◆京都市長選 ── 自公+国民+立憲 VS 共産+リベラル

任期満了に伴う京都市長選挙が2月4日投開票され、自民、立憲、公明、国民が推薦する松井幸治が当選した。共産党が支援した福山和人は次点であった。

今回の京都市長選、投票に至るまでに野党の体たらくを明示する迷走が告示前に生じていた。各候補者の得票を眺めると興味深い。

松井孝治  17万7454票(37.92%)
福山和人  16万1203票(34.44%)
村山祥栄   7万2613票(15.52%)
二之湯真士  5万4430票(11.63%)
高家 悠    2316票(0.49%)

門川大作前市長は新聞紙上などに登場する際は着物を着用し、和風あるいは京都らしさを演出したかったのかもしれないが、端的に指摘すればオーバーツーリズムを招いた失政により京都市の財政を悪化させた。人口流出は止まらず、「このまま行けば京都市の財政破綻もあり得る」と報道されるほど京都市を滅茶苦茶にしてしまった。

だから門川は京都で評判が悪い。したがって門川の後継者を名乗るだけで候補者が不利であることは明確だったため、各候補者とも「門川市政の継続」を明言しなかった。

◆前橋市長選 ── 自公 VS 立憲+共産+国民+社民

さて、マスメディア的な論評はもういいだろう。同日に群馬県前橋市で市長選挙がおこなわれた。こちらは自民王国群馬県なのに、自民、公明が推す現職が敗れた。

小川 晶  6万0486票
山本 龍  4万6387票

小川は元群馬県議で立憲民主党、共産党、国民民主党、社民党の議員から支援を受け、山本は自民党と公明党が推薦し、4期目を目指していた。立憲や共産、ほかの野党が束になっても群馬県で自民・公明の現職市長を倒すなどは、想像できなかっただけに、快挙である。

◆京都の惨状 ── 「自民 VS 反自民」の構図をぶち壊した立憲民主

他方、京都の惨状はなんだ。

松井は元官僚であり、民主党の参議院議員を二期経験している。官僚出身の野党国会議員の8割以上はアウトな人間だと、わたしは勝手に基準を持っているが、松井もその8割に入る人物だ。今般の京都市長選に早々と自民・公明からの支持を取り付け、立憲もノコノコと乗った。

京都には西田昌司のような人間として最低な右翼政治家から、日和見主義者ランキングでは横綱クラスの前原誠司、前原の後輩にして、最近は野党の振りを演じるのがわりと上手にはなったが、前原同様、松下政経塾出身の福山哲郎がいる。そうそう立憲民主党の党首、泉健太も京都選挙区である。

そして忘れてはならないのが、亡き野中広務の後援会事務局長にして国家公安委員長まで務めた二之湯智の次男が二之湯真士であることだ。このような面々のうち二之湯以外が松井支持で固まったわけだ。

著名な与野党の政治家が高濃度で生息しているのが京都なのである。加えてかなり勢いが衰えたものの全国でも珍しいほどに、共産党への支持が厚い。

長年、京都市長選挙では主軸が自民対共産の闘いが続いてきた。そこに時代に応じて野党が自民に乗ったり、共産に近づいたりする。今回も自民対共産の構図は変わらないものの、あろうことか野党第一党の立憲民主が自民に相乗りしてしまった。これが悪因だ。

全国でも珍しい「自民・共産対決」あるいは「自民・反自民対決」の構図を作れば市民の興味も高まり、政治への関心も上がろうものを、立憲民主がぶち壊しにしてしまったのである。

断っておかなければならないが、わたしは絶対的な「反自民党」であるが、立憲民主、共産をはじめ一切支持政党はない。しかし、選挙なのだから「異なる主張のぶつかり合い」くらいは期待する。

◆「政治資金パーティー」をめぐるミスリード

自民党に対しては「不法な金のやり取り」について、国政でも地方選挙でも必ず争点にしてもらわなければ困る。何千万円から何億円にも上る「政治資金パーティー」(こんな名称のパーティー自体がいかがわしいじゃないか)を巡る政治資金報告書への不記載が問題だと報じられているが、あれはミスリードである。政治資金報告書への不記載は、れっきとした犯罪だ。

犯罪者集団が牛耳る政治は困る。許せない。

自民党は所属する議員に「アンケート調査」を行ったそうだが、犯人が犯人を取り調べて意味があるのか。「アンケート調査」くらいで野党は納得していていいのか。京都市長選挙のように気軽に自民と相乗りしたりしているから、いつまで経っても野党は伸びないのだ。

前原は、民主党から国民民主党では飽き足らず、これまで聞いたこともない「教育を無償化する」集団を立ち上げた。国民民主党は自民党の二軍のようなものだし、維新は「大阪ファシスト党」である。

たまには前橋市長選挙のように少しは興味のわく選挙を見てみたいものだ。

▼鹿野健一 (しかの・けんいち)
1965年兵庫県西宮市生まれ。複数の企業と大学に勤務の後、現在はフリーライター。国際情勢・政治・教育・冤罪・原発などに関心を持つ。反原発季刊誌『季節』副編集長。単著『大暗黒時代の大学』(鹿砦社)。共著『オイこら!学校』(教育資料出版会)、『1970年端境期の時代』、『抵抗と絶望の狭間/1971年から連合赤軍へ』(鹿砦社)など。

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