2024年8月6日の平和記念式典について、広島市は、以下の方針です。

2022年、23年同様、ウクライナ侵攻中のロシアと同盟国のベラルーシは招待しない。

ガザで大虐殺を続けるイスラエルは招待する。

パレスチナは招待しない。

 

2023年の長崎平和祈念式典、同市ホームページより

他方で、8月9日。長崎市は、ロシア・ベラルーシを招待しない点は広島と同じですが、イスラエルは招待せず、パレスチナは招待する方針です。

こうした中、パレスチナ政府の駐日代表部は広島市に対して旧ツイッターのXで「破壊の被害者として知られ、平和を訴える広島市がパレスチナを招待しないのは衝撃的です。この決定はダブルスタンダードです」と抗議しました。当然のことです。

筆者は平和行政の原理原則としては平和記念式典には「すべての国と地域を招待するべき」と考えています。

というのも、広島と長崎への原爆投下という形で、世界で最初に核兵器による虐殺を行った米国「さえ」招かれているのです。米国を招待する以上、それ以外の他の国や地域を排除する理屈は成り立ちません。

ロシアはウクライナ侵攻において、核兵器による威嚇を行っています。それは核兵器禁止条約にも反し、許しがたい。だが、米国は現に核兵器を使っているわけです。当時の国際法規においても、核兵器使用は違法であることは当時の大日本帝国政府も米国政府宛ての抗議文で明らかにしています。

◆ロシアは排除、イスラエル招待……筋が通らぬ広島市

松井一實・広島市長は平和記念式典にイスラエルを招待するということです。だが、ロシアやベラルーシを排除しておいてイスラエルを招待するというのも理屈に合わないことです。

イスラエルの首相・ベンヤミン・ネタニヤフ被疑者は既にロシアのプーチン大統領同様にICC=国際刑事司法裁判所から逮捕状を請求されています(プーチン大統領については発行済み)。

この点に関しては、ロシア・ウクライナも、イスラエルも招待しない、という長崎市の方が筋は通っている。ただ、長崎市についてはロシアの同盟国ベラルーシを排除するなら、なぜイスラエルの後ろ盾の米国を排除しないのか?という疑問が出てきます。

今後は、広島でも長崎でも平和行政の在り方をもう一度議論し、合意形成を図っていく必要があるとは思います。

◆日本政府が国家承認していない朝鮮にも招待状 

広島市は、パレスチナを招待しない理由に、日本政府が国家承認していないことを挙げています。16日の記者会見で松井市長は、国家を「人をまとめる単位」としています。

一方、広島市は日本政府が認めていない朝鮮(金正恩氏)に対しても招待状は送り続けています。この点をみても、広島市の対応ははなはだ矛盾しています。

◆日本政府自体もパレスチナの国連加盟には前向き

そもそも、日本政府自体も、4月のパレスチナの国連加盟を求める決議案に賛成票を投じています。同じ西側諸国でもスペインやアイルランドなどがパレスチナを国家承認しています。日本政府も、パレスチナを正式に国家としては承認してはいないものの、国家と同等のものとして認識はしているということです。

広島市の松井市長は、日本政府のこのようなパレスチナを国家として認める前向きな変化にも水をかけているのです。正直、松井市長は、日本政府に対してというより、米国政府、それもシオニスト寄りの勢力に過剰に忖度しているのではないか?そんなことさえ考えてしまうのですが、これって「陰謀論」でしょうか?

◆1994アジア大会、広島に来てくれたのは「パレスチナ」

1994年、広島でアジア大会が開催されました。42の国と地域が参加しました。その時、パレスチナは参加しています。ちょうど前年にパレスチナ和平でいわゆるオスロ合意がなされ、パレスチナにおけるイスラエルとパレスチナの二国家併存が動き出した直後でもありました。

イスラエルについては、アジアではあるのですが、パレスチナでの蛮行から、アジア大会を主催するOCA(アジアオリンピック評議会)から拒否されています。このように、アジア大会で広島に来てくれているパレスチナは招待せずに、イスラエルを招待するのはおかしいのではないですか?

◆16日にようやく「来年の招待方法」見直し

広島市長は16日になって、ようやく「来年」の招待方法の見直しを打ち出しました。しかし、何を悠長なことを言っているのですか?

イスラエルは招待し、パレスチナは日本政府ですら事実上国家として認める方向なのに、招待しない。広島がむしろ、日本政府以上にイスラエル寄りだということを世界に示してしまいます。

ちなみに筆者はイスラエルを呼ぶな、という市民団体の署名には苦渋の決断でサインしています。ただし、条件付きであり、それはイスラエルの後ろ盾である米国、広島に原爆を投下しておいて、まったく反省のない米国も招待しない、ということとセットであるならば、ということです。筆者は、むしろ、パレスチナを招待することに運動の総力を挙げた方がいいという考え方です。

だいたい、ウクライナ戦争により、ロシアやベラルーシを排除することについては「即決」している松井市長。別に条例の改正も必要ないのです。パレスチナを招待すれば良いじゃないですか?

◆平和都市から米国忖度戒厳令都市へ変質する今年の「8.6」

それはともかくとして、2023年のG7広島サミット以降、広島市も広島県も米国への忖度は異常です。2023年度からは広島市の公立小中の平和教育資料から小学校ではだしのゲン、中学校で第五福竜丸が削除されました。サミットを前に、原爆について謝罪も反省もない米国への忖度は明らかです。

広島県の湯崎英彦知事も、G7広島サミットを顕彰する記念コーナーを修学旅行の小中高生が休む場所も削ってまで建設していますが、その落成の日に、米国の核実験が発覚する有様です。

そして、今年の平和記念式典では、原爆ドームを含む平和公園全体への入場に当たり、手荷物検査を実施すると言う。法的根拠もないけれども拒否すれば退去を命じることもあるという

 

米国に忖度し、米国になめられる。そして、イスラエル寄りを世界に見せつける。こんな広島で良いのか?!

広島がむしろ、イスラエルによる虐殺や、その後ろ盾の米国が反省も謝罪もしていない核兵器使用にお墨付きを与えてしまうのではないか?情けないがこれが現実です。

しかし、これも、岸田文雄総理を広島一区で当選させ、湯崎英彦知事、松井一實市長に四期と言う長期政権を任せたつけであります。平和都市ヒロシマを取り戻すためにも庶民の手に広島を取り戻す庶民革命を。

筆者と広島瀬戸内新聞は呼びかけ続けます。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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