柔軟剤や煙草など、広義の「香害」をどう診断するかをめぐる議論が沸騰している。日本では、「香害」による体の不調を訴える人が、専門医を受診すると、ほとんど例外なく化学物質過敏症の診断を受け、障害年金の受給候補となってきた。「香害」に取り組む市民運動体が、公表している被害の実態も、極端に深刻さを強調するものになっている。

 

『週刊金曜日』は、「家の中に入る人や、近隣からの移香や残留で、家の中が汚染される」と回答した人が90.7%とアンケート結果を報じているが、客観的な裏付けはない

たとえば『週刊金曜日』(2024年2月9日)の特集記事「その香り、移しているかもしれません」の中で、環境ジャーナリストの加藤やすこ氏は、フェイスブック上の市民団体が実施したアンケートの結果を紹介して、「香害」の凄まじい実態を紹介している。

それによると、回答者600人のうち、「家の中に入る人や、近隣からの移香や残留で、家の中が汚染される」と回答した人が90.7%を占めたという。アンケートの主催者が、「香害」に抗議している人々が主体となった市民団体なので、必然的にアンケートに応じる回答者も「公害」に苦しんでいる人々が多数を占め、その結果、このように高い数値になった可能性が高い。ファクトチェックが欠落しおり、常識的にはありえない数字である。

◆坂部貢医師の報告、精神疾患との併症率は80%

「香害」による被害を訴える人を、容易に「化学物質過敏症」と決めつける風潮に対して、このところ疑問を呈する声が広がっている。一定の割合で、「香害」の中に精神疾患のケースが混じっているという見方である。従来の「香害」=化学物質過敏症という構図の誤りである。

たとえば、化学物質過敏症に詳しい坂部貢医師は、「平成27年度 環境中の微量な化学物質による健康影響に関する調査研究業務」と題する報告書の中で、化学物質過敏症と同じ症状を現わす患者には精神疾患の症状が見られるケースがあると述べている。精神疾患との併症率は、なんと80%にもなるという

坂部医師と同じ観点に立って、化学物質過敏症の診察を実施しているのが、舩越典子医師(典子エンジェルクリニック、堺市)である。「香害」を訴える患者の中に、一定割合で精神疾患を持つ人が混じっているとする主張である。その根拠を示す具体的な一例を紹介しよう。2024年度のケースである。

◆「洗濯物を干すときにじろじろと見られた」

「香害」を訴えて、舩越医師のオンライン診療を受けたのは、50代の主婦A子さんである。マンションの2階に、夫と成人の息子の3人で住んでいる。舩越医師は、Aさん本人だけではなく、夫からも事情を聞いた。その結果、訴えについて次のようなことが判明した。

Aさんはコロナに感染して高熱を出した。療養後、Aさんは奇妙なことを口にするようになった。向かいの家に住んでいる70代の高齢男性が煙草を吸っている。その匂いが耐え難い。匂いは、窓を閉めていても家の中まで闖入してくる。

「向かいの民家と、自宅の距離はどのぐらいありますか?」

「20メートルぐらいです」

あまりにも匂いが強いので、Aさんは老人に3度ほど注意したという。しかし、老人は禁煙には応じない。

舩越医師は、Aさんの話の信憑性を確認するために、Aさんの夫に、本当に煙草の匂いは、自宅に入ってくるのかを問うた。夫は、自分も息子も匂いは感じないと答えた。さらに詳しく話を聞いてみると、Aさんが老人による「香害」とは別の加害も訴えていることが判明した。たとえば理由なく怒鳴りつけられたとか、洗濯物を干すときにじろじろと見られたとか、窓のカーテンを閉めているにもかかわらず、覗き込まれたといった言動である。

舩越医師は、Aさんが精神疾患を患っている可能性を疑った。Aさんの訴えと家族による観察が整合していないことが、その主要な理由である。それに物理的に見て、20メートルの距離を置けば、煙草の匂いは拡散されてしまうことも考慮に入れた。そこで、精神科を受診するように勧め、知人の専門医を紹介した。

Aさんは、自分が「香害」の被害者であると固執して、精神科の受診を拒んだが、家族が説得して、受診にこぎつけた。その後、紹介先の医師から、Aさんが被害妄想、注察妄想、幻聴などを呈しており、妄想性障害であるとの報告書が届いた。

Aさんは向精神薬であるリスパダールの処方を受けた。約2週間後、オンライン診療でAさんと再会したとき、すっかり以前とは様子が変わっていた。妄想は消えて、表情が和らいていた。妻がすっかり別人の様に良くなったと、夫はとても喜んでいた。2人とも以前には見られなかった笑顔だった。

このケースでは、「香害」という訴えの信憑性を見極める過程で、家族が大きな役割を果たしたのである。

 

香害の防止を呼び掛ける消費者庁の告知。単眼的な視点になっていて、客観的なデータが欠落している

◆「香害」の複雑さと真実

「香害」の訴えを、単純に化学物質過敏症と診断すると、副次的な問題を引き起しかねない。その典型的な例が、横浜副流煙事件がある。この事件では、町医者から専門医までが、「患者」の訴えを鵜のみして、化学物質過敏症、あるいは「受動喫煙症」と言った病名を付した診断書を交付した。それを根拠に、隣人に約4500万円を請求する裁判を起こした。

しかし、裁判の中で原告が提訴の根拠とした化学物質過敏症の診断に、十分な根拠がないことが次々と判明した。逆説的に言えば、それだけ「香害」は複雑な要素を孕んでおり、ネット上のアンケートで実態を把握できるほど単純な問題ではない。

Aさんにとって幸いだったのは、家族が真剣に問題に向き合ったことである。また、舩越医師が「香害」を訴える人々の中に、一定の割合で精神心疾患の患者が含まれている実態を認識していたことも大きい。

「香害」を訴える患者の中には、一定の割合で、精神疾患の患者が含まれているのである。この点を無視して、「香害」を語ると、前出の『週刊金曜日』の記事に見るような極論になってしまう。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『禁煙ファシズム-横浜副流煙事件の記録』(鹿砦社)

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日本共産党さんが 就職氷河期世代の星とも言えたまんが評論家の紙屋高雪さんこと神谷貴行さん(福岡県委員会所属)を8月6日付けで除籍しました。

私・神谷貴行は、2024年8月6日付で日本共産党から除籍されました。
また、本日(2024年8月16日)付で日本共産党福岡県委員会から解雇されました。
これらについてはいずれも到底承服できないものです。
詳しくはまた別の機会に書きたいと思います。

紙屋さんは、流行語大賞にもなった「ごはん論法」の考案者の一人としてもよく知られています。また、福岡市長選挙2018では、人気の高い現職の高島市長を相手に10万票近く、25%近い得票率で大健闘しました。

その紙屋さんに対して日本共産党は、日本共産党内でも、それなりに慎重な手続きが必要な「除名」(松竹伸幸さんが受け、現在裁判所で是非を巡り係争中)ではなく「除籍」といういわば「手抜き」の手法を取りました。

しかも広島原爆の日の8月6日に除籍です。「何をやっとるんじゃ!?」と憤りを禁じえません。それとともに、「やっぱり」という感想もあります。日本共産党のあまりに独善的な体質が、むしろ最近ひどくなっているように思えるからです。

例えば、党外の筆者に対しても、日本共産党の方は、以下のような事件を起こしています。2023年2月、原爆ドーム前での集会の際に、日本共産党員の方が筆者を取り囲んで、筆者が立候補する選挙区の変更を迫るという事件を迫ってきました。

結局、自分の言うことを聞かない人間には強圧的。これが日本共産党の体質なのです。これを改めないと、労働問題などでせっかく良いことをおっしゃっていても、ドン引きされてしまうのではないでしょうか?

◆日本共産党への疑問〈1〉他の既成政党と変わらぬ湯崎知事に対する腰砕け

筆者は最近、共産党さんについての疑問があります。そのひとつは、いつのまにか、湯崎英彦・広島県知事が広島駅北口に建設を予定している巨大病院構想への批判、それに伴って南区宇品にある県病院を潰すことへの批判をやめていることです。

筆者は、今年度になって、日本共産党の広島市議にこのことについて、ばったりお会いしたときにうかがったところ、「新巨大病院が上手くいかないのはわかっている。ただ、うちとしては県病院の跡地利用をどうするか?という話にシフトしている」と気まずそう(半ば逃げ出すような姿勢)で目を逸らしながらおっしゃいました。

そして、安佐南区内の有権者の方によると、『共産党は知事と裏で手を組んで系列の医療・福祉系法人が県病院の跡地に食い込めるように画策しているらしい。』というわけです。ある区内の医師は湯崎英彦・広島県知事を毎回推薦する自民党支持の方ですが、その方でも、「あの巨大病院構想はおかしい。そして知事と組もうとする共産党もおかしい」と憤っておられます。

選挙の時は、共産党さんはいかにも知事の姿勢に反対のようなことを言って、筆者の古くからの支持者の方の中でも共産党さんに流れた人がかなりおられました。しかし、選挙が終わればこの有様です。これこそ「政治屋」と言わずして何というのでしょうか?

◆日本共産党への疑問〈2〉平和記念式典2022でのロシア排除を批判せず

今年、広島平和記念式典ではロシア・ベラルーシは引き続き排除にもかかわらず、イスラエルは招待、パレスチナは招待せず、と言う状況でした。この状況に大きな批判が起きましたが、そもそも、日本共産党さんも、2022年の最初のロシア・ベラルーシ排除の時点では、何も文句を松井市長に対して言っておられません。保守系の平岡敬・元市長の方がこの現市長の姿勢を批判していたくらいです。もちろん、筆者も「すべての国と地域を呼ぶべき」との原理原則を当時から明らかにしています。

◆自民・維新自滅も、立共もスターリン主義で伸び悩み石丸バカ受け

岸田総理が8月14日、退陣を表明しました。「裏金で引責」と総理はおっしゃいますが、新自由主義を脱却すると言いながら、いつのまにか「貯蓄から投資へ」誘導し、保守層も含む皆様に株価暴落で損をさせたことで行き詰まったとみるべきでしょう。そんな岸田さんでも維新系の兵庫県・斎藤元彦知事よりは、『より少なく悪い』かもしれません。実際に、秘書給与詐欺で捜査されている広瀬めぐみ参院議員も『観念』したか、議員辞職しました。

維新系の斎藤元彦知事にいたっては、真面目な職員が二人も亡くならなければならない状況を造り、小橋理事や井ノ本総務部長ら側近を切り捨ててまでいつまでも居座る構えです(8月17日現在)。そして、斎藤元彦知事を維新の兵庫県議やネット上の大阪維新支持者が必死で庇い続けています。

だが、立憲・共産の野党もいわゆるスターリン主義的な体質で伸び悩んでいます。立憲民主党さんは楾大樹先生著「茶番選挙 仁義なき候補者選考」に見られるように、候補者=人を大事にしません。そして日本共産党は就職氷河期世代の星でもあった紙屋高雪さんを排除するなど人を大事にしない。確かに、これでは、あの石丸伸二さんがバカ受けしてしまうのもやむを得ないのでしょう。

◆日本共産党との違いをさらにご説明せざるを得ない

正直に申し上げます。筆者も最近は、地域の皆様に対して、

「わたしは、志位和夫さん、田村智子さんに逆らっただけで除名・除籍するような日本共産党の幹部のみなさんとは違います。わたしは自民党議員の方も含めて個々人の人権を尊重する真の人権派です。」

「例えば、河井事件で起訴された自民党議員についても『疑わしきは被告人の利益』に、と言うスタンスです。日本共産党のみなさんのように、何でもかんでも有罪にしろといわんばかりのスタンスではありません。倫理と有罪・無罪は別問題だ。わたしはそういう意味では人権派・庶民派の保守だ。」
と申し上げています。

これは、新自由主義で暴走を続ける湯崎英彦・広島県知事や松井一實・広島市長、特に前者に待ったをかける政治家・活動家が日本共産党と、一部の保守、そして筆者くらいしか存在しない広島の事情もあります。そのせいで、日本共産党と同じとみなされてしまうと筆者としても全く困るからです。筆者は何でもかんでも排除、の日本共産党とはむしろ180度違う。

ただ、岸田さんのような「貴族保守」でもなく、湯崎英彦・広島県知事のようなネオリベでも、松井一實市長のような媚米でもない。個人の人権と庶民の暮らしを重視する保守。そのためには、現知事らを庶民が打倒する平和的な「革命」も必要だ。これは、スターリンや毛沢東が独裁する「共産主義革命」とは違う。これが筆者のスタンスです。

例えば、湯崎英彦広島県知事から広島の政治をあなたの手に取り戻し、#広島の水と食べ物 #広島の教育 #広島の医療 を取り戻し、#広島とあなたを守る #ヒロシマ庶民革命 に日本共産党員・支持者の方「も」個人としてご参加いただくのは大歓迎です。これは、#政党支持なしの方「も」、#自民党支持の方「も」、#維新支持の方「も」大歓迎なのと同様です。

また、所属する労働組合においては、組合の上司の多くは日本共産党員や支持者の方です。筆者も、数少ない「庶民派保守系の組合幹部」として介護・保育などケア労働者や、これまで制度の谷間におかれてきた非正規公務員労働者の抜本的な待遇改善を軸に取り組んでいくことには変わりはありません。

しかし、今回の紙屋高雪さん除名に見られるいわゆる「スターリン主義」的な体質の延長線上に、筆者らに共産党さんにばかり都合の良い行動を強要してくるのはご免こうむります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。

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◆キックボクシング界におけるクーデターとは?

日本のキックボクシング界は分裂の歴史でもある。過去どれだけの団体設立と消滅があっただろうか。現在では私的団体だが名前だけは存続する、日本プロキックボクシング連盟は最初の大革命の団体だった。

その設立経緯は結構大掛かりだったことを知る人は当事者以外はあまりいないでしょう。

昭和時代に全国ネットのレギュラー番組で隆盛期を誇ったテレビ頼りのキックボクシングが終焉し、最も低迷期に入った1981年(昭和56年)10月、当時は物騒な言い方だが、クーデターと言われた大々的分裂が起こりました。

1982年新春興行、観衆は現在より入っている感じもある

◆業界を震撼させた分裂と合併の流れ

 

中央がコミッショナーを務めた当時の衆議院議員の粕谷茂氏

これ以前の創生期からの自然派性する団体や、1978年3月に全日本キックボクシング協会を脱退した黒崎健時氏が発足させた新格闘術連盟とは規模が違いました。

それが、日本系(日本キックボクシング協会)と全日本系(全日本キックボクシング協会)のそれぞれ8件のジムの脱退と新規ジム3件が加盟した19件のジムが、統一団体と謳って日本プロキックボクシング連盟を設立しました。

同年10月3日には後楽園ホールの階下にある後楽園飯店で設立記者会見を開き、連盟会長となった芹沢武氏は、「近い将来、軌道に乗った後は我が連盟こそ主流となるキックボクシングの本家」と語りました。

脱退の理由はいずれも既存団体運営に不満あってのこと。詳細は当時発表された範囲ながら、日本系脱退組は「テレビ放映料の無還元、選手育成の補助は無く、野口プロモーションの興行の減少とマンネリ化」など。全日本系脱退組は「主要プロモーターが代っても興行運営は一向に改善されない年月を経た上、キックボクシング(ムエタイ基盤)からマーシャルアーツ(全米プロ空手)化へ移行しようとする中での反旗」でした。

設立初回興行は10月25日、実現したカードは過去の交流戦とは違い、同団体内で競い順位が決まる新鮮さがありました。後楽園ホールでの観衆の入りも満席には至らずも、7割方のまずまずの入り。ただ、統一と謳いながら既存の団体と肩を並べる第四団体という位置付けは仕方ないところでした。

11月22日の第2回興行も初回同様まずまずの観衆の入りで、1982年1月4日はUHF(テレビ神奈川、テレビ埼玉、千葉テレビ)というチャンネルながらテレビ放映が整う。連盟新ルールでは、チャンピオンは7ラウンド戦うスタミナ、戦力があって当たり前と、日本タイトルマッチは7回戦に制定。他の基本的な部分は3ノックダウン制、投げは禁止という旧全日本系の影響に偏った。そして4階級で初代チャンピオンが誕生。既存の新格闘術連盟はチャンピオンを制定していなかった為、日本プロキックボクシング連盟は国内第3のチャンピオンが誕生する形となりました。

選手の怪我等で代打カードもありましたが、フライ級は竹下勝美(横須賀中央)、バンタム級は高樫辰征(みなみ)、フェザー級は酒寄晃(渡邉)、ウェルター級はレイモンド額賀(平戸)がそれぞれ第5ラウンドまでにノックアウト勝利し、6ラウンド以降の未知のラウンドには至らずも、盛大なチャンピオン誕生の成果を見せる興行でした。

設立興行のメインイベンターは須田康徳(左)、セミファイナルは酒寄晃(右
)出場だった

◆実質3年間の活動

これで第四団体が完全に軌道に乗ったかと思われる中、すでに異変は始まっていました。当初はヘビー級を除く全6階級で王座決定戦が行われる予定でしたが、4階級に収まったことは何か融通が利かない事態が生じたと感じた者も居たでしょう。正月休みという名目で2月は興行が無く、3月28日には茨城県水戸市で旧全日本系ジムだけが集まっての興行。ここで平戸誠(水戸)が同連盟初代ミドル級チャンピオンとなりましたが、足並み揃わぬ事態に陥っていることは明白でした。

4月には旧全日本系グループが日本系野口プロモーションと手を組む事態。その後、日本プロキックボクシング連盟はわずか7ヶ月で脆くも分裂する事態を迎えたのでした。

日本プロキックボクシング連盟から脱退した旧全日本系グループは同年7月、日本ナックモエ連盟を設立。これで国内5団体目でした。1982年11月から5ヶ月続いた1000万円争奪オープントーナメントは一極集中する画期的イベントがありましたが、このイベントを除いては業界纏まらぬまま、後にも設立されて行く団体も存在し、計7団体が狭い日本にひしめき合う事態に至っていました。

日本プロキックボクシング連盟は、当初からの横須賀中央ジム、西川ジム、千葉ジム、市原ジム、習志野ジムと後に花澤道場も加わるもわずかな加盟ジムで、他団体も同様レベルながら、国内と香港遠征をメインに1984年夏まで先の見えない地道な興行が続いて行ったのでした。

この1984年の9月、過去にも幾度か述べて来ました、四つの団体を統合した画期的な日本キックボクシング連盟の設立が発表され、11月から活動が始まり、統合された四つの団体は消滅、日本プロキックボクシング連盟も設立から満3年で幕を閉じたのでした

[左]1981年10月25日初回興行のプログラム。ポスターも同じ絵柄だった/[右]1982年1月4日の新春興行プログラム。ここまでは右肩上がりだったが……

◆我、日本プロキックボクシング連盟は永久に……

平成時代以降も幾つかの分裂と団体設立があり、千葉ジム戸高今朝明氏が、過去に所属した日本プロキックボクシング連盟をいつの間にか復活させ、新木場ファーストリングや、千葉ジムで小規模な興行やアマチュア大会を開催して来たことは、古くから知る協力者も居て懐かしさと愛着が湧いたものでした。

今や解体されたこの千葉ジムも日本プロキックボクシング連盟アマチュア大会の場であった。その解体前の戸高今朝明会長(2022.6.12)

今回、過去に存在した、今や忘れ去られがちな団体の一つを拾ったまでですが、日本プロキックボクシング連盟代表の戸高今朝明氏も今年84歳。2年前に千葉ジムを解体され、継続は難しい状態となりました。大きなイベントも名声も残せませんでしたが、こんな団体があった歴史を述べておきたいところでした。

現在はフリーのジム、プロモーターが多く存在し、組織を纏める一国一コミッションが存在しないが為のキックボクシング界は、今後も起こり得る分裂脱退と新設でしょう。そこでは選手の希望や目標を壊さないよう進めて貰いたいものです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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《3》「福島県民健康調査」における小児甲状腺がん発見は「過剰診断なのか」

高野らが甲状腺がんの「多発見」は「過剰診断が原因だ」と述べる根拠を検討する。

 

高野徹・緑川早苗・大津留晶・菊池誠・児玉一八著『福島の甲状腺検査と過剰診断 子どもたちのために何ができるか』(あけび書房 2021年)

(1)甲状腺がんは低危険度がんで進行は極めて遅く、その多くは生涯にわたって無害に経過する。これに対して甲状腺がん外科医の清水一雄検討委委員は2016年9月の第24回検討委において、2年程度で35ミリに増殖したがんについて、「これはちょっとアンユージュアル(普通ではない)という感じもする」と驚きを隠さなかった。(和田真『DAYS JAPAN』2018年8月増刊号)。このようながんを見つけることが「過剰診断」であるとは到底言えない。
 
(2)諸外国でもすぐに手術を行うのではなく、経過観察も選択肢となっている

経過観察が選択肢になっていることは良いことだと思う。手術は常に危険を伴い、患者にメリットをもたらすとは限らないからである。しかし、そのことと甲状腺検査の中止とは関係がない。甲状腺がんが発見された患者に選択肢を示して選べるようにすれば良いだけのことである。

福島県で甲状腺がんと診断された患者の大半の手術を執刀している鈴木真1教授(福島県立医大)は2018年末までに180人のうち、リンパ節転移があった患者は72%、組織外浸潤も47%あり、11人が再手術を受ける必要があったという(白石草・同前)。また前述の山下俊1も2020年3月4日「子ども脱被曝裁判」の福島地裁における尋問で、摘出手術したがんに手術の必要がなかったケースはないことを認めている(添田孝史『東電原発事故10年で明らかになったこと』平凡社)。

このように手術を受けた患者にとって「過剰診断」は当たらない。

(3)「過剰診断」は重大な被害に結びつく

高野は「過剰診断」について次のように述べている。
①世間一般では明日をも知れぬ命とみなされてしまう。
②進学・就職・結婚・出産などにハンディをもたらす
③「手術するかどうか」に決断を迫られる。
④治療を受けなければ「がんを治療せず、放置する厄介な子」と誤解される(高野徹『日本リスク研究会誌』)Vol28 No・2)。

第33回検討委(2018年12月27日)において、メンバーが甲状腺診断の被害のデータを求めたところ、高野は「甲状腺がんが発見された人が口を揃えて言うことは検査を受ける前に戻りたいと(中略)、これを強く訴える」と答えた。

この発言に対し、前述の成井香苗委員は「超音波検査に具体的な病気としての被害があるのかと思ったが、今のお話だと心理的被害なので、それならば心理的ケアをきちんとやるべきだということの方が本筋だと思う」と述べた(平沼百合『科学』2019年3月号)。

高野が述べる健康調査がもたらす重大被害の①②④は周りの偏見であり、甲状腺がんの性質を粘り強く説明していくことにより解消できるし、本人の被害も小さくできる。また③は前述の通り、手術のメリットやデメリットを本人や周囲が判断すべきことで被害とは言えない。発見により本人の健康を守るメリットに繋がるかもしれないからである。

むしろ被害をもたらすのは福島原発事故により甲状腺がんに罹患することそのものである。前述の「子ども甲状腺がん裁判」原告Aさんも「待望の大学進学を果たしたものの、肺に転移・再発して辞めざるを得なかった」と述べている(松本徳子・前掲)。

(4)国際的にも「過剰診断論」は認められている

まず、高野らはIARC(国際ガン研究機構)は2018年「被曝の可能性がある場合でも、甲状腺超音波検査を始めとしたがん検診的なことはするべきではない」と提案した。だから国際的評価は決まっているとする。

しかし、IARCには日本の環境省が36万ユーロを拠出した。そして、原発事故後の甲状腺検査のあり方を検討する専門グループを設立したが、報告書の策定に関わったメンバーは原子力問題に関わりの深い専門家ばかりで、事務局は日本人スタッフが担っていた報告書をお披露目する国際シンポジウムでコーディネーターを務めたのは前述の山下俊1だった(白石草『世界』2021年3月号)。

IARCの報告書は環境省が費用を拠出して「被曝安全神話」に立つ日本人スタッフが中心になってまとめた可能性が高い。

もう1つ高野らがその主張の正しさの裏付けとしているのが2021年3月10日、UNSCEAR(原子放射線の影響に関する国連科学委員会)が発表した報告書である。

同報告書は公衆の被曝線量推計値を2013年の報告書より大幅に減少させたうえで、「甲状腺がんは被曝問題とは考えにくい」「発生率の増加は過剰診断が原因」「子どもの甲状腺がんは予後が良い」などとした。

しかし、キース・ベーヴァ―ストック博士は「UNSCEARに専門家を派遣しているのは、ほとんどが原子力を推進利用している国である。いわば密猟者と猟場番人が同1人物という形なのである」(「福島原発に関するUNSCEAR2013年報告書に対する批判的検証」(『科学』2014年11月号)。

[注]キースベイバスドック博士はロンドン大学卒業後、英国ハーウェル原子力研究所で電離放射線の公衆衛生及び労働衛生に与える影響に関する広範な研究を行う。1991年~2003年、世界保健機構(WHO)欧州地域事務所で放射線防護プログラムを指揮。WHOでは特にベラルーシにおけるチェルノブイリ原発事故後の甲状腺がんの増加をいち早く発見し、世界の注目を集めた(同前『科学』)。

事実UNSCEARの2017年~19年の日本代表は、放射線医学研究所(放医研。1950年に設立された放射線の人体への影響などを研究する組織)の本部長補佐、明石真言であった。彼は2011年9月、日本財団の国際専門家会議で「チェルノブイリに比べれば大した事故ではなく、将来的にも健康に関する心配は何もない」と断定した。その後も明石は検討委や環境省の「専門家会議」(放射線によるがん多発を否定)(2013年~14年)のメンバー(和田真『DAYS JAPAN』2017年4月号)。

そしてUNSCEARの上級顧問を務め、2020年報告の取りまとめに携わった。このようにUNSCEARによる「2020年報告」も「被曝安全神話」を唱える高野と同じ立場の日本の「専門家」が深く関わっているのである。

◆おわりに

本書の主著者である高野徹らの検討委により、2021年4月から小児甲状腺がんの学校検診はなくなり、福島県立医大に同意書を出した者のみの検診となってしまった(黒田節子『人民新聞』2022年1月5日号)。

本書の「過剰診断論」は福島原発事故による健康被害を否定し、東電をかばい、「被曝安全神話」を広める。甲状腺がん検査の縮小は事故と甲状腺がんの関係の解明を困難にする。

そして、「被曝安全神話」は「原発安全神話」につながり、政府が進めようとしている原発再稼働や小型原発開発を許す役割をしかねない。しかも本書の執筆者の中には児玉一八のように原発反対を唱えてきた良心的な学者も含まれている。そのことは現在の危機的状況を如実に示している。

子ども甲状腺がん裁判が「過剰診断論」を打ち破って国や東電により甲状腺がんに罹ったことを認めさせ、責任をとらせることを願ってやまない。

◎大今歩 福島の小児甲状腺がん検査は本当に「過剰診断」なのか
     《書評》高野徹他『福島の甲状腺検査と過剰診断』批判

〈1〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50162
〈2〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50167
〈3〉http://www.rokusaisha.com/wp/?p=50170

本稿は『季節』2022年秋号(2022年9月11日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

◆「懸念」と言えば聞こえはいいが、事実上の「脅し」だった

8月9日の長崎平和祈念式典。長崎市の鈴木史朗市長は「平穏かつ、厳粛な雰囲気のもとで円滑に式典ができるように」することを理由に、イスラエルを招待しませんでした。一方で、パレスチナ国代表は招待しています。

広島市がイスラエルを招待する一方で、パレスチナを招待しなかったのとは対照的です。

こうした中で、7月の段階で既に、エマニュエル駐日米国大使が音頭を取って、米独英仏伊加の日本以外のG7やEUが長崎市に対して、イスラエルを招待しないことへの懸念を表明していました。懸念と言えば聞こえはいいですが、「イスラエルを招待しないと、俺たちは大使級の出席は見合わせるぞ」という事実上の脅しでした。

そして、8月9日、米独仏伊加やEUの大使級の姿は長崎平和公園にはありませんでした。それでも、過去最多の国が長崎平和祈念式典に参加されたそうです。改めて、鈴木史朗・長崎市長の毅然たる対応を支持したい。

もちろん、そもそも、ロシア・ベラルーシもイスラエルも両方招待するのが平和行政の原理原則であると筆者は考えます。しかしながら、ロシア・ベラルーシを円滑に運営するためと言う理由とは言え、すでに招待しない決断をしている以上、イスラエルを招待しないというのは筋が通っています。

そして、今回のG7―日本の対応は、まさに自称先進国の高慢さを世界にあぶりだしたと言えます。

◆「イスラエル万歳」姿勢を天下にさらした米独英仏伊加欧 

米独英仏伊加は、イスラエルを招待しないことを、ロシア・ベラルーシとイスラエルを同列に見なすことになる、としていました。だが、2023年10月7日以前のイスラエルはパレスチナ人の土地を奪い続けていました。今ほどではないですが空爆も続けていました。これを侵略者と言わずしてどういうのでしょうか? もちろん、ハマスによる10月7日の攻撃は、国際人権法違反です。これはこれでICCにより関係者に逮捕状が請求されています。侵略に対する防衛側であっても国際人権法を守らなければいけないのです。

他方で、当然、イスラエル首相のネタニヤフ被疑者と国防相のガラント被疑者にも逮捕状は請求されています。プーチン大統領が逮捕状を出されているロシアとイスラエルを同列にみなされて何が悪いのか? 米独英仏伊加のこんな「イスラエル万歳」姿勢がネタニヤフ被疑者をさらにつけあがらせ、犠牲者を増やしているのではないでしょうか?

◆変わらぬ「日本人は欧米先進国を忖度してくれるだろう」という思い上がり

そして、今回、エマニュエル駐日大使らから感じたのは、「日本人は、我々欧米先進国を忖度してくれるもの」という思い上がりです。実際に、残念ながら、広島市長は、脅される前から、イスラエルは招待し、パレスチナは招待しないという選択を取ってしまいました。しかし、長崎市長は違いました。そこで、「この野郎」とでも逆上したのでしょう、エマニュエル駐日大使は、欧州諸国にも呼びかけ、長崎平和祈念式典をボイコットしたのです。

◆原爆の日=祝賀会=セレブレーション 米報道官失言

さて、今回の件について記者会見した米国政府のミラー報道官は「原爆の日」のことを「セレブレーション=祝賀会」と言ってしまいました。これは、結局、原爆は戦争を終わらせたのだからめでたい、という米国のエライ人たちの本音を暴露しただけではないでしょうか?結局、「変わっちゃいない」です。

◆「反省無き」米国に忖度し舐められる広島

さて、広島は2023年、G7広島サミットを開催しました。そして、その後、広島市の松井市長は軍事基地であるパールハーバーと平和記念公園の姉妹協定を結んでしまいました。筆者は「米国政府は原爆の謝罪も反省もしていないのに随分おめでたいなあ」とあきれ果てていました。案の定、G7広島サミットから1周年の5月19日、米国が核実験をしたことが発覚しています。広島は完全に米国・バイデン大統領に舐められています。

米国の国会議員が「ガザをヒロシマ・ナガサキのようにすべきだ」などと暴言を吐いた時も松井市長は抗議もしませんでした。筆者が広島市長なら「こちらが低姿勢に出ればつけあがりやがって」とキレそうですが、この松井市長は違うようです。そして、今なお、舐められていることへの怒りも感じられません。

◆ダブスタの米英仏独伊に忖度無用!

結局、日本人の命もパレスチナ人の命も米英独仏伊加にとっては軽いものということが今回あぶりだされました。いくら、米英独仏伊加が民主主義だの人権だの「ご高説」を垂れていてもそういうことなのです。広島の平和行政もこれを参考に今後の在り方を考えるべきです。アジア大会1994を広島は開催しています。そのアジア大会にはパレスチナは来てくれました。核兵器禁止条約にもパレスチナは参加してくれています。

核兵器禁止条約を推進する平和首長会議と横の連携を引き続き重視すべきです。その上で、広島・長崎に核兵器禁止条約の締約国会議を招致したらどうでしょうか。その上で、核保有国=米英仏ロ中印パ朝イに迫っていくべきです。ヒロシマもナガサキも、米英仏独伊などの政府に対して礼儀は尽くすにしても、忖度はする必要はないでしょう。

◆ガザでのジェノサイド終結へ粛々と行動!

ともかく、筆者と広島瀬戸内新聞では、ガザにおけるジェノサイド終結、中東和平へ向け、粛々と行動していきます。

9月18日には、元イスラエル軍兵士・ダニー・ネフセタイさんをお呼びしての講演会を開催します。また議会への請願を通じて、広島市にも粘り強く米国忖度の路線からの軌道修正を働きかけていきます。

◆元・イスラエル軍兵士が語る「平和」 
 イスラエルの歴史と今・そして日本~ダニー・ネフセタイさん講演会IN広島

もうすぐ、イスラエル軍によるパレスチナ・ガザ地区への侵攻・虐殺が激化してから1年になろうとしています。ガザ地区では連日のように多くの命が奪われる状況に終わりは見えず、中東全体にも戦火が広がろうとしています。そもそも、なぜ、こんなことになってしまったのか?

 そして平和をつくるために、日本・広島に住むわたしたちはどうすればいいのか?

イスラエル軍の元兵士で現在は日本で木製家具職人の傍ら日本全国を「非戦・平和」等をテーマに講演されているダニー・ネフセタイさんにお聞きします。

日時 2024年9月18日(水) 18時開場 18時半スタート
場所 広島市東区民文化センター工作実習室 
(〒732-0055 広島市東区東蟹屋町10-31 広島駅から徒歩約10分) 
資料代 1000円
主催 広島瀬戸内新聞 
連絡先 佐藤 090-3171-4437 hiroseto2004@yahoo.co.jp

◎ダニー・ネフセタイさん プロフィール
1957年、イスラエル生まれ
1975年 高校卒業後、徴兵制によるイスラエル軍入隊。空軍にて3年間兵役を務める。
1979年 退役後、アジアの旅に出る。日本各地をヒッチハイクなどで旅をし、交流を深める。日本語学校にて更に深く言葉を勉強しその後神奈川の家具会社に勤める。
1988年 東京より埼玉県皆野町金沢へ引っ越す。木工房ナガリ家を開設。
1999年 皆野町金沢・出牛に自宅のログハウスを夫婦で自力建設。

現在は、夫婦で注文家具、遊具、木工小物、社会性オブジェの創作活動。ギャラリー にて個展、グループ展など多数開催。「世の中を良くすることも物づくりをする人間の指名である」という信条を持ち戦乱の絶えない祖国イスラエルを批判、「3.11」後の日本で脱原発の道を進むことを願い、活動をつづけている。
WEBサイト https://nagariya.handcrafted.jp/ 

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。

◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/

『広島の追憶 原爆投下後、子どもたちのそれからの物語』【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315258/

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祈り(龍一郎 揮毫)

先日、母親から古びた文集のコピーをもらいました。一昨年亡くなった従兄の竹内護(まもる)さんが書いたものでした。護さんは長年宮崎県下で小学校の教師をし、これを全うされました。

護さんが終戦後朝鮮半島から命からがら栄養失調の状態で帰還されたことは生前聞いていました。

「先の大戦では、国民のみんなが何等かの形で戦争の悲惨さを味わったと思います。
わたしの体験も六才で孤児となり祖国日本へ向けて朝鮮半島を縦断するというありふれたものです。しかし、一面では特異なものかも知れません。」

こうしたことが「ありふれたもの」だった時代、護さんも幼くして戦争に巻き込まれます。

1943年(昭和18年)、護さんが4歳の時、一家3人は住み慣れた熊本の地より北朝鮮に渡ったそうです。北朝鮮で父は人造石油会社の社員として比較的裕福で「幸福に暮らしていました」。

「そんなわたしたちの家族に不幸が訪れたのは、昭和二十年の八月でした。」

「そして、八月十四日、会社の方より『明日から一晩泊りで社員ピクニックを催す』との連絡がありました。」

「何も知らないわたしたちは歌など歌いすっかりピクニック気分にひたっていました。
それが、八月十五日のことでした。ところが、社宅より相当離れた所まで来た翌朝、会社の幹部の人より『ピクニックに参加した人たちに話があります。』と告げられ、みんながやがや言いながらも一か所に集まりました。
その時の話は、『実は日本は、昨日戦争に負けました。そこで、これから日本へ向けて避難します。』と言う意味のことでした。
話を聞いたみんなはびっくりしました。楽しいピクニック気分も一度にふっとんでしまいました。」

そうして、日本へ向けて「避難」が開始されます。

長い逃避行の中で、身重だった母と、突然閉鎖された鉄橋で離ればなれになってしまいます。その後、母はなんとか故郷・熊本へ辿り着いたということです。

父と二人で逃避行を続け、興南で引揚船が出るというデマに乗って興南に行くと、そこは収容所でした。

収容所では強制労働の日々で、そのうち父は酷い凍傷にかかり、ますます酷くなり父は自殺を図り亡くなりました。

祖国への逃避行

収容所では、時折軍用トラックがやって来て、
「髪の長い人、つまり女の人を連れ去って行くのでした。女の人の悲鳴がいつも聞こえました。このようにして連れて行かれた女の人たちは、二度と帰って来ませんでした。」

「母と離別し、父とは死別して名実ともに孤児になったわたしは、お年寄りのグループに入れてもらい、収容所をぬけ出し再び祖国日本に向けて南下の旅を始めました。」

そうして何度も三十八度線を越えることを試みるも失敗を繰り返しますが、
「おとしよりたちが、色のついた大きな紙のお金を何枚か漁師に渡し」
「ヤミルートを通して、やっとのことで三十八度線を越えることができたわけです。」

一方、離別した母親は、身重だったところ途中で産気づき、双子の女の子(つまり護さんの妹)を山の中で生みましたが、1人はすぐに亡くなり、もう1人は1カ月ほど生きて亡くなったそうです。

「そんな時、母は心の中で、『たとえこの子が死んでも護は必ず生きて帰る』と信じて疑わなかったそうです。母のこの願いで、わたしは生きて帰れたのかもしれません。」

そうして、三十八度線を越えた護さんらはソウルの孤児院に入れられ、院での粗末な食事では耐えられず、時々街に物乞いに出たそうです。

物乞いは「子供心にも、みじめで恥ずかしい気持ちになったものです。」

「そんな中で、時々、夜になると孤児を慰問に来てくれるアメリカ軍の将校さんに会うのが、唯一の楽しみでした。
なぜかと言うと、チューインガムやチョコレートなどの美味しいお菓子やおもちゃを持って来てくれるからです。」

「地獄に仏」ということでしょうか。──

収容所にて

そうして、なんとか引揚船に乗ることができ、「なつかしの祖国日本の山々を見ることができ」たのです。

時に昭和21年6月11日のことでした。すでに終戦から10カ月も経っていました。

引揚船が博多港に着くと、孤児らは本籍地別に分けられ、両親の名前と本籍地を言うと熊本行きとして送られることになり、熊本に着いたらまた孤児院に入れられました。

「熊本市は、両親の出身地だし、母は元気で帰国したことを知っていましたので、母にはすぐ再開できると思っていました。
しかし、敗戦の混乱のせいかなかなか会えませんでした。」

ある子供のいない学校の先生が護さんを養子にもらいたいという申し出があり、この期限の日の昼すぎに母が孤児院にやって来たのです。実に11カ月ぶりの再会でした。

「思えば苦しい旅でしたが、そんな中で、私が無事帰国できたのも、名も知らぬ多くの人々の善意のおかげだと思います。」

そうして、

「敗戦という未曽有の混乱のさなか、人間の醜さを嫌という程に見せつけられた中で、きらりと光った同胞愛と人間性を、これら恩人たちのためにも知ってもらいたく、また、一人の一人の子どもが受けた戦争の悲惨な体験をも知ってもらいたく、そして、二度と再びこのような事が起こらないように念じペンをとった次第です。」

その後、護さんは鹿児島大学に進み、卒業後は宮崎で小学校の教師となります。在学中に60年安保闘争のデモにも参加したと聞いています。それは、

「これから先は戦争そのものは勿論、それにつながることへも常に反対し、教え子たちには、ずっと私の体験を語り継いでいきたいと思います。
それが、残留孤児として親探しもせず、幸せに暮らしているわたしの義務だと思うからです。」

正直、護さんがここまで苦労されたとは知りませんでした。この文集のコピーで初めて知った次第です。貴重な戦争の記録です。生前もっといろいろ聞いておけばよかったと悔いています。

私ごとになりますが、1972年夏、この年の2月に学費値上げ反対闘争で逮捕・起訴され、私なりに将来に向け苦悩していたところ宮崎の護さんを訪ねました。「お母さんも心配しとらしたぞ」と言って、宮崎の観光地をあちこち連れて行ってくれました。護さんなりの激励だったかもしれません。途中サボテン公園に行くと父兄が声を掛けてきました。朝も早くから子供らが家に来て騒いでいました。父兄や子供らに慕われた先生だったようです。

なお、護さんは昭和14年4月生まれ、同18年北朝鮮阿吾地に渡り、同21年帰国。同38年鹿児島大学卒業、以後宮崎県下で小学校教師を務める。この文集は戦後39年の1984年(昭和59年)に作成されました。

(松岡利康)

【著者略歴】梓 加依(あずさ・かえ)。児童文学・子どもの生活文化研究家。1944年長崎生まれ、小学校から高校まで広島市内に在住。公共図書館司書、大学非常勤講師、家庭裁判所調停委員などの仕事を経て、現在は物語を書く会「梓の木の会」主宰。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315258/

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

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◆モディ政治の光と影 グローバル・サウスの盟主インドの実相
 取材・文◎浜田和幸

 

 

かつて一世を風靡した「ノストラダムスの大予言」より、はるかに速いスピードで世界の流れは変わってきています。このフランス人医師にして占星術師が1555年に書き残した予言では、「2024年には中国が第3次世界大戦の口火を切る」とされていました。それだけ、中国が国際社会に影響力を行使するようになるとの見立てだったと思われます。確かに、このところ中国の技術力や軍事力はアメリカを凌駕する勢いを見せています。

去る6月14日からイタリアで開催されたG7首脳会議でも、「中国やロシアの脅威にどう共同で対処するか」が大きなテーマになったほどです。言い換えれば、第二次世界大戦後、そして冷戦を経て誕生した「アメリカ一強の時代」に挑戦しているのが中国というわけです。その観点からすれば、ノストラダムスの未来予知能力は確かなものだったといえそうです。

実は、アメリカが牽引してきたG7の政治・経済・軍事力は低下する一方と言っても過言ではありません。その象徴的な出来事が、ウクライナ戦争で実施された欧米諸国によるロシアへの経済制裁の思わぬ大失敗でしょう。ロシアはまったく影響を受けていないどころか、逆にウクライナ戦争以前と比べ、格段の経済成長を実現しているからです。

今やロシアはドイツを抜き、世界第5位の、そして欧州最大の経済大国となっています。一方、ロシアへの経済制裁に加わったイギリスに至っては過去300年で最悪の経済不振に陥っているではありませんか。

IMF(国際通貨基金)はロシアの2024年の経済成長率を2.6%と予測し、昨年の見通しの倍へと上方修正しているほど。イギリスのフィナンシャル・タイムズ紙も欧米の予測の誤りを指摘しています。

要は、G7の国々は政治的な思惑やアメリカへの配慮からか、ロシアや中国に対しては冷静さを失い、感情的な“上から目線”に囚われているようです。その結果、「圧力をかければロシアも中国も言うことを聞くはずだ」といった希望的観測の虜になっているように思えてなりません。

日本の岸田文雄政権もアメリカへの忖度があるせいか、プーチン大統領に対する非難を強め、ロシアとの貿易通商を制限すれば、彼らを停戦交渉のテーブルに着かせることになるはずだと思い込んでいるようです。「プーチンのロシアは苦境に追い込まれている。経済が疲弊し、国民の不満も高まっている。あと一歩でプーチンは敗北を認めるだろう」。そんな根拠なき楽観論から、いまだに抜け出せないでいるのがG7の指導者なのです。

現実はその逆で、ロシア経済の復活は目覚ましく、G7首脳会議とほぼ同時期にロシアで開催されたBRICS外相会議では「アメリカはすでに頼りにならない」と、バイデン政権と距離を置く動きが顕著です。いわゆる「グローバル・サウス」諸国もBRICS加盟に舵を切るようになってきました。岸田首相はそうした国際関係の地殻変動に関心が薄いようです。

世界銀行の最新のデータは衝撃的なものでした。2024年のロシアの経済力は5.95兆ドルで、日本の5.87兆ドルを抜いています。しかも、ロシアには統計に表れない地下経済が39%もあるのですが、日本には10%しか潜在力がないとされています。ロシアは日本を抑える経済力を秘めているわけです。

 中国を越えるインド

さらに侮れないのが、BRICS諸国の潜在力でしょう。その意味でも、グローバル・サウスの中心的役割を果たそうと積極的に動いているインドに注目する必要があります。

国連の最新の人口統計予測によれば、この4月末、「インドの人口は中国を凌駕した」と報告されました。2024年末のインドの人口は14億2900万人で、中国は14億2600万人と予測されています。

このままでいけば、インドの人口は2063年には17億人を突破するといわれます。インドで最も人口の多いのは首都のニューデリーで、3000万人を超えています。

しかも、インドの特徴は若年層の大きさです。中国では人口の15%弱が65歳以上で、この比率は年々増加しています。日本同様、高齢化が急速に進んでいるわけです。

一方のインドは女性が平均して6人の子どもを出産してきました。やはり人口の多さは経済力にも影響します。インド国立銀行の予測によれば、GDP(国内総生産)ですでにイギリスを抜いており、ドイツや日本をも間もなく追い抜き、29年にはアメリカ、中国に次いで世界第3位の経済大国に躍り出るとのこと。今後10年以内に、インドのGDPは現在の3.4兆ドルから8.5兆ドルに急増すると見られています。

ちなみに、今年の経済成長率は7%と予測されています。そうしたインドの未来に期待し、アップルを筆頭に欧米の企業は、この人口超大国への投資と工場進出の動きを加速中です。マイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏も頻繁にインドを訪問し、自社工場を視察した折に、モディ首相との歓談を重ねています。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/ne76c35f62e9a

◆被害額は昨年から倍増! オンライン詐欺の実態と”野放し”の理由
取材・文◎片岡亮(ジャーナリスト)

 

 

 「人を騙しやすい」現代社会

インターネットを悪用した詐欺被害の総額は昨年1年間で772億円。前年から倍増で、全国の居酒屋の売上合計にも等しい額だ。同じデジタル業界では、音楽や演劇などのライブ配信の市場規模にも匹敵する。

すでにインターネットは普及しているのに、ここに来て急増するのはなぜか。少なくとも「騙す連中」と「騙される人々」が増えたことは間違いない。

それでも、これほどまでに人々が詐欺に遭う理由のひとつに、「ネットの情報を無防備に信頼している」ことが挙げられる。昨今のフェイクニュースの横行も、その一つだ。あげく、政権すら政策への批判に対し、ネット工作員を配置して世論誘導を行なっている現実すら明らかになっている。

この状況は詐欺師にすれば好都合で、他者に自身を信用させることが手軽になった。最も手っ取り早い手法が「社会的証明」だ。社会心理学の用語で、「自分の判断よりも“社会の多数である他人”の判断を信じ、それに従った行動をしてしまう心理のこと」などと説明される。たとえば「著名な学者が賛同している」「多くの人がこの方法で成功」などと煽れば、人々は信じやすくなる。

ちなみに、恋愛感情を餌にした“ロマンス詐欺”の標的として、日本はアメリカに次いで二位の規模、という米メディアの調査結果がある。日米がトップ2となった理由については、「人の意見に左右されやすいのは、社会的に孤立しやすい環境から、仲間を求める気持ちの強さと比例する」と結論付けた。被害者に高齢者が多いのも、孤独を感じやすいからだと指摘した。

実は国・地域別のネット利用者数でも日米が上位だ。加えて日本の場合、ラジオ体操のように、「みんな同じ」の教育が推奨されてきた。人々が別々に、それぞれの運動をしてもいいはずだが、日本ではその自由を許さない。

東京・千代田区の麹町中学校ダンス部に「ヒップホップ禁止令」が出されて物議を醸したように、言葉の上では“多様性”が推される現在でも、一定の価値観からはみ出すことを許さないのが日本だ。これが、先述の「社会的証明」をますます有利にしている。

この統一された価値観の中で、多くの人が自身を「平凡な人間」と定義するようになる。そこで騙す側は、「私もあなたと同じように普通の人だったけど成功した」と共感を誘う。そして「あなただけに特別な情報を教えます。チャンスは今しかない」と言って、詐欺に誘うわけだ。

こうして日本を襲っているのが、まさに「社会的証明」に弱い人々を狙った、著名人の名を騙る詐欺だ。池上彰氏や堀江貴文氏、森永卓郎氏など、経済の見識がありそうな人々がネット広告に登場し、「これで成功した」と語る。しかし、これら著名人たちは名前や写真を勝手に使われている。「儲かる話を、なぜわざわざ広告にするのか?」という疑問が湧いて当然だが、多くの人々が信じてしまう。

 詐欺被害者が語る手口

「私も自分の判断力のなさには情けなくなった」こう語ったのは、67歳の小山幹雄さん(仮名)。千葉市内で30年以上、文具店を経営していたが、建物の老朽化もあって4年前に廃業を決断。建物と土地を売却したお金で少額の株式投資を始めるも、詐欺に遭って700万円を失った。

「5年前までスマホを持っていなかったんですが、店を閉めたらやることがなくなって、頭が鈍くなると思って使うようになりました。友人に勧められたのがフェイスブックとLINEで、みんなと簡単にやりとりができるので、夢中になりました。撮った写真を投稿すると反響があって、友人が増えたような気持ちにもなれました」

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/nf369abfe8b45

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科学者は誰も信じていない CO2温暖化説の嘘ともたらされる被害 広瀬隆
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災害や感染症を利用し地方自治を破壊 地方自治法“戦前回帰”の大改悪 足立昌勝
WHOの公衆衛生全体主義を許すな!「パンデミック条約反対」日比谷公園2万人集会 高橋清隆
本当にワクチンを打つべきなのか? ウィルス「不存在」をめぐる科学的議論 神山徹
学歴詐称・事前運動疑惑、裏金自民援護 東京都知事選で露呈した小池都政の正体 横田一
フィリピン元大統領報道次官が訴える日比米安全保障の罠と日本との連帯 木村三浩
モディ政治の光と影 グローバル・サウスの盟主・インドの実相 浜田和幸
日本もパレスチナ国家承認を拒否 ガザ停戦を阻む米欧大国と日本の「論理」 広岡裕児
重信房子さんに聞く世界と日本の学生運動が証明するパレスチナ抵抗の正当性 浅野健一
政権交代に向け見極めるべきもの いま日本政治の転換を迫る負と正の力 小西隆裕
「岸田続投だけはありえない」「裏金国会」がもたらした自民党内の暗闘 山田厚俊
「社会貢献活動」法人設立の目的 ジュリー前社長が離さないジャニーズ最大利権
被害額は昨年から倍増 オンライン詐欺の実態と“野放し”の理由 片岡亮
世界史の終わりとハードボールド・ワンダラランド 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 特別編 西成女医変死事件 尾﨑美代子

連載
あの人の家
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プレサンス事件で被疑者の机を叩き、長時間に渡って怒鳴り続けていた大阪地検特捜部の検事について、大阪高裁が「特別公務員暴行凌辱罪」で刑事裁判にかけるとした。


◎[参考動画]「刑事司法の歴史変わると言っても過言ではない」不動産会社元社長“違法捜査”、担当検事を刑事裁判へ(読売テレビニュース 2024年8月9日放送)

Xでこの速報をポストしたのは、元裁判官の弁護士、プレサンス元社長・山岸氏の最強弁護団の一人・西愛礼(よしゆき)氏だ。私は、プレサンス事件について、春先、西弁護士を取材していたが、執筆が遅れ、今必死で原稿をまとめている。

無罪判決を勝ち取った山岸氏は、国賠を提訴すると同時に、捜査に関わった特捜検事2人を刑事告発していた。特捜検事を「特別公務員暴行凌辱罪」で刑事裁判を開くよう求める不審判請求で、大阪高裁は8月8日、田淵大輔検事を審判に付す決定を出した。今後、刑事裁判が始まる。

プレサンス事件では、ある「業務上横領事件」の共犯としてプレサンス元社長・山岸忍氏と部下のKと不動産会社のYさんも逮捕された。

今回裁判にかけられるのは、Kを取り調べた田渕大輔検事だ。
 
しかし、Yさんを担当した末沢岳志検事もなかなかの曲者だった。Yさんもいったんは末沢検事に脅され、山岸氏関与を認めるウソの供述を強いられたが、その後「あの供述を撤回してください」と末沢検事に頼み込んだ。しかし、末沢検事は撤回はしなかった。そればかりか、必死で頼み込むYさんをせせら笑っていたようだ。

じつはプレサンス事件の最強弁護団は、KとYさんが取り調べられた録音録画の反訳(書き起こし)を行った。その時間は2人で142時間32分にも及ぶ。カメラに映るのは被疑者の方だが、Yさんが「笑わないで下さい。真剣にしゃべっているのに」というような場面が残っている。

そして最後の最後にYさんが再度「僕の山岸さんについての調書、あのままにしとくんですか」と尋ねると、末沢は「それだけいうんやったら、法廷でひっくりかえせばよろしんやん」などと言っていた。そして……Yさんは実際に法廷でひっくり返してやったんだけどね。詳細は、記事になったら読んでね。

大阪地検特捜部は2009年の村木事件で大失態をおかした。そこからの挽回を図ろうと思ったのかどうかしらないが、今回、関西経済界の大物中の大物、プレサンスを一代で築き、東証一部上場企業に押し上げ、飛ぶ鳥落とす勢いだった山岸忍氏を逮捕した。

起訴し、有罪にできると思ったのだろうか。しかし、あまりにずさんな捜査だった。次々とでてくる証拠はいずれも山岸氏無罪を証明するものだった。検察は「大川原化工機事件」と同様に起訴を取り下げるかと思いきや、ずんずん進んでいき、山岸氏に有罪を言い渡して結審した。

しかし山岸氏には無罪判決が下された。そして山岸氏は最強弁護団とともに「負けへんで」「とことんやったるで」と国賠訴訟を提訴した。同時に取り調べた田渕検事を刑事告発していた。田渕検事は大阪地裁によって不起訴とされたが、弁護団は裁判所に対して起訴するよう申し立てる「付審判請求」を行った。

これに対して地裁は、田渕検事について「特別公務員暴行陵罪の嫌疑が認められるべきである」などと判示したが、起訴までは行わなかった。その後弁護団は高裁に不服申し立てを行っていたところ、大阪高裁で追訴された、ということだ。いけいけ、もっとやったれ!

しかし、なぜ警察も検事も「自白」をとることだけに必死なのか? プレサンス事件でも、税金使って大々的な強制捜査やって、プレサンス、Yさんの会社、山岸氏の自宅などからそれぞれ100箱もの証拠物を押収してきたのに。それをきっちり精査することなく、いや、そんなに時間もかけずに、慌ててKとYさんを逮捕し、2人に嘘の供述を強いて山岸さんを逮捕した。

証拠品を精査せず、とにかく「自白」をとりたい。自白といっても、検察の思うような自白、つまり罪を認めるような自白だ。本当におかしい。なんのために、どういう仕事をしてんだよ! 大阪地検特捜部!

 

山岸忍氏の著書『負けへんで! 東証一部上場企業社長vs地検特捜部』(文藝春秋社)

山岸忍さんの著書『負けへんで!』から、改めて、田渕検事の怒鳴っている個所を読んでみた。本当に凄まじい。

「開き直ってんじゃないよ。なにこんなみえすいたウソついて、なおまだ弁解するか。なんだ、その悪びれもしない顔は。悪いと思っているのか。悪いと思っているのか。悪いと思っているんですか(しつこいな)。私は何度も聞いた。ウソはひとつもついてないのかと。明らかなウソじゃないか。なんでそんな悪びれもせずにそんなこというんだ。なぜですか?なぜだ。大ウソじゃないか。よしんばこれでウソを認めて、会社のなかで口裏合わせをしてましたと認めるならまだしも、そこからまた悪あがきをするとはどういうことだ。そういうことなんですか。何を考えているんですか、あなたは。ウソじゃないですか。ウソつきましたね。ついたよね。」
 
「命かけてるんだよ!検察なめんなよ!命かけてるんだよ、私は。かけてる天秤の重さが違うんだ、こっちは。」

そして最後にKさんに

「もうさ、あなた、詰んでるんだから。もう起訴ですよ。ってゆうか有罪ですよ、確実に」

「あなたはプレサンスの評判を貶めた大罪人ですよ。会社から今回の風評被害とかうけて、会社が非常な営業損害をうけたとか、株価が下がったとかいうことをうけたとしたら、あなたはその損害を賠償できますか。10億、20億の話じゃないですよ。それを背負う覚悟で今はなしてますか」

などと脅したのだ。

「あなたは大罪人……10億、20億の損害を賠償できるか」と詰められたら、そりゃびびるわな。

実際、?はこうして脅されウソの供述(山岸さんも関与)をしたが、その後の裁判でも検察側について、うそをつきとおしたのだ。それでも山岸さんは、この部下Kを取り調べた田渕検事を告発したのだ。

もう30年ほど前、ある冤罪の専門誌みたいな本を読んだ。そこには、「日本は未だに自白中心主義で……」と批判する箇所があった。30年経った今でもそのまんまじゃないか? 自白をとることだけに必死ではないか? どうなってんだ。日本の司法は? 警察、検察は? 税金で集めた証拠をちゃんと精査して、事件を解明しろや!

それにしても大阪地検特捜は、村木事件に続く今回の大失態をどう「決着」つけるのか。


◎[参考動画]【独自取材】特捜部検事に対する刑事裁判を開く異例の決定 冤罪事件となった「プレサンス」事件〈カンテレNEWS〉(2024年8月9日放送)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

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ニュージャパンキックボクシング連盟(NJKF)のアマチュア部門が主催するEXPLOSIONの全国大会が、8月4日(日)に新宿のGENスポーツパレスにて開催されました。これはWBCムエタイジュニアリーグの全国大会も兼ねます。

EXPLOSIONは2015年から開催されており、青少年から格闘技初心者が、練習成果を発揮したり、プロ志向の選手が試合経験を積む為など、定期的にアマチュア大会を開催しています。

キックボクシングのアマチュア大会は多くの既存のプロ団体管轄下での主催団体がありますが、EXPLOSIONは定期的に大会が継続されている点や、WBCムエタイジュニアリーグ世界大会に繋がる点が好評でしょう。

今回は試合数が多く、メインイベンターという存在でもない為、画像は抜粋です。

◎WBCムエタイジュニアリーグ× EXPLOSION全国大会
8月4日(日)GENスポーツパレス11:00~19:45
主催:EXPLOSION事務局

教え子の出番を待つ武田幸三さんとリング登場前の平山結翔

平山結翔の決勝戦、果敢に攻めた

平山結翔は2-0の判定負け、優勝を逃す

 

小学生低学年クラス、-22kg級優勝者は倉持波空

◆1DAYトーナメント優勝者

男子小学生低学年クラス(3~4年生/2回戦/1分制)
-22kg級=倉持波空(鍛錬会)
-25kg級=小林楓(空修会館)
-28kg級=上木戸栄仁(LEO GYM)
-31kg級=高橋碧(泰山會)
-34kg級=山田晃士朗(LEO GYM)
34kg超級=野中力斗(HIDE GYM)

男子小学生高学年クラス(5~6年生/2回戦/90秒制)
-28kg級=鈴木翔大(CYCLONE GYM)
-31kg級=阿部凌(橋本道場)
-34kg級=阿部龍(橋本道場)
-37kg級=近藤琉聖(拳塾)
-40kg級=中畝泰衣心(小野道場)
-45kg級=山本夢輝(NJKF理心塾)
45kg超級=田中零芽(クロスポイント大泉)

男子中学生クラス(2回戦/90秒制)
-34kg級=松下琉翔(R道場)
-37kg級=宮城壮一朗(Freedom@OZ)
-40kg級=中里晃聖(AKIRA)
-45kg級=大澤透士(TRASH)
-50kg級=竹田奏音(TAKEDA GYM)
-55kg級=駒木根稔和(TSKjapan)
-60kg級=小野力光(小野道場)
60kg以上級=松澤鼓音(team ImmortaL)

女子小学生低学年クラス(3~4年生/2回戦/1分制)
-28kg級=佐藤心海(拳絋館)

女子小学生高学年(5~6年生/2回戦/90秒制)
-28kg級=岡心音(サクシード本厚木)
-31kg級=木村有那(KING gym)
-34kg級=久田愛心(TEAM SBS)
-40kg級=中島凰花(X-PLOSION)

女子小学生高学年クラス-31kg級決勝、三宅夕凛vs木村有那

[左]キングジムの木村有那が-31kg級優勝、嵐の後輩である/[右]女子小学生高学年-34kg級優勝、久田愛心

優勝した久田愛心と喜び合う久田親子

一般女性クラス(中学生以上/2回戦/90秒制)
-43kg級=柴田綾芽(楠誠会館)
-46kg級=中島瑠花(X-PLOSION)
-49kg級=山下夢(サクシード本厚木)
-52kg級=塩谷薫(VERTEX)
-55kg級=遠藤朱乃(CORE)

中島凰花、瑠花の姉妹で優勝

敢闘賞3名
鈴木翔大(CYCLONE)
大澤透士(TRASH)
工藤優愛(GRABS)

フェアプレー賞3名
倉持波空(鍛錬会)
松下琉翔(R道場)
佐藤心海(拳絋館)

各地区大会代表選手が8月4日、全国大会出場。
・北海道「G -ROUND」 5月19日(日)代表選考試合を開催
・東北地区予選 3月31日(日)岩手県営武道館「BRAVE.50」大会にて代表者決定
・関東地区予選1 5月26日(日)GENスポーツパレス「EXPLOSION.43」にて代表者決定
・関東地区予選2「SMASHERS」 7月7日(日)品川インターシティホールにて代表者決定
・関西地区予選「グリーンボーイファイト」 6月23日(日)ガレリア亀岡にて代表者決定
・中四国地区予選「NEXT☆LEVEL」NJKF大阪興行 6月16日(日)堺市産業振興センターにて代表者決定
・沖縄地区予選「全沖縄アマチュアキックボクシング大会/第48回全沖縄大会」 3月24日(日)沖縄空手会館にて代表者決定
・女性クラス「Queen’s Fight」 6月8日大会にて代表者決定

優勝者表彰式と集合記念撮影、すでに会場を後にした優勝者も居るようでした

《取材戦記》

昨年11月5日のWBCムエタイジュニアリーグ全国大会にて中学生クラス-55kg級で優勝した小野力光はこの日、-60kg級で優勝と、当然ながら体格の成長も見られ、他の選手でも多くの大会に出場している中では体格の成長もあったことでしょう。正に成長期です。減量の必要は無く、階級アップが常識ですね。

今回も勝利に歓喜する選手と陣営、負けて泣く選手もいました。人生これからの彼らは、来年雪辱でもプロに行ってからでも巻き返せるでしょうが、今日この日においては一生忘れられない日だったかもしれません。

WBCムエタイジュニアリーグ全国大会も兼ねていましたが、世界大会は2年に一度になるので、今年度の世界大会はありません。来年への優遇処置はあるものと思います。

この日は全98試合(2月4日のEXPLOSION.40は136試合)あり、4試合は欠場による勝者扱いで実質94試合でしたが、1試合の時間は短いものの、目まぐるしく進行するので、メモ書きが追い付かない。午前11時開始後、第50試合後に10分の休憩。といっても休んでいられない所用がありました。これは各スタッフも次の準備へと同じでしょう。会場は暑く、持ち込んだポカリスエットは尽き、脱水症状の中の撮影。もっと大変なのは審判団。19時半過ぎまで水分補給ままならぬ進行だった様子。

この大会で、接戦の多かった実質94試合中4試合がKO、TKOでしたが、17試合が2対1のスプリットデジション。2対0や引分け延長戦もありましたが、1試合の時間は短い中、こんなに割れるものかとも感じた長時間進行。副審は真剣に採点しつつも集中力が落ちていたかもしれませんね、

エアコンは効いていなかったと思われます。真夏のプロ興行、アマチュア大会もエアコンの効かない会場は避けた方がいいでしょう。

天窓が開いていた気がしますが、外の晴れた明るさは会場を明るくしてくれたことは良かった。しかし夕方になり、西日が差し込むとカーテンを閉められてしまった。困ったのは咄嗟の色温度(ホワイトバランス)調整。疎らな水銀灯とタングステンライトが照らす中、撮影には暗い。感度はなるべく上げたくないが、上げざるを得ませんでした。夜になるともうこの会場いつものプロ興行と同様の照明。GENスポーツパレスは照明(ライト)が故障している部分もあって照らすリング上は疎らです。改善して欲しいとはいつも思います。

私(堀田)も幼い頃からやりたかったと大人になってから思います。田舎では空手道場も無く、通う勇気も無く、キックボクシングに関わりだしてから「幼い頃からタイで練習したかった。そんなこと思うの俺だけだろうし」と思っていたところが、キックボクシングに関わった者の子世代が皆、キックボクシングをやりだし、タイ修行にも行くようになりました。一般社会人から見ればごく少数ですが、ここではもう誰もがムエタイテクニックを身に付けた時代です。

次回のアマチュアEXPLOSIONの定期大会は10月13日(日)GENスポーツパレスに於いて「EXPLOSION.45~ONE DAY TOURNAMENT~」が開催予定です。
NJKF本興行CHALLENGER.4thは9月15日(日)、後楽園ホールにて開催予定です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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