「記憶の中の事件は忘却の途についている」(注)── 私たちが実に7年にもわたって被害者М君に寄り添い関わって来た「カウンター大学院生リンチ事件」(別称「しばき隊リンチ事件」「北新地大学院生リンチ事件」。以下「大学院生リンチ事件」と記します)、果たしてこれでお終いにしていいのか? と思っていたところ、つい最近、「忘却」から「記憶」を蘇らせる出来事がありました。
[注](「デジタル鹿砦社通信」2022年12月10日号、黒薮哲哉寄稿「М君リンチ事件から8年、輪郭を現わしてきた司法制度の闇とヒューマニズムの劣化」より)
◆大学院生リンチ事件の主たる暴行実行犯・金良平が民事訴訟を起こしてきました!
かの「大学院生リンチ事件」の主たる暴行実行犯「エルネスト金」(略称エル金)こと「金(本田)良平」(以下、通称で記すのも失礼でしょうから本名の金良平と記載します)が、何を血迷ったのか、株式会社鹿砦社と森奈津子さんを「プライバシー侵害」で民事訴訟を提訴したのです(東京地裁立川支部)。
「請求の趣旨」は、
「1 被告森奈津子は、訴状添付別紙1投稿記事目録記載の記事(注:被告森奈津子の2023年10月2日のX)を削除せよ。」
2 被告ら(注:森奈津子、鹿砦社)は、原告(注:金良平)に対し、連帯して、各110万円及びこれに対する2023年10月2日から支払い済みまで年3分の割合による金員を支払え。(3、4略)」
というものです。
被告とされた森さんが鹿砦社の「指令」で、金良平が大学院生М君に激しいリンチを加えたことにより課せられた罰金40万円が記された「略式命令」書をX(旧Twitter)に晒したことが「プライバシーの侵害」だというのです。
金良平が、この「略式命令」を明かした森さんへの粘着した経緯、また「略式命令」を食らうに至る、大学院生リンチ事件の経緯と情況を何ら記述することなく、その「前科情報」を公開したことが「プライバシーの侵害」だということのようですが、大学院生リンチ事件においてエル金がリンチの主たる実行犯であり刑事で罰金40万円、民事で賠償金113万円余(+利息)を課せられたことは〈公知の事実〉であり、すでに鹿砦社の8冊(田中宏和著『しばき隊の真実』『SEALDsの真実』含む)の出版物、あるいは裁判の経過をリアルタイムに報じてきた「デジタル鹿砦社通信」、さらにはSNSにて多くの人たちが発信し、さんざん広く語られ議論されてきたとおりです。
むしろ、リンチ被害者М君、及び私たちは、金良平、李信恵ら加害者5人に真摯な反省があるのか、またその後の生き方にどう教訓化してきたのかを問いたい。さらには、加害者の周辺にいた者ら、特に私たちの追及に沈黙したり逃げたりした、「知識人」とか「ジャーナリスト」といわれる者たち、政治家、弁護士らがこの10年近く、どう考えてきたのか、を問い質したい、と思います。
そうして、いやしくも「人権」だ「反差別」だと口にするのならば、リンチ事件の社会的、思想的問題を総括すべきでしょう。リンチ事件は絶対に「デマ」ではなく、わが国の反差別運動において最大級の汚点です。これはしっかりと主体的に反省し総括すべき問題です。この反省なくしては、いかなる綺麗な言論も虚妄でしかありません。こうしたことは、私たちが一貫して主張してきたことですが、私たちの言っていることは間違っているでしょうか?
◆私たちはなぜ「大学院生リンチ事件」に関わって来たのか?
くだんの「大学院生リンチ事件」について、私たちはゼロの状態から地を這うような取材・調査を元に6冊の本にまとめ、その都度、その都度に出版物として世に問いました。そうは言っても私たちは捜査機関や大手新聞、大手出版社ではないのでカネやヒトで限界があったことは否めませんが、私たちなりに精一杯頑張ったつもりです。
そうした中で、この「大学院生リンチ事件」をどう捉えるかで、その人自身の人間性や人となりが問われると考えてきました。その最終報告がまだ出来ておらず、本年12月に10年を迎えるにあたり、それをやり切りたいと、つとに考えてきたところです。
リンチ事件の内容は、発生後意図的に1年余(発生の2014年12月~私たちが知った2016年1月)も報じられることなく隠蔽されてき、「十三ベース事件」なる呼称で、いわば都市伝説化し歴史の闇に消えようとしていたところ、事件から1年余り後に、かねてから私たちが主催して市民向けに行ってきた、いわゆる「西宮ゼミ」にちょくちょく参加していた人から、私たちの元に持ち込まれました。
被害者やこの周辺の人たちが提示した資料や証言、特にリンチ直後の写真(別掲)などから、私たちは素朴に、「これは非道い」と感じ、被害者に寄り添い、支援と真相究明を行うことにしました。血の通った一人の人間として当然であり、ここで目の前にいる被害者に「われわれでは君を助けることはできない」などと言えるでしょうか?
また、リンチ事件を知りながら、安田浩一や池田香代子ら鹿砦社主催のゼミナールに招いた者も含め、私たちの取材から逃げたり沈黙したり開き直ったりした者らの人間性を、今あらためて問い質したいと思います。
池田香代子は名著『夜と霧』の新版を訳したことで有名ですが、かの名著を翻訳した者なら、『夜と霧』に通底する思想をわがものとし、このリンチ事件に真正面から向き合うべきではないでしょうか? ちなみに池田の新版では、旧版で掲載されていた残酷な画像はカットされていますが、このことは、池田が歴史を改竄するような人であることを物語っているといえるでしょう。
◆リンチによって台無しにされたリンチ被害者М君の人生 ── 金良平は今からでもМ君に真摯に謝罪せよ!
本年12月に10年を迎えるにあたり、原告・金良平は、みずからが行ったリンチを「街角の小さな喧嘩にすぎない事象」(訴状)とまで矮小化しています。被告とされている森奈津子さんとのやり取りのXでも「卑劣なデマで人を貶めた」とリンチ被害者М君や彼に寄り添い最後まで支援してきた私たちを誹謗中傷しています。私たちがどんな「卑劣なデマで人を貶めた」というのか、М君や私たちの前で言っください。
リンチ被害者М君は、当時、関西でもトップクラスの某国立大学の大学院博士課程に在学していました。将来は研究者としての人生を送るつもりでした。しかし、今でもリンチによるPTSDに苦しみ(これには著名な精神科医・野田正彰先生の精神鑑定書を裁判所に提出。未公開)、博士課程は何とか修了したものの博士論文は遂に書けず、研究者人生を断念、今は意に反し普通の会社勤めをしています。一人の研究者の卵の人生を台無しにして、何が「プライバシーの侵害」だ!? まずは今からでも被害者М君に真摯に謝罪すべきでしょう。これが先決です。
また、原告・金良平らは、事件後いったんは認(したた)めた謝罪文(金良平のもののみを別掲)を、しばらくして反故にし開き直りました。今も何の反省もなく開き直っているようです。約束した活動自粛も再開しました。まずはその謝罪文に立ち返り、あらためて金良平が数十発殴ったМ君に謝罪すべきです。ここでも、私の言っていることは間違っているでしょうか?
リンチの主たる実行犯・金良平は、みずから「私自身のこれからの人生にとっても教訓としていかねばならないと考えています」(謝罪文)と言っていますが、その後、いかなる人生を送って来たのでしょうか? 今回の森奈津子さんに対してもそうですが、相変わらずXなどで、みずからが気に食わない人たちに激しい粘着、攻撃をしています。このかん、ざっと彼のXを閲覧しましたが、リンチ事件に対して真摯に向き合ってきたとは到底思えません。
また、リンチの場に連座した伊藤大介は、その後も、私たちと李信恵との訴訟を傍聴した後に酒に酔い、深夜右翼活動家を呼び出し仲間と共に暴行を加え有罪判決を受けています。反省がない証です(この件は、森さんも寄稿している『暴力・暴言型社会運動の終焉』に記述されていますので参照してください)。
◆私たちは本件訴訟を契機として「大学院生リンチ事件」の徹底的な検証と総括に努めます!
私たちは、今回の提訴によって、いわば「寝た子を起こされた」わけですが、むしろこれをいい契機として、リンチ事件を主体的に捉え返し、あらためて徹底した検証と総括作業を行い、後世に残るような〈最終報告書〉にまとめていきたいと考えています。
昨年、英公共放送BBCによるドキュメントを突破口に、半世紀以上わが国芸能界を支配し栄華を誇ったジャニーズ帝国が崩壊しました。28年前の1995年から追及してきた私たちは、その28年間の〈集大成〉として『ジャニーズ帝国60年の興亡』(A5判、320ページ)という大部の本にまとめ上梓しました。
大学院生リンチ事件関係本はこれまで8冊(田中宏和著書も含む)、1000ページを越します。虚偽があってはいけないと、一つ一つの本は、地を這うような調査・取材を元にまとめました。「デマ」を絶対に排することは当初からの禁止事項でした。私たちになんで「デマ」本を出す必要があるでしょうか?
長年(鹿砦社は1969年創業。松岡が代表に就いて約40年)出版界に在って、それなりの存在感を示し歴史と矜持を持ち、「デマ」本を出すことは恥だと思ってきています。何度も言ってきましたが、」「デマ」だなんだかんだ言うのであれば、反論本を出すべきでしょうが、これはありませんでした。
今回の訴訟に対して私たちは真正面から対峙しますが、戦術的に手の内を見せることはしたくないので具体的に述べるのは最小限にしておきます。とはいえ、漸次報告は行っていきますので、どうかご注目をお願いいたします。
皆様方の圧倒的なご支援を要請する次第です。
最後にもうひとこと言わせてください。鹿砦社と共に被告とされた森奈津子さんですが、正月から重度障がい者のお連れ合いが危篤状態だということをみずからのXで公開しています。幸い今は小康状態だということですが、そうした中で、別件と併せ2件、神原弁護士を代理人として容赦なく提訴してきています。原告の金良平も代理人の神原弁護士も森さんのXを日々監視していると思われますが、それでの提訴です。
彼女も乳がんで片乳を取りながらサバイバルし、再発を恐れながら日々暮らしています。がんは半分精神的な要素で発症(再発)するともいわれ。お連れ合いの看護と複数の訴訟で精神的に追い詰めようとでもしているのか、と勘繰らざるをえません。
「人権」や「反差別」などと嘯(うそぶ)きながら、「武士の情け」などないようです。人情も地に堕ちたものです。 (文中、一部を除いて敬称略)
※本件訴訟について、次の方法にてご支援ください。
①大学院生リンチ事件関係書などの購読によるご支援
郵便振替(01100-9-48334 口座名:株式会社鹿砦社)にて書名明記のうえご注文ください。送料はサービスです。
②書籍などの見返りを求めず純然たるカンパによるご支援
以前はМ君関係訴訟の資金を集めることを優先したので鹿砦社としては身銭を切る形でしたが、今回は皆様方に資金面でのご支援を仰ぐことにしました。
カンパ専用口座を設けましたのでこちらにお振り込みください。本件訴訟のみに使用します。
三井住友銀行 甲子園支店 普通口座 0966462
口座名: 別口株式会社鹿砦社
M君リンチ事件 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=62