5月12日、大阪・大国町の社会福祉法人「ピースクラブ」4階ホールに於いて和田央子(なかこ)さん(「福島イノベーションコースト構想」を監視する会)の講演会を開催しました。和田さんのパワーポイントのタイトルは「福島イノベーション・コーストとは被害者置き去りの復興政策と軍民共用産業拠点化」。前日神戸で学習会がありましたが、遠い明石市や三木市からも仲間がかけつけて下さいました。ご参集くださった皆様、どうもありがとうございました。

和田央子さん(写真提供=末田一秀はんげんぱつ新聞編集長)

◆国家的ビッグ・プロジェクトなのにヒッソリ・コッソリ進められる理由

 

和田さんと菅野さん(写真提供=Eiji Etoh)

福島イノベーション・コースト構想(以下、イノベ構想)とは、ホームページによれば「東日本大震災及び原子力災害によって失われた浜通り地域などの産業を回復するため、新たな産業基盤の構築を目指す国家プロジェクトです」とあります。

具体的に進めていきたい主要プロジェクトには、①廃炉 ②ロボット・ドローン ③エネルギー・環境・リサイクル ④農林水産業 ⑤医療関係 ⑥航空宇宙など6部門があり、それらを浜通り地域の15市町村で、税制を優遇させたり、リノベ推進機構の強力な後押しで、多くの企業を進出させていこうというものです。

例えばドローンなどはすでにバンバン飛行訓練させている訳です。参加者からは、「だったら、能登半島地震で被害にあった奥能登の孤立した村の人たちにペットボトルでも持っていかんかい!」と怒りの声があがりました。

私は、イノベ構想が進む浪江町請戸地区には2019年初めて訪れました。請戸地区は津波被害にあい、家屋のほとんどが流され、広大な更地が広がっていました。そこにぽつん、ぽつんと大きな建物が建っていましたが、当時はまだ何が起きているかはしりませんでした。

しかし、イノベ構想はそれ以前から着々と進んでいたようです。のちに、浪江町から関西に「避難」してきた方から「私たちの故郷はもう壊されています」と聞かされました。それがきっかけで、浜通りで何がおきているかを更に知りたくて、昨年7月今野寿美雄さんの案内して頂き、イノベ構想が進むさまをこの目で確かめてきました。「何をやっているんだ!これは!」。それが最初の感想でした。

イノベ構想という国家的なビッグプロジェクトは、街がなくなり、人気がなくなった場所でヒッソリ・コッソリ行われていました。表面的には「震災と原発事故で多大な被害を受けた福島のため」「早く廃炉をやるため」「街を活性化させよう」と威勢の良い、聞こえのいい理由をつけています。

しかし、それらは全て口実、言い訳で、実態はまったく真逆をいく内容です。福島の被災者や世間の皆さんによほど知られたくない、関心を持ってほしくないのでしょう。つまり、そこで行われているのは、私たちにとって良くないこと、知られたらまずいことなのでしょう。

◆戦争のできる国と人づくりを進めるイノベ構想

大震災と原発事故を経験した被災者は、原発は原爆と双子であること、原発を推進することは、戦争への道をひた進むことであること、原発を止めなければいけないことを、身を持って体験されました。しかし、福島の浜通りで起こっていることは、そうした被災者や日本だけではなく、世界の平和を願い、核廃絶、全ての原発を廃炉へと願う人たちの思いに、逆光するものです。

「被災した福島を復興させよう」と謳いながら、軍民一体となって軍事産業、核開発、そして戦争のできうる国と、戦争で闘え、他国の人たちを殺戮できる子どもたちを作ろうともしています。
 
それを明らかにすることが起こりました。先日訪米した岸田首相は、イノベ構想の司令塔とされる「福島国際研究教育機構」(エフレイ・浪江町)と米国パシフィック・ノースウエスト国立研究所(PNNL)と覚書を結ぶ確認をしてきました。

PNNLは、広島、長崎に投下された原爆を研究・製造したマンハッタン計画につながるものです。なぜ、3.11以前に広島、長崎の甚大な原爆被害にあった私たちが、再度、その首謀者とともに歩んでいく必要があるのでしょう。和田さんはこうした日米が進めるエフレイとPNNLの連携強化について「マンハッタン計画とのかかわりを考えれば、PNNLとの連携は日本が核兵器を肯定する。あり得ない。台湾や中国との戦争を想定するアメリカが日本を巻き込みたいだけだ」と懸念を示しています。

福島イノベーション・コースト構想については、これだけでは説明がたりません。和田央子さんのお話の10分の1も説明出来ていません。私もまだまだ学習する必要があります。皆さんもぜひ、被災地の福島で何が起こっているかを知ってください!

なお、「西成青い空カンパ」では久々の講演会でしたが、遠い福島から和田央子さんをお招き出来て、本当によかったです。

これからもイノベ構想を注視していきましょう。イノベ構想に騙されないぞ!!

講演会後はなで行われた親睦会で(写真提供=Eiji Etoh)

和田央子さんを囲んで(写真提供=とばりあかりさん)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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