100万円争奪東西対抗戦となった今回のCHALLENGER興行。アマチュア2試合含め、全13試合全てがチーム対抗戦となり、いずれかの勝利チームとなれば選手一個人が勝っても負けても3万円獲得。更に判定勝ちで+5万円。KO勝利すれば+10万円で。計13万円が贈呈されることになり、チーム13選手全員がKO勝利すれば156万円となるが、100万円からオーバー予算分は武田幸三氏が「私が何とかします!」と宣言。余った場合はMVP賞に与えるという。
ポイントは判定勝利が1点。KO勝利が2点。引分けは0点。タイトルマッチ3試合は判定勝利が2点。KO勝利が5点。結果、東軍が12対7で勝利チームとなった。
MVPは鮮やかTKO勝利を飾った嵐が獲得。
◎NJKF CHALLENGER / 2月11日(日)後楽園ホール 17:20~22:10
主催:TAKEDA GYM / 認定:ニュージャパンキックボクシング連盟
◆第11試合 第14代NJKFフェザー級王座決定戦 5回戦
1位.大田拓真(新興ムエタイ/24歳/ 57.15kg)36戦27勝(8KO)7敗2分
VS
2位笹木一磨(理心塾/27際/ 57.0kg)22戦12勝(4KO)9敗1分
勝者:大田拓真 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:宮沢50-46. 中山50-46. 児島50-46
初回は牽制の上下の蹴り、パンチと多彩に突破口を探る両者。第3ラウンドには徐々に攻勢を強め、ヒザ蹴りからパンチやハイキックで流れを引き寄せた大田拓真。第4ラウンドにはヒザ蹴りで優位に立ち、笹木一磨の反撃も衰えないが、劣勢に流れた態勢を立て直すには至らない。
最終ラウンドも大田ペースで終了。序盤に攻め倦んだ印象は強いが、打ち優っていく底力を見せた展開は、ジャッジ三者とも第2ラウンドから大田拓真が10対9を付ける大差となっていた。
試合後控室では「知らない選手だったので、どういう選手なんだろうかと考え過ぎて様子見し過ぎました。映像はちょっと古い試合ばかりで、あまり参考にならなかったので見てなかったです。」と語り、セミファイナルで弟の一航が負けたことも影響し、「慎重になり過ぎました。」という反省もありました。
4月にはまた海外で試合が予定されているという。海外での試合が多い大田拓真。
国内でもメインイベンターをこなし、精力的な連戦が続きます。
◆第10試合 第10代NJKFスーパーバンタム級王座決定戦 5回戦
1位.一航(=大田一航/新興ムエタイ/22際/ 55.3kg)27戦18勝(4KO)7敗2分
VS
3位.真琴(誠輪/19歳/ 55.25kg)13戦10勝(1KO)2敗1分
勝者:真琴 / 判定0-3
主審:多賀谷敏朗
副審:少白竜47-49. 中山47-48. 児島47-49
多彩な蹴りパンチの様子見の攻防は一進一退の中、徐々に真琴の勢いが増し、第3ラウンドに真琴のヒジ打ちで一航の額を切る。
このラウンド2度のドクターチェックを受ける一航。マットに落ちる夥しい流血はストップが掛かるかに思われたが続行は許された。
第4ラウンドには打ち合いで一航の勢いが増したが、一航の右パンチに合わせて真琴の軽く飛び気味の右ヒザ蹴りを顔面に受けた一航はノックダウンを喫する。
最終第5ラウンドは激しい攻防となる中、一航の底力を見せる猛ラッシュも、真琴が圧されながらも打ち返し、この勝負を落とせない懸命のラッシュ。
最終第5ラウンドのみポイントはジャッジ三者揃って一航に流れたが、真琴が判定勝利を飾った。
◆第9試合 第15代NJKFバンタム級王座決定戦 5回戦
3位.嵐(キング/18歳/ 53.45kg)13戦11勝(5KO)1敗1分
VS
2位.甲斐元太郎(理心塾/21歳/ 54.5→53.85kg 減点1)19戦7勝(2KO)10敗2分
勝者:嵐 / TKO 2ラウンド2分54秒
主審:宮沢誠
前日計量では甲斐元太郎が1kgのオーバーで再計量に向けウェイト調整に入った為、後の記者会見は欠席。この対戦では嵐のみの公開インタビューとなったが、「あいつ居ないんで何も言うこと無いですけど、明日はあいつを殺すんで伝えておいてください。以上です。」と語ると席を立って退席。
甲斐元太郎は2021年8月8日にNJKFバンタム級暫定チャンピオンと認定されているが、王座決定戦の相手、志賀将大(エス)の欠場で認定されたもので翌年、その志賀将大に判定負けで王座陥落している。ここは正規に勝利して王座奪取を狙いたいところだったが、ウェイトは350グラムオーバーで計量失格。タイトルは届かないものとなってしまった。
試合は予告どおり初回から倒しに行く体勢の嵐はパンチでも蹴りでも上下打ち分け、強く打ち込む勢いが増して行く。甲斐元太郎も打ち合いの体勢で互角に展開はするも、第2ラウンドには嵐の右ヒザ蹴りヒットで効かせてロープ際に追い込んで二発目ヒザ蹴りで甲斐は堪らずノックダウンを喫する。立ち上がるには苦しそうな中、レフェリーストップとなった。第1ラウンドにも嵐のヒザ蹴りが入っており、手応えはすでにあったかもしれない。
前回興行セレモニーで散々罵り乱闘寸前の展開を見せながら、試合中は正攻法な戦いで、バッティングかローブローがあったか、そこはグローブタッチしてスポーツマンシップを守った両者。嵐はTKO勝利後も倒れている甲斐元太郎を気遣う声掛けをした後、チャンピオン認定されてから母親をリングに上げ、「チャンピオンは俺を産んだ母」と言わんばかりにチャンピオンベルトを巻いてやった親孝行ぶり。なかなか好青年の嵐であった。
◆第8試合 64.0kg契約3回戦
ジャムワンスック・ゲッナァーウィー(タイ/21歳/ 64.25→64.2→63.8kg)約90戦超
VS
真吾YAMATO (元・NJKFスーパーライト級Champ/28歳/大和/ 64.05→64.0kg)
37戦25勝(13KO)10敗2分
勝者:ジャムワンスック / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:少白竜30-27. 多賀谷30-27. 児島30-27
(ジャムワンスックはタイ国ノンタブリー県ジットムアンノンスタジアム・スーパーライト級チャンピオン)
東西対抗戦にタイ選手が加わるのは不自然ではあったが、真吾は先手を打って蹴りやパンチで攻めてもジャムワンスックは距離に応じた蹴りやパンチのバランスが良く、真吾の空いたところを突くのが上手く、首相撲でもヒジ打ちの距離も脅威で余裕の展開を見せた。ジャッジ三者ともフルマークの大差で東軍のジャムワンスックが判定勝利を飾った。
◆第7試合 ウェルター級ノンタイトル3回戦
NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凛太朗(VERTEX/23歳/ 66.5kg)
24戦11勝(3KO)9敗4分
VS
WBCムエタイ日本ウェルター級チャンピオン.青木洋輔(大和/29歳/ 66.45kg)
27戦13勝(2KO)11敗3分
勝者:吉田凛太朗 / 判定2-0
主審:宮沢誠
副審:児島29-29. 多賀谷30-29. 中山30-29
両者様子見の攻防から吉田凛太朗は第2ラウンド後半から的確さが増し攻勢に転じたが、青木洋輔はローキック(カーフ)に拘ったか、あまり積極性を感じない流れとなって、第2ラウンドを抑えたポイントで僅差ながら吉田凛太朗が判定勝利を飾った。
◆第6試合 61.5kg契約3回戦
NJKFライト級1位.岩橋伸太郎(エス/36歳/ 61.1kg)19戦7勝10敗2分
VS
TAaaaCHAN(=ターチャン/聖域統一スーパーライト級Champ/PCK連闘会/32歳/ 61.5kg)
34戦21勝(10KO)12敗1分
勝者:TAaaaCHAN / TKO 3ラウンド2分29秒
主審:少白竜
両者のアグレッシブなパンチと蹴りの交錯が続く中、TAaaaCHANのパンチのヒットがやや上回った印象を受ける。最終第3ラウンドにはTAaaaCHANの左ヒジ打ちで岩橋伸太郎は額を切られてドクターチェックを受けるが続行許され、打ち合い激しくなるが、TAaaaCHANのパンチ連打で岩橋はノックダウン。立ち上がるもダメージを見たレフェリーがストップをかけた。
◆第5試合 ウェルター級3回戦
NJKFウェルター級5位.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/17歳/ 66.45kg)
8戦5勝(3KO)2敗1分
VS
YUYA(クロスポイント吉祥寺/32歳/ 66.55kg)11戦7勝(2KO)3敗1分
勝者:亜維二 / TKO 2ラウンド1分58秒
主審:多賀谷敏朗
蹴りから次第に激しいパンチの交錯が続き、YUYAのパンチで亜維二がグラつくも打ち合いが続き、亜維二の強打でYUYAは倒され、カウント中のレフェリーストップとなった。
◆第4試合 NJKFライト級次期挑戦者決定戦3回戦
3位.TAKUYA(K-CRONY/30歳/ 61.15kg)13戦5勝(1KO)7敗1分
VS
4位.祖父江泰司(理心塾/25歳/ 61.25→61.2kg)8戦6勝(4KO)2敗
勝者:祖父江泰司 / 判定0-3
主審:児島真人
副審:多賀谷27-29. 宮沢26-30. 少白竜26-30
◆第3試合 女子(ミネルヴァ)49.5kg契約3回戦(2分制)
真美(Team ImmortaL/33歳/ 49.5kg)20戦15勝(3KO)5敗
VS
美斬帝(=喜多村美紀/テツ/37歳/ 49.5kg)31戦14勝13敗4分
勝者:真美 / 判定2-0 (29-28. 29-29. 29-28)
(真美はS-1レディース世界ライトフライ級チャンピオン、美斬帝はミネルヴァ・ライトフライ級1位)
◆第2試合 フライ級3回戦
明夢(新興ムエタイ/21歳/ 50.65kg)9戦2勝5敗2分
VS
永井雷智(VALLELY/15歳/ 50.75kg)3戦2勝(1KO)1分
引分け 0-1 (28-28. 28-29. 28-28)
◆プロ第1試合 57.0kg契約3回戦
藤井昴(キング/21歳/ 56.8kg)1戦1分
VS
祖根亮麻(大和/ 26歳/ 56.7kg)6戦3勝(2KO)2敗1分
引分け 0-0 (29-29. 29-29. 29-29)
◆アマチュアジュニアキック第2試合 45kg級2回戦(2分制)
竹田奏音(TAKEDA/ 43.85kg)vs大澤透士(TRASH/ 44.55kg)
勝者:大澤透士(青) 判定0-3 (19-20. 19-20. 19-20)
◆アマチュアジュニアキック第1試合 35kg級2回戦(90秒制)
坂田銀牙(TAKEDA/ 34.5kg)vs河野獅童(クロスポイント大泉/ 31.65kg)
勝者:河野獅童(青) / 判定0-2 (19-19. 18-20. 19-20)
《取材戦記》
最近の後楽園ホールで開催のNJKFは西側(正確には南西)に赤コーナー、東側(正確には北東)に青コーナー設定でしたが、今回は後楽園ホール本来の定位置である、赤コーナーが東側、青コーナーが西側に戻った形でした。おそらくは東西対決の意味合いで東が東軍、西が西軍。当たり前の方角だが元々、赤コーナーが東側、それは日本列島東日本側であることが関連しているだろう。テレビ画面で言えば右側奥に赤コーナーが来るのはメインイベンターの顔が正面から見られる位置に。やっぱり後楽園ホールは右側(北東)側に赤コーナーがあるべきと思った次第でした。
東西対決がメインテーマとなった今回の興行。それでもメインイベントにかけ観衆が減っていくのは従来どおり。チーム対抗戦より個人戦。自分らの応援する選手の試合が終われば帰ってしまう傾向は拭えなかった。エース格、大田拓真を以てしてもこの状態。まあ終了が22時回っては終電の事情もあったかもしれません。
NJKFを本気でトップの団体にすると宣言している武田幸三さんの次なる策は何か。
セレモニーでは、過去NJKFで活躍した現・K-1ワールドグランプリ・スーパーライト級チャンピオンの大和哲也氏をリングで紹介し、大和のGRATINESSジムがNJKFに加盟したことを発表。更にKNOCKOUT代表の山口元気氏もリング上で紹介され、NJKFとの対抗戦の話も進めていた武田幸三氏の戦略は諸々あると考えられますが、今後の展開に注目が集まるでしょう。一方で「武田さん、NJKFでも引っ掻き回さなければいいですが!」といった頑張り過ぎの懸念の声があったのも事実。まず今年は11月10日興行の「NJKF祭り」までじっくり見て行きましょう。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
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