日本原燃は、8月23日、核燃料再処理工場(青森県)の完成目標を2026年度内に変更するとした、27回目の完成延期を表明しました。これを受けて、関西電力(関電)の森望社長は、9月5日、杉本達治福井県知事と面談し、関電の原発でたまり続けている使用済み核燃料の県外搬出に向けた「ロードマップ」(昨年10月発表)を、「本年度末までに見直す。実効性のある見直しができない場合、老朽原発・高浜1、2号機、美浜3号機を運転しない」と述べました。またも、原発全廃を求める多くの人々の心情を蹂躙する、白々しい詭弁です。

森社長は、美浜町、おおい町、高浜町も訪れ、同様な面談を行っています。関電が倫理のかけらでも持ち合わせる企業であろうとするなら、2021年の約束(下記参照)を完全履行し、直ちに老朽原発を停止するのが当然です

関電は1996年に「使用済み核燃料は福井県外に搬出する」と、当時の福井県知事に約束しました。青森県の再処理工場が稼働すれば、青森県に搬出できると楽観しての約束でした。

しかし、1997年に予定されていた再処理工場の稼働は、延期を重ね、未だに稼働の見通しは立っていません。そのため、関電は「福井県外に中間貯蔵地を探す」という約束の反古を繰り返しています。

2021年、関電は、福井県知事に「使用済み核燃料の中間貯蔵地を2023年末までに福井県外に探す。探せなければ老朽原発を停止する」と約束しましたが、未だに候補地を見出すことはできていません。老朽原発・美浜3号機、高浜1、2号機の再稼働への福井県知事の承認を得るための空約束でした

切羽詰まった関電は、昨年6月、使用済み燃料の一部(約200トン)を、電気事業連合会が行うMOX燃料再処理実証試験に供するために、フランスに持ち出す計画を示し、「県外に搬出されるという意味で、中間貯蔵と同等の意義がある」としました。しかし、搬出量は、福井県内の原発で保管する使用済み核燃料の5%程度で、搬出予定も今すぐでなく、2020年代の後半です。

さらに、関電は中国電力と結託して、昨年8月、唐突に中間貯蔵地建設のための調査を上関町に申し入れました。原発建設に反対する住民の心情を逆なでにし、希少な瀬戸内海の生態系を破壊し、漁民のなりわいを奪おうとするものです。関電の原発電気を消費したことも作ったこともない上関や森県に、交付金をチラつかせて、中間貯蔵を押し付けることがあってはなりません。

関電は、このように「何の成算もなく空約束し、約束を反古にしても、その口を拭うために小手先の策を弄した詭弁でさらに人々を欺く企業」です

使用済み核燃料の行き場に関して、福井県から説明を求められた関電は、昨年10月10日、「使用済み核燃料に関するロードマップ」を発表しましたが、これによって、関電の使用済み核燃料をめぐる情勢は一転しました。このロードマップで、関電は、再処理工場の活用、中間貯蔵施設の確保を盛り込み、いかにも近々使用済み核燃料の福井県外搬出が可能であるかのように見せかけていますが、いずれも実現の可能性はない「絵に描いた餅」です。

それでも、関電は「使用済み核燃料搬出の円滑化のために原発構内に乾式貯蔵施設の設置を検討する」とし、福井県内での乾式貯蔵への布石をしました。関電の燃料プールは3~6年後に満杯になって、原発を停止せざるを得なくなるため、プールに空きを作ろうとする詭弁です。福井県知事は、わずか3日後にこれを容認しました。「原発の運転継続ありき」の出来レースです。

関電は、本年2月8日、福井県内にある全ての原発の敷地内に使用済み核燃料を一時保管するための「乾式貯蔵施設」を設置する計画に対する了解を求めて、福井県、美浜町、おおい町、高浜町に事前了解願を提出しました。来年の着工を目指すとし、高浜原発で最大32基(使用済み核燃料768体分:2027年の運用予定)、大飯原発で最大23基(同552体:2030年の運用予定)、美浜原発で最大10基(同210体:2030年の運用予定)の計65基(1530体)のキャスクを有する乾式貯蔵施設を計画しています。

この事前了解願に関して、福井県は3月15日、設置に向けて国に審査を申請することを了承し、関電は同日、原子力規制委員会に審査を申請しました。使用済み核燃料の福井県内「乾式貯蔵」を許してはなりません。

何としても、関電と福井県に2021年の約束を履行させ、全ての老朽原発を廃炉に追い込みましょう!

2024年9月6日記

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか


◎『季節』創刊10周年特別企画『脱(反)原発のための季節セレクション』(仮)
出版のためのクラウドファンディングご支援のお願い

https://readyfor.jp/projects/kisetu_nonukes

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!