◆ピョンヤンの大使館街 ──「アジアひとりぼっち」の日本

ピョンヤンは大同江をはさんで西ピョンヤンと東ピョンヤンに区分されるが、東ピョンヤンの広大な一角には諸外国の大使館街がある。早くから外交関係を持つロシアや中国は都心部の西ピョンヤンに独自に大使館を持ち、大きな敷地には大使館員子女のための学校、大使館員アパートなど諸施設まである。

 

ASEAN(東南アジア諸国連合)の旗

東ピョンヤンの大使館街に一歩足を踏み入れるとすぐ左手にフィリピンとカンボジアの大使館が並び道路を挟んで右手にベトナム大使館、まずアジアのこの三つが並んでいる。庭にはそれぞれの国旗と共にASEAN旗、この2本の旗が翻っている。それは「自分たちは東南アジア諸国連合-アジアなのだ」と誇り高く自己主張しているように見える。

周知のようにASEANは主権尊重、内政不干渉、紛争の対話による解決を憲章に謳い、この憲章に従って成員国への軍事的威嚇や制裁など力の行使の否定、覇権主義的行動排除の脱覇権地域共同体だ。

ASEAN成員国はじめアジア諸国はみな朝鮮と外交関係を持っているが、大使館がないのは日本だけ。例外的にミャンマーはある事件を契機にいま国交途絶はしているが元来、外交関係にあった国だ。

ピョンヤンの大使館街から見れば、「太平洋ひとりぼっち」ヨットの堀江謙一さんにならえば“「アジアひとりぼっち」の日本”という構図が浮かび上がる。

それは日本にいれば決して感じることのない光景だろう。でもピョンヤンから見れば「アジアひとりぼっち」というのが日本の置かれた位置だという厳然たる事実もあるのだ。

これが「アナザーサイド of 日本」、いや現在の日本のアジアでの位置、日本では目に見えにくい「本当の位置」を雄弁に物語っているのではないかと私は思う。

それはどういうことなのだろう?

◆戦後も「アジアの外の日本」は変わらなかった

敗戦でアメリカには頭を下げたが、アジアには頭を下げなかった日本。これが戦後日本のアジアでの立ち位置を決めた。

明治の近代初期に朝鮮の革命家・金玉均(キムオクキュン)などを助けた福沢諭吉だが、福沢は彼らの「維新革命」失敗を見て、アジア東方の友人に日本のような近代化「維新」断行のできる志士は出ないと結論を下し「脱亜入欧」を唱えた。

それは「アジア東方の悪友を謝絶する」、「西洋の良友と進退を共にし、西洋人の接する風に従ってアジアに処す」というものだった。以後のわが国は欧米帝国主義列強の列に入り、「西洋人の接する風に従って」アジアを植民地支配の対象とする「大日本帝国」として登場、この時からわが国は「アジアの外の日本」になった。

「アジアの外の日本」、それはアジアに頭を下げなかったことで戦後も変わらなかった。

わが国は「アジアで唯一のG7成員国」、欧米と並ぶ「先進国の一員」だということを多くの日本人が誇りと思ってきた。それは戦後、日本は日米安保基軸の下で「軍事は米国に任せ日本は経済に注力する」吉田ドクトリン路線で「軍国主義をやらず平和的経済発展を成し遂げ先進国隊列に入った」とされる「誇り」から来るものだろう。

でも「G7成員国」ということ、それは戦後も「脱亜入欧」、帝国主義列強の列から離れなかった、「アジアの外の日本」であり続けたことを意味し、決して胸を張れることではないと思う。

「軍事は米国にませる」だけではすまなくなった戦後日本の大きな転機を迎えている今日、そのことがますます明確になりつつある。

今年初めのある事件はこのことを考えさせるものだ。

県立公園、群馬の森にある朝鮮人追悼碑「記憶 反省 そして友好」は、群馬県により行政代執行という形で強制撤去された。理由は、日韓、日朝友好の象徴であるべきものが「政治的対立を生むものになっている」からというのが山本一太知事の説明だった。

元徴用工への賠償金支払いなど歴史認識問題が日韓政府間対立の原因になったことを念頭に置いたものだろう。朝鮮への植民地支配の根拠となった韓国併合条約を当時の国際法上は合法とし、慰安婦や徴用工への賠償問題は日韓条約締結時に解決済みという日本政府の立場を代弁するものだ。

山本一太・群馬県知事が言うような朝鮮人追悼碑自体に日韓間の政治的対立の原因があるのではない、歴史認識問題で「アジアに頭を下げない」、「アジアの外の日本」にこそ両国間の根深い対立の原因がある。


◎[参考動画]「群馬の森」朝鮮人追悼碑が撤去に 「記憶 反省 友好」の思いはどこへ【報道特集】(TBS 2024/02/18)

この「アジアの外の日本」を後押しするのが米国だ。朝鮮人追悼碑のような日韓間の政治的対立を生むような歴史認識問題を排除して日米韓軍事同盟強化による対中国、対朝鮮対決の軍事包囲網完成を急いでいるのが米国だ。

昨年、韓国の尹錫悦(ユンソクヨル)大統領が元徴用工への賠償金を日本企業に代わって韓国の財団が立て替えるという形で韓国国民の反発を無視してでも日本政府に譲歩した。結果、日韓政府関係は好転、日韓首脳会談開催にこぎつけたことは周知の事実だ。

日韓首脳会談決定直後、いち早く日韓正常化の動きを歓迎する米政府が「“核の傘”日米韓協議体」創設を日韓に打診していることを読売新聞は一面トップで伝えた。

歴史認識問題を日韓関係の「政治的対立を生むものにするな」というのは他ならぬ米国の要求だということだ。

アジアにおける米覇権秩序のお陰をこうむって海外権益を拡大する「アジアの外の日本」、敗戦後もアジアに頭を下げずアメリカだけに頭を下げることによって、戦前同様の「脱亜入欧」覇権主義を日米基軸・対米従属という形で継続してきたわが国、これが戦後日本の「米国についていけば何とかなる」生存方式となって今日に至っている。しかしこの「アジアの外の日本」はいま大きな軋(きし)みを生じだしている。

4月の岸田首相の国賓訪米、米議会での演説、日米首脳会談での合意事項、またそれ以降の「新しい戦前」への急傾斜と言われる最近の事象はそれをひしひしと感じさせるものだ。

◆日仏共同軍事訓練合意とニューカレドニア暴動を考える

国賓訪米を終えた5月、岸田首相はフランスを訪問、自衛隊と仏軍の共同訓練をしやすくする「円滑化協定」締結に合意した。なぜ自衛隊と仏軍の共同訓練なのか? 「インド太平洋地域の平和と安定に貢献」のためだということだ。

なんでフランスがインド太平洋地域に利害と関心を持つのか? 

岸田訪仏から約2週間後に起きたニューカレドニアでの暴動でその理由の一端がわかる。

暴動の原因は仏マクロン政権がニューカレドニアの選挙で仏系住民の投票権拡大のための憲法改正を企てたことだ。先住民カナク人には独立気運が高まっているが、他方でフランス人の殖民化を進めるフランス政府の選挙制度改変施策によって増加一途の仏系住民にカナク人の発言権を押さえられ独立が遠のくことへの反発から暴動に発展した。現在もカナク人若者による道路封鎖など抗議行動が続いている。仏国内でもこの憲法改正を見送るべきだとの声が上がっている。


◎[参考動画]ニューカレドニアに非常事態宣言 暴動激化で4人死亡(テレ東BIZ 2024年5月16日)

恥ずかしながら私は今回の暴動でニューカレドニアがいまもフランスの植民地だったことを知った。

日本では西南太平洋、メラネシアに属する「天国に一番近い島」だとか観光名所として知られているニューカレドニアだが、いまなお「仏領」、すなわちフランスの植民地ということはあまり知られていない。

調べてみると、鉱物資源が豊富で、特に電気自動車のバッテリーに欠かせないニッケル生産量ではかつては世界一、いまは三位を誇るという。他にクロム、鉄鋼、マンガン、金、銀、鉛の埋蔵が豊富な島なのだ。仏政府にとっては自分の「海外領土」、植民地としておいしい資源豊富な島、だから独立を要求するカナク人の声を抑えたい。それがマクロンをして今回の仏系住民に投票権を拡大する憲法改正を急がせたのだろう。

フランスはいまもこの地域における「植民地帝国」である。南インド洋にはレユニオン、マイヨットなど、そして南太平洋にはニューカレドニア、仏領ポリネシアなど「海外領土」が広く散在する。この植民地群の存在によってフランスはこの地域を含めた自国の排他的経済水域(EEZ)において米国に次ぐ世界第二位の地位にある。フランスはこの広大な水域でポリネシアに太平洋管区司令官、ニューカレドニアに軍高等司令官を置き軍事行動も自由に行っている。

フランスはこの海域に核戦力配備の原子力潜水艦を常時運航させている。フランスの保有する核弾頭は280発、そのうち240発は潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)とされており、フランスの原潜はインド太平洋地域の核抑止力、核威嚇の機能を果たしている。今回の日仏共同軍事訓練「円滑化協定」合意はこうした背景下でなされたものだ。

日仏政府が「インド太平洋の平和と安定に貢献」目的で共同軍事訓練を行う目的は主として対中対決にある。

近年、中国と太平洋島嶼(とうしょ)諸国との関係拡大にこの地域を支配してきた米国は神経をとがらせており、日本を押し立ててこれら島嶼諸国の切り崩しを図るための会議をやらせた。しかし会議に参加した首脳は少なく、ほとんどが外相クラスを送るという「おつきあい」程度の低調なものに終わった。

こうした事態の展開に焦りを募らせているのが米国だ。そんな米国がこの地域に利害関係を持つフランスを巻き込もうとするのは当然だろう。岸田政権はそのお先棒を担いで仏政府と共同軍事訓練を行うための「円滑化協定」を合意したのだ。

新たな日仏政府の軍事協力強化、それは「国際秩序の変更を迫る修正主義勢力」中国に対する米国の新冷戦戦略の一環であることは明確だ。

米国はじめ「G7先進国」グループはかつての帝国主義列強諸国、どの国も自分の植民地主義に対し反省する気はない。それを「パックス・アメリカーナ」と形を変えていまも続けるのが覇権国家の生存方式、宿命だから当然だろう。

ゆえにかつて植民地支配に苦しめられたグローバルサウスと呼ばれる発展途上諸国はG7から離れていく。いまは「G7・先進国」依存の旧弊を脱し脱覇権、主権尊重、内政不干渉に理解を示す中ロに接近、自身もまた各大陸別の地域共同体やBRICsなど独自の国際協力機構を通じ、自主独立傾向を強めていっている。

フランスとの関係では西アフリカのニジェールで若手将校たちによるクーデターで生まれた新政権は駐屯仏軍を追い出した。同様にチャドやブルキナファッソでも反仏政権が誕生した。このようにウクライナやガザ以外の地域でもG7は孤立を深めている。

いまやもういくらあがいても米国の主導する現代版植民地主義の「G7」覇権国際秩序は崩壊の瀬戸際に立たされている。あがけばあがくほどその瓦解速度を早めていくだろう。

◆欧州まで総動員の「中国征伐」、まるで幕末の長州征伐戦争

1960年代中葉、ボブ・ディランは次のように歌った。

線は引かれ コースは決められ
遅い者が つぎには速くなる
いまが 過去になるように 
秩序は 急速にうすれつつある
いまの一番は あとでびりっかすになる
とにかく時代は 変わりつつあるんだから


◎[参考動画]Bob Dylan – The Times They Are A-Changin’ | 時代は変る(1964年)(Sony Music Japan)

若きボブ・ディランを押しも押されもしないプロテスト・シンガーにした”The Times They Are a-Changin'”(時代は変わる)の歌詞の一節だ。当時、「ならあっちに行ってやる」の私の心、「戦後日本はおかしい」に強く共鳴する歌だった。ボブ・ディランが大好きになった歌でもある。

60年前の歌詞「いまの一番は あとでびりっかすになる」、それはいま「衰退一途の覇権帝国・米国のことを歌ったもの」と言ってもちっともおかしくない。

「いまトラ」の言われる中、ある番組で小谷哲男・明海大学教授(アメリカ政治専門)はこう語った。

「トランプは“ウクライナはゼッタイ勝てない、自分が大統領になったらすぐに戦争を終わらせる。そして対中国に力を集中する”と語っている」と。

「対中国に力を集中する」というトランプのこの発言は、いま中国、ウクライナ、ガザの3正面作戦を強いられ為す術のない米国の苦境を物語るものだ。この苦境脱出の戦略が「対中国に力を集中する」だ。

このことと関連して言えば、最近、欧州諸国がインド太平洋地域への対中対決のための軍事的進出を強化する方向で動いている。

 

欧州まで総動員の『中国征伐』

6月1日、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)の会合でフランス国防相は仏領ニューカレドニアを念頭に「太平洋に海外領土を持つフランスは太平洋国家」だと発言したが、この4月に仏海軍のフリゲート艦がフィリピンの南シナ海で米軍と比軍の合同演習に初めて参加、今後は日米比首脳会談での合意に基づき自衛隊もこれに加わる。これに先立ち仏海軍は米軍、オーストラリア軍との合同演習にも参加している。

シャングリラ対話ではオランダ国防相は同国軍のフリゲート艦が台湾海峡を通過したことを表明、元来、台湾海峡通過は非公表が常だったが異例の公表に踏み切った。それは中国にその対決意思を見せつけたということだ。オランダもかつてアジアの植民地帝国だった国だ。

欧州各国による艦艇や航空機のインド太平洋への派遣は活発化の一途をたどっている。

英国は2021年からインド太平洋に常駐させている哨戒艇二隻に加え、今年からは沿岸即応部隊(LRG)、海兵隊を中心に揚陸部隊を初めて展開するという上陸攻撃の実戦部隊派遣をデモンストレーションした。

さらに独仏やスペインの空軍は今夏、戦闘機などを合同で派遣し、日本や豪州、インドとの訓練を予定している。

このように米国は対中対決の軍事包囲網形成をインド太平洋地域に欧州各国の軍事資産を総動員してまでも急いでいる、「中国征伐」のために。

これは私の勝手な推量だが、こうした事態の進展は徳川幕府「ご瓦解」の発端となった長州征伐、幕長戦争を彷彿させる。

 

西洋式軍装に身を包んだ幕府軍(1865年)

幕府側は西国諸藩から征長軍を募り二度の幕長戦争を敢行したが、第二次征長戦争で15万の幕府軍がわずか数千の長州軍に惨敗を喫した。長州防衛、倒幕の意気盛んな長州軍と寄せ集めの幕府軍とでは志気の上でも格段の差があった。

また、大村益次郎の兵制改革による武士団に加えての高杉晋作率いる奇兵隊はじめ「国民軍」の軽装歩兵の重い鎧をまとった幕府軍に対する優位性、また旧式ゲベール銃の幕府軍に対する精密長射程のライフル式スナイドル銃の「国民軍」に対しては武装の上でも「幕府軍」はもはや敵ではなかった。

幕長戦争から類推すれば、インド太平洋地域の日米安保、日米韓、日米比、クアッド(Quad)、AUKUSなどにさらに欧州NATO各国まで加えた寄せ集めの米覇権帝国「幕府軍」は束になっても中国はびくともしないだろう。

志気の上では「祖国防衛」の意気高い中国と「祖国防衛」とは縁遠い「覇権秩序維持」、既得権防衛の打算で動く「寄せ集め」軍では全く相手にならないだろう。また武装の側面でも米「幕府軍」は中国軍に劣る。射程500~5,500kmクラスの中距離ミサル保有量では中国軍に及ばず、質的に見ても中国軍の「空母キラー」地対艦ミサイル、変速軌道を描く極超音速ミサイルなど最新鋭ミサイルは米「幕府軍」にはない。

長州征伐・幕長戦争が徳川幕府「ご瓦解」の前兆になったが、この欧州まで総動員の「中国征伐」企図は、それ自体が米覇権帝国「幕府ご瓦解」の前兆であると私は思う。

◆戦後日本の革命は脱G7・「アジアの内の日本」

「ウクライナはゼッタイ(ロシアに)勝てない」と断言するトランプ(バイデンも内心、そう思っている)だが、だからといって「中国には勝てる」という打算があるわけではない、いや全く自信がないというのが真実だろう。でも「中国征伐」はやらなければならない。「中国、ロシアは国際秩序変更を迫る危険な修正主義勢力」であり、さらにグローバルサウスもこれに同調して事態はますます悪化、「じり貧」一方だ。これを放置することは戦後世界に生き残った現代版植民地主義、「米覇権秩序」・G7主導の国際秩序の瓦解を意味し、それは帝国主義的覇権主義の終局的「死刑宣告」を意味するからだ。

いまや「新しい戦前」のわが国だが、戦後のこれまでは米国による数々の「征伐戦争」への本格参加はない。「憲法9条平和国家」日本の看板は汚れているとはいえアジア諸国からはそれほど危険視されない根拠になっている。また他のグローバルサウス諸国にも日本への警戒心はさほどない。中国、ロシアもまだ「様子見」状態を維持している。これが米国の数々の征伐戦争に手を汚してきた他のG7諸国とわが国の決定的違いだ。

しかしながら米覇権秩序・G7秩序の「ご瓦解」を前に勝ち目のない「中国征伐」戦争への本格参加、ウクライナのように対中代理戦争までやらされてまで無理心中覇権に付き合うのか否か、いまわが国はまさに瀬戸際に立たされている。

いまなら遅くはないはずだ。

いまこそ決断の時、「戦後日本の革命」の時! 「なんであの時、あんなバカなことをやったのか!」と後の世代に糾弾されないためにも、いまが決断の時であると思う。

戦後日本の革命、その基本課題は日米基軸からの転換だが、それは日本が覇権国家であることをやめるという意思表示でもある。その側面から見れば、明治の大日本帝国以来の「脱亜入欧」からの脱却、戦後の今日、それは「脱G7」、「アジアの外の日本」から「アジアの内の日本」への大きな歴史的転換だと言える。

以上のことが、「ピョンヤンから感じる時代の風」に吹かれていま切実に私が思い、かつ半世紀前、共に闘った同世代と何よりも未来を託す日本の若者たちに訴えたいことだ。


◎[参考動画]パレスチナの解放訴え 東大生ら500人が反イスラエルデモ(ANN 2024年5月17日)

いま「ガザ大虐殺」に異を唱え、米主導のG7・覇権主義への疑問が広がり、大学生たちをはじめ若者が新しい闘いを展開している。

希望はある。

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

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2024年7月7日執行の東京都知事選挙では、前安芸高田市長の石丸伸二さんが「小池百合子VS蓮舫」の(日本の女性政治家だけでなく現代の東京を代表する政治家)いわば「横綱対決」に割って入り、台風の目となっています。

◆期待していた人も「東京へ行くのは残念」、コミュニケーション不足指摘の声も多く

さて、この石丸伸二さん。地元・安芸高田市を含む広島都市圏での評判はどうなのでしょうか? 筆者は、安芸高田市内に本社を置く病院や高齢者施設を運営する企業に2011年から3年間、勤務したことがある「元在勤者」です。また、石丸氏の出身高校の地元である地域を政治活動上の地盤としています。そうした人的ネットワークを活かし、電話や対面、SNSメッセージなどで取材を行いました。

正直、ポジティブな意見は、安芸高田市を含む広島3区では、リアルでもあまり、うかがわないのです。ただ、若手の市役所職員や教員の間には、石丸さんを惜しむ声もあったそうです。

他方で、安芸高田市から少し離れた呉市とか、県東部では、石丸さんに期待する声も結構あります。

ただ、石丸さんに期待している人でも、

「もっと安芸高田市で頑張ってくれたらいいのに。」

「広島県内で頑張ればいいのに、東京なんか行って何を考えているのだ?」

というご意見が多くなっています。

また、

「石丸さんはお勉強ができるけれども、地元の人たちは振り回されるだけだったのではないか?」(安芸高田市出身、広島市在住の70代男性)

「最後まで、地元の人とすれ違いになってしまったのではないか?」(石丸さんの出身高校近くで店を開く60代女性)

など、石丸さんのコミュニケーション不足を指摘する声も多く上がっています。

◆台風時にトライアスロン参加を優先し、安芸高田市を不在にしていた市長 ── 地道に頑張っている「同年代」から「嫌いになった」の声も

一方で、石丸さんに対して批判的な声も多くあります。一つは、安芸高田市内で農業を営み、消防団の元分団長もされた40代男性の声です。石丸さんとは同年代。故郷(ふるさと)のために地道に頑張っておられる方です。

2022年9月、西日本に台風14号が接近しました。この時、石丸市長(当時)は千葉県へトライアスロン競技に参加するために安芸高田市を不在にしていたのです。そのことを後に議会でとがめられると、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」と開き直られたのが石丸さんです。

この元分団長は、以下のように発言されています。
 

「みなさんのお住いの行政組織図(機構図)を見ていただくとわかるように、消防本部の上をたどると市長がトップになっていると思います。

市長は消防機関の長を通じて指揮監督を行う立場にあるのです。これにはもちろん消防団も含まれます。

災害出動、それも「過去に例がないほどの大型台風」ともなれば最悪人命に関わることは簡単に想像できるでしょう。

市民の命と財産を守るためとはいえ、消防職団員にも命の危険がある災害出動を命令しなければならない立場というのは私には想像もつきません。

そんな立場にある人間が、ただただ詰問された議員に反省の弁もなく、「プライベートを詮索されるというのは大変に気持ちが悪いのでやめていただきたいと思います。」「はっきり言ってキモいです。」

信じられない発言です。前もって指示をだしているから大丈夫?あなたは市民の命を財産を守る立場にいるのではないですか?人の命の重さを全く感じさせない言動は吐き気を催します。

大規模災害が想定される場合、消防団員は防災センターに詰めて出動命令を待つこともあるでしょう。

消防団員は非常勤特別職の地方公務員とされていますが、普通にサラリーマンだったり、農家だったり鳶職人だったりします。分団長は階級があるとはいえ、分団員に出動命令(お願い)する立場です。

そんな人たちに災害対応させておいて、自分はプライベートでトライアスロン? まったく、全然理解できません。万が一、そんな時に自分の所属する分団員が災害対応によって落命したとしたら、絶対に、絶対に納得できません。許せません。」

 

安芸高田市に隣接する広島市北部の安佐南区沼田町吉山。台風14号で大きな被害が出た(2023年5月筆者撮影)

◎[引用元]「私は、こうして石丸伸二さんを嫌いになりました。」(seijiさんの2024年6月23日付note) 

まったくそのとおりです。消防団員は非常勤特別職の地方公務員ですが、いわば雀の涙の報酬でやっているボランティアです。確かに、トップが不在だったら機能しない行政機構はまずい。しかし、一方で、では、トップが台風接近中だというのに、行き先も告げずに自治体を不在にするのもいかがなものか?
 
この台風14号では、安芸高田市に隣接する広島市北部でも大きな被害が出ています。この地区ではがけ崩れ寸前になっているような場所もあったのです。ただ、幸い、死傷者がでるようなことがなかったのが不幸中の幸いでした。

また、同じく当時広島県北部の建設会社の支社に勤務していた男性によると、

「あの時の安芸高田市高宮エリアに現場があったが、道が刳れるような被害だったし、現場詰め所が流されるところだった。

自分は免除だったけど上の人は非常呼集されたぐらいだ。だから、(石丸さんのことは)最初から信用していない。」

と証言しています。


◎[参考動画]最高傑作!石丸市長 10手先を読む戦略がトライアスロン(取材不足 2024年6月1日)

◆市議会・新聞批判に県議批判まで 広報「あきたかた」の異常

安芸高田市民の60代の女性は安芸高田市の広報「あきたかた」が異常だ、と呆れておられます。

実際に拝見してみると、異常さが分かります。市議会や地元新聞と石丸市長が対立しているのは筆者ら市外の人間もよくわかっています。わかっていますが、わざわざ、税金を使った市の広報紙で地元新聞を名指しで批判するのはいかがなものか?
 
さらに、石丸市長は市民に県政について伝える、と称して、地元選出の玉重県議にインタビューを申し入れ、断られたそうです。そこで、この広報紙には、

「一方で、県議は市長選への立候補を表明した人物を紹介して回っているという情報が届きました。自身の政治活動を優先し、市民への説明責任を劣後させる状況となっています。」

と県議を批判しています。

安芸高田市の広報「あきたかた」の誌面

しかし、県政について伝えるのは、県議自らが、議会報告なり、ご自身の街頭演説なり、すればいいことです。県議の仕事が足りない、有権者が判断すれば、次の選挙でその県議を有権者が打倒すれば良いだけのことです。

行政の広報紙で特定の県議などを批判するのは、おかしい。石丸氏は、「政治屋を一掃する」と言っておられますが、行政とご自身の政治活動を混同する政治屋はご自身ではないのか? 反省していただきたいものです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは7月号の注目記事2本の一部を紹介します。

◆送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ!
 ◎広瀬 隆(作家)

 

 

「リニア新幹線の超危険プロジェクト」と銘打った作家・広瀬隆氏の全6回のユーチューブ動画から、今月号では、リニアと原発の一体性を明かした「⑥電力消費激増と原発再稼働(最終回)」を編集し、紹介する。本誌6月号では⑤の電磁波問題を採り上げたが、そこでも広瀬氏が強調していたとおり、最も重要なことは、「リニアが開業延期されても、JR東海の失敗と断念を待っていてはいけない。今すぐ工事をやめさせ、自然破壊を止める」ということだ。動画にはより詳細なデータが満載なので、あわせてご覧いただきたい。(構成・文責/編集部)

 3・11直後の火事場泥棒

リニアをめぐる不条理に枚挙の暇はありません。まず、そもそも計画の進め方が不条理でした。リニア中央新幹線計画の公式の最終答申が出されたのは2011年4月21日です。この日の1カ月ほど前、3月11日に東日本大震災が起こり、東京電力福島第一原発の原子炉が次々と爆発しました。日本破局の大惨事の最中です。
 
そのどさくさに紛れて計画を審議する国土交通省交通政策審議会の中央新幹線小委員会(委員長=家田均東京大学教授)は最終答申案をまとめ、「南アルプスルート」「超電導リニア方式」でのリニア中央新幹線の建設を明記・公表したのです。

もちろん、リニアのプロジェクトは以前からあって、宮崎県では実験線を敷設しています。その際、JR東海は何と言ってこれを進めてきたか?「東海道新幹線の東京―大阪間の輸送能力が限界に近い。バイパス(迂回路)としてリニア中央新幹線を敷設する必要がある」と表明したのです。

自動車ならばバイパス道路は必要ですが、鉄道のバイパスなど、全世界でも例がありません。JR東海はそんな非常識なことを公言したのです。しかもJR東海は御用学者の東大教授たちを連れてきて答申案をまとめながら、国交省鉄道局によるパブリックコメント、いわゆる世論の意見公募を求めました。その結果が2011年5月12日に報告されたのですが、当時は東日本大震災から2カ月後で、「JR東海が言うように中央新幹線を早期に整備すべきだ」を支持した人はわずか106人。対して「リニアに反対、または計画を中止、または再検討とすべき」という人は648人と、パブコメの97%がリニア建設に反対しました。ところが5月26日には整備計画が決定され、営業および建設主体にJR東海が指名されました。

続いて6月7日にはJR東海が中間駅の候補地案を公表して、勝手に話を進めていきます。震災と原発事故の大惨事で日本中があたふたしているその間にJR東海はリニア建設を決定した。まさに火事場泥棒です。

JR東海と行政が住民に初めて説明会を開いたのは計画発表から2年が経った2013年5月。住民にとっては寝耳に水でした。
 
そもそも国交省が環境アセスメント(環境影響評価)なしに計画を決めること自体が、国の法律に違反しています。なぜこんな無理が通るかというと、JR東海が裏で地元の利権者を懐柔したからです。なにしろ巨大なトンネル工事ですから、事業者や建設業者は儲かります。

でも、本当に地元に多大な利益があるのか? 中間駅の建設費5900億円は地元負担が前提です。しかも、リニアの多くの乗客は東京と名古屋の大都市間を迅速に往復するのが多数派ですから、中間駅で降りる客などほとんどいない。つまり中間駅にはほとんど利益をもたらしません。

リニア新幹線は時速500キロという高速走行が売りです。だから、可能な限りまっすぐトンネルを掘るという工事です。しかし、これは自然界から見れば無謀です。しかも、路線の8割がトンネルで外の景色はほとんど見えない。誰がそんな不愉快な鉄道に乗りたいですか? 電磁波まで浴びせられる列車にまともな人は乗りません。

このままではまずいということで、リニア建設に反対する人たちは2016年5月に「ストップ・リニア!訴訟団」を結成しました。そして、「国交省の認可は行政庁の裁量権の範囲を超えている。住民無視の国法違反だ」として行政訴訟を起こしています。

ちなみに2010年12月、中国の新幹線走行実験では、日本の川崎重工業製の従来の新幹線車両をベースにした「和諧号」が、486キロという驚異的な時速を記録しました。リニアの最高時速は500キロの予定ですが、日本企業がつくった「和諧号」が時速486キロを出した時点で、高速鉄道がリニアでなければならない理由・動機はとうの昔に吹き飛びました。

 岐阜県では東濃ウラン鉱山の悪夢再び

岐阜県では、寝ていた子が叩き起こされるような事件が起こっています。

同県内の停車予定駅である中津川には東濃(とうのう)ウラン鉱山(閉山措置中)があります。2003年4月、この近くの可児市の東海環状自動車道トンネル掘削土の処分場から流れ出た酸性汚染水によって、木曽川水系の一級河川である久々利川の水系で、マスやアマゴといった魚が約1000匹も死ぬという事件が起こりました。

この一帯は瑞浪市と御嵩町と土岐市にまたがって東濃ウラン鉱床が分布しています。東濃のウランは岡山県の人形峠と並んで原子力産業にとって最も重要な鉱床です。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n71fc4fb5a95f

◆ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか
 取材・文◎青柳貞一郎(医師・軍事ジャーナリスト)

 

 

 ウクライナ代理戦争の総力戦

軍事や戦術はリアリズムに基づいており、大手メディアが作り上げた物語(ナラティブ)に沿って、ウクライナ戦争やイスラエルのガザ侵攻を一方的な善悪の物語で論ずると、ロシアの優勢やイスラエルの失敗が「悪の勝利」でしか語られなくなってしまいます。

本来紛争には双方に言い分(正義)があり、武力を伴う戦争は外交の一手段にすぎません。客観的な事実の積み上げで双方が譲歩できる終結(off ramp strategy=出口戦略)を探ることが、国際政治の基本なのです。

これから論じる内容を理解するうえで、共有したい前提があります。それは約60年前のベトナム戦争が、米欧西側陣営と当時のソ連を中心とする社会主義陣営の代理戦争であったのと同様、今回のウクライナ戦争は同じ資本主義を標榜する米欧を中心とする「グローバリズム陣営」と、ロシア・中国・BRICS諸国など「グローバルサウス」と呼ばれる「多極主義陣営」の代理戦争であるという認識です。

両者の線引きは、ウクライナ戦争が開始された時にロシアに対する経済制裁に加わった国とそうでない国で分けられるとみて差し支えないでしょう。そして、戦争自体は西側諸国全体の経済と、ロシア及びロシアに協力する国々全体の経済をバックにした総力戦(対称戦争)となっています。

NATO(北大西洋条約機構)諸国は東西冷戦終了後、主な戦力を自分たちの兵力・経済力よりも弱い国や武装勢力(テロ組織)に向け(いわゆる「非対称戦」)、軍の態様もそれに適合するよう変化させてきました。ロシア軍も実はアフガン戦争、チェチェン紛争、シリア内戦への介入を経て大規模な総力戦から非対称戦に改めてきたといえます。

しかしウクライナでは、それとは勝手が異なる結果になりました。

 激変した戦術・用兵思想

2022年2月24日、ウクライナからの独立を主張するドネツク・ルガンスク両共和国の保全、ウクライナの非軍事化・非ナチ化を目標とした、ロシアが「特別軍事作戦(SMO)」と呼ぶ侵攻が開始されました。

しばらくの間は、ウクライナとロシア両軍の戦闘団単位の大きな戦闘が行なわれることはなく、戦術としてはロシアが大兵力を用い、ウクライナは小規模兵力単位でゲリラ戦的な戦いを挑む非対称戦であったといえます。

ロシアの犠牲が最も大きかった時期はこの緒戦であり、ウクライナに供与された西側諸国の精巧な武器でロシアの戦闘車両が次々と破壊されました。

双方の犠牲が多大になり、核を用いた大戦争への発展も危惧された開戦1カ月後の3月末、トルコやイスラエルの仲介で休戦合意がまとめられてロシア・ウクライナ双方が合意に達します。しかし、当時のウクライナ軍の善戦に加え、今後の経済制裁などの総合効果で「勝利」を期待した米欧諸国は、一度成立した和平合意を潰しました。

しかも、ロシアが首都キエフ近郊から撤退した後に発見された多数の市民の遺体を「ロシアによる虐殺」として「ロシア悪玉説」を叫び、徹底抗戦が主導されます。

ロシアは一度撤退した後、東部・南部戦線を構築しなおし、9月には予備役の部分動員をかけて兵力増強を図ります。この時期からロシアは戦時経済体制に移行し、非対称戦から総力戦として、経済も24時間体制で砲弾や軍備生産に切り替え、戦術も変更されていきます。

以下に、この2年間で変化・確認された戦術・用兵思想の例を挙げます。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n301e7bc5aa8d

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植草一秀が暴くニッポン戦争経済体制
大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの
「食料・農業・農村基本法」改悪「食料自給率」を捨てた農水省の愚 高野孟
感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制 高橋清隆
ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか 青柳貞一郎
国会答弁もアメリカ製AI利用に マイクロソフトに乗っ取られた日本政府のAI構想 浜田和幸
送電線と人脈でつながる「原発とリニア」 リニア新幹線の目的は原発の復活だ! 広瀬隆
静岡県知事選で「リニア問題」は本当に問われたのか 横田一
自衛隊指揮権を米軍に委譲 日米一体化きわまる中で“日本人”を問い直す 木村三浩
公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由 足立昌勝
本格化する国家総動員体制 進む民間施設の日米軍事拠点化 浅野健一
米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
続・失言バカ政治家の傾向と対策 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
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東京都知事選挙では、予想外の石丸伸二さんの善戦が伝えられる前は、「小池百合子VS蓮舫」の女性対決とも言われていました。また、男性ではもっと有力候補とされる石丸伸二さんも急進的なLGBT推進派でもいらっしゃいます。

安芸高田市長時代には、マイノリティーへの配慮も理由に婚活事業を廃止しておられます。新自由主義とマイノリティー配慮の交差点が婚活事業廃止ともいえます。ともかく、女性二人と石丸氏が知事選挙の有力候補になる東京都が日本の中では、「進歩的」であるのは間違いありません。

◆「政治」の男女格差は東京が最小、子育て支援も充実

実際に都道府県別の「政治」のジェンダー格差は東京が最小とされています。ちなみに、「教育」は我が広島県が、「行政」は片山前知事や平井知事のご努力で鳥取県が最小です。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240410/k10014416491000.html

「経済」は沖縄県が最小ですが、これは失業率が高く、男性が貧しいという、途上国にありがちな実態が反映されており、注意が必要です。また、神奈川や千葉、埼玉、兵庫あたりだと、「政治」の男女格差は小さいが、「経済」格差は大きいのです。これは、大都市近郊で40年近く前から市議や県議等に市民運動経由でインテリ家庭の専業主婦の方が議員になられる構造があったからです。従ってデータの読み方には注意が必要です。

上記のことを留保した上で、確かにそれでも、東京は進んでいると言えます。「小池百合子政権」のもとで、子育て支援策は日本一であるのも間違いはありません。そうしたことも背景に最近では、若い世代では夫婦ともに外資大手で共稼ぎとか、当たり前になっています。 

◆本当に東京は幸せなのか?「大林さん惨殺事件」の渋谷区

ではそれで、万々歳と言えるのでしょうか? ちょっと違うのではないか? 「勝ち組の女性」には日本一良いかもしれないが、そうではない女性にはどうなのか? 極端かもしれないが、三つの「例」を挙げます。

一つは渋谷区のバス停での大林さん惨殺事件です。

2020年11月16日、広島出身の大林さんと言う女性が、渋谷区内のバス停で野宿をしていたところ、近所の資産家の息子でもある男性に惨殺されるという事件が発生しました。そして、この男性も、逮捕後、保釈中の自死と言う形で「獄死」するという二人の命が失われる悲惨な事件となりました。

この渋谷区長は博報堂出身でLGBT推進派としても有名な長谷部健さん。区長与党の会派は女性議員が8人中5人。バリバリのジェンダー平等に見えた。しかし、一方で、野宿者を公園から追い出し、ナイキに開発させるということも進めていた。

また、長谷部区長の博報堂時代の上司は副区長としてDX行政などでマスコミに天まで持ち上げられていたが、国民民主党の女性区議に対して、「豚呼ばわり」する事件を起こし、辞任しました。また長谷部区長も任命責任は取らない、としました。
ちなみに、この長谷部区長と親しく、連携事業をやっているのが湯崎英彦・広島県知事です。

なお、長谷部区長は、都内首長による小池百合子知事への出馬要請の動きには加わっておられません。背景には、小池知事のバックの電通と、長谷部区長の出身の博報堂の競合がある、とみるべきでしょう。

新自由主義者同士でも喧嘩があるのは不思議ではなく、2010年に湯崎英彦知事が当時は大阪府知事の橋下徹さんと育休を巡り、大喧嘩になったのは有名です。

ちなみに、「渋谷区で石丸氏がトップ」と言う情報もありますが、分かる気はします。新自由主義兼LGBT推進と言う長谷部区長を選んだ渋谷区民が石丸氏に流れてもおかしくはないからです。

とにかく、新自由主義を進めつつのジェンダー平等。これが東京の主流の特徴です。そこでは、確かに、勝ち組とか、権力者(長谷部区長ら)に都合がよい女性には良いかもしれない。

しかし、権力者に都合が悪い女性(豚呼ばわり事件の国民民主党区議など)や、庶民の女性には冷酷な面があることも見落とせないわけです。大林さん惨殺の背景に、そういう雰囲気があったのではないかとは言えます。被疑者の男性が裁判の結果を待たずに自死したのも、いかにも新自由主義的な結末です。

◆サービス充実の裏で非正規は使い捨て

もう一つは何度か取り上げている小池政権による「スクールカウンセラー」(SC)の雇止めです。校長先生や保護者の評判がいいSCまで雇止め。そして、公募に応募させ、試験を受けさせたうえで不合格。子どもたちにも衝撃が走っています。

結局、子育て支援と言いながら、子どもに関わる労働者は使い捨て。それも非正規で、ということだ。蓮舫候補が、専門職非正規公務員の正規化を掲げているが、その公約自体は大賛成だ。

(※わたしは、立憲民主党そのものに対しては広島県政での知事ベッタリや、楾先生梯子外し事件を含めて厳しい見方をしているし、蓮舫氏には小池氏とあまり変わらない新自由主義グローバリストだった過去を反省していただきたい。)

◆就職氷河期の女性にも冷たい雰囲気

そして、三番目は、あくまでX上で紹介された民間企業での事例です。ある企業に、氷河期世代の女性が応募してこられました。それなりの有名大学卒業で、ITのスキルもあるのだが、就職氷河期にぶちあたって、非正規の時期も長かった。また、出産に伴い、退職していた時期もあった。

面接官側の30代の男性中間管理職は、「え、なぜ、出産で、退職しないといけないのですか? うちなんか、俺も保育園の送り迎えや家事をやって、妻と共稼ぎですけど。出産で辞めたということは能力がないのでは?」などという趣旨の採用に後ろ向きの発言をし、スレ主の女性管理職にたしなめられたそうです。

いまの30代くらいなら、たしかに小池百合子政権による手厚い支援もあるし、夫である男性の意識もだいぶ違います。しかし、少し前、すなわち10年近く前までは「保育園不足」が言われていました。また、縦の物も横にしないような男性も少なくなかった時代です。やむなく、退職と言う女性もまだ多かったことを知らない若手中間管理職が、氷河期世代の女性の応募者に対応しているのです。その結果、氷河期世代の女性が疎外されるということも起きています。

また、氷河期世代の場合は結婚していないというか、できなかった人も男女問わず多いのです。子育て重視の一方で、そういう人たちが疎外される可能性も今後懸念されます。

◆勝ち組女性で圧倒的な支持の小池氏に対抗するには?

小池氏は、30代の女性で圧倒的な支持があるという。あれだけ子育て世帯にばらまけば、特に勝ち組の30代女性での支持は鉄板どころか劣化ウラン装甲並みになるのはやむを得ません。

しかし、では、40代、50代の女性はどうでしょうか? さらに年配の女性はどうでしょうか?特に非正規雇用で使い捨てにされる女性はどうか? 高齢でも低年金などで働かざるを得ない人もいまや男女問わず多いのです。

人生は子ども時代だけではない。そういう意味で蓮舫氏が、「非正規労働者」に着目したのは良い。

もちろん、過去の蓮舫氏や立憲民主党の新自由主義的姿勢がブーメランで突き刺さってしまうのも事実です。広島県民である筆者は「立憲民主党さん! 広島では自民党の一部議員以上に、湯崎知事ベッタリなのですが?」と突っ込みを入れたいくらいです。

それでも、蓮舫氏・立憲民主党は「非正規労働者」に光を当てる姿勢をブレさせるべきではない。他方で、「若者」にばかり拘り過ぎると、他の年代を取りこぼすことにもなりかねず、もったいないでしょう。

「非正規労働者」は若者だけにあらず、氷河期世代もいれば、高齢者(いわゆるバブル世代もだんだん高齢者に突入しつつある)もいる。また、今となっては厳しいのは非正規だけではもはやありません。正社員でも食料配布に並ぶ時代です。

このままの情勢だと、そうした人たちが小池氏に行かなくても例えば威勢がいい石丸氏に賭けてみよう、ということになるかもしれません。

昔、大阪で、非正規労働者が橋下さんに結構期待したことが思い出されます。筆者はそれを懸念しています。非正規の若者に光をあてたのは良かったので、今後、幅広い世代の現場を地味に支える労働者をおきざりにしない、そういう雰囲気を醸し出せるかどうか。都知事選の終盤を左右するでしょうし、今後の日本社会も左右するでしょう。


◎[参考動画]首都決戦始まる!スウェーデン並みの予算規模「巨大都市東京」の“2重の長”都知事が持つ絶大な権力とは…【サンデーモーニング】|TBS NEWS DIG

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

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◆パリ協定は再エネ・原発推進が目的

パリ協定やIPCCの提言の最大の問題点は、科学的根拠に乏しい「人為的CO2温暖化説」(以下「CO2説」)に基いてCO2を排出しないクリーンエネルギーとして再エネ発電と共に原発を推奨していることである。パリ協定は2015年に原発大国であるフランスで開催されたCOP21で採択された。

 

斎藤幸平『人新世の「資本論」』(集英社新書)

その閉幕にあわせてオランド仏大統領とオバマ米大統領が会談。オバマ氏は化石燃料に頼った経済発展を「汚れた段階」と指摘し、CO2を排出しない「クリーンエネルギー」として再エネや原子力の分野で各国の投資を求めた。(2015年2月1日付『京都新聞』夕刊)

(1)再エネ発電について

まず再エネ発電について斎藤は「グリーン・ニューディールのような政策による国土改造の大型投資は不可欠である。当然、太陽光発電や電気自動車にどんどん切り替えていく必要がある。」(P95)と述べる。このようにSDGsに群がる独占資本を批判しながらも斎藤は太陽光発電や電気自動車の必要性を強調する。

しかし太陽光発電の主力であるメガソーラーは広大な緑の大地を壊す。また家庭用の太陽光パネルはほとんど中国産で安い石炭火力発電の電力で製造されている。太陽光発電はCO2排出を中国などに付け回しているにすぎない。(近藤邦明・前掲)。

また斎藤は、原油のエネルギー収支比は1単位から十単位を得るのに、太陽光は1単位の投資で2.5単位~4.3単位ほどしか得られない。しかし生産力が低下する中で、「労働の中身を、充実した、魅力的なものに変えていくことが重要だというマルクスの主張が再評価されないといけない」と述べる(P305~306)。

しかし太陽光発電のエネルギー効率の低さは石油や石炭などエネルギーの浪費であり、資源枯渇を早めるという意味しかない。資源枯渇を防ぐためには太陽光発電を進めるのではなく、電力に依存する生活を見直し、天然ガス、石油、石炭などの使用を減らして経済成長をマイナスにするしかないのである。そのことは、今後人口減少が著しい日本では十分可能である。

(2)電気自動車について

電気自動車は確かに走行中はCO2を出さないかもしれないが、電力需要の増加をもたらし、発電電力量を現在以上に増やさねばならない。現に昨年12月、政府の総合資源エネルギー調査会基本政策分科会で資源エネルギー庁は2050年の発電電力量について約1.3~1.5兆kwhと推測した。これは2018年の発電電力量より約3~5割多い水準である(橘川武郎『災後日本の電力業』)。そして「CO2削減」を口実にした補助金を目当てに自動車産業が群がっている。

斎藤は「グリーン・ニューディールが本当に目指すべきは破局に繋がる経済成長ではなく、経済のスケールダウンとスローダウンなのである」(P95)と述べるが、電気自動車は脱成長と正反対のものに他ならない。

(3)原発について

IPCCは原発について「成熟した温室効果ガスを出さないベースロード電源」として推奨する。これに対して斎藤は原発を「閉鎖的技術」の代表として「(原発)はセキュリティ上の問題から、一般の人々から隔離され、その情報も秘密裏に管理されなくてはならない。そのことが隠蔽体質に繋がり重大な事故を招いてしまう」(P227)と述べるが、IPCCの見解に対する反論や原発廃絶の緊急性についての言及はない。

一方、斎藤はスウェーデンのグレタ・トゥーンベリをたたえる。彼女は15歳のとき、COP24(2018年)で世界各国の政治家たちに対して「あなたたちが科学に耳を傾けないのはこれまでの暮らしを続けられる解決策しか興味がないからです。」だから「システムそのものを変えるべきだ。」と演説を締めくくった(P40)。

確かに経済成長を止めない限り、環境破壊や資源枯渇は止まらない。しかし、グレタは斎藤と同じくパリ協定やその根拠であるIPCCの報告書を否定しているわけではない。それらが「科学」であるとして、その忠実な履行(「脱炭素」)を政治家たちに求めているのである。

グレタはCO2の排出を抑えるためにガソリン車でなく電気自動車、飛行機でなく電車で移動する。そうすれば、これまで以上に電力が必要である。しかし、CO2の排出を抑えるためには火力発電は止めなければならない。だから、グレタはフェイスブックで原発について「個人的には反対」としつつも条件付きで「解決策の1つにはなり得る」としていた。そしてグレタの活動が活発になるのに合わせて国際原子力機関(IAEA)は原発再評価を進めようとした(真山仁「温暖化問題」2020年6月16日『朝日新聞』)。このようにグレタは原発推進を目論む資本の広告塔にされてしまった。

しかし、原発こそが最大の環境破壊である。2014年大飯原発の差止めを求めた元裁判官・樋口英明は「原発問題は間違いなく我が国で最も重要な問題であり、原発事故が起きればすべては水泡に帰すからである。止めるのは論理の帰結。地球温暖化どころの話ではない」(2021年3月7日、大阪での講演のレジュメ)と述べる。

原発が日常的に出す放射能はCO2よりも圧倒的に恐ろしい。しかも使用済み核燃料の処分方法は決まっていない。何よりも事故が起きれば福島第一原発事故のように周辺の住民は被ばくし、故郷を追われる。そして地震列島・日本では次の原発事故が迫っている(2021年2月13日にも震度6強の地震が東北地方を襲い、福島第一原発1、3号機の格納容器の水位は下がったままだ)。

前掲の樋口は「原発を徐々に減らすという考えは一見穏当そうだが、次の地震の発生場所がわからない以上、この考えをとることはできない」(2019年3月15日『週刊金曜日』)と述べる。原発は今すぐ廃絶せねばならない。

グレタをたたえる斎藤はグレタと同じく「CO2説」を「科学」であると信じるからこそ運転中にはCO2を排出しない原発の即時廃絶を主張しないのであると思われる。原発は斎藤のいう「脱成長コミュニズム」にもっとも反する存在である。原発の即時廃絶こそが現在の日本で最も緊急かつ肝要な課題である。

◆おわりに ── 「人為的CO2温暖化説」こそが経済成長を進める原動力である

本書にはマルクスといえば、これまで生産力至上主義者と考える傾向が強かったが、晩年の彼の思想から「脱成長コミュニズム」を読みとる新しい視点がある。そしてSDGsが「経済成長の持続であり、環境破壊や資源枯渇を救わない」との主張には共感できる。

しかし斎藤は、「CO2説」に基く「気候危機」を疑わない。科学的根拠に乏しい「CO2説」は、再エネ発電や原発によって発電電力量を増やして電気自動車やAI化などによる経済成長を進める原動力である。

「CO2説」は斎藤が述べる脱成長コミュニズムにも反する。斎藤は脱成長コミュニズムは晩年のマルクスが「生産力至上主義」や「ヨーロッパ中心主義」を否定して生まれたとする。しかし「CO2説」を唱えるパリ協定は再エネ発電や原発推進による経済成長を目指すものであり、「生産力至上主義」に基くものであることは明らかである。

また、パリ協定はCO2削減を義務づけることでヨーロッパの先進国がその技術的アドバンテージにより後発工業国によって奪われたシェアを奪還することにその目的がある(近藤邦明『検証温暖化』)。このように「CO2説」は「ヨーロッパ中心主義」に立つものである。

斎藤が「脱成長」を主張するのであれば、国連や日本政府・独占資本が進めるSDGsの根拠とされる「CO2説」こそが原発や再エネ発電、EVやAI化推進による環境破壊の根本原因であることを理解すべきであった。

「CO2説」を「信仰」するマスメディアにより「気候危機」が煽られ、官民を挙げた「脱炭素」に向けた取組みが推奨されている。学校などでもSDGsの理念が環境に優しく明るい未来を作ると、多くの若者が活動しているが、原発廃絶こそが現在の日本で最も緊急かつ肝要な課題であることから目をそらされている。

パリ協定やIPCCの「CO2説」は見事にその目的を達成していると言わざるを得ない。「CO2説」を全く疑わない本書はパリ協定やIPCCの提言を補完する。斎藤の言葉を借りれば、「人為的CO2温暖化説」こそが現代版「大衆の阿片」なのである。(本文中敬称略)

◎大今歩「人為的CO2温暖化説」こそが「現代の阿片」──《書評》斎藤幸平『人新世の「資本論」』批判」
〈前編〉「人為的CO2温暖化説」は「気候危機」の科学的根拠になりうるか
〈後編〉「人為的CO2温暖化説」こそが経済成長を進める原動力ではないか

本稿は『NO NUKES voice』(現・季節)29号(2021年9月9日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

覚醒剤使用歴20年の金沢レインボープライド事務局長・奥村兼之助氏が常駐していた施設・かなざわにじのまだが、2023年7月には「ユース部」なる若者の集まりが発足していた。例によってLGBT活動家とズブズブの関係のマスコミが誇らしげに報じるウェブ記事が、今も残っている(https://www.chunichi.co.jp/article/734644)。

「金沢にじのまユース部発足」(2023年7月24日付け中日新聞)。LGBT活動家が「ユース」だのなんだのと外来語を使いたがるのは、市民を煙に巻く意図なのか?

ジェンダー課題 若者語ろう 「金沢にじのま」ユース部発足(中日新聞 2023年7月24日)

LGBTなどの性的少数者らが集う「金沢にじのま」(金沢市池田町)で23日、若者世代による「ユース部あまおと」が発足した。学校や家庭で話しづらいジェンダーや性の多様性について語り合う試み。にじのまでは5月にLGBT当事者の保護者だけの集まりも始まり、それぞれの立場で支え合う輪が広がっている。

金沢にじのまを運営する一般社団法人「金沢レインボープライド」は、2021年から当事者やアライ(理解者)、LGBTに関心を持った市民らが集まる「にじのまカフェ」を毎月開催。多い時では50人近くが集まる一方、共通する境遇や悩みを話し合う場の必要性が高まっていた。

あまおとは、にじのまカフェに参加している大学生有志が運営し、対象は12~25歳。LGBT当事者かどうかは問わず、性のあり方の開示も自由。初回の23日には高校生ら16人が参加し、「自分の普通を押しつけず、相手を尊重する」などのルールを紹介した後、ジェンダーへの考えなどを話題に「LGBTという言葉がひとり歩きしている」「同性婚を合法化してほしい」などの声が上がったという。

ジェンダーの多様性をテーマに探究活動に取り組む金沢泉丘高校二年の北天音(あまね)さん(16)は「ちょっと学校の外に出てみると、同世代で同じような問題意識を持っている人がいると分かった」と話した。運営する金沢大三年の今井瑞季さん(20)は「当事者が悩みを発散するのはもちろん、気軽にジェンダーについて話せる場をつくりたい」と見据えた。今後は二カ月に一回を目安に開くという。

レインボープライド事務局長の奥村兼之助さん(49)は「学生のころに、こういう場があれば」とうらやましがり、「若者と親世代は悩みの方向性、相談する相手が違う。相互に交流できれば」と期待していた。

ユース部の対象は「12~25歳」ということは、最年少の参加者は小学生ということだ。そして、初日には「高校生ら16人が参加」とあり……つまりは主に未成年を集めていた、ということで……。

──最悪である。

地元の親御さんからお預かりした大切な子供たちと接していたゲイ活動家が覚醒剤常習者であったのだから、地域の方々の不安はいかほどだろう。

取材では、この事務局長がコメントしている。

「学生のころに、こういう場があれば」

──いや、ジャンキーが常駐するLGBT団体の施設が他にもあったら、困るっつーの!

「若者と親世代は悩みの方向性、相談する相手が違う。相互に交流できれば」

──だからって、ジャンキーと接することなんか、だれも望んでないっつーの!

バレなければ犯罪に及んでもよいという遵法精神皆無の者が、偉そうになにをのたまっておられるのやら。厚顔無恥とは、このことか。

ところで、LGBT団体が「LGBTユース」を集めることは、よくある話。たとえば、トランス男性活動家・遠藤まめた氏(性自認は男性の身体女性)が代表の「にじーず」の公式サイトの団体紹介ページには、こうある。

2023年には「男子とHすることのある男子あつまれ!」というイベントのキャッチフレーズが問題となったLGBT団体・にじーず

にじーずは10代から23歳までのLGBT(かもしれない人を含む)が集まれるオープンデーを定期開催している一般社団法人です。2016年8月に任意団体として東京で発足し、現在では全国各地に拠点を増やしています。にじーずのミッションは「LGBTの子ども・若者が安心して思春期をサバイバルできるつながりを作ること」です。

近年LGBTという言葉は社会で広く知られるようになりました。しかし当事者の子ども・若者の多くは、学校でも家でも自分のことを安心して話せないと感じています。私たちは性のあり方はもちろんのこと、さまざまなちがいが否定されることがなく、多様な人がいるのがあたりまえの居場所を作ることで、子どもや若者の不安や孤立をなくしたいと考えています。

LGBT団体のこの手の集まりは、若い子のために「親にも言えない悩みを相談できる場」を作る目的があるというのだが、自分たちの思想に染めやすいから子供を集めているのではないかと疑う向きも多い。

海外では、ネットでLGBT活動家やその支持者にグルーミング(日本語では「懐柔」「洗脳」などと訳される)された子供や若者が、自分をトランスジェンダーだと誤認、二次性徴抑制剤(思春期ブロッカー)や異性化ホルモン、乳房切除や生殖器切除などの「ジェンダー肯定医療」へと進み、トランスしてしまった数年後に後悔するという悲劇が頻発している。日本でもLGBT活動家からの激しいバッシングにさらされたアビゲイル・シュライアー『トランスジェンダーになりたい少女たち』(産経新聞出版)にも、それは詳しい。

「男子とHすることのある男子(23歳以下)」を集めたにじーずとdistaの提携イベント(2023年)。distaは「大阪にあるゲイ・バイセクシュアルのためのコミュニティセンター」とのこと。関西の方々からは「歓楽街である堂山町に子供を集めるのか!」と批判された

そもそも、子供は純粋で吸収も速いため、古来、権力者は子供を特定の思想に染めて利用してきた。古くは平家の禿、20世紀にはナチスのヒトラーユーゲント、中国文化大革命の紅衛兵、カンボジアのポル・ポト派の少年兵……。今でも、紛争地域での子供兵士は大きな問題となっている。

しかも、である。かなざわにじのまの「ユース部あまおと」の対象年齢は「12~25歳」とされている。12歳と25歳と言えば、子供と大人だ。セクシュアリティが同じ子供と大人が交流するイベントで、性的なトラブルを未然かつ完全に排除することはできるのだろうか? なんらかの事件が起きたときには、だれがどう責任をとるのだろうか?

かなざわにじのまが「事件現場」とならなくても、LGBT当事者もしくはLGBTに興味がある子供がそこを訪れ、イベントに参加した後の帰路で、悪い大人から目をつけられるようなことは一切なく、危険なことはなにも起きないと断言できるのか? 

たとえスタッフや参加者が不埒な行動に及ばなくとも、よからぬ第三者が性的な興味をいだいて参加者を狙うのではないかという不安を、スタッフはだれ一人として感じないのだろうか? あるいは、なにかが起きても、それは参加者の「自己責任」だとお考えなのか?

「ゲイ・バイセクシュアルのためのコミュニティセンター」distaのXアカウント。所在地は大阪堂山町。ハッテン場に関する情報も得られるらしいが……

以上のような疑問を呈しただけでも、「LGBT差別だ!」とオラつく反差別チンピラが現れる。だが、その手の浅慮の輩に腰が引けるような大人しかいない社会で、子供を守ることができようか。

仮に、「差別だ!」と叫ぶ方々が、子供を集めるLGBTイベントでも一切のリスクはないと主張されるのならば、ぜひ、トラブル回避のためのノウハウをご教示願いたいというものだ。

そもそも、運営施設にジャンキーを常駐させるLGBT団体の、一体なにを信じろと言うのか?

──と、いろいろと疑念が湧いてくるのは当然として。さらに悪いことに、この事件に対する松中権代表や金沢レインボープライドの謝罪がまた、問題視される展開になるのであった。(つづく)

◎森奈津子 LGBT犯罪録 かなざわシャブのま事件
 ── 金沢レインボープライド事務局長が覚醒剤で逮捕

〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50290
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50306
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50381

▼森 奈津子(もり・なつこ)
作家。1966年東京生。立教大学法学部卒。1990年代よりバイセクシュアルであることを公言し、同性愛をテーマにSFや官能小説、ファンタジー、ホラー等を執筆。
Xアカウント https://x.com/MORI_Natsuko
森奈津子 LGBTトピック https://x.com/morinatsu_LGBT

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筆者は、広島県福山市に1975年11月12日に生まれたあと、3週間ほどで東京へ両親とともに移動。大学卒業までを東京で過ごしました。東京は事実上の故郷です。その東京での都知事選挙が6月20日告示されました。

現職の小池百合子さん(自民、公明、国民都連、都民ファースト、連合東京支援)に20年間参院議員を務めた蓮舫さん(立憲、共産、社民支援)、そして筆者の現在の地元の広島県内から殴り込んだ前安芸高田市長・石丸伸二さん、現在は災害ボランティア活動で活躍するタレントの清水国明さん、10年ぶりに都知事選に挑む田母神閣下こと田母神俊雄さんらが挑む構図になった。また、ある政治団体が広告目的で立候補者数の過半数を占める候補を擁立しています。

告示日の前日の小池・蓮舫・石丸・田母神の4人の公開討論会や、これまでの各候補のご主張などを総合的に拝見し、以下のような感想を筆者は抱いています。

今回の都知事選挙の経済政策的な対立軸は以下にあるではないか?と考えます。

「新自由主義グローバリズムを進めつつ、都民サービス充実」を重視する小池都政の路線(平成を象徴する路線)
 vs
「新自由主義グローバリズムを見直しつつ、サービス提供に従事する人・地元中小企業に配慮」する路線

◆「東京一極集中」の富を原資とした小池都政の「豊かなサービス」

最近の都知事は基本的に全国で最も豊かな財政をバックに、大型開発を含む「サービス充実」の道を驀進してきました。21世紀に入り、特に小泉・竹中政権(2001-2006)以降、東京の大手企業に富が集中するような政治が進められてきました。他の地方自治体が四苦八苦する中で、東京都は豊かな税収をバックに、子育て支援や大型開発をやるだけの余裕がありました。

小池知事は、国会議員時代は、いわば新自由主義グローバリストの「青年将校」でした。日本新党、新進党→自由党(小沢一郎さん)→保守党(二階さん)→自民党(小泉さん)と所属する政党や政治の師匠を変えてきました。その時その時の師匠は、各時点で最も新自由主義グローバリズムを進める方でした。その時その時で、自民党本流よりも右から新自由主義グローバリズムを煽ってきたのです。

なお、小沢一郎さんは、30年前はまさに、海外派兵推進(そのために、アジア諸国にはきちんと謝る)&新自由主義のチャンピオンでしたが、のちに民主党内で横路グループと組んだ際に、大幅に社民主義寄りに路線を修正しています。(※若い方の中にはそのことをご存じない方もおられるので、念のため注記しておきます。)

そうして、東京への富の集中に加担した上で、2016年、小池さんは都知事に転進されたのです。その小池百合子知事は、今回の都知事選挙でも無痛分娩補助や第一子からの保育料無料化などを掲げています。

おおざっぱに言えば、新自由主義グローバリズムで東京に集中した富を子育て世帯を中心にばらまいていく、というのが「小池モデル」と言えるでしょう。これは東京だからできること。広島では新自由主義グローバリズムの下で富も人口も流出していますのでこれはとうてい不可能なモデルです。

この小池モデルの問題は、一つは、地方との格差の拡大です。しかし、これは、小池さんが主に小泉政権の目玉閣僚として在籍した国会と霞が関がつくった問題です。その是正は、国政に委ねられるべきでしょう。

国が大幅な再分配強化政策、例えば、大金持ちの資産所得への課税強化、儲かっている大手企業への適切な課税を行う。その一方で、農業など第一次産業の所得保障・価格保障や、地方における公共交通や医療など公共サービスの維持への投資などでしょう。

あるいは、ドイツを見習った中央省庁の地方への移転も、文化庁の京都移転以外でもガンガン進める(官僚の国会答弁はオンラインも可能にするなどいくらでも工夫は出来るだろう)くらいしないと解決は難しいでしょう。

石丸伸二さんが当初言っておられたような「東京を壊す」では、東京都民も広島など地方の住民も不幸せになり、日本全体が壊れて終り、になりかねません。

◆小池知事の大罪 ── 国政・都政通じて非正規増加の先頭に立ってきた「女帝」

もう一つの小池モデルの問題は、現場労働者が割を食ってきた、という点です。

1990年代以降、子育てや高齢化、さらには格差の拡大の中で、人々の悩みは複雑化、多様化しています。介護の問題一つをとっても、いわゆる老老介護から、いまはヤングケアラー・若者ケアラー、ビジネスケアラー、老障介護……。そうした中で、行政需要も爆増しています。もちろん、ITやAIの活用で削減できる手間もあるのはあるのですが、しかし、IT化が進めば、窓口がリアルだけだった時代より人々が気軽に相談に来る(それが悪いこととは言えない)など仕事を増やす面もあるのです。

一方で、小池さんが先頭に立って国政で進めてきた新自由主義グローバリズムの中で、労働者虐待政治とでもいうべき政治が進んできた。民間では日経連(当時)の「新時代の日本的経営」により、非正規雇用が増大。日本の大手企業は新機軸を打ち出すよりも、非正規を増やすことで、コストをカットする方向に走ってしまい、競争力を低下させて現在に至っています。

一方、公共分野では、正規公務員を減らしていく路線が強行されました。広島県の場合は市町村合併を口実に公務員削減が強行されました。それは実際には東京においても、変わりません。行政需要が増えているのに正規公務員を減らしたので、非正規公務員を増やすという結果になります。

特に専門性が高い分野の公務員、すなわちスクールカウンセラーや図書館司書、女性相談員、介護や福祉、医療など幅広い分野で非正規公務員が多くなっています。

◆小池都政の冷酷 ── スクールカウンセラー(SC)大量雇止め 

2020年度からは非正規公務員の待遇を改善すると称して「会計年度任用職員」制度が導入され、退職金やボーナスが支給されるという触れ込みでした。ところが、現実には、いままでは、毎年更新されていたのが3年、4年で雇止めというケースも発生しています。

すなわち、現職の方も一度全員クビになり、公募に応募しないといけないということになったのです。総務省は実際にはそれは義務ではない、と言っています。しかし、各自治体はそういう制度の運用の仕方をしてしまっています。

東京都でもこの2024年3月末、公立学校のスクールカウンセラー(SC)が大量に雇止めされるという事件が起きました。勤務先の校長や先生方、生徒らの評価も良いSCも大量に首になり、大混乱です。こんな状況を招いたA級戦犯は小池知事その人に他なりません。

もちろん、小池の都政の無痛分娩補助や保育園無料化は筆者も大賛成です。しかし、財政が豊かであるなら、それこそ、SCを短時間正規公務員にするとか「も」すべきではないでしょうか?

◆「勝ち組」子育て世帯には良いけれど、「若者」含むサービス提供労働者には冷たい「小池モデル」

総じて、小池都政は、「勝ち組」ないし「中の上」より上の子育て世帯にとってはありがたい都政です。米国や中国の外資、東京都との癒着が指摘される三井不動産など超大手企業などに勤務する夫婦共働き世帯。あるいは、都庁などの正規公務員の夫婦共働き世帯。このあたりまでは、小池都政の恩恵は大きいかもしれません。小池都政が、グローバリストと「連合」の連立政権である以上、そうなるといえばそうかもしれません。

しかし、現場で必死に低賃金・重労働で、介護や福祉、保育、教育などを支える労働者にとっては、小池都政は冷たいとあまりも冷たいと言わざるを得ない。非正規公務員の就職氷河期世代の中には、結婚をあきらめてしまった方も多い。その結果としての出生率「0.99」です。

また、子どもたちにとっても、身近に見る大人である学校や保育園の先生、SCの方々が希望を持てない働き方だったら将来に希望を持てるでしょうか? 貧困対策も不十分です。民間団体の食糧支援に長蛇の列ができるという東京。決して「豊か」とはいえません。

しかも、そこに並んでいるのは、大昔のような野宿者とか失業者が並んでいるイメージとは全く違う。いまや、ごく普通の会社員とか、子育て世帯とか、そういう方が並ぶようになっているのです。

いわゆる子育て支援単体だけは、全国でも異常に充実している東京。しかし、他のことが相対的におろそかになってはいないか? 特に、現場で低賃金・重労働の若者を中心とする労働者に冷たすぎたことのつけが出ていないか?

その結果として、将来の行政サービスの安定的な供給、社会の持続性に赤信号がともっていないか?そのことは、いわゆる「勝ち組」や大手企業正社員・正規公務員共働きなど「中の上」の皆様にもご理解いただきたいのです。

◆蓮舫候補は過去の新自由主義路線の猛省を!

筆者は、蓮舫さんには何度かお会いしたことはあります。同じ候補者を応援するために事務所や広島の街頭に来られた蓮舫氏と握手(最近ではグータッチ)もさせていただいたことはあります。

ただ、蓮舫さんのこれまでの路線は、小池知事に近い「新自由主義グローバリスト」であるという認識です。それも、小池知事のような主体的なそれではなく、立憲民主党に多い「無自覚な新自由主義グローバリスト」ではないか、という思いが強い。

蓮舫氏のようなリベラル派でも新自由主義を進めてしまった人は多くおられるし、広島県政、市政では、それこそ新自由主義の知事や市長を国政ではリベラルと言われる政党の方が持ち上げて、広島維新の会や一部自民党議員などの方がやや距離を置いているありさまです。

そして、そもそも、立憲民主党におられる皆様も小池氏が「排除します」と言うまでは『希望の党』に行く気満々だったことも筆者は忘れていません。この点は、反省していただきたい。

また、立憲民主党さんについては、筆者の盟友である楾大樹先生の梯子を外したという事件のイメージが強く好きになれません。(※詳しくは「茶番選挙 仁義なき候補者選考」をご参照ください。)

◆蓮舫候補の公約=「非正規公務員の順次正規化」「公契約条例」には大賛成

それでも、蓮舫さんの今回の公約に注目したい点はある。一つは「非正規公務員の順次正規化」です。これについては大賛成です。うまく、労働組合の話も聞きながら、制度設計を進めていただきたい。

インターネットでは「公務員試験を受けない者を正規にするのは何事か?!」と蓮舫氏へのアンチのコメントも多くあります。しかし、公務員試験を受けて行政職のえらい人になった人が、では、非正規公務員がしている仕事をできるのでしょうか?

現実に他府県では、災害の時、非正規公務員の方は招集に応じる義務はないので行政職のえらい人だけで災害弱者に対応しますが、えらい人が訳が分からず右往左往してしまった、ということも起きています。現に非正規公務員として働いている専門職の方を優先的に、正規への採用試験(社会人枠)を受けていただく、など制度設計はいろいろしようがあります。今は、役所も昔のような新卒一括採用ではもはやないのですから。

また、蓮舫氏が掲げている「公契約条例」、すなわち、若者がきちんと暮らしていけるように給料をアップすることを都庁の取引先の企業に義務付ける条例も良いと思います。都が、中小企業からきちんとした価格で財やサービス(公共工事も含む)を購入し、企業が若者にきちんとした給料を払う。そういう好循環をつくるべきです。

ここ20~30年、あまりにも行政に関する議論はコストカットに偏りすぎました。経済循環と言う視点が疎かにされたのも大問題です。ただ、これについても、蓮舫氏を含む立憲民主党さんは猛省していただきたい。一時期は自民党以上に、コストカットにこだわったのが民主党~立憲民主党の流れですから。

ただし、過度に「若者」を強調するのもどうかと思う。「中堅世代、シニア世代も含めて現場で働いている人が虐待されている状態であるのを救う。それにより、持続可能で子どもたちも機能が持てる東京を造る」くらいの感じのことをうまく強調された方が良いとは思います。

◆石丸伸二候補は「遅れてやってきた小池」=グローバリストの「青年将校」

さて、前安芸高田市長の石丸伸二さんも都知事選挙に立候補。それなりの支持を集めているというデータもあります。

石丸さんは当初は「東京を壊すことで東京と地方の格差を是正する」という方向性を強く打ち出しておられました。ただ、19日の共同記者会見を拝聴する限り、それはさすがに引っ込めたようです。そのかわり、「政治屋の一掃」ということを掲げられました。ただ、これも注意しないといけない。新自由主義政治家が、人気取りのためにこういうことを言いだすケースが過去に多かったからです。

90年代~00年代は「公務員を打倒」が人気取りのメインでしたが、最近では、「政治家の打倒」「老害の打倒」がウケる傾向があります。そのメインは議員定数の削減です。

石丸さんは安芸高田市長時代に議員定数の半減案を提出し、否決されたことがあります。しかし、現実には定数を減らすと有利になるのは、政策能力がなくても地盤だけは強い、いわゆる腐った議員のほうです。

まともな議員で地盤が弱い人は定数が減ると落選してしまう。そういう傾向があります。もし、都議会で定数を半減したりすればどうなるか? おそらく、地盤が固い議員だけが当選してしまう。政策能力があって志がある人が入り込もうにも、当選は難しくなるでしょう。

そうすると、ますます議会構成は固定化される。議会構成が固定化されるということは意思決定過程、分配が固定化されるということであり、ひいては階層が固定化、格差が拡大するということです。

また、議員は本来、行政をチェックする機能があります。それを減らすということは、行政へのチェック機能を減らすということです。供託金の廃止、大幅引き下げとかで庶民が参入しやすくするという改革なら賛成できますが、石丸さんのような議員定数半減、ではますます庶民から政治は遠のきます。

また、石丸伸二さんが広島県内で大問題となっている産廃処分場問題について、率先して規制に乗り出したということは寡聞にして知りません。この点でも、石丸さんが庶民の味方だと思っている方は認識を改めていただきたい。

むしろ石丸さんは「老害叩き」で溜飲を下げてもらって票を取り、新自由主義グローバリズムを煽る青年将校だと思います。小池氏以上に危険な面もある。ただ、石丸さんが立候補したことで新自由主義グローバリズム票が小池氏から削られ、蓮舫氏が有利になることもあり得るとは思います。

◆「平成」「ポストモダン」が終わるか?

小池百合子さんは、ある意味「平成」を代表するカメレオンな政治家だとも言えます。

グローバリズムを進めつつ、いわゆるジェンダー平等や子育て支援単体は推進。しかし、現場労働者は使い捨て。関東大震災で虐殺された朝鮮人慰霊祭への式辞は中止する一方で、米中などの超大金持ちにはゴマをする。新自由主義グローバリズムとある種の多様性尊重、一方でタカ派路線の組み合わせ。

そうした「平成」「ポストモダン」が終わるかどうか。それが注目される都知事選挙だと思います。


◎[参考動画]玉川徹、都知事選の候補者を直接取材…なぜ立候補?現職との違いは? それぞれの主張【羽鳥慎一モーニングショー】(ANN 2024年6月19日)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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公職選挙法に浮上した「別の問題」“裏金沈没”自民党の悪あがき 山田厚俊
“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由 足立昌勝
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米国覇権の終わりに日米同盟を考える「いまトラ」と岸田自公政権の大罪 小西隆裕
山根明前会長が去っても変わらない日本ボクシング連盟で起きている新たな内紛 片岡亮
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シリーズ日本の冤罪50 大川原化工機事件 山村勇気

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タイトルマッチを控える仁琉丸は担架で運ばれる先行き不安なTKO負け。

その仁琉丸を倒した福岡を主戦場とする大雅は、圧倒の展開から飛びヒザ蹴りで仕留めるインパクトを残した。

前回、旗揚げ興行のトリ、広翔は希羅に攻め倦む判定負け。

新理事に平成の名チャンピオン、土屋ジョー、彩丘亜紗子、熊谷直子が加わる新体制が発表。

◎原点回帰・弐ノ陣 / 6月13日(木)後楽園ホール18:30~20:36
主催:全日本キックボクシング協会 /

(戦績はこの日の結果を含んでいます。出身地、生年月日はデータ不足により不詳です)

◆第8試合 フェザー級 5回戦

全日本スーパーフェザー級3位.仁琉丸(ウルブズスクワッド/56.75kg)
22戦12勝(8KO)10敗
        VS
KING OF STRIKERSフェザー級チャンピオン.大雅(=久保山大雅/MSJ/ 56.65kg)
9戦7勝(5KO)2敗
勝者:大雅 / TKO 1ラウンド2分2秒 / カウント中のレフェリーストップ。
主審:椎名利一

今回はメインイベンターとして富山からやって来た仁琉丸。過去には新日本キックボクシング協会での経歴が主であるが、今回は福岡で活躍する大雅に開始早々から攻められ防戦一方。一気に倒されてしまった。

大雅が圧倒の攻勢、仁琉丸は防戦一方となった

メインイベントが唯一の5回戦だったが、大雅がパンチから距離詰めての首相撲からヒザ蹴り、更にパンチで追い、仁琉丸に反撃のチャンスを与えない右ストレートでグラつかせ、飛びヒザ蹴りを浴びせてTKO勝利に導いた。

勝者の大雅は「チャンスと思ったので、たたみ掛ける感じで自分の戦い方に持って行けたので良かったです。」とコメント。

最後は大雅の飛びヒザ蹴りによる結末となった

福岡のKOSチャンピオンのインパクトが残った大雅、今後も出場が望まれる

◆第7試合 バンタム級3回戦

広翔(稲城/ 53.35 kg)2戦1勝1敗
        VS
希羅(MSJ/ 53.4kg)13戦7勝4敗2分
勝者:希羅 / 判定0-3
主審:和田良覚
副審:竜矢29-30. 勝本剛司28-29. 椎名28-29

広翔はまだ2戦目で、12戦のキャリアある希羅に対して攻めて出れなかったか。初回、パンチと蹴りの様子見から希羅の蹴りの前進で優位に立つも、詰めるパワーが足らず圧倒するには至らない。広翔の右ストレートもチャンスがあったが希羅のリズムを崩せず、僅差ながら希羅の判定勝利。

「希羅は右ミドルを蹴るのが遅いですよ。もっと速く蹴らないと。」という周囲の声もありました。

大雅と同じジム、同じ福岡からやって来た希羅は試合後、「しょぼい試合してしまいました。自分から行かなかったのが反省点です。」と語った。

希羅が上回る経験値でハイキックも効果的に勝利に導いた

圧倒する展開にはならなかったが飛びヒザ蹴りを見せた希羅

◆第6試合 59.0kg契約3回戦

白井嶺虎(バンゲリングベイ/ 58.75kg)5戦3勝2敗
        VS
祐輝(OU-BU/ 59.1→58.9kg)13戦7勝4敗2分
勝者:祐輝 / 判定0-3
主審:少白竜
副審:竜矢28-30. 和田28-29. 椎名28-29

蹴りから首相撲、時折バックハンドブローと圧力は祐輝にあり。白井嶺虎も劣勢には陥らぬよう前進するが、祐輝の主導権支配は変わらない。

祐輝再三のバックハンドブローはインパクトあるが、的確差に欠けクリーンヒットには至らない。

第3ラウンドは両者失速したが、出せる力は出し切って終了。

祐輝はバックハンドブローを多用しヒットは足りなかったがプレッシャーは与えた

経験値が優った祐輝が攻勢を維持して判定勝利

◆第5試合 スーパーライト級3回戦

勇生(=野竹勇生/ウルブズスクワッド/ 63.1kg)4戦3勝(2KO)1分
        VS
滝口遥輝(中島/ 62.8kg)2戦1敗1分
勝者:勇生 / KO 2ラウンド2分20秒
主審:勝本剛司

初回から様子見からすぐにでも倒しに行く姿勢の両者。パンチと蹴りの激しいぶつかり合いはノックアウトのムードが漂う。第2ラウンドには勇生が接近した際のボディーへヒザ蹴りやヒジ打ちで攻勢を維持すると、パンチで効いたか滝口遥輝が俯いたところへパンチからヒザ蹴りを打ち込みノックダウンを奪うと、そのままテンカウントが数えられた。

パンチと蹴りで効いて俯いてしまった滝口遥輝に襲い掛かる勇生

ヒザ蹴りでKOした勇生、今後に期待が掛かる

◆第4試合 ライト級3回戦

山田旬(アウルスポーツ/ 61.0kg)2戦2勝(1KO)
       VS
宮田裕基(MSJ/ 61.0kg)4戦4敗
勝者:山田旬 / TKO 1ラウンド1分7秒
主審:勝本竜矢       

パンチと蹴りの様子見から山田旬がパンチで追うと怯んだ宮田に左ストレートでノックダウンを奪い、更にパンチ連打で倒すとノーカウントのレフェリーストップとなった。

◆第3試合 56.0kg契約3回戦

中村健甚(稲城/ 55.75kg)2戦1敗1分
       VS
土谷哲星(バンゲリングベイ/ 55.85kg)3戦1勝2敗
勝者:土谷哲星 / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)

◆第2試合 フライ級3回戦

横尾空(稲城/ 49.9kg)1戦1勝
       VS
HIROKI(AKIRA-budo school/ 49.7kg)2戦1勝1敗
勝者:横尾空 / 判定3-0 (30-25. 30-26. 30-26)

◆第1試合 51.5kg契約3回戦

ペニコ(MONKEY MAGIC KBS/ 50.9kg)2戦2敗
        VS
小池空(1DEAL/ 51.15kg)1戦1勝
勝者:小池空 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

《取材戦記》

栗芝貴代表の興行総評は、「試合は前回同様に皆が一生懸命で良い試合多くて、ウチ(稲城ジム)の選手含めて協会側の選手が勝ってくれれば良かったんですけど、KOSチャンピオンの大雅選手含めて凄い熱い選手ばかりで興行が盛り上がって良かったです。」

仁琉丸については、「前回のフットワーク見ても凄く良かったから、先日の日曜日に富山のウルブズスクワッドジムまで行って練習風景を見て来たんですけど、仕上がりも良かったんですが、やっぱり勝負となると今日の結果は仕方無いですね。次回の9月6日は予定どおり、瀬川琉と仁琉丸でタイトルマッチやらせます。」と語った。

担架で運ばれた仁琉丸は控室ではしっかり立って会話しており、大きなダメージは避けられた模様。

石川県能登地方出身の勇生は2022年5月に高校生でアマチュア「KNOCK OUT」65kgトーナメントで優勝し、プロに移っているウルブズスクワッドジム所属の選手。出身地も富山県高岡市にあるジムも能登地震の影響も大きかったが、3月16日はNaokiに判定勝利。今回はノックアウト勝利で協会エース格への期待は大きいが、地元の期待を背負っても焦らず経験を積んで頂点を目指して欲しい。

今回の興行では、新体制となった理事が三名紹介されました。土屋ジョー氏、彩丘亜紗子氏、熊谷直子氏がリング上で御挨拶。久々のリング登場となった熊谷直子氏は「選手の皆さんが、このリングで最高に輝けるようにサポートしていきたいです。」と志を語られました。

新体制とはメンバーが入れ替わったことを意味し、パンフレットから消えている名前もありましたが、事情はさておき、原点回帰からプロスポーツとしての確立したキックボクシング競技を目指し、今後もブレずに進みます。

令和の全日本キックボクシング協会、次回プロ興行は9月6日(金)に後楽園ホールに於いて第三弾が開催。メインイベントに全日本スーパーフェザー級王座決定戦が行われます(令和の初代)。その前に同・協会アマチュア大会は7月14日(日)に稲城ジムにて行われます。

新理事に就任した土屋ジョー、彩丘亜紗子、熊谷直子の三名と栗芝貴代表

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

「警察はなんであんなに頑固なのだろうか……」。

6月10日より大阪地裁で始まった裁判員裁判がある。大阪府羽曳野市で2018年2月、当時64歳の男性が刺されて殺された事件で、殺人の犯人として逮捕された山本孝さん(48歳)の裁判だ。事件発生から4年後に逮捕された山本さんは一貫して犯行を否認している。そしてようやく迎えた刑事裁判は、異例の長期審理となるそうだ。

弁護団長を伊賀興一弁護士が務めていることもあり、おつれあいの伊賀カズミさん(国民救援会大阪府支部会長)が青木恵子さんに「傍聴に来て」と依頼していた。青木さんは多忙な中、傍聴にいっていた。

私も行きたいところだが、仕事の時間と重なり行けなかったが、傍聴帰りに店に寄る青木さんにその都度、話を聞いていた。そうしたところ、6月20日の朝、青木さんから「夕方から弁護団が緊急の記者会見をやるそうです。ママは来れないね」とメールが来た。

確か来週月曜日に山本さんの本人尋問が予定されていたはず。なのに、なぜ今日(6月20日)突然に……と思い、私は店を休んで会見に行ってきた。


◎[参考動画]羽曳野市の殺人事件で初公判 被告の男「やっていません」起訴内容を否認(テレビ大阪 2024/06/10)

◆山本さんを犯人とする直接証拠は全くない

山本さんを犯人とする直接証拠は全くない。そのために「山本しかいない」とあれこれ「言い訳」するかのように証人が多く登場する。裁判が始まって10日目で、17人予定されている証人のうち11人が証言台にたった。

青木さんの話では、ある日は事件当日の夜、灯りがついていた山本さんの家に聞き込みにきた女性刑事が証言に立ったという。女性刑事に応対した山本さんの奥さんは「主人が散歩のため家を出た」と話し、散歩から戻った時刻がだいたい午後9時30分頃だったと話したという。

刑事の手帳にも「9時30分頃」との記述があり、刑事は裁判前、ほかの刑事に「(山本さんが)家に戻った時間」と言っていたという。しかし、裁判の証言台に立った女性刑事は「戻ったのではなく散歩に出た時刻」と証言したという。 

事件が起きた様子はこうだ。被害者の男性が、食事後内縁関係の女性を先に家の前で降ろし、男性は近くの駐車場に車を止めにいった。男性はそこから女性の家に歩いて帰る途中襲われた。

犯人が現場を去った時刻は周辺の防犯カメラやドライブレコーダーの映像などから午後9時44分とわかっている。そしてその不審な男性の背格好が、山本さんに似ていたというだけで、山本さんが逮捕された。もちろん顔など一切映っていない。 

◆山本さんの些細な嘘と警察の杜撰な捜査

実は、山本さんは、その女性と植木鉢をめぐって近隣トラブルを起こしていた。その日も「散歩」ではなく、車の音がしたので、降りてくる様子などを確認(見張り)に行ったのだった。

「見張り」していることを家族に知られたくなかったのか、山本さんは「散歩に行ってくる」と家族に告げて出ていた。その些細な嘘も、山本さんが疑われた背景にあったのだろう。

しかし、裁判で証言台に立った山本さんの家族(元つれあいと長女)は、散歩から戻った山本さんはいつも通りにくつろいで酒を飲んでいたと証言した。詳細は省くが、殺害方法が非常に残忍というか、一発で仕留めるような特殊な方法だが、そのようなスナイパーのような方法で殺害してきて、いつも通りにのんびり家族と過ごすことができるだろうか?

また、被害者は路上で殺害されたが、警察、検察は被害者は「密室」で殺害されたかのような主張を行っていた。つまりその住宅地に入るには3箇所しか入れる場所はなく、そのいずれの入口の防犯カメラでは、当社夜8時~11時の間、不審者が入った形跡はないというものだ。だから、犯人は当時その住宅地にいた者だと。4年間で約460人の容疑者が浮かんだが、結局地元に住む山本さんが犯人とされた。

今日(6月20日)の裁判では、先の3つの入口からしか入れないとの検察の主張が崩され、警察官が弁護側が主張する「ほかのルートもあった」を認めたという。

◆「なんで、警察というのはあんなに頑固なんですかね」

6月20日、私は店を休み、なるべく良い場所を確保しようと、弁護士会館に5時過ぎに着いた。6時まで別の会議が入っていたため、部屋の外で待っていると、カメラを担いだ報道陣などぼちぼちがやってきた。そのあとに「ここかな?」と不安そうにやってくる初老の男性がいた。青木さんから「今日の会見にはお父さんが出席するそうよ」と聞いていた私はとっさに「お父さんだな」と思った。

しばらく窓際で並んで黙っていたが、おもわず「山本さんのお父さんですか」と話しかけた。「そうです」と男性。「私はこういう者です」と持参した自著『日本の冤罪』を渡そうとした。青木さんから、裁判には両親、山本さんの姉、おばさんらが泣きながら来ていると聞いていた。

青木さんは、「自分が持っている『日本の冤罪』を今日の午前中の裁判で家族に渡す」と言っていた。何人かで読むのは時間がかかるだろうから、私も一冊家族に手渡す予定で持っていった。1冊を5000円、1万円で買ってくれる方もいるので、「これを読んで冤罪を知って下さい」と関係者に無料で渡す使い方もありだと考えていた。

するとお父さん、本をじっとみながら「これは、伊賀先生のところで『読んでおいて』と渡されました」という。ああ、そうだったんだ。そして、5階の窓の下に見えるきれいな花を見て、「きれいな色ですね。弁護士会館の外に咲いてたのと色がぜんぜん違う」とお父さんがいう。

そう、あの花、いつもこの時期、弁護士会館の入り口にきれいに咲いている花だ。そんなに色が違うとまで見ていなかった私は「玄関先に咲いてるのは排気ガスとか吸ってるからですかね」というしかなかった。

そしてまたぽつりとお父さん。「なんで、警察というのはあんなに頑固なんですかね」と。 

「今日来ている青木恵子さんなんか、再審で無罪になったのに、国賠で当時取り調べた刑事が、今でも青木さんを犯人と思ってると言ってましたよ」と話した。そして、「多くの人が警察は嘘をつかない、市民を守ると思ってますから」と話した。でも違うから。山本さんのお父さんがいうように、警察、検察は頑固だ。一度こうと決めたことを絶対に変えない。変えたくない。だからいつまでも冤罪が起きてしまう。伊賀弁護士は会見中何度も強く訴えていた。「山本さんの無実を勝ち取ること、そして冤罪を作らないために弁護活動をやっていきたい。」

会見中の弁護団(6月20日筆者撮影)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。

記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは7月号の注目記事2本の一部を紹介します。

◆国会答弁もアメリカ製AI利用に マイクロソフトに乗っ取られた日本政府のAI構想
取材・文◎浜田和幸(国際政治経済学者)

 

 

今年4月、アメリカのIT大手マイクロソフトは生成AIの需要拡大に向け、今後2年間で29億ドル(約4400億円)を日本に投資すると発表。生成AIに不可欠なデータセンターを増強し、研究拠点も新設するとの内容で、過去最大規模になる見込みです。

最先端の「GPU」と呼ばれるAI向け半導体を導入するともいいます。また、東京都内に研究拠点を新設し、AIやロボット工学の研究を通じて生産性の向上など日本社会が直面する諸課題の解決にも取り組む姿勢を打ち出しました。AI技術者の育成にも乗り出し、非正規雇用や女性を含めたいわゆる「学び直し」や、AIの開発者を対象にした研修プログラムを実施し、今後3年間で300万人のスキルアップを支援するとのこと。

加えて、日本政府との間でサイバー攻撃などのセキュリティ対策でも連携を強化すると発表。こうした新たな日本市場への参入強化策は、マイクロソフトのブラッド・スミス副会長兼社長が、4月10日から米ワシントンを訪問していた岸田文雄首相と面談し、直接提示したものです。

これに対し、岸田首相は日本への新規投資に謝意を示し、「デジタルインフラを持つグローバル企業との連携は日本の産業全体にとって重要極まりなく、引き続きの協力に期待する」と応じました。

 マイクロソフト頼みとなった日本政府のAI構想
 
実は、これまでもマイクロソフトは日本政府のAI政策を事前に把握し、「Azure OpenAI Service」など、先手必勝で対日投資を進めてきています。

注目すべきは、スミス社長が大の親日家であること。いわく、
「日本は巨大な技術基盤を持っているが、高齢化が進み、人口も減少している。今こそAIの力を活用する時だ。日本の未来にとって不可欠な投資になると信じている。日本ではAIの導入が急速に進んでいるものの、スキルの格差が非常に大きい。日本でより広く求められているスキルを提供できれば、日本のさらなる飛躍に貢献できる」

電子情報技術産業協会(JEITA)によれば、日本国内における生成AIに関するサービスなどの需要は2030年には1兆7700億円と予想され、2023年比では15倍に拡大する可能性を秘めているといいます。マイクロソフトに限らず、アマゾン・ウェブサービスやグーグルなども日本への進出と投資を加速させています。

とはいえ、重要なのは経済安全保障の観点から、日本発のデータがあくまで日本国内で安全に処理・活用されること。つまり、他国の技術に頼ることなく日本独自のもので対応する姿勢を保つことに尽きます。そのため、経済産業省では中国やロシアからの不正アクセスを防止する意味でも、サイバーセキュリティ対策に力点を置く政策に舵を切りました。

マイクロソフトはその流れを先読みし、対日売り込みを巧みに進めています。齋藤健経産大臣も同社が日本政府の国家安全保障戦略に基づき、高度なクラウドおよびAIセキュリティサービスの分野で協力して対応するとの方針を高く評価し、「日本のAIを含むデジタル産業の促進により大きく貢献してほしい」と期待感を高めているほどなのです。

というのも、スミス社長はこれまで自民党の甘利明前幹事長、平井卓也元デジタル相、河野太郎前デジタル相らと面談を重ねており、マイクロソフトが出資している「チャットGPT」のオープンAIとの連携すら政府に提案してきているからです。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nf65a7a3e55e9#4118e36a-996b-4658-bfa6-82b8c3700aa7

◆“憲法軽視”は政府与党だけではない 憲法違反の法律がつくられる理由
 取材・文◎足立昌勝(救援連絡センター代表/関東学院大学名誉教授)

 

 

 岸田訪米の「成果」と統合作戦司令部の設置

4月に訪米した岸田文雄首相は、11日、アメリカのバイデン大統領およびフィリピンのマルコス大統領と初の日米比首脳会談に臨み、安全保障上の幅広い協力と経済協力で合意した。

すでにアメリカは、東アジアにおける中国の影響力に対抗するために必要な多国間枠組みを形成している。すなわち、①日米韓軍事同盟 ②日米豪印の戦略対話の枠組みであるクアッド(QUAD) ③米英豪の安全保障の枠組みであるオーカス(AUKUS)だ。これらに加え、日米比の軍事的協力枠組みが形成されたことになる。
 
これにより、極東アジア・東アジア・南アジアにおけるロシア・中国および朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)に対する包囲網がより強化された。
 
会談での合意事項は、「鉄道や港湾、半導体サプライチェーン(供給網)への投資加速」「重要鉱物資源のサプライチェーン強靭化」「民生用原子力の能力構築に関するパートナーシップ拡大」などの経済協力関連が多くを占めるものの、「南シナ海での中国の危険かつ攻撃的行動について深刻な懸念を表明」「自衛隊と米比海軍との共同訓練を実施」という軍事的要素が含まれている。

会談後の共同声明では、南シナ海で中国が「危険かつ攻撃的な行動」を進めているとして「深刻な懸念」を表明。南シナ海における「埋立て地形の軍事化及び不法な海洋権益に関する主張」を懸念し、「海上保安機関及び海上民兵船舶の危険で威圧的な使用」の試みに断固反対するとした。

そのうえで、今後1年以内に3カ国の海上保安機関は相互運用性を向上し、海洋安全および保安を推進するため、インド太平洋において3カ国間海上合同訓練などを実施。さらに「日比米海洋協議」の開始を宣言した。

また岸田内閣は、3月26日には、日英伊で共同開発した次期戦闘機について、第三国への輸出を承認する閣議決定を行なった。これを受けて防衛装備移転三原則の運用指針が改正され、“歯止め”として対象を次期戦闘機に限り、輸出先を日本が防衛装備品の輸出などに関する協定を結んでいる国に限定し、戦闘が行なわれている国には輸出しないとした。

しかし、この決定は武力による侵略をも可能とする戦闘機の輸出である。それが憲法9条に合致するか否かの国会での検討を経ずに、閣議決定で済ませてしまった。それが鮮明にするのが、この内閣の持つ憲法軽視の姿勢だ。

5月10日、参議院本会議は、陸海空自衛隊の部隊運用を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を設ける防衛省設置法改正法案を可決・成立させた。与党と立憲民主党、日本維新の会などが賛成し、反対したのは共産党とれいわ新選組だけ。これにより、本年度末に東京・市ヶ谷にある防衛省内に240人規模で発足するという。

これらの大事な決定も、与党協議だけで国民の声を代表する国会での審議が行なわれなかった。国民主権の無視である。

ここまで来ても、憲法九条の枠内にとどまっていると“解釈”するつもりなのか。

アメリカの尖兵となって、仮想敵国包囲網の形成を目指す岸田内閣や自公政権の下、ここまで来てしまった自衛隊は、もはや自衛ではなく戦争を行なうための軍隊である。外国の意志に従い、状況に応じてどこにでも展開させられることを認めざるを得ないだろう。

それは、岸田内閣や自公政権の望みでもあるのだろう。望んでいないのであれば、国会での十分な審議=熟議を求めればよいはずだ。しかし、彼らにそれはできない。国民を納得させるだけの熟議に耐えられないからだ。

防衛省は「保持できる自衛力」について、相変わらず「自衛のための必要最小限度のものでなければならない」と繰り返す。その具体的な限度は、国際情勢や軍事技術の水準、その他の諸条件により変わりうる相対的な面があり、毎年度の予算などの審議を通じて国民の代表者である国会において判断されるという。

しかし、九条そのものの議論はなされない。判例で確定されていることを根拠に、政府の勝手な主張のみが述べられるだけであり、「言葉の解釈」とすら言える代物ではない。

防衛省の主張する「予算などの審議」を通じての国会審議とは、国民の意思が反映されるものではなく、政府の主張そのものである。詭弁を弄し、逃げの一手で国会審議を避ける自公政権。それこそが国会軽視であり、憲法無視であることを忘れてはならない。

 憲法違反が濃厚な法案

毎年開催される通常国会には、数多くの法案が上程される。そのうち一番多いのは、内閣から提出される「閣法」であろう。

内閣には、法の番人としての「法制局」があり、法案は内容を含め、その妥当性が審議されている。そこでは当然のように、法案が憲法に合致するか否かも検討されているのであろう。

ところが、上程された法案の中には、憲法に抵触するおそれが強いものも存在する。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n672e3912c471

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大企業優遇と庶民搾取の先に待つもの
「食料・農業・農村基本法」改悪「食料自給率」を捨てた農水省の愚 高野孟
感染症対策を口実にした「新型インフル対策行動計画」という新たな言論統制 高橋清隆
ウクライナとガザで実行中の「最新戦術」の正体 イスラエルAIは民間人をいかに殺すのか 青柳貞一郎
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