原点と全日本キックボクシング協会の原点回帰が重なる再会でした。

本日のベストファイト賞は伊藤健翔(左)と飛鳥信也(右)、トロフィーを贈呈する栗芝貴代表(中央)

◎全日本キックボクシング協会第3回アマチュア大会
 1月28日(日)稲城ジム14:00~16:15(全イベント終了時)
 主催:稲城ジム /

◆第1試合 ジュニア(中学生以下)Dクラス 34.0kg以下 2回戦(1分制)

海老原琉偉(岡田道場)vs 古山風愛我(TAKADA KBA)
勝者:古山風愛我 / 優勢判定 (審判三者支持数不明)

第1試合、ジュニアDクラス34.0kg以下勝者、古山風愛我。レフェリーは竜哉さん

◆第2試合 ジュニアDクラス 34.0kg以下 2回戦(1分制)

佐々木空(岡田道場)vs GENSEI(TAKADA KBA)
引分け(審判三者支持数不明)

◆第3試合 一般男子Dクラス 52.0kg以下 2回戦(1分制)

横尾空(稲城)vs 佐藤寿輝也(スクエアーアップ)
勝者:横尾空 / 優勢判定3-0

◆第4試合 一般男子Cクラス 86.0kg以下 2回戦(90秒制)

義斗(Kick Boxing fplus)vs 山下大樹(ウルブズスクワッド)
勝者:義斗 / TKO(RSC)2ラウンド

◆第5試合 一般男子Cクラス 55.0kg以下 2回戦(90秒制)

伊藤健翔(IDEL)vs 藪祥基(スクエアーアップ)
勝者:伊藤健翔 / 優勢判定3-0

◆第6試合 一般男子Eクラス 55.0kg以下 1回戦(1分制)

小堀海凪(岡田道場)vs 横山潮音(稲城)
引分け三者三様

◆第7試合 一般男子Cクラス 62.0kg以下 2回戦(90秒制)

藤本KID(TAKADA KBA)vs 早川悠太(ウルブズスクワッド)
勝者:早川悠太 / TKO(RSC)2ラウンド

◆第8試合 一般男子Dクラス 62.0kg以下 2回戦(1分制)

吉田秀介(稲城)vs 田所匠(相模原burn)
勝者:田所匠 / 優勢判定0-3

◆第9試合 一般男子Dクラス 66.0kg以下 2回戦(1分制)

森谷一貴(スクエアーアップ)vs 望月一斗(相模原burn)
勝者:望月一斗 / 優勢判定0-2

◆第10試合 一般男子Dクラス 70.0kg以下 2回戦(1分制)

ダイチャン(team彩)vs 立花俊太
引分け1-0

◆第11試合 一般男子Dクラス 64.0kg以下 2回戦(1分制)

飛鳥信也(目黒・新宿スポーツ)vs 熊田真幸(スクエアーアップ)
勝者:飛鳥信也 / 優勢判定3-0

元・日本ライト級チャンピオン、飛鳥信也の攻勢、熊田真幸を下す

戦う指導者、飛鳥信也さんの現役時代同様のアピール

◆第12試合 一般男子Aクラス 58.0kg以下 3回戦(2分制)

高橋巴俉(スクエアーアップ)vs 吉田鋭輝(team彩)
勝者:吉田鋭輝 / 優勢判定0-2

◆第13試合 一般男子Dクラス 86.0kg 2回戦(1分制)

木村健太(JTクラブ)vs 山下大樹(ウルブズスクワッド)
勝者:山下大樹 / 優勢判定0-3

被災地に仮設住宅を建設中から上京、山下大樹の蹴りで攻勢

山下大樹勝利、レフェリーは勝本剛司。この日は竜哉氏と親子でレフェリーを務められた

◆第14試合 一般男子Cクラス 55.0kg以下 2回戦(90秒制)

伊藤健翔(IDEAL)vs 横山潮音(稲城)
勝者:伊藤健翔 / TKO(RSC)1ラウンド1分16秒

顔は隠れたが、勝負を決定付けた伊藤健翔の右ストレートヒット

伊藤健翔の右ストレートヒットで横山潮音を倒す

《取材戦記》

キックボクシング系プロ各団体等でアマチュア大会が活発である。乱立はするものの交流も活発で、アマチュア大会で実績を残してプロ出場資格を得る選手もいるでしょう(プロテストも有ります)。

創価大学丈夫会でキックボクシングを指導している飛鳥信也氏は、前回12月17日に引分けた熊田真幸と再戦。新人枠ではないオヤジファイトに近いが、前回はEクラスとして1分のみの1ラウンド制。今回はCクラスとして2回戦でした。熊田真幸に勢いで圧されても相手をしっかり見て打ち込む有効打とバランスの良さが優り、優勢支持を受ける判定勝利。全盛期には及ばなくても、経験値豊富な当て勘がありました。

試合後、いずれまた対戦するかもしれない熊田真幸と語り合う飛鳥さん。ディフェンスの大切さを伝授。「熊田さん次は更に上手くなって来てやり難くなるかもね!」と言いながら試合が楽しそうだった。

栗芝貴代表に健闘を称えられて飛鳥信也、熊田真幸のスリーショット

第13試合の山下大樹は、能登の被災地で仮設住宅作っている中での出場だったという。ウルブズスクワッドジムは富山にあるジムで震源地には近いが、通信障害の影響で会長がなかなか連絡取れなかったとか。そんな参加で優勢判定勝利(2戦目)を得て、また被災地に戻って頑張っている模様です。皆、それぞれの事情を抱えながら出場しているのが常である。

プログラムと画像確認すると、山下大樹は第4試合にも出場して敗れているが、スタンディングダウンから早めのレフェリーストップでダメージは無かった模様。
最終試合でTKO(RSC)勝ちした伊藤健翔は、第5試合にも出場して藪祥基に優勢判定勝ち。

2試合終えて「久しぶりの試合で凄く疲れたんですけど、最後までセコンドの言うこと聞いて、ここまで信じて練習して来て良かったです。」と応えた。

全試合終了後に希望者参加のスパーリング大会が予定されていたが、二人組になっての前蹴りの避け方、ブロックと蹴りに入る練習、軽いマススパーリング、首相撲からの崩し方など栗芝貴代表が見本となる動作からタイ人トレーナーも加わって指導。小学生から成人まで入り混じっての練習となっていた。こういう底辺からプロへ育っていく過程は重要である。

そんな先を見据えてプロ初陣興行を控える栗芝貴代表は、「プロ興行はデビューする選手集められてスタートらしいスタートに向けています。年末に向けてタイトルマッチに準ずる試合まで進められたらいいですね。」と語る。そのプロを目指すアマチュア大会も競技の基礎固めとして開催が続きます。

昨年10月15日は41試合、12月17日は36試合行われていますが、今回は正月明けで参加数は少なかった様子でした。やっぱり正月は皆休みたいのか、国内ではプロ興行も少なかった感じがします。

3月31日(日)大森ゴールドジムで第4回アマチュア大会が開催予定で、今度は試合数も多く戻って来る様子です。

今回、稲城ジムを初めて訪れて、栗芝貴代表が行なうイベントの様子を窺って、見ておきたかったものは勿論、飛鳥信也さんの還暦を越えた動きと、3年後を見据えた全日本キックボクシング協会の姿でした。私の予想は殆ど外れるので今は何も語りませんが、悪しからずです。

試合後の公開練習、マイクを使って蹴りの指導する栗芝貴代表

◎全日本キックボクシング協会 https://www.ajkba.com/

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年3月号

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昨年10月に出版した、梓加依・著『広島の追憶 ── 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』の書評が、地元・広島の『中國新聞』(2024年2月4日付け)に掲載されました。ご一読ください。

書評 郷土の本 子ども時代に体験 被爆後の広島描く(評者=森田裕美)

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

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◆「近衛文麿」化したネタニヤフ、出口見えぬ戦闘

2月4日、広島パレスチナ連帯デモが行われました。

10月7日に、ガザ地区のハマス政権がイスラエル・シオニスト政権への越境反撃を行うと、シオニスト政権の首相・ベンヤミン・ネタニヤフ被告人[※]は、これに対して、ガザへの侵攻を開始。北部の住民に南部への避難を呼びかけながら、実際には南部にも侵攻し、狭い範囲に100万人が密集しているとも言われる状態の地域へ激しい空爆を加えています。2月5日現在で2万7365人が犠牲になっています。

[※]ネタニヤフ被告人は、日本の安倍晋三さんとほぼ同じことをしたとして、イスラエルの警察に書類送検され、起訴。首相のまま裁判を受けています。また、妻のサラ・ネタニヤフ元被告人は、安倍昭恵さんとほぼ同じことをしたとして、罰金刑が確定しています。

一方、イスラエル・シオニスト政権は、UNRWA(国連パレスチナ難民支援機関)に職員が10・7のハマス政権による攻撃に参加した疑惑があるとして米日政府などに通報。これを受けて米日などの政府はUNRWAへの拠出金を一時停止。シオニスト政権による攻撃に加えて、砂漠気候のこの地域には珍しい大雨、そして支援の遅滞が人々に襲い掛かっています。

また、ネタニヤフ被告人は2月5日現在、米国などの仲介工作に対しても「一切の取引に応じない」としています。これは、まるで、日中戦争の時、当時の大日本帝国首相の近衛文麿がナチス・ドイツのトラウトマンによる和平工作を蹴り、「蒋介石を相手にせず」と突き進んだことを想起させます。近衛は軍部の、ネタニヤフは連立相手の宗教極右のコントロールが効かなくなった状態です。

そうした中で、今度は、紅海を航行する船舶にイエメンのアンサール・アッラー政権が攻撃。米英軍がイエメンを攻撃。一方で、シリアやイラクを攻撃する米軍の基地が、攻撃を受け、米軍が報復するなど、あちこちに戦火も飛び火をし、予断を許さない状況です。

一方で、ICJがイスラエルに対して虐殺を予防するよう勧告を行いました。こうしたことを背景に日本を代表する商社・伊藤忠が防衛装備品の輸入におけるイスラエル企業との協業を停止することを発表しました。イスラエルへの包囲網も着実に狭まってはいます

◆広島では毎日17時半から原爆ドーム前集合

 

こうした中、広島では、イスラエルによるガザ大虐殺が始まって以来、原爆ドーム前で、米国人留学生レベッカさんの方らが呼びかけて、毎日17時半~スタンディングを行っています。筆者も、会社帰りのルートに原爆ドームがあるため、ちょうど時間があう場合には参加させていただいています。

2月4日は、16時に広島市中心部の若者の「聖地」とも言われるアリスガーデンに集合(右写真)。16時半に出発し、広島市中心部を「FREE PALESTINE」「子どもを殺すな」「誰も殺すな」などとレベッカさんらの指揮に合わせてコールしながら広島の中心部を原爆ドーム前へ行進しました。筆者は、家庭では、夕食の準備が担当なので、途中で抜けさせていただきました。

これより前、2月1日の17時半からの原爆ドーム前のスタンディングでは、ミャンマーを軍政支配から解放することを目指しているミャンマー人や支援者の日本人も参加し、連帯の挨拶をされていました。日本政府はミャンマー軍事政権に対して多大なODAを行っています。筆者自身の勤務先にもミャンマー人労働者がおられます。彼女らの故郷が人権の保障された平和な状態になることを筆者も願っています。

パレスチナに平和を ミャンマーを救え in 原爆ドーム前(広島瀬戸内新聞ニュース2月1日)

◆G7「虐殺応援団」サミット以来、「米国忖度都市 HIROSHIMA」へ

2023年5月開催のG7広島サミット。結果的には、「虐殺応援団」サミットだったことになります。すなわち、G7のうち、日本を除く米英仏独伊加が「10・7」ののち、直ちにイスラエル断固支持を表明。広島サミットに「乱入」したウクライナのゼレンスキー大統領もイスラエル支持を表明し、わざわざ、イスラエルを訪問しようとしてネタニヤフに断られるという醜態も演じました。

そして、こんなサミットを「顕彰」する施設をサミット県民会議、実質的には湯崎英彦知事は平和記念公園内に作ろうとしています。また、松井一實・広島市長は、イスラエルの後ろ盾・米国政府に忖度し、平和記念公園とパールハーバーの姉妹協定を米国が言うがまま、締結してしまいました。そして、原爆の爆心地を含む広島1区を選挙区とする岸田文雄総理が、西側の核保有は肯定する『広島ビジョン』を作成しています。

もはや、平和都市としてのヒロシマは、行政的には2023年5月のあのサミットを境に「米国忖度都市HIROSHIMA」に変質したと言わざるを得ません。

◆広島市民・県民が汚名返上へ声を

松井市長―湯崎知事―岸田総理という「米国忖度の枢軸」が君臨する広島。しかし、市民はそうではない、というところを示していくしかありません。総理とて、政治家の一人。地元有権者の声は気になるはずです。次回も同様のデモが3月16日(土)に行われるそうです。

こうしたデモに参加するもよし、総理の事務所に意見を言うのもよし。また、総理の選挙態勢を支える自民党の市議や県議らに意見を言うのもよし。いろいろな方法で総理を揺さぶるのも、選挙区の有権者として大事なことではないでしょうか?

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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