全13試合中、デビュー戦が18名の初陣興行。ノックアウト勝利は一つだけだったが、3ラウンドを戦い切り、俺達がこの団体を引っ張るという自覚を持ったアグレッシブな戦いが連なった。
◎原点回帰 初陣 / 3月16日(土)後楽園ホール 17:15~21:29
主催:全日本キックボクシング協会 /
(戦績は興行パンフレットより、この日の結果を加えています)
◆第13試合 スーパーフライ級3回戦
羽田翔太(キックスターズジャパン/ 51.8kg)11戦3勝8敗
VS
広翔(稲城/ 51.9kg)1戦1勝
勝者:広翔 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:和田29-30. 勝本剛司28-30. 竜矢29-30
初回、ローキックから上下の蹴り中心の攻防は広翔のローキックの鋭さがインパクトを与えていく。第2ラウンドも蹴りの攻防の中、広翔のハイキックが羽田翔太の顔面を掠める軽いヒットが目立った。激しい蹴り合いの中に、主導権を奪いに行く姿勢は広翔が優っている印象で、僅差ながら広翔が勝利を飾った。
◆第12試合 56.0kg契約3回戦
鬼澤佑輔(MIYABI/ 55.5kg)7戦2勝3敗2分
VS
中村健甚(稲城/ 55.75kg)1戦1敗
引分け 0-1
主審:椎名利一
副審:和田29-30. 少白竜29-29. 竜矢29-29
蹴り合いから接近し、組み合う距離からヒジ打ちを繰り出す両者。崩しやヒザ蹴りも加わり、鬼澤佑輔がやや攻勢も第3ラウンドには中村健甚のヒザ蹴り、飛びヒザ蹴りでアグレッシブな印象を与えたこのラストラウンドだけジャッジ三者揃って中村が支持されたが勝利には届かず。
◆第11試合 スーパーフェザー級3回戦
仁琉丸(ウルブズスクワッド/ 58.45kg)21戦12勝(8KO)9敗
VS
幸島秀之(大匠塾/ 58.45kg)1戦1敗
勝者:仁琉丸 / 判定3-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-27. 少白竜30-27. 竜矢30-27
蹴り合う中でも前進する圧力と当て勘優る仁琉丸。プロ実績で大きく上回る仁琉丸だが、予想されたノックアウトに繋げるには至らずも大差判定勝利。
35歳以上のアマチュア版ナイスミドルで活躍する幸島秀之も仁琉丸の圧力を凌いでパンチで攻めるアグレッシブな展開を見せたが、プロの壁には撥ね返された。
いずれ瀬川琉とフェザー級タイトルを争うことになるであろう仁琉丸は、更に調子を上げて行きたいところだろう。
◆第10試合 スーパーライト級3回戦
勇生(ウルブズスクワッド/ 63.0kg)3戦2勝(1KO)1敗
VS
Naoki(ウィラサクレック西川口/ 62.85kg)1戦1敗
勝者:勇生 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:椎名29-28. 少白竜30-29. 勝本剛司29-28
初回から激しく蹴り合う両者。接近してのパンチの交錯で倒しに行く姿勢が表れていた。徐々に勇生のパンチが当たりだし、鼻血を流すNaoki。
第2ラウンドには勇生のパンチでNaokiの左頬が大きく腫れてきた。Naokiが反撃に移り、正にキレイな攻めではないが倒しに行く姿勢で我武者羅に出て来る。
第3ラウンドには更に激しく打ち合う中、Naokiは左側頭部からも出血が見られた。打ち合うとややNaokiが圧すも、上下の蹴りと接近戦でのヒザ蹴りが目立った勇生だった。
◆第9試合 フェザー級3回戦
白井嶺虎(バンゲリングベイ/ 56.55kg)4戦3勝(1KO)1敗
VS
エモ(ジーニアス/ 57.05kg)1戦1敗
勝者:白井嶺虎 / KO 2ラウンド2分42秒 /
主審:竜矢
初回から打ち合い、ハイキックも交じるローキックとパンチの攻防。第2ラウンドには打ち合いながらハイキックも繰り出した白井嶺虎の左ハイキックがエモのアゴにヒットすると、あっさりノックダウン。カウント中にタオルが投げ込まれ、レフェリーストップとなった。
◆第8試合 ライト級3回戦
杉浦昂志(キックスターズジャパン/ 61.1kg)1戦1勝
VS
むらけん(=村松健太/ジーニアス/ 61.1kg)1戦1敗
勝者:杉浦昂志 / 判定3-0
主審:少白竜
副審:竜矢30-29. 和田29-28. 勝本剛司30-29
むらけんの長身と手足の長さを利した前蹴り、組んでもヒザ蹴りがインパクトを与える。杉浦昂志はローキック狙いでむらけんを徐々に追い詰めるも大きなダメージを与えるには至らない。攻撃力はむらけんが優ったように見えたが、杉浦がヒジ打ちも加えたヒットもあってか僅差判定勝利となった。
むらけんは、元・全日本ライト級チャンピオンの須藤信充氏の御子息です。
◆第7試合 ウェルター級3回戦
成瀬晴規(無所属/ 66.7→66.65 kg)3戦1勝1敗1分
VS
滝口遥輝(中島/ 64.85kg)1戦1分
引分け 0-0
主審:椎名利一
副審:少白竜29-29. 和田29-29. 竜矢29-29
◆第6試合 ウェルター級3回戦
山本哲男(KICKBOXING-SQUARE/ 66.45kg)2戦2勝
VS
カトリーヌ・マサトシ(中島/ 65.25kg)1戦1敗
勝者:山本哲男 / 判定2-0
主審:勝本剛司
副審:少白竜29-28. 椎名28-28. 竜矢30-28
◆第5試合 ライト級3回戦
山田旬(アウルスポーツ/ 61.15kg)1戦1勝
VS
ザイ・ウズハンカーン(中島/ 61.15kg)1戦1敗
勝者:山田旬 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:少白竜30-27. 椎名30-27. 勝本剛司30-28
◆第4試合 フェザー級3回戦
高橋邑俉(SQUARE-UP/ 56.7kg)1戦1敗
VS
勇人(NUMBER NINE/ 56.4kg)1戦1勝
勝者:勇人 / 判定0-3
主審:竜矢
副審:和田28-29. 椎名25-29. 勝本剛司25-30
◆第3試合 バンタム級3回戦
藪祥基(SQUARE-UP/ 53.45kg)1戦1敗
VS
吉田鋭輝(team彩/ 53.45kg)1戦1勝
勝者:吉田鋭輝 / 判定0-3
主審:竜矢(勝本竜矢)
副審:少白竜28-29. 椎名28-29. 勝本剛司28-29
◆第2試合 71.0kg契約3回戦
英坊(MIYABI/ 70.65kg)3戦2敗1分
VS
義斗(Kickboxing fplus/計量はリミット内パス)1戦1勝
勝者:義斗 / 判定0-3
主審:少白竜27-30. 椎名28-30. 竜矢27-30
副審:
◆第1試合 フライ級3回戦
ペニコ(MONKEY☆MAGIC KBS/ 50.9→50.8kg)1戦1敗
VS
HIROKI(AKIRA?budo school?/48.65kg)1戦1勝
勝者:HIROKI / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:和田27-30. 椎名26-30. 竜矢28-30
《取材戦記》
デビュー戦ばかりの正に原点回帰の初陣興行。全ての選手のアグレッシブな展開が素晴らしかった。
ド派手な演出は無くても、インパクトある演出はレジェンド達の御登壇。第7試合後にセレモニーが行われ、加盟ジムと会長の御紹介、旗揚げ興行として栗芝貴協会代表の御挨拶、特別ゲストで藤原敏男氏、富山勝治氏、増沢潔氏、飛鳥信也氏など、かつての名チャンピオンが御挨拶。富山さんは「久々に後楽園ホールへやって来ました。50年前を思い出します……!」と想いを語り、飛鳥信也さんが「私と富山さんはキックボクシング発祥の目黒ジム出身です……!」と語った御挨拶後、富山さんが再びマイクを持つ意地のアピール。沢村忠さんの名前を出しておかねばという想いもあったでしょう。「沢村忠様有っての今のキックボクシング……!」と、「今後ともキックボクシング発展の為に皆様の力をお借りしたいと思います。今後とも宜しくお願い致します!」と締めるかつてのエース格の存在感が目立った。
この全日本キックボクシング協会は、かつての昭和時代に石原慎太郎氏がコミッショナーを務めた団体の復興ではなく、同名の新団体ではあるが、初陣と言いながらレジェンドが御登壇となれば、キックボクシング生誕60周年を思わせる還暦興行の印象もあり、懐かしさが蘇える興行だった。
前日計量は14時より稲城ジムで行なわれ、計量後に選手全員残ってルールミーティングが行われました。そのミーティングにおいて、審判長の勝本剛司氏との質疑応答が始まった。時間の都合上5名だけだったが、計量に来て質疑応答となっては選手も戸惑っただろう。
「この新団体としての初陣興行。歴史に残らなければならない。ここに居る選手一人一人が実力を出し切って、まずは自分達が目立ってカッコ良く、逞しい姿を見せてくれることが一番大切な部分となってくることを肝に銘じているということを前提に話を進めていきます。」という質疑応答となった。
勝本剛司審判長は「この大会(興行)に於いて、プロとして何を見せてくれるのか、抱負と目指している選手が居れば教えて貰っていいですか?」という質問。急に振られると応えることに戸惑ったであろう。最初に当てられた第1試合のペニコ選手とHIROKI選手。試合に向けての抱負をHIROKIは少し考えて「ヒザで決めます!」。目標とする選手は「AKIRA選手です!」と応えた。ペニコは「KOします!」目標とする選手は「小野瀬邦英さんです!」と計量立会いに来ていた小野瀬氏を戸惑わすインパクトを残した。
最終試合に出場する羽田翔太は「この二人がメインで良かったなと言われるような新団体の立ち上げに相応しい熱量を広翔選手と二人で盛り上げたいと思います!」
広翔は「デビュー戦でメインを組んで頂いたので、期待に応えられるようにKO勝ちで初陣興行、最初のメインを締めたいと思います!」と二人がカッコ良く締めた。
「この大会を想い出出場している人はいますか?」という問いかけには誰も手を挙げなかった。この一戦のみで辞めるつもりなど無いということである。
「この大会を踏み台にして次の試合に備えたいと思っている人はどれぐらい居ますか?」という質問にはパラパラと手が挙がった。
「全日本キックボクシング協会でチャンピオン獲りたいと思っている人は?」には見渡せた限りでは全員が手を挙げた。
「高嶺を目指して目立ってカッコ良く、上手な戦い方はこれから先。今回のデビュー戦で観たいのは“最後までリングに立ち続けるぞ”、“倒すぞ”という闘志をお客さんに見せてください。観衆は絶対心打たれるので、“あいつの試合見たい”となれば“次の大会も来たい”となります!」と期待を込めて前日に選手へ気合いを入れた勝本剛司審判長だった。
原点回帰で新人戦から始まった初陣興行。かつての新団体設立興行はチャンピオンが存在するメインイベンターが出場していたが、この新団体の全日本キックボクシング協会は新人から始まる原点に立ち返ったスタートだった。そこで選手に自覚を持たせる働きかけは昨年の8月から始まっていた。前日計量では、「この先どうなるかは正直分からない」と言っていた栗芝貴代表。我々一般ファンやマスコミから見ても、厳しい意見が出そうなスタートであった。
興行終了後の栗芝貴代表は、
「想像以上に選手の頑張り、前半戦からデビュー戦とは思えないぐらい、やっぱり何回も選手達に“君達が輝ける舞台を作ってくれ”と言ってきた中で、本当に腹くくって来たなという姿見てちょっとね、中盤辺りでなんか涙出そうになっちゃって。このメンバーで一年経ったら、凄いことになると思う。みんな切磋琢磨して、この夏頑張れば冬も来年も盛り上がっていける。この選手達、やってくれていると思って、それに我々も応えなきゃと思っています!」
藤原敏男さん、富山勝治さんらが来られたことについては「元・ゴング誌編集長の舟木昭太郎先生の御陰です。知ってる方が見ればやっぱり感動しますよね。今のお客さんはなかなか御存知無い方も多いかもしれないけど、我々キックボクシング関係者としたら原点回帰であの方々がリング上に上がってくれたというのはもう感無量ですね!」と多くの感動で今後に手応えを感じていた栗芝貴代表だった。
次回、全日本キックボクシング協会第二回興行は、6月13日、平日木曜日に後楽園ホールに於いて開催予定です。土日を取るのは難しい今年は仕方無いところでしょう。この日勝ち上がった選手によって試合順も上位枠へ上がっていきます。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」