◆洋上風力発電をめぐる収賄事件

昨年9月27日、自民党の再生エネルギー普及拡大議員連盟(以下、再エネ議連)の事務局長である秋本真利衆議院議員が、洋上風力発電をめぐる収賄容疑で起訴された(自民党を離党)。

すでに贈賄により起訴された「日本風力開発」の塚脇正幸前社長の便宜を図る国会質問の見返りに、前社長から計7,286万円の賄賂を受け取った。

例えば2022年2月17日、秋本議員は国会で公募基準の見直し(運転開始の時期を評価するなど)を求めた。同年10月27日、秋本議員の質問に沿った「新公募基準」が公開されると、その翌日、前社長から1,000万円を受領したという。

このような収賄をめぐる秋本氏の疑惑には、再エネ議連の顧問で秋本氏が「おやじ」と呼んでいた菅義偉前首相、「兄貴」と呼んでいた河野太郎衆議院議員(現デジタル相)、さらに当時、経産相だった萩生田光1氏の関与も疑われる(「赤旗」日曜版2023年8月27日号)。

まず2021年12月24日、秋田県や千葉県の洋上風力発電の公募(いわゆる第1ラウンド)で、三菱商事を中心とする企業連合がすべて落札して「日本風力開発」などは失注した。

これについて菅前首相は入札の報告に来た経産省のエネルギー庁長官・保坂伸氏を長時間にわたり詰問した(前掲「赤旗」)。

また、萩生田元経産相は2022年1月7日、「他のプロジェクトの人たちにも今後参加しやすいような仕組みを検討しようと思っている」と記者会見で発言した。秋本氏の質問(2月17日)以前に入札の「仕組み」見直しを言及しているのである。そして萩生田氏は3月18日、入札の評価基準を見直すため、第2ラウンドの入札の締め切りを延長すると表明した(前掲「赤旗」)。

さらに河野氏は、「新公募基準」の公表について、同日(10月27日)ツイッター(現X)で「秋本真利代議士や柴山昌彦代議士(再エネ議連会長)のファイン・プレー」と賞賛した(前掲「赤旗」)。

秋本氏が事務局長を務める自民党再エネ議連には100名を超える議員が名を連ねているが、これらの議員の動きにも疑いの目を向けなければならない。GX基本方針に群がる企業・政治家2020年9月、菅前首相は所信表明演説で「2050年までに国内の温室効果ガス排出などを実質ゼロにする」と宣言した。そして、政府は昨年2月、 「GX(脱炭素)に関する基本方針」として、今後10年間に150兆円、そのうち再エネ拡大に20兆円を支出する、とした。このような巨額の資金に企業が群がり、その企業から政治家が甘い汁を吸う。

秋本氏は自民党内で原発の再稼働には反対して、「脱炭素」を推進するため、再エネ発電(特に洋上風力発電)普及を目指すべきだと唱えてきた(秋本真利『自民党発!「原発のない国へ」宣言2050年カーボンニュートラル実現に向けて』東京新聞2020年)。「脱原発派」(共産党なども含む)にも根強い「再エネ100%」という主張が秋本氏に活躍の場を与え、収賄につながった。

◆洋上風力発電そのものへの疑問

しかし、洋上風力発電そのものへの疑問をマスコミは取り上げない。また、「脱原発」を唱える人々の反応にも鈍い。例えば大島堅一・龍谷大学教授は次のように述べる。

「洋上風力発電は脱炭素社会を目指す上で主力電源となる可能性を秘めている。(中略)この事件だけをもって普及がストップするのも問題だ。事件と洋上風力発電推進は別物と考えるべきだろう」(2023年9月8日付け京都新聞)

しかし、本当に「事件と洋上風力発電推進は別物」なのか。脱炭素政策の根拠とされるIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の評価報告書については、これまで世界各国の科学者から様々な批判や異論が提起されてきたが、特に注目されるのが2019年に発表された「世界気候宣言──気候危機は存在しない」(以下「宣言」 )である。

シンクタンクのクリンテル(CLINTEL= Climate Intelligence)が集約し、今年1月現在60以上の国・地域の1800名以上の科学者が署名している。

日本でも田中博・元筑波大教授(気象学・大気科学専攻)ら6名が加わっている。

「自然は人為的要因と同様に温暖化を引き起こす」 「地球温暖化は自然災害を増大させてはいない」などというものである(近藤邦明HP「World Climate Declaration『世界気候宣言』をどう読むか」)。

昨年8月にはノーベル物理学賞(2022年)を受賞したジョン・F・クラウザー博士もこの宣言に署名したことがインターネット上では話題になった。

しかし「気候危機」を煽る日本のマスメディアはこの「宣言」を全く取り上げない。

「人為的CO2温暖化説」 「気候変動」が疑わしいとすれば、 「脱炭素」政策自体が無意味である。また仮に「脱炭素」が必要だとしても、洋上風力発電については巨大な風車製作、設置工事、バックアップの火力発電の建設(出力変動が激しいため)などを含めれば、CO2(化石燃料)削減になるかも疑わしい。

しかも、洋上という常に潮風に吹かれ、台風という短期的に極めて厳しい負荷のかかる環境下では、劣化が激しく発電コストは著しく上昇することになる(近藤邦明HP「エネルギー問題・脱炭素社会について考える③」)。事実、「福島復興事業」として東京大学や新日鉄などが参加して鳴り物入りで建設した福島県の浮体式洋上風力発電のうち、世界最大級の直径167㍍の風車は2018年十月に撤去が決まった。設備利用率が3%止まりで不具合が頻発したためだという(2019年3月15日付け日本経済新聞)。(つづく)

本稿は『季節』2024年夏・秋号(2024年8月5日発売号)掲載の同名記事を本通信用に再編集した全2回の連載記事です。

▼大今 歩(おおいま・あゆみ)
高校講師・農業。京都府福知山市在住

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 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

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《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
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《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

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 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

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龍一郎揮毫

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