地道に着実に基礎固めの秋を迎えた令和の全日本キックボクシング協会。期待を背負った瀬川琉が王座獲得。全力で立ち向かった仁琉丸の闘志が試合を盛り上げた。
◎原点回帰、参ノ陣 / 9月6日(金)後楽園ホール17:30~20:58
主催:全日本キックボクシング協会
※戦績はプログラムより参照し、この日の結果を加えています。
◆第11試合 全日本スーパーフェザー級王座決定戦 5回戦
2位.瀬川琉(稲城/ 1998.6.6東京都出身/ 58.95kg)20戦13勝(4KO)6敗1分
VS
3位.仁琉丸(ウルブズスクワッド/ 58.3kg)23戦12勝(8KO)11敗
勝者:瀬川琉 / TKO 5ラウンド 48秒 /
主審:和田良覚
仁琉丸は右ローキックからスタート。瀬川琉は受けても慌てる様子は無く、ローキックを返しながら左ミドルキックを蹴り込んでいく。
両者の蹴りパンチの攻防の中、瀬川琉の左ミドルキックのインパクトが強く主導権を支配していく。
後半、仁琉丸のストレートパンチで瀬川琉の顎が仰け反るシーンはあるが体幹は崩れず、より一層の左ミドルキックの徹底度が増していく。
最終ラウンドには瀬川琉の左ミドルキックが仁琉丸の脇腹にヒットするとダメージの限界に来たかノックダウンを喫し、呼吸を整えて立ち上がるも再び左ミドルキックを受けたところで堪らずノックダウンを喫するとレフェリーストップが掛かった。
瀬川琉、リング上では勝利のアピール。
「今回、団体立ち上がって、また団体増えたとか、またチャンピオン一人増えたとか、凄く悲観的な意見沢山あると思います。僕自身それが一番自覚しています。全日本キックボクシング協会の選手達、まだ新人の選手凄く多くて、これからの団体ですけど、僕自身がこのベルトと団体の価値を上げていけるように、これから前にどんどん進んでいって来年、他団体のトップどころと戦えるように精進していきますので、これからも応援宜しくお願いします。僕、デビュー戦からずっと後楽園ホールでしか試合してないんですよね。もっと次、デカイ舞台で試合していきたいので、他団体とも絡んでいきます(一部抜粋)」と抱負を語っていた。
控室にはなかなか戻れず、ロビーで応援団と記念写真に応えていた瀬川琉は閉館の時間も迫り、控室に戻る途中で話を聞かせて貰い、「もうちょっと早く倒すつもりではあったんですけど、練習の20パーセントぐらいしか出せなかったので。ただ今後のことを考えても5回戦はいい経験になりました。KOも出来たので良かったです。目標としては他団体のトップどころと戦いたいのと、どのルールでもいいのでRIZINに出たいですね。」と語り、防衛戦やRWS、ONEについて振ってみても、「取り敢えずRIZINで!」とまずRIZINへ出場したいアピールは強かった。
仁琉丸のウルブズスクワッドジム会長の能澤隆一会長は「仁琉丸はボディーでやられましたが、気持ち入っていて気持ちでは負けてないという感じがありましたね。いい部分もっと出して行ければ良かったですが、僕的には、よく頑張ってくれてあれでいいんじゃないかと思いますし、良い試合で最高でした。」と敗れたもののメインイベントで全力尽くした仁琉丸について語られました。
◆第10試合 フェザー級3回戦
WBCムエタイ日本スーパーバンタム級3位.前田大尊(マイウェイ/2005.8.6山梨県出身/ 57.1kg)
11戦8勝(2KO)3敗
VS
祐輝(OB-BU/ 56.9kg)17戦7勝(2KO)7敗3分け
勝者:前田大尊 / KO 2ラウンド 2分31秒 / 3ノックダウン
主審:少白竜
初回は祐輝のアグレッシブなパンチヒットがあったが、前田大尊の蹴り中心にハイキックも効果的に圧力掛ける流れで主導権を奪う。
第2ラウンドも蹴りで優った前田大尊が祐輝をコーナーに追い詰め、右ストレートでノックダウンを奪う。
立ち上がった後も更に左ボディーブローで二度目のノックダウンを奪う。
心折れない祐輝は立ち上がるも前田大尊の右の蹴りで三度目のノックダウンを喫したところで終了となった。
前田大尊は勝利後マイクで、「10戦して7回勝ってるんですけど、KOが1回だけっていう、勝つことは出来ていても倒すことは1回しか出来なくて、自分の課題だと思って必死に練習してきました。本当に悔しくて、凄くくじけそうになったこともあるんですねど、応援してくれる皆が居てくれて強くなることが出来ました。」
また11月10日のニュージャパンキックボクシング連盟興行に於いてのトーナメント出場も決まっていることを告げ、「インスタでフォローして結果楽しみにしていてください」とアピールした。
◆第9試合 ライト級3回戦
山田旬(アウルスポーツ/ 60.65kg)3戦3勝(1KO)
VS
鈴木孝則(無所属/リミットクリアー)6戦1勝5敗
勝者:山田旬 / 判定3-0
主審:椎名利一
副審:竜矢30-27. 和田30-28. 少白竜29-28
序盤は蹴り合う両者の主導権の奪い合いから、山田旬が思い切ったハイキックやバックヒジ打ちなどの技が攻勢を導き、鈴木孝則を追い詰めた。鈴木は顔を腫らしながら向かっていき、試合を盛り上げた。
◆第8試合 ウェルター級3回戦
成瀬晴規(無所属/ 66.68kg)4戦1勝2敗1分
VS
Katsuya Norasing famiry(=堀内克也/Norasing famiry/ 66.25kg)1戦1勝(1KO)
勝者:Katsuya / TKO 2ラウンド 49秒 /
主審:勝本剛司
蹴りとパンチのアグレッシブな攻防は激しく動き回った中、接近して打ち合う場面もあったが、突然試合はストップ。蹲る成瀬晴規のマットには夥しい鮮血が広がった。
有効打か偶然のバッティングか見極められなかった審判団。一旦は前半の偶発的アクシデントとして無効試合が宣せられたが、審判団の映像確認の上、全試合終了後にKatsuyaの有効打によるTKO勝利と訂正された。ヒジ打ちによる左眉尻のカット、ドクターの勧告を受入れレフェリーストップとなった。
◆第7試合 ヘビー級3回戦
田馬場貴裕(impact/ 97.0kg)16戦6勝9敗1NC
VS
ピクシー犬飼(府中ムエタイクラブ/ 108.0kg)2戦1敗1NC
無効試合 / 1ラウンド 1分59秒 /
主審:勝本竜矢
パンチラッシュする田馬場貴裕と凌いで蹴り返すピクシー犬飼のアグレッシブな攻防は突然の股間蹴りで試合は中断。
立ち上がれぬ田馬場は担架が用意されたが、担架だけは避けたい意思を示し、セコンドの手を借りなければ立ち上がれないほどダメージは深かった模様。ラウンド前半の偶然のアクシデントとして無効試合が宣せられた。
◆第6試合 バンタム級3回戦
広翔(稲城/ 53.3kg)3戦2勝1敗
VS
風間祐哉(WSR三ノ輪/ 53.3kg)3戦1勝2敗
勝者:広翔 / 判定3-0
主審:和田良覚
副審:椎名30-27. 勝本剛司30-27. 竜矢30-27
3月16日の旗揚げ興行から出場している広翔はよりアグレッシブにスピーディーに攻める勢いが付いた中、先手の左ストレートでノックダウンを奪い、主導権を奪った流れは譲らず大差判定勝利を掴んだ。
◆第5試合 56.0kgから変更58.0kg契約3回戦
吉田秀介(稲城/ 57.5kg)
VS
嶋津悠介(RIKIX/ 56.0kg)2戦2勝(1KO)
勝者:嶋津悠介 / KO 1ラウンド 2分23秒 / 3ノックダウン
中村健甚、体調不良により欠場。吉田秀介代打出場。
◆第4試合 ミドル級3回戦
義斗(KickBoxing fplus/ 70.0kg)2戦1勝1敗
VS
KENTA PUAKUTA SHONBIN(スポーツジム67‘S/リミットクリアー)2戦1勝1分
勝者:KENTA PUAKUTA SHONBIN / 判定0-3 (29-30. 28-30. 28-30)
◆第3試合 スーパーバンタム級3回戦
吉田鋭輝(team彩/ 54.9kg)2戦2勝(1KO)
VS
二宮渉(アウルスポーツ/ 54.8kg)1戦1敗
勝者:吉田鋭輝 / TKO 3ラウンド2分16秒
◆第2試合 フライ級3回戦
横尾空(稲城/ 50.7kg)2戦2勝
VS
内山朋紀(TEAM ONE STEP/ 50.3kg)1戦1敗
勝者:横尾空 / 判定2-1 (30-27. 30-28. 29-30)
◆第1試合 65.0kg契約3回戦
野竹生太郎(ウルブズスクワッド/ 64.35kg)1戦1勝
VS
山下聖一郎(廣島ブルドッグ/ 64.8kg)6戦1勝4敗1分
勝者:野竹生太郎 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-27)
《取材戦記》
設立以降、初のチャンピオン誕生となったスーパーフェザー級で王座争った瀬川琉と仁琉丸は、新日本キックボクシング協会で経験を積んできた選手で、瀬川琉は一昨年10月に瀬戸口勝也の王座へ挑戦経験を持つ。今後は全日本キックボクシング協会のエース格として看板を背負っていかねばならない。その自覚はマイクアピールに表れていた。
他の階級は今後、新人戦から這い上がって来た若い選手が王座を争っていくことになるでしょう。そんな一から始まった原点回帰の全日本キックボクシング協会の今の姿である。
無効試合がTKO裁定に訂正された成瀬晴規vsKatsuya Norasing famiry戦を客席から見ていた知人は「明らかにヒジ打ちが出されたのが見えましたよ!」と翌日話を聞くことが出来た。審判団が見落としたというより、近くで見るより離れたところから見た方が視線のブレが少なく見極め易かったかもしれない。それはケースバイケースで、立ち位置にもよるが、青コーナーに近いところで起きたことで死角が重なったかもしれないだろう。
ヘビー級の股間ローブローは重量感ある蹴りによるものか、そのまま試合続行不可能に陥ることは多い。巨漢であることがノーファールカップの締め具合が緩くズレ易くなる可能性もあり、改良の余地は無いか、難しい問題です。軽量級ではあまり起こらない現象でもあります。
栗芝貴代表はこの日の総括を「ウチの協会もだんだん白熱して来て、前田大尊選手にしてもウチの選手にしても本当に誇らしい試合をしてくれて、こういう試合がどんどん増えていくと思います。」
5回戦を上手く戦った瀬川琉について、「瀬川は5回戦制が性に合っているんじゃないかな。それが活かせたかもしれませんね。」と語った。
また「来年度も後楽園ホールスケジュール4回取れまして、日曜日開催も来年後半には行われて行きます。」と今後の後楽園ホール使用の機会も増えていきそうな見通しも語られました。
全日本キックボクシング協会年内最終興行は、12月28日(土)に後楽園ホールに於いて行われます。
▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」
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