◆秋が大好きだった京都青春時代、そしていまは……

季節はもう秋。

9月に入っても今年の日本はいまだ残暑厳しいようだが、ピョンヤンの9月は涼気を感じる日々の始まりを告げる。9月初旬の日中は30度を上回ったが朝夕は涼しく中旬からはもうすっかり秋の色が濃い。

周辺の協同農場ではトウモロコシの刈り入れが終わり、田圃はたわわに実った稲穂の黄金色に染まり秋風が稲穂を優しく撫でていく、それは稲穂が風の接吻を受けているかのよう。

まさに「ロックと革命in京都」に託したラブソング、Stingの“Fields of Gold”の世界。

きっと君は僕を想う
風が大麦をなでるとき
嫉妬する空の太陽に言うんだ
黄金の世界を歩んだと
輝く世界に生きたと
二人の黄金の世界

「京都青春記」時代の私は季節といえば秋が大好きだった。それも紅葉も終わり落葉の晩秋から初冬の風情、枯れ葉をカサコソ踏みしめながら落葉後の枯れ木立の森を歩く……誰かと語り合いながら、ならもっと様になる。それが私の好きだった「枯れ葉と枯れ木立」の秋のイメージ。

それは枯山水とか「侘び、寂びの世界」とはちょっとちがう。たぶん「飾り立てるのがファッションかもしれないが、人の目を欺いてはいけない」、“悠久の黒”ファッションの山本耀司の感覚に近い。

「戦後日本はおかしい」── 敗戦でアメリカには頭を下げたがアジアには頭を下げなかった戦後日本、「アメリカに追いつけ追い越せ」の「飾り立てた」昼間の日本に違和感を持っていたのが京都時代の私、だから春や夏のように華やいだ季節はどこか肌に合わなかったのだろう。

世間的には「ひねくれ者」、屈折した青春というのかもしれない。でも本人はそんなことは意識もしなかった。当時はそれが私の自然体だと思っていたから。

“裸のラリーズ”水谷孝が夜の世界を歌い、「漆黒の闇にこそ真実と創造がある」というようなことを語っていたが、それと似ている心情世界だった思う。

そんな世界から心機一新、「革命家になる」! と「よど号」で朝鮮に飛んで来てからは四季折々の風情を楽しめるようになった。それだけ前向きになったということだろう。

ちょっとイントロダクションが長くなったが、今年の秋は風情を楽しむといった心境にはなれないというのが本題。

9月に入って不穏な空気を感じる事態が世界で起きている。

◆ゼレンスキー「最後の勝利のための4つの提案」に漂う不穏な空気

「ウクライナ『露に戦争終結を強制』」(2024年8月29日付け読売新聞)

8月27日、ウクライナのゼレンスキー大統領は「4つの最後の勝利計画」を発表、これを9月末の国連総会に合わせた訪米時にバイデン米大統領に伝えるとした。

その勝利計画の第一はロシア領内のクルスク州への侵攻、第二は米欧供与の長射程ミサイルのロシア領内への攻撃使用許可を得ること、第三はロシアに外交的に戦争を終わらせるようにすること、第四はロシアに経済的圧力をかけることとした。

目的は「ロシアに戦争終結を強制すること」だそうだ。これをプーチン大統領が聞いたら、それこそ「へそが茶を沸かす」、ちゃんちゃらおかしい「悪い冗談」と言うだろう。

だが最近の米国の動きを見ていると、それが「悪い冗談」と笑い飛ばせないものがある、いや「窮鼠(きゅうそ)、猫を噛む」の譬(たと)えにあるように「窮鼠」が何をやるかわかったものではない危険な空気を感じさせる。

ゼレンスキーの「最後の勝利計画」の核心は、第二の「ロシア領内攻撃への米欧供与の長射程ミサイル使用許可」を得ることにある。ゼレンスキーは「成否の鍵は彼(バイデン大統領)にかかっている」と米国の決意を促す強気を見せた。この強気は単なる「強がり」ではない根拠のある強気のように思える現実が生まれつつある。

これまで一貫して米欧はこの「使用許可」を与えなかった。ロシアとNATOとの全面戦争に発展することを恐れたからだ。事実、このゼレンスキー発言を受けてプーチン大統領は「もし米欧供与の長射程ミサイルがロシア領内攻撃に使用されたなら、この戦争は新しい次元に入る」、すなわち「ウクライナとの戦争からNATOとの戦争の段階に入る」と強い警告を発した。

にもかかわらず米欧は慎重姿勢を変え「使用許可」にゴーサインをする空気がいま生まれている。

9月13日、バイデン米大統領とスタイマー英首相がホワイトハウスで会談、この問題を協議した。会談冒頭でバイデン大統領は「プーチンは勝利しない。ウクライナが勝利する」と述べたそうだが、会談内容については「支援は必要な限り継続する」とのみ公表された。

この米英首脳会談を伝えたニューヨークタイムス紙は、「英仏が供与した長射程ミサイルでの攻撃を認める見込みだ」と報じた。ただし米供与の地対地ミサイル「ATACMS」使用容認については依然、慎重だと付け加えたが……。

これは米欧が「一線を越えた」ことを意味する。プーチン大統領の言う「新しい次元の戦争、ロシアとNATOとの戦争」に入ることも辞さない挙に出たとも言えるだろう。

この連載で私は米国は敗北確定のウクライナは諦めて「対中対決に集中する」だろうと述べてきた。だがどうも風向きが変わってきたのではないかと思う。

いまやウクライナの敗北は確定的と世界の誰もが見ている。ロシア領内侵攻という「鳴り物入り」のクルスク州一部地域占領も雲行きが怪しくなってきている。ロシア軍がゆっくりと攻勢をかけ始めた。「熊のお尻を蚊が刺した」程度と言われる「侵攻」だから急ぐ必要がないのだろう。でもロシアの発表では空挺部隊と海兵隊とで10部落を解放した。侵攻したウクライナ軍は援軍もなく挟撃の危険にもさらされているという。

昨年5月以来のウクライナ軍の「反転攻勢」は挫折して久しいどころかロシア軍の逆攻勢で後退に次ぐ後退を強いられている。東部の独立を宣言したロシア人居住地域、ドネツク州など、または南部の州もロシア軍が完全掌握するのは時間の問題だろう。兵器も慢性不足、かつ新たな徴兵令も「刑免除取引」に応じた刑務所囚人が応じたのがせいぜいの兵員不足に悩むウクライナ軍にこれを押し返す力はない。政権内の不協和音は拡大、国民の政権支持率も下落一途、徴兵逃れに必死の国民に戦う気力は期待できない。

このままでは「ウクイライナは惨敗必至」とウクライナ擁護の「識者」まで言い始めている。誰の目にもそうとしか映らない事態にまでウクライナは追いつめられている。

ウクライナのゼレンスキー大統領(wikipedia)

しかしながら9月に生じた新しい空気の変化は、米国がこの明確な「ウクライナ惨敗」のままで終わることをよしとしない決意を示したかに見える。なぜなら「ウクライナ惨敗」=「米覇権秩序の崩壊」不可避を意味する、そうなれば「対中対決に集中する」どころの事態ではなくなる、ゆえに敢えて「ロシアとNATOの戦争になる」危険を冒してでも「ロシアに惨敗」という現局面を変える、ここに米覇権死活の活路を求めた、そう見るべきではないのか。

しかしながら「ウクライナ支援」は、米欧日「G7」諸国以外の世界の諸国、特に絶対多数を占めるグローバルサウス諸国の反発を呼んで久しい。そのうえ「ロシアとNATOの戦争」ともなれば世界からの猛反対に合い、さらに国際的孤立を深めるのは火を見るより明らかだ。でもそれを押してでも「一線を越えざるをえない」ところまで「G7」の生命線「米覇権秩序」は窮状に追い込まれている。

まさに「窮鼠」! それが米国を中心とする「G7」グループ、いまや時代の遺物になった旧帝国主義列強諸国の現在位置だと言える。

また空気の変化を示すもう一つの根拠は、「私が大統領になればウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」、そして「対中対決に集中する」と言っていたトランプが大統領選で急に失速していることだ。9月の大統領選TV討論会でトランプは日頃の鋭気も冴えもなくハリスにいいようにやられた。かつての「いまトラ」「確トラ」から「いまリス(ハリス)」へと急変の事態もどう見ても異常だ。ハリスはバイデン路線の継承者、「ウクライナ支援は継続」論者だ。「確トラ」から「いまリス」への急変も「ウクライナ惨敗」で終わらせてはならない、そのためには「戦争が新しい次元に入る」ことがあろうとも米覇権の命運をここに賭けざるを得なくなった窮余の米国の「決心」の反映と見るべきではないだろうか。

だとすれば、ウクライナのロシア領内攻撃への米欧供与の長射程ミサイル使用を引き金に「ロシアとNATOの戦争」になる。それがどういう形になるかいまはわからない。

例えば、ロシア軍占領の東部、南部への「反転攻勢」にNATO軍が加勢する、少なくとも英仏独軍、在欧米軍が劣勢挽回のための軍事的支援、新鋭航空機と飛行士、新鋭ミサイルを扱える部隊を送るくらいはやらねばならないだろう。これに対してロシアはどう対抗措置をとるか? 英仏独の軍事基地や在欧米軍基地への攻撃だってありえないことではなくなる。

米国がどこまで勝算があってやるのか? おそらくそんなものはないだろう。文字通り「窮鼠、猫を噛む」だからかえって危ない。

この9月に生まれた不穏な空気が果たしてどうなるのか? 

その一つの指標は9月24日の国連総会出席で訪米するゼンレンスキーに米欧がどう回答を出すかだろう。すでに米国は国連総会出席の欧州関係国首脳らと「ロシア領内への米欧供与の長射程ミサイル使用許可」問題を協議するとしている。この結果を注視する必要があるだろう。

◆日豪「準軍事同盟国」化の意味

ウクライナをめぐる対ロ戦争に集中するとはいっても、それは窮余の策ということで「対中対決に集中」は一時棚上げしただけで「中国征伐戦争」を放棄するわけでも放置するわけでもない。米国の覇権秩序瓦解からの回復戦略でその主敵はあくまで中国だということに変わりはない。だからその最前線を担うことになる日本への「国際秩序を護る」戦争国化、対中代理“核”戦争国化要求は強化されることはあっても弱化することはありえない。

9月5日、メルボルンで日豪の外務・防衛担当閣僚会合「2プラス2」が持たれた。

日本は豪州を米国に次ぐ「準同盟国」と位置づけているが、今回は対中対決の「準軍事同盟国」化に大きく一歩を踏みだした。

「『敵基地攻撃』豪と協力 艦艇受注も目指す」(2024年9月6日付け朝日新聞)

その一つは「敵基地攻撃能力」での両国間の協力深化を確認したことだ。

具体的には「敵基地攻撃能力」の核心である敵の射程圏外から攻撃可能なスタンドオフ・ミサイル(中距離ミサイル)活用面での協力、豪州の広大な領土での陸自新設のスタンドオフ・ミサイル部隊の試射を行うことなどに合意した。

また一つは、自衛隊に新設が決まった統合作戦司令部稼働に向けて、11月には現在の自衛隊統合幕僚監部から豪軍の統合作戦本部に連絡官の派遣を合意した。対中戦争時の作戦指揮での連携体制確立によって、在日米軍に新設の統合軍司令部の指揮下で日豪軍が有事作戦行動をとれる体制を築いたということだ。

これは日豪間には日米安保同盟のような軍事同盟関係はないが、実質的には「準軍事同盟」関係に入ったことを意味するものだ。もちろん対中戦争を念頭に置いた「準軍事同盟」だ。

こうした日豪政府の動きの背景には米国の同盟関係転換政策、“ハブ&スポーク状”同盟から“格子状”同盟への転換がある。これについてはこの連載⑥で触れた重要なことだが、とてもわかりにくい概念なので重複を恐れず少し説明させていただく。

“ハブ&スポーク状”同盟とは、自転車の車輪の中心部のハブ、そのハブにつながる無数のスポークが車輪を支える構造に譬(たと)えた同盟構造を指す。ハブとなる中心に米国があってその中心から伸びるスポーク(同盟)で各国がつながる、つまり米国が各国個別に同盟を結び、各国が軍事大国、米一国に依存する同盟関係を指す。

“格子状”同盟とはインド太平洋地域の日韓、日比、日豪が格子状に重なるような同盟構造への取組を行うことだ。もちろん各国は米国と同盟関係にある、だが「米国だけに頼るな」ということ、この地域各国が相互に「独自の同盟関係」を結びアジアでの米覇権秩序を守れということだ。米国の要求は日本が基軸になって各国と「独自の同盟関係」を結ぶことだ。もちろんこの各同盟への指揮権は米軍が握る、そしてこの同盟の矛先は中国だ。

これはいわば「アジア版NATO」に向けた取組と言えるだろう。言葉を換えればアジアにおける対中代理戦争体制だと言えるだろう。余談だが自民党総裁有力候補の石破茂氏は「アジア版NATO」を自己の基本政策課題に挙げている。

今年7月には日本は豪州に続きフィリッピンを「準同盟国」級に格上げし、共同軍事演習への道も開いた。ゆくゆくは日比軍事同盟化が米国の要求だ。しかし日韓、日比、日豪間で軍事同盟を結ぶに当たっては日本の憲法9条がネックになる。有事の際に「戦争のできない日本」、自分と一緒に戦ってくれない日本とは韓国もフィリッピンも豪州も安保軍事同盟を結んでくれはしない。ゆえにこの格子状同盟形成面からも「9条改憲」(実質改憲も含め)が日本に迫られる。これについてはここでは触れない。

何が言いたいかといえば、対ロ戦争に集中するであろう米国だが、アジアにおける対中戦争準備は着々と推進される。

それは4月の岸田訪米以降の日米同盟新時代、「国際秩序を護る」戦争に「最も近い同盟国」日本がアジアで中心的役割を果たすこと、言葉を換えれば「東のウクライナ」の役割を果たすことを迫られることには何の変化もないということだ。

9月の日豪「準軍事同盟国」化に進んだ事実がそのことを証明している。

◆結びとして一言 

今回のテーマは“9月に感じる世界の不穏な空気「窮鼠、猫を噛む」、「国際秩序を護る」戦争”だが、アジアで「国際秩序を護る」戦争の最前線に立たされるのがわが日本だということを強調しておきたい。

いま秋の政局の季節、9月の自民党総裁選、立憲民主党代表選から10~11月に予想される解散、総選挙がある。しかしいまだ岸田首相国賓訪米に始まる日米同盟新時代が迫るわが国の「国際秩序を護る」戦争国化、対中・代理“核”戦争国化が政治争点になることはない。しかし国民の目に見えない形で、あるいは「専守防衛の範囲内」と国民を欺く手法でそれは着々と確実に進められている。

石破茂氏が「アジア版NATO」に触れるとか、高市早苗氏が「核持ち込み容認論」を唱えるとかはあるが、それは断片的な個人的見解の域を出ず、核心をついた議論は避けられている。自民にせよ立民にせよ総裁や代表をめざす政治家なら日米同盟新時代の要求が何かを知らないはずがない。そういう意味で私には既存の与野党政治家は国民を欺いているとしか思えない。

「国際秩序を護る」戦争国になるなど国民が認めるはずがない、ましてやそのための9条改憲や非核の放棄など言えば、国民的反対にあって対中・代理“核”戦争国化などいっぺんに吹っ飛んでしまう。だから政治家はわかっていても正面から国民には問わないで政治家同士で事を決めてしまう。

石破茂氏のTV討論での発言はその典型だ。「9条第二項・交戦権否認、戦力不保持の削除」改憲は必要だが、改憲を問う国民投票にかけるには長い時間がかかるから安全保障基本法でそれに代える(実質改憲をやるということ)、それを国会で審議、採択すればよい」-つまり日米基軸で一致する議会内の政治家同士の談合で決める、国民は適当な説明で欺けるといういまの政治家心理の露骨な表現だと思う。

泉房穂さん式に言えば「いったい誰の顔見て政治やっとるんや」だが、アメリカの顔を見て国民の顔は見ない、それが「日米基軸は不変」が口癖の既存政党の政治家たちだ。もちろん既存の政党(自民も含め)にも良心的な人たちもいるだろうが、その人たちの声は聞こえてこない。「支持政党なし」、無党派層が絶対多数という現実にあって国民の顔を見てアメリカに堂々と「ダメなものダメ」と言える政治家が出る時、いや出なければならない時だと思う。

そんな政治家が各選挙区に出れば、既存の政党、政治家に愛想を尽かした国民、特に無党派層はまちがいなくその人に投票するだろう。政権交代だって夢じゃない。

瓦解に向かう米覇権秩序、それと運命を共にする「国際秩序を護る」戦争とわかればそれに賛成する日本人はいないだろう。

「言うは易し行うは難し」だが、それを国民に明らかにし正面から問う、そして正しい日本の進路を示す、そんな政治家が必ず出てくると信じたい。

「またピョンヤンからの遠吠えか」と言われそうだが、もっと心に刺さる「遠吠え」を私も心がける決意で、これからも吠えつづけていきたいと思う。

客観的には米覇権秩序瓦解の時代、「米国についていけばなんとかなる時代」は終わったのだから、「戦後日本の革命」はすぐ近くまで来ている! このことを確信するから……

若林盛亮さん

▼若林盛亮(わかばやし・もりあき)
1947年2月滋賀県生れ、長髪問題契機に進学校ドロップアウト、同志社大入学後「裸のラリーズ」結成を経て東大安田講堂で逮捕、1970年によど号赤軍として渡朝、現在「かりの会」「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

◎ロックと革命 in 京都 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=109

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

 

 

◆「押し紙」の実態

兵庫県で毎日新聞販売店を経営してきたA氏を原告とする1億3823万円の支払いを求める押し紙裁判を大阪地裁に提訴しました。

請求金額の内訳は、預託金返還請求金が623万円、販売店経営譲渡代金が1033万円、押し紙仕入れ代金が1億2167万円です。

この事案の特徴は、Aさんが廃業後の生活に予定していた預託金623万円と販売店譲渡代金1033万円の計1656万円を受け取れないまま、無一文の状態で廃業に追い込まれた点にあります。

これまで、銀行負債を抱えたまま廃業せざるを得なくなった販売店は多数見聞きしてきましたが、信認金(預託金)や販売店譲渡代金を一円も受け取れないまま廃業に追い込まれたケースは初めてです。

販売店経営者は、廃業せざるを得なくなった場合でも、信認金や販売店の譲渡代金があれば、当面の生活費に充てたり、自己破産の弁護士費用に充てることができていました。しかし、Aさんの場合は、蓄えもなく銀行負債を抱えたままで経営が続けられなくされたうえに、信認金や販売店譲渡代金も新聞の仕入代金に充当され、翌日の生活費も残らない状態で廃業させられました。

幸い、Aさんは単身者だったため、経営者仲間の協力でアルバイトをしながら生活を維持することが出来ています。今年の熱い夏、毎日汗水を流しながら新聞配達とオリコミ広告のポスティングをしているAさんには頭が下がります。

しかし、Aさんに奥さんや子供さんがいたとしたら、その生活はどうなっていたでしょうか。考えるだけで恐ろしくなります。

◆新聞社のモラル崩壊

月刊誌『ZAITEN』の5月号に、廃業を申し出た読売新聞の販売店主が本社から廃業を再三慰留されてやむなく経営を続けていたところ、大雪に見舞われ欠配しないように店に泊り込みしたことから体調を崩し、数日、店を休み電話にもでなかったところ、販売店継続意思の放棄であるとして読売から販売店契約を強制解除され、販売店譲渡代金が支払われなくなった記事が掲載されていました。

また、私共が担当した広島県福山市の濱中さんに対しても、読売は補助金の不正受給を理由として大阪高裁が1000万円を超える損害賠償を認めた判決に基づき、浜中さんの預金を差し押さえる状況が生まれています。

共存共栄をうたい文句に販売店経営者に莫大な押し紙仕入代金の支払いを続けさせておきながら、廃業した途端、販売店主に残されたわずかな生活資金まで取り上げてしまう新聞社の非道な仕打ちには言葉も出ません。新聞社のモラル崩壊もついにここに極まれりという感じがしています。

大手新聞社ですら、販売店経営者の最後の命綱ともいうべき営業保証金や販売店経営譲渡金まであてにしなければならないほど危機的な経営状況にあることを示しているのかもしれません。

ABC部数の減少がこのままのペースで進むと、新聞社の経営は10年も持たないのではないかと危惧するむきもあります。

そうなれば、新聞の消滅と共に押し紙もいずれなくなります。長い間、「押し紙」は新聞業界の最大のタブーとして国民の目から隠し続けられてきましたが、ネットの普及によって「押し紙」を検索すればおびただしい情報があふれており、もはやタブーでもなんでもありません。失われた30年を経た現在、日本の現状をみると新聞社のモラルの崩壊がシロアリが巣食うように全国津々浦々にまで及んでおり、もはや日本人の美徳であったモラルの取り戻しは絶望的なようにも感じております。

最後のよりどころというべき裁判所が、この問題にどのような姿勢をしめすのか、これからも押し紙裁判の行方に関心を寄せて頂くようお願いして、毎日新聞押し紙訴訟提起の報告と致します。

*福岡地裁の西日本新聞の2件の押し紙訴訟の内1件は、来る10月1日に結審予定です。最終準備書面を提出しますので、その内容は次に報告させて頂くことにします。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長。綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2024年09月21日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

兵庫県知事で筆者の同一大学同一学部の後輩の斎藤元彦君。パワハラやおねだりなど数々のご乱行。そしてそれらについての告発を「嘘八百」と決めつけたことが、渡瀬元県民局長、そして阪神・オリックス優勝パレード担当課長の命が失われるという、取り返しのつかない事態を招きました。8月30日、9月6日には百条委員会でご本人が尋問を受けるという事態になりました。

◆出直し知事選挙「やる気満々」の斎藤君に腰を抜かす

9月19日、兵庫県議会により、前代未聞の全会一致での不信任案可決を受けました。そして、26日、斎藤君は記者会見し、県議会は解散せずに失職し、出直し知事選挙に立候補すると表明しました。筆者はこれにはびっくりしました。筆者はてっきり「斎藤君は、議会を解散し、延命を図る」のかと思いこんでいました。筆者の知り合いの兵庫県議も、解散の可能性が高いとして、選挙に備える覚悟を決めていました。

斎藤君は知事選挙になればほぼ、勝ち目はないと、いうのが客観的な見方でしょう。例えば2021年の横浜市長選挙では、与党(当時の菅総理)からも、野党からも見放された林文子・横浜市長が、当選した野党共闘候補や自民推薦候補、さらには落下傘の田中康夫さんをも下回る得票で大惨敗したくらいの結果が予想されます。

そうであるならば、議会を解し、40日以内に行われる県議選のあと、不信任案再可決(今度は過半数で可決)となるまでは知事に居座る。冬のボーナスや退職金もまんまと頂く。合理的に考えるとこのシナリオしかありえません。

すこし、奇策を混ぜるなら、議会を解散した上で、自分も辞職し、斎藤君自身が県議選に殴り込むのです。定数が多い選挙区なら可能性はある。そうすれば、県議として、斎藤君は「安定した身分」をしばらくは享受することになるのではないか?
ところが、斎藤君の出した答えは「失職・知事選再出馬」でした。なお、不信任案可決との場合は失職と辞職、両方選べます。辞職の場合は、斎藤君が当選した場合は残りの任期、すなわち一年足らずと言うことになります。これは、自己都合で退職、という意味合いもあるのでしょう。失職は「県民によりクビになった」ということで、斎藤君が当選した場合は四年の任期が与えられます。雇用保険の失業給付で会社都合退職の方が労働者に有利になるのに似てなくもありません。

実際には、辞職を選ぶ場合はそのまま引退と言うケースが多いです。例えば安藤忠恕・宮崎県知事(故人)は官製談合事件で不信任案可決となり、2006年12月4日辞職。その4日後、逮捕され有罪判決を受け、上告中の2010年に亡くなられました。安藤さんの場合は、現実問題、逮捕が迫っていることを自覚し、逮捕で選挙運動どころではないことを見越してお辞めになったのでしょう。

◆大義も勝機もないはずの出直し選挙

失職を選んだということは、出直し知事選挙で当選する可能性が高いと踏んでいるということです。

それでは斎藤君に「勝機」はあるのか?

失職したケースで出直し選挙に挑んで勝った人としては田中康夫・長野県知事がいます。田中知事の場合は確かに既成政党の多くを敵に回したものの、当時、長野県では結構大きな勢力を誇っていた日本共産党が支援に回ったこと。マスコミも田中県政を評価する論調だったことなどがあり、大差での再選となりました。

その時とはあまりにも状況が違います。田中知事の時は「脱ダム」などの争点となりましたが、今回の場合は、斎藤知事や片山副知事らによる一連の「ご乱行」が問われます。阪神・オリックス優勝パレード担当課長、そして渡瀬・西播磨県民局長が自死に追い込まれたという結果は取り返しがつくものではありません。

渡瀬さんの告発文書で告発されたことについて十分な調査もせずに「嘘八百」と決めつけてしまい、さらに、利害関係者である藤原弁護士(百条委員会で証人尋問された)による内部調査だけをうのみにして懲戒処分としてしまった。まさに、公益通報者保護法違反です。

また、斎藤知事の腹心(俗にいう牛タン倶楽部)の片山副知事(当時、7月31日付で「退職」)や小橋理事(当時、現在は降格)は、警察でもないのに「がさ入れ」を強行。片山副知事は必要な決裁も取らずに渡瀬さんの退職願を受理しない、とその場で本人に申し渡してしまいました。

また、「維新」の掘井けんじ代議士(近畿比例、地盤は加古川市など)は街頭演説で渡瀬さんの個人情報を有権者にべらべらしゃべってしまうという事件を起こしました。個人情報を斎藤知事、片山副知事、小橋理事(いずれも当時)ら誰かが漏らさなければ起きえない事態で、これも重大な犯罪です。

こんな中で斎藤君の立候補に大義もなければ勝機もない。通常で考えればそうなります。

◆「孤軍奮闘」イメージと「既成政党自滅」で若年層中心に善戦も

しかし、筆者は一抹の不安を感じています。

斎藤君は26日の会見の中で「一人で選挙をやる」ということを繰り返していました。これがウケる可能性はあるかもしれません。既成政党への不信感も強い中で、現職であっても一人で闘う姿に心を打たれる人は出るかもしれない。斎藤知事が嘘をついていなければという前提はありますが、高校生から激励の手紙を受け取ったという。これは、石丸伸二さんが東京都知事選挙で、主にインテリの若い男性に特にバカ受けしたのに似ているようにも思えます。 

いま、地方選挙では政策などが全くいい加減な人でも無所属・無党派と言うだけで結構な票を取る現象が結構起きています。この傾向は政党が自己反省し体質を改善しない限り続くでしょう。

出直し選挙に向けては、自民が独自候補を模索し、公明、立憲が自民に同調の構えだそうです。

共産は無所属新人の医師を推薦。維新も独自候補を模索。

そういう中で、反斎藤票が割れ、政党への反感の受け皿に斎藤君がなるかもしれないのです。

おりしも、9月25日、神戸地裁で民商による共産党県議候補だった東郷ゆう子さんが不当解雇された事実が認定されるという労働裁判の判決が出ました

筆者は労働者が救済されることは大歓迎します。他の全労連系の労働組合幹部の多くの仲間とは違い、筆者は日本共産党を支持しておりませんので、堂々と、判決を歓迎すると言明しています。ただ、これは兵庫県内においては間違いなく、反斎藤側に打撃になるでしょう。党内で年配者が若手にハラスメントする有様は、斎藤知事と瓜二つではないか? だから筆者は常々、「立憲や共産と言った野党はスターリン主義をやめて人を大事にすべき、と口を諫言してきたのですが言わぬことはない、です。

もちろん、おそらく自民党が出す候補が最有力にはなるでしょうが、自民党自体は決して評判は芳しくありません。維新は維新で斎藤知事の製造物責任があります。独自候補を出すことで余計に批判を浴びることも予想されます。

そういう中で、斎藤君が結果として一位になる、ということは既成政党側が油断すればあり得るのではないか? 東京都知事選挙で石丸伸二さんがバカ受けした現象を軽視すべきではありません。

ただ、石丸伸二さんが兵庫県知事選挙に突如殴り込めば、また状況は変わるでしょう。反既成政党票が割れて斎藤君に不利な展開になるでしょう。まさかの石丸知事誕生まではいかないまでも、アンチ既成政党票を石丸さんに食われると斎藤君の苦戦は免れないでしょう。

◆「斎藤事件再発防止」こそが争点だ

ともかく、斎藤君には、反省がない。内部告発に対する対処を決定的に誤った、公益通報つぶし、さらには維新のほりいけんじ代議士への情報漏洩などは刑事事件ものです。阪神・オリックス優勝パレードへの公金流用も信金関係者の証言も出てきて全容が明らかになってきた。これも解明されれば刑事責任は免れない。

斎藤君は次の任期で、県立大学無償化などの「若者への投資をやりたい」と会見で繰り返していました。

だが、くどいようですが、問題になっているのは政策ではなく斎藤知事とそのお仲間のコンプライアンスです。

どうしたら、人が二人も亡くなるような事件の再発が防げるか?それが大きな争点であるべきです。兵庫県内各政党は斎藤君の土俵=政策に乗ってはいけません。「若者への投資」も、新しい知事の下で、知事や小橋理事らの「独裁」ではなく、きちんと県民ニーズを踏まえて推進すべきです。

同時に、公益通報つぶしを許さない体制の整備は、県警の裏金問題の隠ぺいが起きているわが広島県、鹿児島県警本部長の不祥事隠しが起きている鹿児島県など全国の自治体です。そして公益通報者保護法の改正は国政の大きな課題ではないでしょうか? 来るべき衆院選の争点の一つにしても良いと思うくらいです。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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今こそ、鹿砦社の雑誌!!

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昨年LGBT法成立直後に発行された『人権と利権』、本年8月に刊行された、博覧強記、語学堪能、そして医学の知識を駆使し斉藤佳苗医師が一気に書き綴った大部の書『LGBT思想を考える』に続く『LGBT異論』が9月28日発行の運びとなりました。

 

かつてオウムによって殺されようとしつつもカルトと果敢に闘ってきた滝本太郎弁護士、現代フランス文学のレジェンド堀茂樹慶応大学名誉教授、フェミニズム界で孤立しつつも、その腐敗と復活のために闘う千田有紀武蔵大学教授らを中心として多くの方々に執筆、寄稿をいただきました。

内容は多様でぎっしりながら、定価990円(税込み)とお買い求めやすい価格でもあり、ぜひご購読ください。

以下のように緊急事態発生のため、ここでは、本書『LGBT異論』の詳しい内容は省きますが、寄稿者の一人、森奈津子さんは、昨年『人権と利権』を編纂し当社より発行、大きな話題となりました。またここ数年、いわゆる「しばき隊大学院生リンチ事件」について被害者支援、真相究明、加害者糾弾について「別個に進んで共に撃つ」形で共闘してきました。

そして、このたび、9月20日に本書の内容を情報公開した直後、森奈津子さんに対して理不尽な攻撃が勃発したのです。あろうことか森さんが講師を引き受けた、「千葉県人権啓発指導者養成講座」の「女性に関する人権」のテーマの講座に対し、これに不満を持つ徒輩が、森さんを勝手に「差別者」認定し講師を解任するように千葉県に迫ったのです。

特に、本年3月、共同代表による性加害で逮捕者を出した「TransgenderJapan」など、わざわざ要望書を千葉県に持参し直接申し入れています。そんなに森さんの発言に困ることがあるのでしょうか?

くだんの「TransgenderJapan」はみずからの団体の幹部が逮捕されたことをどう反省したのか? それを対外的に真摯に明らかにするのが先決で、それなくして他人の講座にちょっかいを出す資格などありません。

[左]「TransgenderJapan」はわざわざ千葉県庁に要請書を持って申し入れに行っている/[右]「TransgenderJapan」共同代表(当時)逮捕のネット記事

森さんは昨年、LGBT法案の委員会審議で滝本太郎弁護士と共に参考人として呼ばれ発言するほど、当事者としてLGBT問題、女性の人権について発言する知見と資格があります。

出版社としては著者を防衛することは当然であり、この件に対しては断固連携して闘います。

こういうことで、日頃は綺麗ごとばかりを宣う「LGBT法連合会」や、これを支持する政党、立憲、日共、社民、れいわは、どう動くのか? ことは一人の有能な知識人の「言論の自由」を潰しかねない重大な問題なのだ、わかっているのか!?

◆「しばき隊大学院生リンチ事件」の加害者側人脈の蠢動を許すな!

私たちの物事を見る指標に、くだんの「しばき隊リンチ事件」があります。ここで加害者側に立った徒輩(またこれにつながる者)らが森さん攻撃に与していることは決して偶然ではありません。今回の犬笛を吹いたのも、しばき隊のボス野間易通です。

LGBT問題にしろ、今回の問題にしろ、野間易通はじめ、リンチ事件加害者側につながる、いわゆる「しばき隊」(~系)の人物が蠢いているのは偶然でしょうか?

野間易通がリークし、リンチ加害者と昵懇の者が拡散

リンチ事件について私たちは真相究明として6冊もの本を出しました。毎回リンチ直後の凄惨な顔写真を付け、リンチの最中の阿鼻叫喚の音声データを付けたものもあります。このリンチ事件は、将来ある大学院生(当時某国立大学大学院博士課程在学)の人生を狂わせました。被害者はいまだにリンチのPTSDに苦しんでいます。不憫です。

いまだに「リンチはなかった」などと吹聴している者がいますが、まさに「偽造するスターリン学派」(トロツキー)です。

今また、LGBT当事者として長年活動してきた森さんの、ささやかな言論の場さえ奪おうとするLGBT活動家やしばき隊(~系)活動家らによる理不尽な攻撃には、少々の意見や考え方の違いを越え一致して反撃しなくてはなりません。ことは憲法21条「表現の自由」に関わる深刻な問題なのです。

◆しばき隊(~系)活動家やLGBT活動家は「左翼」でも「極左」でもない!

 

森さんへの不当な県知事の発言に抗議する千田有紀教授。「ぽんたCafe」は千田教授のアカウント

ついでながら、森さんには常々申し上げているのですが、しばき隊(~系)活動家やLGBT活動家は「左翼」でも「極左」でもありません。単なるゴロツキ暴力集団にすぎません。昔風に言えば「反革命」「修正主義」ということでしょうか(古い!笑)。

「左翼」「極左」とはまず権力に対して闘うことが基本ですが、彼らが権力と闘っていることなど見たことが在りません。かつては「警察のみなさん、ありがとう」などと中核派や新左翼系ノンセクトグループを暴力的に弾圧する機動隊に「ありがとう」などとエールを送っているのです。こんな「左翼」「極左」はありえません。

学生時代、少なからず「左翼」「極左」の活動に関わった私や滝本太郎弁護士としては、彼らを「左翼」、さらには「極左」などと呼ぶのはおこがましいです。まだ曲りなりに権力と闘っている中核派を「極左」というならわかりますが(ちなみに中核派の杉並区女性議員は区のLGBT条例に反対しました)。

森さんや読者のみなさん、これからは彼らを「ゴロツキ暴力集団」と呼びましょう! 決して「左翼」とか「極左」と呼ばないように!

森さんの問題、今現在、まだ流動的ですが、注視していきましょう! 講座の予定は来週10月2日、この週末から週明けにかけて大きな動きがあるものと予想されます。もし理不尽な処置がなされたならば断固一致して抗議しましょう!

(松岡利康)

【続報!】先にご報告した、森奈津子さん女性の人権講座解任問題ですが、昨日9月26日夕刻、中止が決定、千葉県のHPで公表されました。

※令和6年10月2日(水曜日)に全日警ホールで開催を予定しておりました千葉県人権啓発指導者養成講座 1「被差別部落出身者に関する人権」「女性に関する人権」については諸般の事情により中止となりました。

とのことですが、詳しい説明はありません。「諸般の事情」って何?

また、昨日、滝本弁護士らが千葉県庁を訪れ上申書を提出したとのことですが、一顧だにされず、あっというまの決定でした。

滝本弁護士の側近の方によれば、

知事には会えず、担当部署の人が対応したそうです。(逃げたか?)
画像を送ります。
いつものことといえばいつものことですが、こんな適当な部屋で。
県の担当者からは、その場で中止が確定していると告げられました。
「今回の中止は知事がxで発信する直前の20日頃から、
担当に苦情がたくさん入ったため、安全に出来ないので中止」と、
「安全面の考慮」という逃げの常套句での説明でした。

 

憲法問題にも抵触する問題ですから、本件に対しては断固弾劾しなくてはなりません。

さらに展開あれば継続的にご報告いたします。

※               ※               ※

 

『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、トランスジェンダー論争、巨大利権の行方』
女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会=編著 

A5判 164ページ(本文160ページ+カラーグラビア4ページ) 
   定価990円(税込み)  
   紙の爆弾10月号増刊 9月28日発売

【内容】
1: [対談] 堀茂樹×滝本太郎 世界を席捲する新たなカルト=「性自認」思想の現在
2: 千田有紀 フェミニズムの再生を求めて
3: 井上恵子 東京大学三浦俊彦教授の記事に対する東京大学関係教員有志声明の批判──その問題点
4: 杉島幸生 『トランスジェンダーになりたい少女たち』から考える
5: キャロライン・ノーマ オーストラリアにおけるジェンダーイデオロギーから子供たちを救おうとする私の妹の闘い
6: 滝本太郎 LGBT理解増進法について
7: 滝本太郎 前提として知っておきたいこと
8: 滝本太郎 2つの考え方の図
9: 三浦俊彦 LGBT支援のための前提条件
10: 森奈津子 男性器つき女性を誕生させたい政治家たち
11: 滝本太郎 性自認主義の進展──特例法について司法の状況
12: 玉置祐道 女性スペースの管理と法律の現状と問題点
13: 益田早苗 LGBTQ当事者の子育て:子どもの安定した生活と最善の利益を守る
14: 郡司真子 学校で危ない性教育?
15: 滝本太郎 性自認至上主義は、カルト的な思想運動である
16: 斉藤佳苗 『LGBT問題を考える』を出版して

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DHGBQC8X/
◎楽天 https://books.rakuten.co.jp/rb/18009428/
◎紀伊國屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-04-4910027201044
◎ヨドバシ https://www.yodobashi.com/product/100000009003917973/
◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000752

今年も9月1日がやってきた。私にとってこの日は防災の日としてというより、関東大震災で6千人もの人々が朝鮮人であることを理由に虐殺された日として脳裏に刻まれている。このとき約700人の中国人と日本人では大杉夫妻と甥の3名と10名の社会主義者、労働運動活動家も殺されている。私がこの事件を知ったのは高校1年生の時だった。民青同盟に加盟した私はまずその初代委員長がこのときに虐殺されたことを知り驚いた。

関東大震災の朝鮮人虐殺からすでに101年になる。事件当時、朝鮮人かどうかを判断したのは「十五円五十銭」を発音させることだったという。当時大学生だった詩人壷井繁治は、そのことを記している。壷井が友人の安否を尋ねてゆく途中で軍人などに「十五円五十銭いってみろ!」と糾された、その殺伐した光景について、後に詩「十五円五十銭」に発表している。

その男が、「朝鮮人だったら/『チュウコエンコチッセン』と発音したならば/彼はその場からすぐ引きたてられていったであろう/国を奪われ/言葉を奪われ/最後に生命まで奪われた朝鮮の犠牲者よ/僕はその数をかぞえることはできぬ」

しかし、今だ事件の全容が明らかにされていない。犠牲者の氏名、どこで誰が殺害したのか事件を起こした経緯などなど。殺害された多くの人々の霊魂が彷徨っている。

被害者の家族がその事実を知っていれば、従軍慰安婦や徴用工のように損害賠償を求めて訴えることができよう。しかし、いつどのように誰が殺されたのか分からないために、そうした訴訟も起こせないでいる。

23年松野官房長官は記者会見で「政府として調査したかぎり、事実関係を把握できる記録が見当たらない」と発言し、東京都では小池知事が震災被害者と朝鮮人虐殺被害者をひとまとめにし慰霊しているとし、朝鮮人犠牲者追悼式典への追悼文送付すら拒否したままだ。いや、真実を知っているからこそ、それに向きたくないからこそ、目を背けているというのが、日本政府や東京都の姿ではないだろうか。

なぜ、震災時に起きた朝鮮人虐殺事件がなかったようにされるのか? それは根本的には朝鮮、中国をはじめアジア諸国を侵略してきたことに対する反省をしていないからだと思う。

日本は英米の国際秩序に逆らったから敗北したとし、だから英米に逆らってはだめだという教訓だった。英米の国際秩序は覇権の秩序で不正義の秩序だ。日本がめざした大東亜共栄圏も日本の覇権の秩序であり、不正義の秩序だ。しかし、朝鮮、中国をはじめとするアジア諸国の民族解放闘争は正義の戦いだった。正義が不正義に勝つのは必然だ。日本はアジア諸国の民族解放闘争に敗北し、日本はそのために滅びたということを教訓にすべきだった。弱かった日本が強い英米に負けたというのでは本質的に何も反省していないし、教訓化していない。

だから、アジア諸国に侵略したことをできるだけ隠そうとし向き合うことができないでいる。しかし、いくら隠そうとしても歴史的事実を否定できない。

関東大震災の朝鮮人虐殺も年をおって追及する動きが強まっている。昨年、100周年を迎えさまざまな行事が取り組まれたのにひきつづき、今年も犠牲者が多かったという横網町公園(墨田区)での追悼式典が開かれた。今年の追悼式は日朝協会東京都連会長・宮川泰彦さんの開式のことば、浄土真宗本願寺派僧侶・小山弘泉師の読経、韓国伝統舞踊家・金順子(キム・スンジャ)さんによる「鎮魂の舞」と続き、最後に4人の人が代表して献花した。もっとも凄惨な虐殺現場の一つと言われる墨田区荒川の近くでも慰霊祭が行われた。高麗博物館での展示のほか、在日の若者らによる美術展の開催、埼玉県本庄市と熊谷市上里町では犠牲になった朝鮮人を追悼する式典が長年続いている。

「記録なし」という政府の答弁と裏腹に、朝鮮人虐殺の記録が埼玉県熊谷連隊区司令部が作成した「関東地方震災関係職務詳報」に朝鮮人40数人が殺されたという記録が今年発見された。また、神奈川県で県知事による内務省警保局長あての報告書で県内で殺された朝鮮人14人の名前が記載さているのが昨年秋、新たに発見された。


◎[参考動画]関東大震災から101年 都内で朝鮮人犠牲者追悼式典(毎日新聞 2024年9月1日)

韓国でも8月15日、ドキュメンタリー映画「1923関東大虐殺」(キム・テヨン、チェ・ギュソク監督)が公開され、その前に5月、日本・参議院議員会館で試写会が行われた。在日の呉充功監督は、「隠された爪跡」(1983年)、「払い下げられた朝鮮人」(1986年)、「1923ジェノサイド、93年間の沈黙」(2017年)などの作品で関東大震災での朝鮮人虐殺に光を当て、現在、ドキュメンタリー「名前のない墓碑」の編集に取り組んでいる。

9月1日福田康夫元首相は在東京駐日韓国文化院で開かれた「第101周年関東大震災韓国人殉難者追念式」に出席した。そこで福田氏は関東大震災当時に起きた朝鮮人虐殺は「歴史的な事実」としながら「日韓共同調査」が必要だと明らかにし、「日本の人々は、残念なことに(関東大震災朝鮮人虐殺に対して)実際のところよく知らない」と述べた。自民党出身の元首相が関東大震災朝鮮人犠牲者追念式に出席したのは今回が初めてだ。福田氏は「事実このような(追悼式への出席)機会がなかった」とし「過去ことを考えると胸が痛い。だが、このような痛みをこれから考えていかなくてはならない」と強調した。

一方、横網町公園での追悼式典の幕で隔てた横で朝鮮人虐殺の犠牲者数を疑問視するネトウヨの団体「日本女性の会 そよ風」が「真実の慰霊祭」の開催を事前告知していた。会場の数十メートル先で男女十数人が集まり「群馬の次は横網町だ」と書いた幕や「6000人虐殺はうそ」「根拠を示せ」というプラカードを掲げた。式典終了後、そよ風側が幕越しに会場に近づき、大震災当時の東京市長だった永田秀次郎の句碑に向けて「6000人虐殺のうそを暴きます」と叫んだ。

 

赤木志郎(あかぎ・しろう)さん

日本における朝鮮人虐殺事件は、日朝間の問題でもある。この問題を曖昧にして日本と朝鮮や韓国との相互理解や友好などありえない。岸田首相が8月に韓国を訪れ「未来志向の日韓関係」を口にしたが、アメリカの圧力のもとでユン大統領は日本政府が10億円で解決する形で徴用工問題などすべて韓国内で処理し対日賠償をおこなわせない姿勢であり、岸田首相はそれをもって日韓関係の正常化だとしている。先の呉監督は、「関東大震災虐殺に対して一貫して知らぬ存ぜぬの態度である日本政府に対して、韓国政府はまともな抗議文でも送ったことはあるのか」と怒りを抑えることができないでいる。関東大震災での朝鮮人虐殺の真相解明を要求する声は圧殺されたままだ。

関東大震災での朝鮮人虐殺をめぐる日韓の動きの背景にはアメリカがある。現在、アメリカは対中包囲網を強化するために日米韓同盟に障害を与える問題を「政治的対立物」としてはならない」という圧力を加えている。そのなかに関東大震災での朝鮮人虐殺問題も含まれている。そのため日本政府・東京都の「われ関知せず」という姿勢、韓国政府の「無視」という結果になっている。つまり、日米同盟新時代の米覇権の要求として、今日の「朝鮮人虐殺」否定があるといえる。

それゆえ、対中代理戦争国家化阻止のためにも、朝鮮人虐殺をはじめ一連の植民地支配にたいする真摯な反省を追求していくことが必要だと思う。その作業は、単なる歴史修正主義と闘い、歴史認識を正しくおこなうためだではなく、今日のアメリカの覇権主義、日米同盟新時代との闘いの重要な一環としてある。


◎[参考動画]関東大震災 朝鮮人犠牲者追悼式「虐殺を記憶し繰り返さない」(毎日新聞 2024年9月7日)

▼赤木志郎(あかぎ・しろう)さん
大阪市立大学法学部中退。高校生の時は民青、大学生のときに社学同。70年赤軍派としてハイジャックで朝鮮に渡る。以来、平壌市に滞在。現在、「アジアの内の日本の会」会員

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆海洋環境破壊

洋上風力発電は沖合に風車を建てて海底に送電線を敷く。建設には地元の漁業者らとの調整が欠かせない。ところが秋本氏は、国会で「過度な規制は国益を損ねる」などとして建設のアセスメントについて漁業関係者との相談などの期間短縮を求める質問を繰り返してきた。

これについても「日本風力開発」の塚脇前社長とメールで質問内容を確認しあった疑いがある(2023年9月22日付け毎日新聞)。秋本氏の質問により、環境省は昨年8月、アセス短縮に向かって動き出した(2023年9月10日付け朝日新聞)。

日本の漁協漁業の現状について、生物学者の池田清彦・早稲田大学名誉教授は次のように述べる。

「1986年、日本の漁獲量は約1280万トンで世界一だった。でも、それから33年が経過した2019年の漁獲量は417万トンまで減少して世界10位となっている。(中略)なぜこのようになったかというと(中略)何よりも大きいのは日本周辺の水産資源が激減していることだ」(池田清彦『SDGsの大嘘』宝島新書2020年)

日本の水産資源が激減しているのは、魚介類の乱獲の他に海の卵開発が原因であると考えられる。

窪川かおる・帝京大学客員教授(海洋生物学)は次のように述べる。

「(前略)再生可能エネルギーとして期待される洋上風力発電の送電海底ケーブルの設置も始まっている。海底ケーブルや洋上風力発電のような人工物の敷設は、ごく僅かであっても周辺の海洋環境、時に生物相に影響を及ぼす。そのため、環境への影響評価が事前から事後まで必要となる」(「深刻化する海の環境破壊」2023年7月11日付け京都新聞)

このように日本の漁業の衰退は著しいが、洋上風力発電はそれに拍車をかける。秋本氏が国会で進めてきた洋上風力発電の環境アセス短縮は論外である。そして漁業の振興を考えれば洋上風力発電の立地場所はない。

ところが、この事件により、いわゆる「第2ラウンド」の事業者選定は難航すると思われていたが、昨年12月13日経産省と国交省は秋田県、新潟県、長崎県の3海域で公募していた洋上風力発電の事業者を選定した。いずれも独占企業(伊藤忠商事、三井物産、住友商事など)を中心とする3事業体が選定され、2028年6月から29年8月の運転開始を予定しているという(2023年12月14日付け京都新聞)。

これだけ新公募基準の決定過程に問題点が指摘されながら、早くも事業者を選定したのである。

◆「再エネ発電100%」は可能か

「脱原発」運動の多くはIPCCなどの「人為的CO2温暖化説」やそれによる「気候変動(危機)」(異常気象。自然災害の激化)を認める。そのうえで政府が「脱炭素」のため進める「原発再稼働・新設」には反対して「再エネ発電100%」の実現を目指すとする。

しかし、「人為的CO2温暖化説」や「気候変動説」に対して疑問を呈する科学者は決して少数ではない。科学者が「世界気候宣言」を発表した背景には「人為的CO2温暖化説」や「気候変動説」が政治的に利用されて、非現実的な「脱炭素」政策が推進されていることに対する危機感があると思われる。

「宣言」は「2050年に向けて提案されている有害かつ非現実的なCO2ネットゼロ政策に強く反対します」(前掲近藤HP)と締めくくる。

例えばソーラーパネルや巨大な風車を再エネ発電による電力のみで製造できるのか(現在はソーラーパネルの多くは中国製で石炭火力による電力に頼っている)。また、出力が不安定な太陽光や風力発電は、火力発電によるバックアップなしで運転できるのか。

そして太陽光発電はエネルギー効率が低く、メガ・ソーラーは広大な面積の森林を破壊する。また、陸上風力発電も騒音や低周波音による住民被害を避けるためには、工事用道路建設のためふもとの山林を潰し、山頂を削って、風車を設置することになり、自然破壊が著しい。前述の通り、洋上風力発電は海洋の環境を破壊し、魚の生息を脅かす。

このように「再エネ発電100%」は非現実的かつ有害なのである。本年1月1日に起きた能登半島地震により運転休止中の志賀原発の変圧器などが損傷した。「本地震は地震列島全域の原発の地震安全性に対して、根本的な警告を発した」(石橋克彦『週刊金曜日』2024年1月26日号)のである。停止中の原発は再稼働してはならないし、運転中の原発もただちに停止すべきである。

その後は「再エネ100%」ではなく、火力発電を中心に電力需要を満たすしかない。しかし、化石燃料の使用を極力減らさなければならないことに議論の余地はない。日本では今後急速に人口減少が進むのに、AI(人口知能)やEV(電気自動車)などによる電力需要の急増が見込まれている。AIやEV拡大など電力大量消費社会が問われねばならない。(おわり)

本稿は『季節』2024年夏・秋号(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

◎大今 歩 洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて
〈前編〉洋上風力発電そのものへの疑問
〈後編〉AIやEV拡大による電力大量消費社会こそ問われねばならない

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
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イスラエル軍元兵士が語る『平和』 ダニーネフセタイさん講演会が9月18日(水)、広島市東区民文化センターで広島瀬戸内新聞が主催して行われました。


◎[参考動画]「武力で平和は生まれない」 元イスラエル軍兵士が広島で語る「平和」(広テレ!NEWS 2024年9月18日)

◆「武力で平和は生まれない」 元イスラエル軍兵士が広島で語る「平和」

 

ダニーネフセタイさん

ダニーネフセタイさんは1957年生まれの今年67歳。ダニーさんは、2008年にイスラエル軍が子どもを多く殺したことで、イスラエルがやっていることがおかしいと気付いたそうです。

ダニーさんの祖父母はそれぞれポーランド、ドイツから1920年代にイスラエルに移住。しかし、自分以外の親戚はホロコーストにあったそうです。しかし、イスラエルに移住したことでバランスが崩れてしまった。

「パレスチナでは英国が独立させる際に当初はユダヤ人・パレスチナ人が半々に土地を分割するはずだったのが実際にはユダヤ人が75%、パレスチナ人が25%になってしまった。パレスチナ人が面白くないのは当然。」

「ユダヤ人がパレスチナ人の土地を奪う。家に火をつける。車を壊す。そういうことが毎日のようにガザではなく表向きは安定しているように伝えられているヨルダン川西岸でも起きている」

と、紹介しました。

そして、なぜ、こういうことになるかといえば、

「イスラエルの文科省が認めている地図ではガザ地区との境界は書いてあるがヨルダン川西岸もゴラン高原も自国だ。子どもたちは毎日そういう地図を見る。歪んだ教育が戦争を肯定する人間を生み出している」

とダニーさんは指摘しました。

高校卒業後、イスラエルでは18歳になると男女問わず徴兵されます。ダニーさんは高校卒業後、空軍に所属しました。

しかし、今となっては「パイロットにならないで良かった」と振り返ります。

「パイロットになった友人もいるが、そういう友人は『ここに爆弾を落としてきなさい』と命令されたらその通り落としてくる。それによって多くの人を殺していても」

からです。

「ナイフを使って街中で人を殺せばかっこいいということにはならない。戦闘機で何百人も人を殺せばかっこいいとなってしまう。」

「軍隊は、以下のことで成り立っている。①自分たちを善、相手側を悪と差別すること。②殺人を正当化するほどまでに上官の命令に従うことが徹底している(普通の会社ではそういうことはない。) ③物事を解決することは話し合いではなく、武力で解決する。イスラエルはパレスチナのことをイスラエル軍にすべてを任せているから解決しない。」

と指摘します。

「イスラエル軍は1000万円の爆弾でガザを攻撃し、安全だとするが、ガザは5000円で出来るロケット弾で対抗する。結局、軍事費はうなぎ上りになってしまう。」

「イスラエルはフェンスをつくってガザを封鎖してしまった。」

「10.7以降、イスラエルの若者がガザに行く支援物資を止めてしまう。戦争は普通の人を鬼にしてしまう。」

「イスラエル軍は、力で抑えることで安全神話をつくってきた。しかし、そのたびにそれは崩れてきた。」

「イスラエルは、西岸地区でもパレスチナ人を勝手に逮捕してきた。」

◆「テロリスト」と決めつけず、対話を!

ダニーさんは、

「ハマスはテロ組織ではない。一応選挙で選ばれていた。テロという職業はない。自分の目的を達成するためにテロをやっている。」

と指摘。

「1946年当時、ユダヤ人のリーダーの後のベギン首相がイギリス軍司令部を爆破するというテロを行った。のちにベギン首相はエジプトとの和平で1979年にノーベル平和賞をもらった。1948年にイスラエルは独立したためにイギリスに逮捕されず、その後首相になった。」

という事実を紹介しました。

そして、

「テロリストと決めつけたら話ができなくなる。しかし、長年戦争をしていたイスラエルは実際にエジプトと和平し、その後はエジプトに平気で観光に行くようになった。」

「ガザとイスラエルの対立は数千年もあるから対話は無理だという人もいるかもしれない。しかし、50年前は検問所などもなかった。1998年にはガザ市とテルアビブ市は姉妹協定も結んでいる。和平をしようとすればできないことはない。」

と強調しました。

◆イスラエルはこのままではPTSDで持たない

イスラエルはガザを2008年に大規模に攻撃し子どもがたくさん殺した。その時に生き残った子どもが2023年、イスラエルを攻撃した。また、ハマスの指導者を暗殺したが、イランは報復すると宣言。イスラエル国民はおびえている。殺された人だけでなく、殺した人もPTSDなどと言う形で被害を受ける。

ダニーさんは

「戦争の時代に生まれた犠牲者でもあるが、政治家の間違った判断の犠牲者であり、間違ったプロパガンダの犠牲者でもある」

と指摘しました。

◆(核)抑止力ってあるのか?

ダニーさんは、「(核)抑止力」に疑問を呈しました。

「中学生がナイフを「抑止力のため」と持ち込んだら先生が認めるか?」
「岡山が攻めてくることに備えて「広島軍」をつくりますか?」

と問いかけました。

また、

「ロシアもイスラエルも核兵器を持っているが、ウクライナはモスクワまで攻撃しているしハマスもイスラエルを攻撃した。」

と核抑止力に疑問を呈しました。

◆戦争をベースにする歴史教科書

ダニーさんは歴史教科書が戦争をベースに記述していることも問題視しました。

「今、ロシアとウクライナは戦争していますが、欧州の51か国中2か国だともいえる。イタリアではいつもどおりピザを食べている。ただ、そんなことは教科書には載らない。」

「大昔でも、戦争をしていない国の方が多かった。戦争を止められないなら、戦争をしている国の方が多くなる。」

と指摘しました。

◆戦争・軍事こそ最大の環境破壊

「戦争はいつかおわる。ヘビースモーカーは余命2週間と知らされたらすぐにやめる。戦争も、気候変動で東京も上海もNYもガザもテルアビブも大変なことになる。そうなれば戦争どころではなくなる。」

「ただ、それを待っていたら、太平洋の島から沈むし、ガザでも人が死んでしまう。今から、平和のため、環境のために私ならがんばる。」

「戦車も戦闘機も燃費が悪い。F35戦闘機は1時間飛ぶと5600リットル燃料、すなわちクルマ1800台分の燃料を消費する。戦争をしなくても練習しているだけでも、どんどん環境を破壊する。戦争は最大の環境破壊だ。」

と指摘しました。

ダニーさんの講演を受けて活発な議論が行われました。

参加者からは

「イスラエルの状況や市民の方々の当たり前を知る機会を与えていただき、ありがとうございました。なぜあの様な状況が起きるのか疑問に思っておりましたが、日本に於ける二次大戦時の市民の方々の思いの推定も含め、認識を新たにさせて貰いました。良く見て、良く聞いて、良く話すことの重要性、夫婦や家庭でも同じだなぁ、と痛感しました。
 今後とも、このような上質な知識を得る機会を提供いただくようお願い致します。」

「戦争がもたらすこと戦争で何が起こっているかを伝えようという熱意、わかりやすく伝えたいという思いを強く感じました。おそらく、悲しみ怒りなど、持ちながら希望を伝えたいという思いを感じました。」

などの感想を戴きました。


◎[参考動画]イスラエル軍元兵士が語る『平和』IN広島 ダニーネフセタイさん講演会 広島瀬戸内新聞ニュース(2024年9月18日)

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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◆高速炉と軽水炉との違い

高速炉の燃料が1般の原発の燃料とどう違うのか。軽水炉の燃料から取り出すことができるプルトニウムは、核分裂性すなわち核兵器として使えるプルトニウムは239、241だが、核分裂性ではないプルトニウム238、240、242が3割以上含まれる。言い換えるならば、プルトニウムの純度が悪い。核爆発装置を作ることは出来るし、ナガサキ型原爆を作ることも可能だが、現代ではプルトニウムの核分裂を起爆剤に核融合により威力を発揮する核融合爆弾すなわち水爆が主流だ。

この水爆の起爆剤を作る場合、不純物の多いプルトニウムは不純物の発する中性子により早期爆発を引き起こしたり、中性子を吸収して逆に核爆発威力(収量という)を減衰させたり、発散する放射線が強すぎて周囲の回路や材料を劣化させたり、取扱者を被曝させるなど問題が多い。

しかし高速炉ブランケット燃料から取り出せるプルトニウムは不純物がほとんどない98%程度の純度である。これは原爆開発初期から存在する黒鉛炉と高速炉でしか製造できないので、フランスのラプソディ高速実験炉から取り出したプルトニウムがムルロワ環礁の地下核実験(1996年)に使用されたとき、世界中の核兵器関係者が注目したのである。

この核実験には米国エネルギー省も立ち会ったといわれている。米国が所有しない高純度プルトニウムによる核実験であった。フランスは高速炉から得た兵器級プルトニウムで400発の核兵器を製造したという。

日本が最初に導入した英国製の原発は、東海村で現在廃炉・解体中の東海原発だが、これは黒鉛炉だった。そのため英国と日本との取り決めで、使用済燃料は全量英国に返還し、日本には残されなかった。これは黒鉛炉の燃料から高純度のプルトニウムが生産できるからである。英国は黒鉛炉を使って核兵器開発を進めていたが、日本からのプルトニウムも使っていたといわれている。

核兵器生産に使える原子炉はもう1つ、重水炉がある。これは中性子を減速する材料に重水を使い、水で冷却する構造だが、プルトニウム239の純度を高く保つ運転が可能だ。実際にインドが核兵器用プルトニウムを生産したのはカナダから導入した重水炉からだ。

日本には重水炉も存在した。現在廃炉・解体中の「ふげん」がそうである。「ふげん」の使用済燃料は東海再処理工場で再処理されたが、1般の軽水炉のプルトニウムと混ぜて取り出すことになったため、核兵器級の純度を持つことはなかった。重水炉は「ふげん」しか存在しなかったし、黒鉛炉は東海原発しか存在しなかった。いずれも日米原子力協力協定による原子力開発が進められる過程で、以後は全部米国製軽水炉が採用されることになった。これは日本の核武装を阻止するためである。

これらの共通項は「プルトニウム239の高い純度」である。軽水炉でもまったくできないことはないが、そのためには断続的に運転を停止し頻繁に燃料を交換する必要がある。この燃料交換サイクルがわかれば、燃料から取り出されるプルトニウムの純度が推測できる。北朝鮮の原子炉の運転間隔が米国などの重要な衛星情報になっているのはこれが理由だ。

IAEAが日本の原発を常時監視しているが、その目的も核兵器開発を阻止するためである。そのため原子炉内には常に監視カメラが取り付けられており、運転時も停止時も止められることなく監視し続けている。主に使用済燃料プールの燃料体が計画外で取り出されていないか、あるいは運転間隔が不自然ではないかなどを監視しているとされる(「保障措置上の監視」という)。

◆核兵器開発を止めさせよう

日本の現状は、米国による東アジアの覇権を維持するために、日本にも「応分の負担を求める」として、防衛費を倍増させ、米国の兵器を爆買いさせてきた。これがアジアの緊張を高めていることは紛れもない事実である。

これに加え、日本の核武装の隠れもない姿勢は、核拡散も加速する恐れが出てきている。

北朝鮮が核兵器体系を高度化するためのミサイル実験を繰り返す中で、韓国にも危機感が高まり、プルトニウムを抽出する再処理を志向し始めている。韓国には重水炉もあるので、高純度プルトニウムを生産することも十分可能だ。

日本を筆頭に核なき世界に逆行する現状を転換しなければ、いずれ核軍拡競争がアジアで始まる。

日本が核武装を放棄するには、原子力政策、とりわけ再処理政策を放棄するほかはない。電力需要にまったく寄与しないばかりか、巨額の費用が投じられ、その分、電気代に跳ね返る再処理事業には、巨額の税金も投入されている。

環境を汚染し、核のごみを拡散させるだけの再処理工場を廃止させることから始めよう。

本稿は『季節』2024年夏・秋合併号(2014年8月5日発売号)掲載の「核武装に執着する者たち」を本通信用に再編集した全3回の連載記事です。

◎山崎久隆 核武装に執着する者たち(全3回)
〈1〉核武装のために不可欠な「核燃料サイクル政策
〈2〉開き直ったかのような日本政府の「核武装オプション論
〈3〉「核兵器開発」放棄のための「再処理政策」放棄

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。1959年富山県生まれ。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。反原発運動のひろば「たんぽぽ舎」設立時からのメンバー。湾岸戦争時、米英軍が使った劣化ウラン弾による健康被害や劣化ウラン廃絶の運動に参加。福島第一原発事故に対し、全原発の停止と廃炉、原子力からの撤退を求める活動に参加。著書に『隠して核武装する日本』(影書房 2007年/増補新版 2013年)、『福島原発多重人災 東電の責任を問う』(日本評論社 2012年)、『原発を再稼働させてはいけない4つの理由』(合同出版 2012年)、『核時代の神話と虚像 ―― 原子力の平和利用と軍事利用をめぐる戦後史』(共著/木村朗、高橋博子編/明石書店 2015年)等多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
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〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
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《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
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年齢差あるカードが多かった今回のマッチメイクは若さの勢いとベテランの意地が見られました。

初メインイベンター吉田凛汰朗はベテラン宮越慶二郎の老獪なテクニックに苦戦の敗戦。

小林亜維二は認定チャンピオン初戦を辛勝。

◎NJKF CHALLENGER 2024 / 9月15日(日)後楽園ホール17:20~21:18
主催:TAKEDAジム / 認定:NJKF

◆第10試合 64.0㎏契約3回戦

NJKFスーパーライト級チャンピオン.吉田凜汰朗(VERTEX/2000.1.31茨城県出身/63.9kg) 
26戦12勝(3KO)10敗4分
       VS
宮越慶二郎(拳粋会宮越道場/1990.1.28埼玉県出身/63.55kg)
46戦29勝(8KO)14敗2分1NC

勝者:宮越慶二郎 / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:少白竜29-30. 宮沢29-30. 多賀谷28-30
宮越慶二郎は興行MVP

初回、パンチと上下の蹴りで様子見の両者。第2ラウンドにはパンチの距離となり、吉田凛汰朗が狙った前進の中、宮越慶二郎は3年ぶりの試合ながら動きは良く、先にクリーンヒット。

吉田は打ち返そうと狙って出るが、宮越は躱す上手さもあってクリーンヒットしない展開、多少パンチを貰っても逆に打ち返す中、ヒジ打ちもヒットさせ、ディフェンスと凌ぎ切るベテラン宮越の上手さがあった。

焦りもあったか、吉田凛汰朗の右ストレートはヒットせず、宮越慶二郎が読み切った

宮越慶二郎のカウンターパンチヒット、もどかしい吉田凛汰朗

吉田凛汰朗コメント

「宮越選手の技術で呑まれてペース完全に掴まれてしまって打ち合いに応じて行っちゃったというのが本当に一番の反省点です」。

毎度の振り、5回戦制だったらという問いには、「5回戦だったらという作戦もあると思いますが、3回戦が今回の試合なので、3ラウンドでしっかり勝負を付けなければならず、今回は本当に完敗という感じです」

話を振れば、いつも笑顔で応え、落ち込むという表情ではないが、試合からこのインタビューまでキツイ時間だっただろう。また上を目指して頑張る意気込みはしっかり持っていた吉田凛汰朗である。

宮越慶二郎のリング上でのマイクアピールでは、「最高過ぎて言葉に出ません!リング上でのこの景色見れて感無量です」と率直なコメントを残していた。

巧みなテクニックで感無量の勝利。この日のMVP獲得の宮越慶二郎とスポンサーさん

◆第9試合 ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級チャンピオン.亜維二(=小林亜維二/新興ムエタイ/2006.2.16神奈川県出身/66.55kg)11戦7勝(3KO)3敗1分 
        VS
シュートボクシング日本ウェルター級チャンピオン.奥山貴大(SPORTS/GSB/1994.3.14愛知県出身/66.5kg)24戦17勝(6KO)7敗 

勝者:亜維二 / 判定3-0
主審:児島真人
副審:少白竜28-27. 宮沢28-27. 中山28-27

初回、蹴りからパンチの様子見ながら次第に距離が近くなる打ち合いに移り、第2ラウンド終盤には打ち合いから奥山貴大の左右フックで亜維二はノックダウン喫してしまう。

第3ラウンド開始早々には奥山の左フックと亜維二の右ヒジ打ちでダブルノックダウンになりかけるも奥山貴大のみのノックダウンとなり、亜維二が巻き返した流れから蹴りを加えた打ち合いの激しい攻防で終了。

亜維二の長身を活かした左ミドルキックヒット

ダブルノックダウン気味も亜維二はすぐ立ち上がり、奥山貴大はダメージあるノックダウンとなった

亜維二コメント

「率直な感想としては、本当にまずは勝てて良かったというのがあって、ダウン取られた時は、やっぱり相手もタフな選手なので、“うわー、取り返すのキツ~!”と思いながら立ち上がったんですけど、最後は取り返せて良かったです。反省点はもっと攻撃纏めたり、ガードもしっかりしないとこれが自分の短所なので、もっと自分の短所削って長所を伸ばして、皆に安心して楽しく観せられるようにしていきたいです。“いい試合だったけど・・・”と後に欠点が付くので“だったけど”が無くなるようにしたいですね。」と反省の言葉だった。

◆第8試合 64.0㎏契約3回戦

WBCムエタイ日本スーパーライト級2位.健太(E.S.G/1987.6.26群馬県出身/ 63.65kg)
121戦68勝(21KO)45敗8分
 
         VS
シュートボクシング日本ライト級2位.基山幹太(BELLWOOD FIGHT TEAM/ 2001.12.24/兵庫県出身/64.0kg)22戦13勝(1KO)8敗1分 
引分け 0-1
主審:多賀谷敏朗
副審:児島29-29. 宮沢29-30. 中山29-29

パンチと蹴りの攻防。スピードはやや基山寛太にあり、ベテラン健太の返し技の上手さが光った。最終第3ラウンド終盤には、健太がアグレッシブに打ち合いに出るインパクトを残すが、第1ラウンドが互角以外、ジャッジ三者の採点が分かれるラウンドが続いて、振り分け難い展開でもあった。

基山寛太の右ストレートが健太の顔面を捉える

引分けとなった基山寛太と健太

◆第7試合 第14代NJKFフライ級王座決定戦 5回戦

1位.谷津晴之(新興ムエタイ/ 2003.5.7神奈川県出身/50.65kg)20戦10勝(4KO)5敗5分
        VS
2位.西田光汰(西田/ 2001.2.13愛知県出身/50.65kg)10戦7勝2敗1分
引分け
三者三様
主審:少白竜
副審:児島49-48. 多賀谷48-49. 中山49-49 (延長戦は三者とも9-10)
西田光汰を王座認定、公式記録は引分け

初回からパンチと蹴りの攻防。首相撲の展開もありスピーディーな互角の攻防が続くが、決定打は無く主導権支配するには至らない両者。

第4ラウンドには西田光汰のヒジ打ちで谷津晴之の左頬がカットされる。第3ラウンド以降はジャッジ三者が揃う採点は無く、三者三様の引分けによりチャンピオンを決める為の延長非公式戦が行われ、微妙ながら西田の勢いが優った。

多彩に打ち合った両者。西田光汰の右ストレートヒット

谷津晴之の右ミドルキックヒット、互角の攻防が続いた

西田ジム会長の父親にチャンピオンベルト巻いて応援団に挨拶する西田光汰

◆第6試合 59.0㎏契約3回戦

NJKFフェザー級4位.新人(E.S.G/35歳/58.7kg)43戦23勝(5KO)18敗2分
        VS
NJKFスーパーフェザー級5位.麻太郎(健心塾/22歳/59.0kg)18戦9勝(1KO)8敗1分
勝者:麻太郎 / 判定0-3
主審:宮沢誠
副審:少白竜28-30. 多賀谷28-30. 中山27-30

打撃の攻防は若い麻太郎のパンチとハイキックの攻勢力が優った。

◆第5試合 フライ級3回戦

永井雷智(VALLELY/17歳/50.8kg)5戦4勝(3KO)1分
      VS
藤原将裕(マイウェイスピリッツ/30歳/50.45kg)6戦3勝3敗 
勝者:永井雷智 / KO 1ラウンド2分17秒 / 3ノックダウン
主審:児島真人

永井雷智はアグレッシブにストレートパンチでノックダウンを奪い、藤原将裕も少々蹴り返して頑張ったが永井雷智が3ノックダウンを奪って完勝となった。

◆第4試合 58.0㎏契約3回戦

和斗(大和/26歳/57.95kg)7戦4勝(2KO)3敗
       VS
蹴橙(クローバー/25歳/57.85kg)3戦2勝(2KO)1敗 
勝者:和斗 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)

◆第3試合 スーパーウェルター級3回戦

風成(エス/27歳/69.4kg)4戦2勝(1KO)1敗1NC
      VS
須藤雅人(OGUNI/26歳/69.55kg)1戦1敗
勝者:風成
/ KO 2ラウンド2分3秒 / 3ノックダウン

初回、蹴りからパンチでリズムを掴んだ風成が連打でノックダウンを奪い、第2ラウンドにも右フックで3度ノックダウンを奪って圧勝。

◆第2試合 フライ級3回戦

手塚瑠唯(VERTEX/17歳/50.55kg)3戦1勝(1KO)2敗
      VS
植田琥斗(E.S.G/18歳/48.95kg)1戦1勝 
勝者:植田琥斗 / 判定0-3 (28-30. 28-30. 28-30)

◆プロ第1試合 女子(ミネルヴァ)フライ級3回戦(2分制)

ミネルヴァ・スーパーフライ級9位.芳美(OGUNI/ 50.4kg)41戦11勝(2KO)27敗3分
       VS
堀田優月(闘神塾/15歳/50.3kg)2戦2勝
勝者:堀田優月 / 判定0-3 (28-30. 27-30. 27-30)

◆アマチュア2. OVER40 60kg級2回戦(2分制)

幸島秀之(サンライズ)vsアニマルタケ王(D-BLAZE)
勝者:アニマルタケ王 / RSC 1ラウンド1分53秒

◆アマチュア1. (ジュニア部門)EXPLOSION 2回戦(90秒制)

佐藤陽平(TAKEDA)vs太田善(エス)
勝者:佐藤陽平 / KO 1ラウンド54秒 / 2ノックダウン制

《取材戦記》

今回はCHALLENGER 5という表記でした。5回目でしたっけ?

武田幸三氏はセレモニーで「2月、4月、6月と来て今回が4回目!」と意識してか知らずか、御挨拶の中でそんな言い回しがありました。関西は「NJKF west 1」から予定の「west 5」まで発表されているので混合はしていないでしょう。今回は4回目でした。

盛り上がりはしたが、厳しい立場を残したメインイベントとセミファイナル。
プロモーター武田幸三氏は、
「自分も一切忖度しないでマッチメイクするので、まあそれが上に行く為の手段と思うので、毎回冒険で、今回はいい薬になりましたね。まだまだ本当に努力しなきゃいけないし、やらなきゃいけないことが沢山ありますが、現在地がようやく分かりましたね。」と語った。

プロモーターとしての現在地、選手らの現在地。停滞する場合もありながら、日本のトップ団体にする為の努力がこれからも続きます。

亜維二vs奥山貴大戦は第3ラウンドにダブルノックダウンが起こった。厳密には亜維二は軽いヒットのフラッシュダウン。奥山貴大は効いて倒れたノックダウン。レフェリーによってはダブルノックダウンとした判断もあっただろう。フラッシュダウンはすぐ立てばノックダウン扱いはしない現在の風潮で、これは勝敗の運命決める裁定。試合後に「あれダブルノックダウンじゃなかった?」と聞いてくるジム関係者も居て、物議を醸す問題ではないが、想定しておくべき事案でしょう。

プロボクシングJBCは起こり得る想定は毎度ミーティングしているということです。

「5回戦だったら」という振りを使う場合がありますが、それは3回戦制での試合後の「あと2ラウンド延長されていたら」という意味ではなく、契約時から5回戦という意味で、その想定での練習、スタミナ配分があります。吉田凛汰朗や亜維二の試合も5回戦だったらもっと戦略が幾つも複雑になっていたかもしれません。それがプロ選手の総合力が見られる長丁場の戦いです。

NJKF CHAKKENGER 5回目は11月10日(日)に後楽園ホールに於いて「55kg級JAPAN CUP 1st」8人トーナメント初戦、嵐vs壱世センチャイジム決定済を含む主要4試合を中心に行われます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

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◆老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関西電力

能登半島地震は、原発は地震に脆く、地震に伴って過酷事故が起これば、避難も屋内退避も困難を極めることを再認識させました。

地震は「いつ、どこで、どの規模で発生するか」予知できません。8月8日の日向灘地震以降、南海トラフ巨大地震発生の可能性が高まったとされています。南海トラフ巨大地震が起これば、連動して、各地の断層が動くとも考えられます。地震多発国に、原発はあってはなりません。

それでも、「原発依存社会」へ暴走する自公政権は、原発推進法(「GX束ね法」)の実態化のために、「原発・再エネの最大限活用」を進めるとする第7次エネルギー基本計画の策定を進めています。既存原発の再稼働、40年超え運転をさらに進め、60年超え運転も拡大し、原発建て替え、新設も俎上に上らせようとしています。

一方、老朽原発依存経営の泥沼にのめりこむ関電は、本年5月、原子力規制委員会から高浜3、4号機の20年間運転延長の認可を得ました。ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使用する原発の40年超え運転は初めてです。これで、来年には、関電の稼働可能な原発7基の内の5基が40年超え運転となります。老朽原発では、交換不可能な圧力容器の脆化が進み、点検や交換が難しい配管、送電ケーブルの損傷も進んでいます。

◆使用済み核燃料の乾式貯蔵が孕む2つの問題

ところで、原発を動かすと使用済み核燃料が発生しますが、発生直後の使用済み核燃料は、膨大な放射線と熱を発しますから、燃料プールで水冷保管しなければなりません。そのプールが今、満杯になろうとしています。満杯になれば原発を運転できなくなるため、電力会社や政府は、放射線量と発熱量が減少した使用済み核燃料を乾式貯蔵に移して、プールに空きを作ることに躍起です。

ところが、乾式貯蔵には2つの問題があります。一つは、乾式貯蔵に移すことによって出来たプールの空間に、高放射線、高発熱の新しい使用済み核燃料を入れた場合、そのプールが崩壊すれば、大惨事に至ることです。

もう一つは、乾式貯蔵に移した使用済み核燃料の行き場がないことです。関電や政府は、行き場として青森県の核燃料再処理工場の稼働を願望していましたが、8月23日、日本原燃は27回目の目の再処理工場完成延期を発表しました。再処理工場が完成する見通しはありませんから、使用済み核燃料は行き場を失ったことになります。危険極まりなく、行き場もない使用済み核燃料の発生源・原発は全廃しなければなりません。

自公政権が、数を頼んで成立させた「原発推進法(GX束ね法)」は、関連法の整備が必要であるため、60年運転に関わる部分などは未だ施行されていません。完全施行は来年6月といわれています。脱原発を求める市民の行動が拡大すれば、骨抜きに出来、実行不能に追い込むことも出来ます。今が私たちの正念場です。目に見え、耳に聞こえる行動に起ちましょう!

※第118回「老朽原発うごかすな!実行委員会」実務担当者会議案内より抜粋転載

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

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