2024年10月27日執行の第50回衆院選は、各マスコミの世論調査によると、
1.内閣支持率が低迷。28%という調査も。
2.自民党は、単独では過半数に届かない可能性。特に比例代表での落ち込みが大きい。
3.これまで衆院選で議席を確保していた政党(自民、公明、立憲、維新、国民、共産、れいわ、社民)に加えて、参政党、日本保守党などが議席を確保する見込み。
4.日本共産党については微増と半減でマスコミにより判断が分かれる。
といったところです。

◆自民党「高市」派が保守党や国民民主党へ?

ネット上では、高市早苗さんの支持者を名乗る自民党員の方が、自民党でも石破総理に総裁選で投票した自民候補や比例区での自民党への投票を拒絶するポストが目立ちます。

高市さんは、経済的には財政出動。一方で政治的なイデオロギーは選択的夫婦別姓制度反対など、保守的です。そんな高市さん支持者が「国民民主党」や「日本保守党」に流れているケースが多い。「国民民主党」の玉木代表は選択的夫婦別姓制度賛成ですが、外交タカ派、積極財政で高市さんとは共通する。「日本保守党」は、ほぼ高市さんと政策が一致します。

むろん、高市さん自身は「自分は総裁選で自分に投票しなかった方も含めて応援に回っている」と「火消し」に必死です。しかし、支持者は、今の石破さんや、ましてや新自由主義者の小泉進次郎さんとは一緒にやれない、という雰囲気がかなり強いということでしょう。

こうしたことが、自民党が比例区で伸び悩む原因ではないでしょうか?

◆ブレてしまい、高市派も無党派も失う石破さん 明智光秀・藤原道兼の最短記録更新か?

石破総理は、10月1日に総理になり、9日に衆院を解散。わずか9日で「天下人」を手放しました。ちなみに石破さんが好きな戦国武将・明智光秀は6月2日に主君・信長を打倒し、13日に秀吉に山崎の戦いで打倒されます。明智光秀の天下人期間は12日間。もう一人、大河ドラマの主人公道長の兄・藤原道兼は4月27日に関白になり、5月8日に病死。

石破さんは明智光秀や藤原道兼の最短記録を更新しかねません。

この理由としては、最初はいわゆる裏金議員に甘い対応を発表した後、世論の反発を受けて「非公認」にした、という「ブレ」があげられます。結果として、高市派の有権者からも、クリーンさを重視する無党派からも支持を失ってしまったのです。こんなことなら、最初から厳しい処分をしておけば、無党派からの支持はつなぎとめられたでしょうに。

◆斎藤元彦元知事暴走で維新ボロボロ?

日本維新の会は公示前議席を減らすと予測されています。これは、維新が主導して擁立した斎藤元彦元兵庫県知事(9月19日不信任案可決、30日自動失職)の暴走が大きく響いています。斎藤君が暴走すればするほど維新の票が減る。そんな構図になってしまっています。

 

広島2区で立候補された方々。西広島駅付近で筆者撮影。2021年衆院選での自民vs立憲の一騎打ちが今回2024年衆院選では自民vs国民vs共産vs維新に

なお、最近の維新は、橋下徹さんのころのような「緊縮財政」一辺倒ではありません。公務員叩きも当時ほどではない。むしろ、財政出動で、教育無償化など子育て世代支援に力を入れています。他方で、高齢者はぶっ叩くイメージで、若手・中堅に溜飲を下げてもらうスタンスです。これは、国民民主党も共通する部分です。維新が減ることで、国民民主党に一定の票が流れているのでしょう。また、「なんとなく改革を期待して維新」という人が立憲に流れていることも考えられます。

◆野党共闘は事実上崩壊

一方、いわゆる立憲野党側は、2016年参院選以降の市民連合が呼びかけ、立憲・共産を軸とした野党共闘は事実上崩壊してしまいました。特定秘密保護法や集団的自衛権(いわゆる安保法制)などで暴走する安倍晋三さんを「共通の敵」とするものでした。

2016年参院選、17年衆院選、19年参院選までは一定の成果を上げた野党共闘。しかし、安倍晋三さんと言う「共通の敵」が2020年に退陣、そして2022年には暗殺され、消滅した。2021年の衆院選や22年の参院選では、岸田総理に代わった中で、立憲、共産両党は大敗を喫しました。

立憲では、「共産との共闘が比例区で票が伸びない原因になった」と言う議論が連合幹部を中心に噴出。共産党も態度を硬化させ、2024年衆院選では多くの選挙区で候補を出しています。広島県内では、1~6区のうち4区を除く5選挙区で候補者を擁立。ここに立共共闘は完全に崩壊しています。

◆敵失で「棚ぼた」立憲 除名・除籍による士気低下の影響次第の共産

立憲民主党については、そんなに比例で支持が伸びている感じもしない。ただ、自民党があまりにグダグダなのでお灸をすえる票が、消極的に流れている感はあります。それ以上でもそれ以下でもありません。

日本共産党は、自民党の腐敗がクローズアップされるときには強いはずですが、他方で、最近はちょっとでも志位和夫議長や田村智子委員長の気に食わないことを言うと「除籍」されます。この「除籍」というのは、「除名」のように、複雑な手続きが必要ないのでカジュアルに異分子排除に最近は特に多用されています。

野党共闘の中で、共産党内でも自由な議論があるように見えた時期もありました。しかし、今は、そのころ、執行部を突き上げていた側の若手が大量に除籍されています。また、年配者でも野党共闘を推進していた側の幹部が失脚するなどの事例も、筆者の身近でも伝え聞いています。除籍された若手の具体例としては福岡市長候補でもあった『紙屋高雪』さん、また福岡県議候補だった『すなかわあやね』さんらが挙げられます。こうした粛清による党勢低下がどこまで影響するか? マスコミ各社も測りかねているようです。

◆考え方も課題も多様化する時代にそぐわない二大政党制

そもそも二大政党制とは、英国の19世紀の保守党vs自由党、20世紀の保守党vs労働党など、価値観や利害が二分されていたような時代の遺物です。

しかし、現代社会はもっと状況は複雑です。ライフスタイルも多様化している。いろいろな価値観の人が共存していかないといけないが二大政党では十分にそれを代弁できない。

さらに、経済格差、さらには貧困がこの25年拡大してしまったことが、さらに状況を複雑にしています。例えば、ジェンダー平等といっても、東京の一定年齢以下の高学歴・高収入女性と、地方や都会でも氷河期世代の非正規労働者の女性では直面する課題も違うし、場合によっては衝突するケースもある。あるいは、公務員労働者でも正規と非正規ではずいぶん状況が違う。

ただ、全般的に見れば、まだまだ、日本は男尊女卑でもある。そういう中で、経済格差・貧困問題を解決しつつ、多様性をいかに尊重するか?議論をきちんとしていく必要があるでしょう。

国際情勢を見ても、冷戦崩壊後久しいものがあります。そして、冷戦崩壊後25年経過した今、一人勝ちだったはずの米国を筆頭とするG7の権威も落ちてきています。もっと言えば、いわゆる大航海時代以来の旧白人帝国主義諸国の優位は崩壊しています。

そして、2023年の「10.7」以降、イスラエル首相・ネタニヤフ被疑者の暴走が止まるところをしりません。依然としてネタニヤフ被疑者に甘い姿勢の米独などへの不信感がグローバルサウスにも、そして、日本人の一般市民の間にも広がっています。また、大陸が離れている米国やロシアだけを相手にすればいい欧州とは違い、日本は中国・ロシアとどう付き合うかが問われる。

 

広島1区で立候補された皆さん

少なくとも、G7に追従という選択肢は今後あり得ません。問題はその距離を置く方向とスピードです。

正直、岸田前総理は、結局、今までもっとも旧白人帝国主義国べったりの総理だったように思えて残念です。人権面でハト派と言われる反面、それが災いしてか、安倍晋三さんのように中国やロシア、その他米国と関係が悪い国とも一定程度親しくするという観念が薄いようにも思えます。G7広島サミットについても『名誉白人』扱いで舞い上がっていたように思えてなりません。

むろん、G7の権威低下で人権や環境などの価値も道連れで損なわれる懸念はある。ただ、それについては、米国のように軍事力でぶん殴って押し付けるのではなく、市民運動・労働運動や、例えば広島市が会長の平和首長会議など自治体の横の連携で進めていくべきだと思います。

◆比較第一党が総理を取り、課題ごとにあう政党と連携を

筆者はここで提案があります。衆院選後は、基本的には比較第一党が総理を取るべきです。自民党が議席数で一番なら石破さんが続投すればいい。

少数与党でも、きちんと政策を進めることはできます。課題ごとに別々の政党と組めばよい。

例えば防災省。日本は災害超大国です。今年は能登半島では元日に大震災、秋のお彼岸に大水害とダブルパンチです。こういうことは今後も頻発が予想されるし、自治体では対応しきれません。仕組みを改めるしかない。被災者生活再建、復旧復興に国が責任を持つことを明確化すべきだ。それとともに、国際貢献もこの分野で進めるべきです。その防災省設置は山本太郎が一番、石破総理以外では先頭に立って提案してきました。それこそ曲論ですが、石破総理―山本防災大臣という局面もあってもいいと思います。

また、米国はいまだに核兵器使用を謝罪も反省もしていません。実を言うと、高市早苗さんを支持するような右派の方でも、米国政府は謝るべきだ、という人もおられます。米国がきちんと原爆投下を謝罪も反省もしていないことをこれ以上放置すると、他の核保有国の威嚇なり核軍拡なりを批判しにくくなります。米国政府に一定の謝罪なり反省なりを求める動きと言うのも左右を超えてやればいいと思う。

もちろん、いわゆる立憲野党は、岸田前総理の置き土産である無謀な軍拡とか、原発推進とかは国会で厳しく追及し、関連法案を阻止すればいいのです。

◆改めて1993-94年の「政治改革」総括と選挙・政治資金制度再改革を

また、そもそも、政治改革の名のもとに小選挙区比例代表並立制という仕組みを1994年に導入し、二大政党にもっていこうとしたのが間違いだったのではないか?結局、裏金問題もなくならない。そして、政治は機能不全。散々だったではありませんか?

筆者は、有権者が名簿をいじれるノルウェー式比例代表をベースとした衆院の選挙制度改革を提案しています。また、政治資金については、企業団体献金禁止はもちろんのこと、それこそ、デジタル化ですべてのお金の流れが分かるようにすれば良いのです。

そうなると、例えば、自民党は分裂して高市さんが保守党と新党をつくる、小泉進次郎さんが維新と新党をつくる。石破さんは野田さんら立憲右派と新党をつくる。立憲左派+共産党、れいわなどもそれなりの勢力を持つ。そうなるかもしれないが、第一党になった勢力が総理を取って、課題ごとにあう政党と組む、で良いでしょう。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
◎Twitter @hiroseto https://twitter.com/hiroseto?s=20
◎facebook https://www.facebook.com/satoh.shuichi
◎広島瀬戸内新聞ニュース(社主:さとうしゅういち)https://hiroseto.exblog.jp/
広島瀬戸内新聞公式YouTubeへのご登録もお待ちしております

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年11月号

『紙の爆弾』2024年 11月号
A5判 130ページ 定価700円(税込み)
【特集】いま政治が問うべきこと
鈴木宣弘東大大学院教授が語る「食料安全保障」 日本の農と食を潰す洗脳を解く
国民を騙して導入し、人と国を弱体化させる消費税を廃止せよ 
川内博史・原口一博(立憲民主党衆院議員)
米国植民地からの脱却が東アジアの平和をつくる 
鳩山友紀夫(元首相)・末松義規(立憲民主党衆院議員)

河野太郎「マイナ保険証」の愚行 米アマゾンに売られる日本の「情報主権」 高野孟
巨大製薬企業は日本人を狙っている! 明らかになった子宮頸がんワクチンの危険性 神山徹
ウクライナ化するフィリピン 米中対立と「アジア有事」の現在地 浜田和幸
日本人が知らされない“極東”の隆盛 ロシア「東方経済フォーラム」で見た世界の現実 木村三浩
自民党総裁選「憲法改正」争点化の姑息 自民憲法改正案は「改憲」とはいえない 足立昌勝
告発者潰しにも維新議員が関与 兵庫パワハラ知事を生んだ維新の無責任と凋落 横田一
「政教分離」をかなぐり捨てる創価学会 公明党・山口那津男代表“一転”退任の真相 大山友樹
総裁選とは何だったのか 衆院解散・総選挙とその後の自民党 山田厚俊
プロボクシングに見た躍進するサウジアラビア 片岡亮
ジャニーズとNHK、そして大阪・関西万博 本誌芸能取材班
統一教会のオカルト洗脳で「脳死」させられたニッポン 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 53 茨城上申書殺人事件 片岡健

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
【新連載】「ニッポン崩壊」の近現代史:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DJ2KG1N5/

新たな歴史が刻まれるか、ミネルヴァ新階級。上真が初代チャンピオン成る。

宗方888(はちみっつ)は調子を上げて来た今年の活躍、JUN DA LIONを追い詰めて判定勝利

◎DUEL.31 / 10月13日(日)GENスポーツパレス 18:30~21:04
主催:VALLELY / 認定:NJKF

◆第11試合 女子ミネルヴァ・ペーパー級(-95LBS/43.09kg)王座決定戦 3回戦(2分制)

2位.AIKO(AX/1987.2.10生)17戦8勝9敗
    VS
3位.上真(ROAD MMA/1985.10.16石川県出身)15戦6勝9敗 
規定の3回戦は引分け 三者三様 / 延長判定0-3(ミネルヴァは延長戦含む勝敗決定) 
勝者:上真が初代チャンピオン          
主審:中山宏美
副審:児島29-29(9-10). 宮沢29-30(9-10). 多賀谷30-29(9-10)

AIKOのフック気味の右ストレートが攻勢を維持するかに見えたが、蹴りの距離からクリンチ、首相撲に移ると長身の上真の圧力が優って3ラウンドまでは互角に終わり、延長戦も上真の勢いにAIKOはパンチも打ち難い流れ。延長戦を含む全4ラウンドは徐々に上真が勢いを増した流れとなった。

首相撲の展開では上背ある上真が圧力掛けて凌ぎ切った

打ち合えば上真の有利な距離。徐々にペースを上げた

上真は元々アトム級(-102LBS)の選手で、徐々に二階級下げての王座獲得となった。

上真は「やっぱり首相撲の展開が多くて、自分は打撃で勝負したかったんですけど、くっついて(首相撲)が多かったので持ち上がらないように重心を下げたりして対策しました。第1~2ラウンドは落としたなと思ったんですけど、第3ラウンドは巻き返したかなと思いましたが、延長になった時は“よっしゃー!”と思いました。これで勝てると思ったので。勝てたことは本当に嬉しいです。次は撫子さんと初防衛戦になるので、しっかり練習積んで防衛したいと思います」と語った。

ミネルヴァ・ピン級(-100LBS)チャンピオンの撫子がリング上でコメント。

「本来はそのベルトは一番最初に私が巻きたかったというのが本音ですが、それは来年にお預けということで、来年一緒に(タイトル戦)を盛り上げましょう」と新チャンピオンとなったばかりの上真への挑戦を表明。二階級制覇を狙う。元々ピン級という最軽量級だった撫子が更に新設された適正となる最軽量級に挑むことになるでしょう。

撫子との防衛戦を意識しながら勝利のコメントを語る上真

◆第10試合 65.0kg契約3回戦

NJKFウェルター級3位.宗方888(KING/1993.4.28生/ 64.95kg)13戦6勝6敗1分
        VS
同級4位.JUN DA LION(=松本純/E.S.G/37歳/ 64.4kg)40戦9勝(1KO)24敗7分 
勝者:宗方888 / 判定3-0
主審:マット(テーチャカリン・チューワタナ/タイ)
副審:児島30-28. 中山30-27. 多賀谷30-28

宗方はJUNDAの出方を覗いながらパンチから蹴って出る。攻防は互角の展開から徐々に宗方の勢い、的確差が優っていった。第3ラウンドには宗方のパンチでJUNDAが何度かスリップダウン裁定となるが、失速するJUNDAは苦しい展開となり終了間際は宗方の攻勢が目立った。

宗方888の右カーフキック、初回から圧力掛けて出た

失速するJUNDAにKO狙って出る宗方888

前回に続く勝利とラウンドガールとツーショット

◆第9試合 ライト級3回戦

NJKFライト級4位岩橋伸太郎(エス/ 60.8kg)25戦8勝14敗3分
      VS
同級3位.TAKUYA(K-CRONY/ 61.05kg)17戦7勝(1KO)8敗2分 
引分け 0-1
主審:宮沢誠
副審:児島29-30. 中山29-29. マット29-29

両者下がらない蹴り合う攻防が続き、両者の脇腹が真っ赤に蹴り跡が残っていく。ジャッジ三者が揃うラウンドは無い難しい展開で引分けとなった。

引分けに終わった岩橋伸太郎とTAKUYA、残念であるもホッとした表情

◆第8試合 スーパーフライ級契約3回戦

明夢(新興ムエタイ/ 51.85kg)12戦4勝6敗2分
      VS
清水健人(白龍/ 51.65kg)8戦8敗
勝者:明夢 / TKO 3ラウンド59秒 / カウント中のレフェリーストップ
主審:多賀谷敏朗

パンチから蹴りの攻防も徐々に明夢が勢いを増して行き、清水健人はロープ際に詰められるシーンが増えていく。第2ラウンドにはロープ際に詰めた明夢がヒザ蹴りでノックダウンを奪い、終了間際にも明夢が首相撲からのヒザ蹴りでスリップ気味ながらノックダウンを奪い、第3ラウンドも明夢がパンチから蹴り、組んでヒザ蹴りを入れたところで清水がノックダウンとなり、カウント中にレフェリーストップとなった。

この日唯一のKO決着、明夢が清水健人をロープ際に追い詰め圧倒していく

◆第7試合 55.0kg契約3回戦

ポンパン・エスジム(タイ/ 54.9kg)大凡56戦超30勝
      VS
大岩竜也(KANALOA/ 54.7kg)5戦3勝2敗 
勝者:大岩竜也 / 判定0-3
副審:宮沢28-30. 中山28-30. 多賀谷28-30

若い大岩竜也がベテランの在日ムエタイ戦士を優るスピードのパンチと蹴りでポンパンのムエタイリズムを崩した流れで判定勝利。

◆第6試合 58.0kg契約3回戦

細川裕人(VALLELY/ 58.0kg)7戦3勝3敗1分
      VS
相浦聖那(ANCHORAGE/57.85kg)9戦2勝6敗1分 
勝者:細川裕人 / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)

◆第5試合 スーパーライト級3回戦

須貝孔喜(VALLELY/63.5kg)6戦3勝3敗
      VS
今野龍汰(笹羅/ 62.8kg)8戦2勝5敗1分 
勝者:須貝孔喜 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)

須貝孔喜がローキック中心にパンチで今野龍汰を上回る流れ。今野も応戦するも須貝の勢いを止められず終了。須貝がアグレッシブに攻めた全3ラウンドだった。

◆第4当初カード フェザー級3回戦 中止
山本龍平(拳粋会宮越道場)vs 高橋優(CORE) 

◆第3試合 女子ミネルヴァ・ペーパー級王座争奪4人制トーナメント準決勝3回戦(2分制)

5位UveR∞miyU(T-KIX/42.95kg)11戦3勝7敗1分
       VS
3位.上真(ROAD MMA/ 42.7kg)14戦5勝9敗 
勝者:上真 / 判定0-2
主審:中山宏美
副審:多賀谷28-29. 宮沢29-29. マット28-29

上真が長身を活かし蹴りからパンチの攻防を制して際どいながらも判定勝利で王座決定戦に進出。

◆第2試合 女子ミネルヴァ・ペーパー級王座争奪4人制トーナメント準決勝3回戦(2分制)

2位.AIKO(AX/ 42.9kg)16戦8勝8敗
    VS
4位.Honoka(健心塾/ 42.4kg)7戦3勝2敗2分 
勝者:AIKO / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:多賀谷30-28. 宮沢29-28. マット(テーチャカリン)30-28

AIKOがパンチからの首相撲、ヒザ蹴りで優り王座決定戦に進出。

◆第1試合 アマチュア WBC MUAYTHAI×EXPLOSION 2回戦(90秒制)

宮城壮一朗(Freedom@OZ)WBCムエタイ×EXPLOSION 2024年度中学生 -37kg級王者
    VS
林希龍(クレイン)
勝者:宮城壮一朗 / 判定3-0 (20-19. 20-19. 20-18)

(戦績は試合プログラムを参照し、この日の結果を加えています。数値のズレ、更新されていない戦歴もありましたので目安まで。)

 

両者蹴り合い、脇腹を真っ赤に染めながら戦った岩橋伸太郎とTAKUYA

《取材戦記》

ついに100ポンドを下回る階級登場。女子に限りますが、フライ級より下に5階級もあるなんて、ジュニアクラスの無い昭和時代だったら考えられない現象です。名称はアトム級、ピン級、ペーパー級など、一般から見れば、どれが上でどれが下の階級か分かり難いものでしょう。

この先、選手層が厚くなっていけばいいですが、ミネルヴァ運営関係者の努力は続きます。

この日の興行を終えてDUEL主催者、米田貴志氏は、
「女子選手の試合が男子選手を全部飲み込んじゃったぐらい素晴らしい試合でした。メインイベンターとしての“どうしても獲りたいんだ!”という気持ちが見えて感動しました。軽い階級だからといって迫力欠ける訳でもなくて、今日一番迫力あったんじゃないですかね。そんなお互い気持ちのぶつかり合いが久々に観れたなと思います」
と評価は上々。

セミファイナルながら男子のトリの宗方888については、
「もうちょい行けば倒せたかな。でもJUNDA選手もベテランだからノラリクラリと躱して“あれ?効いてんのかな!?”というところもありましたけど、宗方選手が攻勢を強めて行ったのは大差を付けられて今後にも期待出来るので良かったですね」
といった総評でした。

 

NJKF動画配信のインタビューを終えた上真のファイティングポーズ

AIKOvs上真の3ラウンド終了時の採点集計読み上げでは30対29で最初にAIKOがコールされ、二人目ジャッジの採点時も30対29と続くとリングに入ろうかと片足を踏み入れたAIKO側セコンドの石川直樹氏。しかしコールは上真へ。更に29対29が加わり三者三様へ。延長戦は上真が支配した。

1点差の重み、1者の支持の流れが運命を変える厳しさ。セコンドと共に歓喜に湧くことには成らず、僅かな差で王座に就けなかったAIKOの辛さが表れていました。リングを下りてからは号泣の様子。AIKOにも話を聞きたかったが、「インタビューは泣き止んでから10分後!」という昔の知人記者の話を思い出し、気持ちが落ち着くのがそれぐらいという目安ではあった。他の関係者との話もあって声掛けれずに終わってしまいました。

更に宗方888のインタビューにも行けるようなら狙っていましたが、メインイベント終了後はすでに姿は無いようでした。いつも出来る範囲です。ビビッて行かない時もあります!

次回のDUEL.32はまたベテランや新人が入り混じる展開で、12月8日(日)にGENスポーツパレスで開催されます。

NJKF CHARRENGERは11月10日(日)に後楽園ホールに於いて、55kg級JAPAN CUP 1st、8人トーナメント初戦準々決勝4試合が開催されます。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◆1. はじめに

現在、経産省資源エネルギー庁と原子力発電環境整備機構=NUMOが、北海道の寿都町か神恵内村、あるいは両町村で放射性廃棄物、具体的には高レベル放射性廃棄物=ガラス固化体とTRU廃棄物(核燃料ウランの核分裂から生じた放射性廃棄物等)を地層処分しようとしています。しかし、多くの北海道民、とりわけ漁民や農民のみなさんが反対しています。地震や地質の専門家のみなさん、そして鈴木直道北海道知事も反対しています。

僕も反対です(大反対です!)。本稿で、僕が高レベル放射性廃棄物=ガラス固化体とTRU廃棄物の地層処分に反対する理由を論じたいと思いますが、本論に入る前に、ガラス固化体を格納するオーバーパックや人工バリアの耐用年数、ガラス固化体の発熱と地温、花崗岩層と泥岩層、礫層のちがい等について説明させてください。

◆1.1. ガラス固化体とオーバーパックの概要

政府や電力資本に巣くう原子力カルト教団の信徒たちにとって、使用済み核燃料再処理の目的は、原発で使用した核燃料ウランから残存ウランとプルトニウムを取り出すことです。そして、核燃料サイクルを具現することです。

彼らにとって、放射性廃棄物は厄介なゴミですが、「毒」ではありません。彼らは、大気や土壌、海洋の放射能汚染や、内部被ばくによる国民の健康被害等を深く考えていません。他方、再処理を上手くやりさえすれば、使用済み核燃料はなくなると考えていて、それが自分たちの仕事であるとさえ考えています。そして、経産省資源エネルギー庁とNUMOは、ガラス固化体とTRU廃棄物を地層処分することが自分たちの仕事であると考えています。

したがって、諸外国では、原発で使用した核燃料ウラン=使用済み核燃料を高レベル放射性廃棄物と呼んでいますが、原子力カルト教団と経産省資源エネルギー庁、NUMOは、使用済み核燃料再処理で生じた放射性廃棄物の残渣をガラス固化した固体=ガラス固化体だけが「高レベル放射性廃棄物」であると断言しています。[図1]は、原子力カルト教団の信徒たちが描いている、使用済み核燃料再処理のイメージです。

[図1]

(実際の再処理は、こんな簡単なものではありません。実際の再処理は、多量の硝酸を使用する非常に危険な化学処理です。しかも、再処理工場は、稼働すれば一日で原発一年分の放射能を環境に放出するといわれてもいます。詳しくは、核燃料サイクル阻止1万人原告団のサイトや、元原子力資料情報室スタッフの澤井正子さんが学習会で使用したプレゼンテーション・ファイル、宗教者核燃裁判のサイト等をご覧になってください)

原発を稼働すると、原子炉に装填した核燃料ウラン=核燃料棒内に多量の高レベル放射性廃棄物(非常に強い放射線を放出する放射性物質)が生成します。ガラス固化体は、それら高レベル放射性廃棄物を抽出してガラス固化したもので、長さ約130cm、直径約40cm、重量約500kgの円筒です。

ガラス固化体は、使用済み核燃料再処理工場(以後、たんに「再処理工場」と呼びます)で製造します。そして、再処理工場内で30~50年冷却します。再処理工場内で30~50年冷却したガラス固化体は、炭素鋼等で製造したキャニスタ(以後、「オーバーパック」と呼びます)に入れ、地層処分施設に搬送します。

[図2]は、ガラス固化体とオーバーパックのイメージです。オーバーパックは、長さ約170cm、直径約80cm、重量約6トンの円筒です。NUMOは、オーバーパックの耐用年数は約1000年である、と豪語しています。

[図2]

NUMOは、1体のガラス固化体が含む放射性核種の種類と量を開示しています。それによると、50年後の1体のガラス固化体が含むストロンチウム90の量は8.2x1014ベクレルで、重さが1.6x10-1kg、セシウム137の量は1.2x1015ベクレルで、重さが3.9x10-1kgになります。NUMOは、ガラス固化体が含む放射能は1体あたり広島型原爆30発分である、といっています。

[表1]は、NUMOが開示した資料を元にして作成した、30年後と50年後の1体のガラス固化体が含むストロンチウム90とセシウム137の量をまとめた表です。

[表1]

イギリスの再処理工場=ソープ再処理工場(旧ウィンズケール再処理工場)で製造したガラス固化体は、青森県六ケ所村再処理工場で製造するガラス固化体より少し小さいですが、1体が含む放射性核種の量はNUMOが開示したデータの量より多いですね。NUMOが開示した1体のガラス固化体が含む放射性核種の量は、おそらく推定量で、信頼できる値ではありません。僕の試算では、50年後のストロンチウム90とセシウム137の量が、NUMOが開示した量と同じであれば、ガラス固化体が含む放射能は1体あたり広島型原爆20発分くらいになってしまいます。

NUMOは、全国一カ所の地域に4万体のガラス固化体を地層処分するといっていますが、ガラス固化体が含む放射能=放射性核種の量が1体あたり広島型原爆20発分くらいだとすれば、現存する使用済み核燃料分(約2万7000体のガラス固化体に相当する量の使用済み核燃料)を地層処分するだけでも、全国複数カ所の地域でガラス固化体を地層処分する必要が生じます。再処理工場を新設する必要も生じるでしょう。

経産省資源エネルギー庁とNUMOは、東日本と西日本の複数地域に、地層処分施設を建設するつもりでいるのかもしれません。中国電力と関西電力が、山口県上関町で中間貯蔵施設の建設を計画していますが、中間貯蔵施設が建設されれば、NUMOが、地層処分施設の建設もはじめるかもしれません。不具合が多発している六ケ所村再処理工場を管理している日本原燃が、再処理工場を新設する可能性も大いにあると思います。(つづく)

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

この8月と9月に東京と北京で、「アフリカ支援会議」が行われた。二つの会議は、日中両国のグローバルサウスに対する姿勢、国際政治における姿勢、立ち位置の「違い」を浮き彫りにしている。

◆中国の「中国アフリカ経済フォーラム(FOCAC)」

9月7日、北京で「中国アフリカ経済フォーラム(FOCAC)」が開催された。ここには全アフリカ54カ国のうち台湾と外交関係を持つエスワティを除く53カ国の首脳が参加した。

会議では、習近平国家主席が演説したが「今後3年間で、3600億元(約7・3兆円)の資金援助を提供する」と述べるや、参席したアフリカの首脳たちから大きな拍手が沸き起こった。その心情をボツワナのマシシ大統領は「アフリカ側は非常に興奮し励まされた」と述べている。

習主席は、アフリカ諸国との2国間関係を「戦略的関係」に引きあげるとし、「10の行動」を提示した。その内容は、政府関係者の招待。女性や若者の職業訓練。10億元の緊急食料支援。疫病予防センター建設と公衆衛生能力向上。10億元の無償軍事援助。軍人(6000人)と警察官(1000人)訓練。アフリカ産農産物の輸入拡大、アフリカの「後発開発途上国」33カ国だけでなく世界の全ての「発展途国」にゼロ関税待遇を与え中国の大市場を開放する、などである。

中国とアフリカ貿易額は、22年には2576億7000万ドル(約37兆6486億円)を超え、米英を抜いた。この急激な貿易拡大は、中国とアフリカの経済関係がウィンウィンの関係、相互に利益をもたらすものであることを示している。

注目されるのは、習主席がグローバルサウスという言葉を3回も使いグローバルサウス重視を鮮明にしたことである。

「10の行動」の最後で述べられた、「アフリカの後発開発途上国33カ国だけでなく世界の全ての「発展途上国」にゼロ関税待遇を与え中国の大市場を開放する、などがそれを示している。

今後、ウィンウィンの関係をグローバルサウスの中でも経済発展が遅れている全ての「発展途上国」と結ぶ、ということであり、今後、グローバルサウスとの交易は急速に拡大していくであろう。

◆日本の「アフリカ開発会議(TICAD)」

一方、日本では8月24、25日に東京でTICAD(アフリカ開発会議)が開かれ、ここにアフリカの37カ国の外相が参加した。

今回の会議は来年横浜で開催されるTICAD9の準備会議として開かれ、「社会、平和と安全、経済」をテーマに討論が行われた。

25日に発表された共同声明では、アフリカで活動するスタートアップ(新興企業)の支援に向けた環境整備、食料安全保障の確保に向けた協力、デジタル化支援、「女性・平和・安全保障」(WPS)の重要性などが明記された。

そして、最後に「法の支配の重要性が共有された」ことを強調している。

この会議について、読売新聞が「日本の強み生かし発展支えよ」と題する社説を載せたが、それはアフリカの人口が今の14億から50年には24億人に達することやアフリカが資源の宝庫であり、とりわけ電気自動車やスマートフォン、バッテリー製造で不可欠な銅、コバルト、ニッケルなどが豊富であることから、「最後のフロンティア」としてアフリカとの関係を強化せよというものだ。

この読売の社説が示すように、日本のアフリカ支援は、あくまでも自国の経済的利益のためだということである。

その上で、最後に「法の支配の重要性が共有された」と強調していることに注意しなければならない。

「法の支配」とは、「開かれたインド太平洋」(FOIP)のための用語である。それは中国が自国領土である南シナ海の諸島に軍事基地を建設しているが、それはこの海域の自由な航行を阻害する国際法違反であるとし、法を守れということである。そして「法の支配」は、米国の覇権秩序に反する行為を「違法」として、「秩序遵守」を説くための用語にもなっている。

昨年4月に改正された「政府開発援助」(ODA)の指針である「開発協力大綱」は、これまで相手国の要請に従って援助する「開発支援」を改め、日本が提案する「オファー型」に改定した。そこには「開かれたインド太平洋」を推進することが明記され、そのために途上国の海上保安能力を後押しする方針も盛り込まれている。

即ち日本の途上国支援は、米国覇権秩序を守るための支援であり、カネをちらつかせながら「米国覇権秩序に従え」というものになっているということだ。

◆どちらが本当の支援か

発展途上国支援は、その国の発展のためになる私心のないものでなければならない。

これまで日本の途上国支援がその国の要請に従って支援する「要請型」であり、それを「原則」としてきたのも、それが実際行われたかどうかは別にして、そのことを示す必要があったからである。その「要請型」を「オファー型」に改変すること自体、支援がその国のためのものではなく、日本のためのものであることを示している。

しかも、それは米国覇権秩序を守り、その覇権秩序に従えというものであり、「日米基軸」の「日本のため」のものでしかない。

それに対して、中国の支援は、「10の行動」を見ても、その国のためのものになっていると思う。

その本気度の違いは、支援額を見ても歴然としている。

今回の日本での会議ではアフリカ支援の額は示されていないが、途上国全体への支援である「政府開発援助」(ODA)の総額が昨年で5709億円だから、アフリカ「支援」額はその何分の一かの少なさとなり、中国の支援額「3600億元(約7.3兆円)」とは雲泥の差になる。

そうなるのは、ありていに言えば、「カネがない」ということである。

岸田前首相は、一昨年の訪米で、中国敵視の軍事費拡大や敵基地攻撃能力の保持を約束した。その額は5年間で43兆円といわれているが、新型ミサイル開発などで、70兆円に膨らむとか、際限なく膨らむとも言われている。

この膨大な軍事費をどう捻出するか。そこから増税メガネと揶揄された「増税」、全世代型社会保障を看板にした「社会保障費削減」が行われ「地方交付税の削減」など地方支援も減らされている。

今年4月9日に開かれた財政制度等審査会の分科会で財務省が能登復興について「ムダな財政支出は避けたい」と発言した。それは能登の本格復興はやらず、能登は見捨てるということに他ならない。

能登まで見捨てるという財政事情の下では、アフリカ支援、発展途上国支援などに使うカネなどないのだ。

それを見切って、アフリカ諸国のTICADへの熱は冷めている。前回18年に開かれた第8回会議までは首脳も参加していた。しかし今回は37カ国の外相会議になっている。

「もう日本にはカネがない」のであり、その日本が空財布をちらつかせて「開かれたインド太平洋」だとか「法の支配」とか言っても、それに耳を貸す国などないであろう。

◆「債務の罠」、中国覇権のためのワナなのか

中国の対外支援で常に持ち出されるのが「債務の罠」であり、それを使って「中国は覇権を狙っている」という言辞である。

その例として持ち出されるのが、セイロンの件。一帯一路として中国の企業が投資して道路や港湾を整備建設したが、その債務返済が滞り、セイロン政府が、中国企業に港の使用権を99年間譲渡するとしたことである。

これはあくまで、中国の一企業とセイロン政府が行ったことであり、これをもって、中国がセイロンを支配するとか中国覇権を狙っているなどと分析するのは、言い過ぎではないだろうか。

元々、「債務の罠」はG7など「先進国」が行ってきたことである。

先進国の後進国支援は、後進国の富を収奪し政治的支配を強めるためのものであり、債務漬けにして、その国を牛耳る、まさに「債務の罠」であった。

それは、南北格差が拡大し、後進国がいまだに経済的な発展ができないでいる現状がそれを如実に示している。

G7広島サミットを前に日本やG7がグローバルサウスを引き込む動きを示したことに対して、グローバルサウス諸国から「G7なんて旧宗主国グループじゃないか。我々を植民地にした者が上から目線で、きれいごとを言える身分か」「G7が守りたい国際秩序とは、米国がわれわれにやりたい放題の謀略、軍事侵攻を仕掛けてきたやり方だろ。まっぴらだ」などの声が上がった。

自分たちがやってきた悪行を中国もやろうとしていると疑うのは、疑心暗鬼であり、その語源通り「疑えば鬼を見る」であり、その鬼とは自分自身ということではないだろうか。

中国は「覇権の道は歩まない」と明言している。それは建前と見る向きもあるが、中国の支援が熱烈に「歓迎」されていることが、中国が覇権を狙っているのではないことを示していると思う。覇権を歓迎する国などないのだから。

ザンビアやエチオピアの鉄道整備など中々のものである。新幹線型の車両を使った近代的な鉄道網、瀟洒な建物群。南太平洋諸国での港湾や旅行施設、ホテル建設も歓迎されており、そこでは「債務の罠」も語られてはいない。

中国の投資や経済協力が歓迎されているのは、中国が参加するBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の発展を見ても分かる。24年にエジプト、エチオピア、イラン、サウジ、UAEが参加し、当初の5カ国から10カ国に増え、参加希望国が門前に列をなす状況になっている。

そこでは、米国ドルに代わる独自通貨の設立を目指されている。この独自通貨は中国元を基軸通貨にするというものではなく、各国の通貨(通貨主権)を認めたものである。

もし中国が覇権を狙っているとすれば、中国元を基軸通貨にするだろう。しかも、それは中国元の実力から見れば黙っていてもそうなる。それにも係わらず、そうせず各国の通貨を認めた上でBRICsの独自通貨を作るということは、中国の言う通り、米国のドル基軸通貨体制を変革するためだということではないだろうか。

米国覇権の強力な手段であった、ドル基軸体制に代わる、BRICs通貨体制の実現は、米国覇権を終わらせる一つの大きな契機になる。

その実現をグローバルサウスを始めとする多くの国々が望んでいる。ドル基軸体制の下で、不利益をこうむり、円安で七苦八苦する状況を強いられている日本にとっても、それは良いことではないだろうか。

「債務の罠」「中国覇権」などという言葉に惑わされてはならないだろう。

◆脱覇権自主こそが世界の流れ、時代の流れ

日本のマスコミは、習主席がグローバルサウスを3回も使ったことを中国のグローバルサウス重視だと解説しながら、「中国のグローバルサウス重視は米欧主導の国際秩序の変革を目指す中国にとって欠かせないパートナー」だからだと論評する。

あたかも「米欧主導の国際秩序を改革」するのは悪いことだと言わんばかりだが、それは良いことであり、グローバルサウス自身が求めていることだ。

元々、「米欧主導の国際秩序」とは米国覇権秩序であり、その下で、富を収奪され従属を強いられてきたアフリカを始めとするグローバルサウスこそが、その変革を切望している。

それは、どんな国も、互いに平等で対等な国として認め、互いに尊重していく関係を構築し、公平で民主的な新しい国際秩序を作ろうということである。

中国での会議で沸き起こった拍手と歓迎の言葉は、こうした脱覇権自主の新しい国際秩序を作ることへの熱烈な賛同の表示でもあろう。

 

魚本公博さん

日本と中国で行われた二つの「アフリカ支援」会議を通して見えることは、脱覇権自主が世界の流れ、時代の流れになっていることであり、日本の「日米基軸」の政治、「日米同盟新時代」政策が如何に、この流れに逆行する愚かな政策であるかということである。

しかし石破新政権は「日米基軸」堅持を表明している。立民新代表の野田氏もそれを明言しており、日本は、挙国一致で、その道を歩もうとしているかのようだ。「日米基軸」堅持、それは、あくまでも米国覇権の下で生きていくことの表明であり、そこに日本の未来はない。

しかも、それは米国覇権を維持回復する米中新冷戦のため、中国を敵視し、対中対決の最前線に立たされるものとしてある。それは日本全土を戦場にし、破壊する。

そのような道を歩んではならない。そのためにも「日米基軸」の政治を何としても終わらせなければならない。「日米基軸」から「国民基軸」の政治への転換。来るべき総選挙でその意思を断乎と示さなければならないと思う。

◎ピョンヤンから感じる時代の風 http://www.rokusaisha.com/wp/?cat=105

▼魚本公博(うおもと・きみひろ)さん
1948年、大分県別府市生まれ。1966年、関西大学入学。1968年にブントに属し学生運動に参加。ブント分裂後、赤軍派に属し、1970年よど号ハイジャック闘争で朝鮮に渡る。現在「アジアの内の日本の会」会員。HP「ようこそ、よど号日本人村」で情報発信中。

『抵抗と絶望の狭間 一九七一年から連合赤軍へ』(紙の爆弾 2021年12月号増刊)

『一九七〇年 端境期の時代』

◆はじめに

西日本新聞社を被告とする2つの押し紙裁判が終盤に差し掛かっています。

長崎県の西日本新聞販売店経営者(Aさん)が、2021年7月に、金3051万円の損害賠償を求めて福岡地方裁判所に提訴した押し紙裁判の判決言い渡し期日は、来る12月24日(火)午後1時15分からと決まりました。

また、2022年11月に5718万円の支払いを求めて福岡地裁に提訴した佐賀県の西日本新聞販売店主(Bさん)の裁判は証人尋問を残すだけとなっており、来春には判決言い渡しの予定です。

これら二つの裁判を通じて、私どもは西日本新聞社の押し紙の全体像をほぼ解明できたと考えております。

(注:「押し紙」一般については、グーグルやユーチューブで「押し紙」や「新聞販売店」を検索ください。様々な情報を得ることができます。個人的には、ウイキペディアの「新聞販売店」の検索をおすすめします。)

 

写真と本文は関係ありません

◆押し紙とは

新聞販売店は新聞社から独立した自営業者ですので、販売店の経営に必要な部数は自分で自由に決定する権利があります。他の商品の場合、初めから売れないとわかっている商品を仕入れることはありませんので当然のことです。しかし、新聞社は発行部数の維持拡大を目指して他紙と熾烈な部数競争を繰り広げており、しばしば契約上の優越的地位を利用して販売店に「目標数〇〇万部」などと過大なノルマを設定し、実際にその部数の仕入れを求めます。

新聞社が発行部数にこだわるのは、紙面広告の料金が発行部数に比例して決定する基本原則があるためです。部数をかさ上げすることで、広告収入の維持・増加を図るためです。販売店は新聞社に対して従属的な地位にありますので、新聞社の要求を拒めば契約の解除を暗にほのめかされるなど、不利な状況に追い込まれかねません。そのため、新聞社が示した部数を自爆営業で受け入れざるを得ないのです。

新聞社は販売店に目標部数を売り上げた時点で利益を計上することが出来ますが、販売店は売れ残った新聞の仕入れ代金を新聞社に支払い続けなければなりません。顧問税理士や銀行の担当者から無駄な新聞の仕入れをなくすように指示や指導を受けても、仕入れ部数を自由に減らすことは出来ないのです。その結果、廃業に追い込まれる販売店経営者もいます。

昭和20年代半ば以降、新聞統制の解除に伴い中央紙の地方進出が始まりました。それに連動した乱売合戦に巻き込まれた地方紙は、中央紙の戦略的な武器となっている押し紙禁止規定の制定を国に求めました。

昭和30年に公正取引員会は独占禁止法に基づく新聞特殊指定を制定し、新聞業界特有の優越的地位濫用行為である「押し紙」を不公正な取引方法に指定しました。それから70年が経過しようとしていますが未だに押し紙はなくなっていません。このことから、押し紙問題がいかに根深いものであるかをお分かりいただけると思います。

◆西日本新聞の押し紙政策の特徴

[1]自由増減の権利の否定

西日本新聞社(以下、「被告」と言います。)も販売店に対し注文部数を自由に決める権利(以下、「自由増減の権利」といいます。)を認めていません。注文部数(定数)を何部にするかは、被告が決めています。

(注:押し紙を抱えている新聞社はいずれも「自由増減の権利」を認めていません。私の知る限り、唯一、熊本日日新聞社と新潟日報社の2社が昭和40年代に押し紙をやめ、販売店に自由増減の権利を認めています。なお、鹿児島の南日本新聞の販売店主が余った新聞と折込広告を本社の玄関先に置いて帰るユーチューブの動画は必見です。)

[2]注文部数の指示

被告は新聞業界全体の動きや会社経営の状況をにらみながら、販売店の定数(注文部数=送付部数)を決定しています。しかし、訴訟においては、そのような事実を認めることはできません。販売店の注文部数はあくまでも販売店が自主的に決定していると主張する必要があります。

多くの新聞社は、FAXやメールで実配数や予備紙等の部数を報告させ、販売店が自己の経営判断で部数を注文しているとの主張ができるようにしていますが、被告は実配数と増減部数(入り止め部数)の報告は記録に残らないように電話で受け、そのあとに注文表に記載する注文部数を指示する方法をとっています。

[3]外形的注文行為の虚構

被告は販売店に注文部数を指示していますが、注文はあくまでも販売店が自主的に行っているようにと見せるため、「注文表による注文行為」と「電話による注文行為」の二種類の虚構の注文行為を用意しています。

(1)電話による注文行為

原告ら販売店は自由増減の権利がないため、被告に自らの意思で決定した注文部数を注文することはありません。電話で注文を受けていたとの被告の主張は虚構です。被告が電話で注文を受けていたと主張するのは、「電話による注文」であれば、客観的証拠が残らないからです。 過去の押し紙裁判でも、被告は販売店の注文は電話で受けつけていたと主張し続け、最終的に販売店敗訴の判決を受けています。その成功体験が背景にあるからと思いますが、FAXやメールの通信機器発達した現在でも、電話で注文を受けているとの主張を続けています。しかし、本件訴訟では、別件訴訟の原告の元佐賀県販売店経営のBさんが電話の会話を録音してくれていたおかげで、販売店からは電話で部数の注文はしていなかった事を証明することが出来ました。

(2)注文表のFAX送信指示

被告は原告に対し、電話で指示した注文部数を注文表に記載してFAX送信するよう指示しています。原告は指示された部数を注文表の注文部数欄に記入して、その日の内にFAX送信しています。被告は裁判では、「注文表記載の注文部数は参考に過ぎず、電話による注文部数が正式な注文部数である。」と主張していますので、電話による注文で足りるのに、何故、注文表のFAX送信を指示しているのかという問題が生じます。この点について、被告は次に述べるように、「注文表記載の注文部数は参考にすぎない。」と答えるだけで明確な説明はしていません。

なお、佐賀県販売店経営のBさんは注文表をFAXすれば、そこに記載した注文部数が自分の意思で注文した部数とみなされることを警戒していたことから、FAX送信を途中からやめておられます。

(注:被告の場合、注文表には「注文部数」の記載欄があるだけで実配数や予備紙の記載欄はありません。メールによる報告システムも構築されていません。)

◆注文表は参考に過ぎないとの主張

被告は本件裁判では、注文表記載の注文部数は参考に過ぎず電話による注文部数が真の注文部数であると主張しています。常識的に考えれば書面による注文部数が正式な注文部数であると主張する方が自然です。しかし、被告は当初から一貫して正式な注文部数は電話による注文部数であると主張し続けています。

被告が、何故そのような不合理で奇妙な主張を行うのか?

その理由は、原告が注文表に記載した注文部数よりも実際は多い部数を供給したり、注文部数が記載されていない白紙の注文表がFAX送信されたりしているため、被告は注文表記載の注文部数が注文を受けていたとの主張が出来なくなっているからだと思われます。

しかし、電話で注文した部数を注文表に記載してFAXするように指示しているのに、何故、電話の注文部数と注文表記載の注文部数が違うのか、あるいは、注文表の注文部数が白紙でFAXされていのに、何故、新聞の供給ができるのかといった素朴な疑問がわいてきます。

被告は、注文表のFAX送信は必ずしも電話報告の「後」になされるだけではなく、電話報告の「前」になされることもあると微妙に説明を変化させています。そうすれば、タイムラグの関係で、電話報告の前に注文表に記載した注文部数と、そのあとで電話で注文した部数に違いが出ることはありえるとの主張が可能となるからと推測しています。しかし、注文表の注文部数が白紙のまま送信された月の分については、そのような説明は通用しません。

そもそも電話による注文行為なるものは、被告が考えだした虚構の注文行為ですから、被告は無理に無理を重ねた嘘の説明を続けざるを得なくなっているとみています。

押し紙問題のバブル(聖書)ともいうべき毎日新聞社の元常務取締役河内孝氏の著作「新聞社 破綻したビジネスモデル」(2007年3月・新潮新書)のまえがきに次のような見識に満ちた一文が掲載されていますので、長くなりますが紹介します。

「バブル崩壊の過程で、私たちは名だたる大企業が市場から撤退を迫られたケースを何度も目の当たりにしました。こうした崩壊劇にはひとつの特徴があります。最初は、いつも小さな嘘から始まります。しかし、その嘘を隠すためにより大きな嘘が必要になり、最後は組織全体が嘘の拡大再生産機関となってしまう。そしてついに法権力、あるいは市場のルール、なによりも消費者の手によって退場を迫られるのです。社会正義を標榜する新聞産業には、大きな嘘に発展しかねない『小さな嘘』があるのか。それとも、すでに取返しのつかない『大きな嘘』になってしまったのでしょうか……。」

 

写真と本文は関係ありません

◆4・10増減

黒薮さんの調査によれば、4月と10月は全国的にABC部数が前後の月より多くなっているとのことです(注:この現象は、販売店経営者の間では「4・10増減」と呼ばれているそうです)。とりわけ2000年代にその傾向が顕著に確認できるとのことです。

「4・10増減」は、押し紙により4月と10月にABC部数をかさ上げさせる販売政策です。

ABC部数が、新聞の広告効果を判断する重要な基準のひとつになっていることから、広告営業のデータとして採用させる4月部数(6月~11月の広告営業に使われる)と10月部数(12月~翌年5月)を、その前後の月よりもかさ上げしていると考えられます。折込広告代理店を通じて公表される販売店毎ごとの発行部数も、原則的にABC部数に準じているために、「4・10増減」は、不正な折込広告収入や紙面広告収入を生みます。

本件裁判のAさんの場合、4月と10月の定数が前後の月より約200部も多くなっている点が特に注目されます。この4月と10月の部数を被告はABC協会と西日本オリコミに報告していることを認めています。

被告は200部を上乗せした販売収入を原告から即座に得ることが出来ます。また、それにより年間を通じて、紙面広告料の単価と広告代理店の手数料を増やすことが出来ます。さらに、販売店の折込収入を増やすことで、押し紙の仕入代金の赤字の補助を減額することも出来ます。

しかし、被告が自己の利益のために、4月と10月に普段より200部も多い部数を販売店に注文させていることが社員に知れ渡れば、深刻なモラル崩壊が発生することが避けられません。このような取引方法を行うのは広告主に対する明らかな詐欺行為となりますから、自社がこのような重大な法律違反をしていることを知ったら、まともな常識を備えて社員は絶えられないでしょう。最近、嫌気がさした若手の販売局員が次々に転職している新聞社が出てきているとの話も伝わっています。

新聞社が詐欺行為をしている事が外部に知れれば、報道機関としての新聞社の信頼が地に落ちるだけでなく、警察・検察・国税等の国家権力の介入も避けられません。そのような危険があるにもかかわらず、新聞社は、何故、押し紙をいつまでも続けてこられるか? 単にマスメデイア業界の新聞・テレビ等が報道しないからというだけのことなのか、あるいは業界全体に、押し紙問題については国家権力の介入はないとの暗黙の確信があるのか、疑問は尽きません。

この問題には深い闇が隠れているように思われますので、黒藪さんの最新著「新聞と公権力の暗部-押し紙問題とメディアコントロール」(2023年5月・鹿砦社発行)を是非とも一読されることをお勧めします。

◆実配部数の秘匿

[1]被告の実配数の秘匿

被告は販売店の実配部数は知らない、あるいは知り得ないと主張してきました。しかし、被告のこの主張も虚偽であることが明らかになりました。

本件裁判のBさんが、内部告発者から平成21年(2009年)8月度の佐賀県地区部数表(販売店ごとに部数内訳を記録した一覧表)の提供を受けていたのです。それにより、私たち弁護団も、被告が販売店ごとの実配部数と定数(=送付部数)を一覧表に整理して保管している事を知りました。本件裁判で、被告側証人の若い担当員が長崎県地区でも、佐賀県地区部数表と同じタイプの部数表を作成していることを正直に証言してくれました。

ところで驚いたことに被告は、この地区部数表を特定の幹部しか知り得ないよう厳重に管理していることを認めた上で、裁判官に対して部数表の閲覧禁止を求めました。これは、販売店の実配部数が外部に漏れれば、広告主から広告料の損害賠償を求められることを被告が極度に恐れていることを自ら認めたも同然と言えるでしょう。また、ABC協会への新聞部数の虚偽報告の問題も無視できません。

こうした問題が派生するので、新聞社は自社の実配部数が外部に知れなることを恐れています。

[2]積み紙禁止文言と4・10増減

被告は、毎月の請求書に次のような文言を記載しています。

                記 

「貴店が新聞部数を注文する際は、購読部数(有代)に予備紙等(有代)を加えたものを超えて注文しないで下さい。本社は、貴店の注文部数を超えて新聞を供給することはいたしません。」

これと同じ文言は、他の新聞社の請求書にも記載されています。この文 言がいつから記載されるようになったのか正確には知りませんが、平成9年(1997年)に公正取引委員会が北國新聞社の押し紙事件の調査を行った時期ではないかと推測します。この調査を通じて、他の新聞社も押し紙を行っている事実が判明しました。

公正取引委員会は日本新聞協会を通じて加盟新聞各社に対して、新聞の取引方法を改善するよう求めました。私は、その時に各新聞社が足並みをそろえて上記の文言を請求書に記載するようにしたのではないかとみています。

被告も請求書に「積み紙禁止文言」を記載していますので、仮に原告が4月と10月の注文部数を前後の月より200部も多く注文すれば、被告は当然その理由を聞きただす必要と義務があります。というのも、4月と10月だけ、200部のかさ上げが必要となる理由は一般に想定されないからです。

被告は、「販売店が注文した部数をそのまま供給する販売店契約上の義務があるため、注文部数通りの部数を送付したにすぎない。」と説明するだけで、肝心の積み紙禁止の文言との関係については一切説明しようとしません。

しかし、先に述べたように、被告の内部から流出した佐賀県地区部数表の存在により、被告が販売店ごとの実配数を毎月正確に把握し、一覧表にまとめ、一部の幹部社員した閲覧できない状態で厳重に保管していること判明しました。従って、被告が実配数を200部も超過する部数の注文が積み紙っであることは容易に認識可能なため、被告の上記のような主張も通用しません。

 

写真と本文は関係ありません

◆判決の見通し

以上述べたように、私ども弁護団は被告の押し紙責任の立証は充分に出来たと考えております。しかし、これまでの裁判例をみますと、殆どの裁判は販売店側の敗訴に終わっているので楽観することはできません。

販売店を敗訴させた過去の判決の論理構造をみると、平成11年(1999年)の新聞特殊指定の改定の際に、公正取引委員会が、昭和39年の押し紙禁止規定の「注文部数」という文言を「注文した部数」という文言に変更したことが、その後の裁判官の判断に影響を及ぼしているように思われます。

具体的に説明しますと、昭和39年(1964年)の新聞特殊指定の押し紙禁止規程は、「注文部数を超えて新聞を供給する行為」を押し紙と定め、「注文部数」については、実配部数にその2%程度の予備紙を加えた部数であるとの解釈を採用していました。これは公正取引委員会と新聞業界が共通に採用していた解釈でした。

しかし、平成11年(1999年)の改定で、「注文部数」という文言が「注文した部数」と変更されたことから、、裁判官はたとえ50%を超えるような大量の残紙を含む注文であってもその部数が、外形上、販売店が「注文した部数」となっておれば押し紙には該当しないと判断するようになったのです。

ちなみに、私が押し紙問題に首を突っ込むようになったのは、平成13年(2001年)5月に、福岡県の読売新聞販売店経営者であった真村久三さん夫婦から強制改廃の相談を受けた時からです。

当時、予備紙の上限を実配部数の2%とする業界の自主規制は平成10年にすでに撤廃にされており、平成11年(1999年)の押し紙禁止規定の改正でかつての「注文部数」の文言も「注文した部数」に変更されていました。その結果、新聞社は販売店が「注文した部数」を超える部数を供給しなければ「押し紙」でないという解釈に基づき、押し紙を利用した公然たる部数拡張競争を公然と繰り広げる状況が発生していました。全国的に、実際には販売していない新聞をABC部数として計上・公表するいびつな状況が生まれていたのです。

真村裁判の勝訴判決を機に、押し紙に関する相談が次々と持ち込まれるようになりましたが、多くのケースで押し紙率は、新聞業界自身が定めた上限2%どころか40%~50%にも及んでいました。

公正取引委員会は、平成9年(1997年)の北國新聞社の押し紙事件を機に、それまでの押し紙禁止規定の新聞業界による自主規制の方針を変更し、直接取り締まることを宣言します。その結果、新聞社は上限2%の制約から解放されます。さらに、平成11年(1999年)の押し紙禁止規定の「注文部数」の文言が「注文した部数」に改定されたため、新聞社は販売店が注文した部数を超えなければ押し紙ではないという身勝手な解釈に基づき、発行部数を際限なく増やしていきました。

北國新聞事件を機に押し紙はむしろ増大していったのです。押し紙を直接取り締まることを宣言した公正取引委員会も北國新聞社事件以降はまともな取り締まりを行うこともなく、サボタージュしたまま現在に至っています。

最近、国会で押し紙問題が再び取り上げられるようになっていますが、国会の質疑をみても公正取引委員会からは押し紙を積極的になくそういう熱意は伝わってきません。

ちなみに平成9年(1997年)の北國新聞事件の当時と平成11年(1999年)の押し紙禁止規定の「注文部数」の「注文した部数」への文言の改定当時の公正取引委員会委員長は、後に日本プロ野球連盟のコミッショナーに就任する、元東京高等検察庁長官の根来泰周氏でした。

根来氏が公正取引委員会委員長として、当時、押し紙問題にどのようにかかわってきたのか、読売新聞社の渡邉恒雄氏との関係を含め今後の解明が待たれるところです。

(注:根来氏は2013年11月に死去されています。)

話は変わりますが、静岡県清水市の味噌製造会社の専務一家4人が殺害された強盗殺人・放火事件の犯人として死刑判決が確定していた元プロボクサーの袴田巌さんの無罪が、この度の再審無罪判決によりようやく確定しました。静岡大学で青年期を過ごした私には、袴田事件ともう一つの再審事件の島田事件は忘れられない冤罪事件です。

当時、大学の先輩弁護士たちが、私たち学生に現地学習会への参加を呼び掛けていました。証拠の捏造までして袴田さんの人生を踏みにじった警察・検察のみならず、無罪を進言する同僚裁判官の意見を無視して死刑の有罪判決をくだした裁判官に対する国民の不信感は極めて大きなものがあります。司法の信頼を取り戻すために、弁護士を含め司法関係者の再発防止のための真剣な努力が求められています。

西日本新聞社を被告とする本件押し紙裁判は、当初、若手裁判官の単独事件として受理され、早々に和解が打診されました。押し紙裁判として異例な対応です。ほどなくして3人の裁判官による合議体に審理は移行しましたが、そこでも裁判官は、これまでの見られなかったような詳細な争点整理表を作成し、原告・被告の双方の代理人弁護士に検討を求めるなど、押し紙問題の解決に向けて熱心に取り組む姿勢を示されました。

そのような正常な流れを辿っていたにもかかわらず、昨年4月1日付で三名の新たな裁判官が福岡地裁に転任され、この押し紙裁判を担当されるようになりました。

私どもは、押し紙裁判で担当裁判官の奇妙な人事異動が行われるケースを経験しておりますので、本件の担当裁判官3名全員の交代にはいささか懸念を覚えております。しかし、この3名の裁判官が、原告本人と被告側の証人の証言を法廷で直接聞いておられますので、私どもの主張に十分耳を傾けた判断を示してくれることを期待しているところです。

ネット社会のすみずみまでの普及と歩調を合わせるように、紙の新聞の衰退が急速に進んでいます。そのような時代背景の中で、本件押し紙裁判の判決がどのような結論になるのか、また、その理由はどのようなものになるのか、福岡地裁の判断を皆様と一緒に見届けたいと思います。

今後も、裁判の進捗状況は逐一報告し続けたいと思いますので、皆様のご支援のほどをよろしくお願い申し上げます。

本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2024年10月15日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

今こそ、鹿砦社の雑誌!!

羽曳野殺人事件で懲役16年の有罪判決を受けた被告の山本孝さんと弁護団が10月11日大阪高裁に控訴した

弁護団長伊賀興一弁護士に「ぜひ後追い記事を書いてくださいよ」と言われてたので、金曜日夜伊賀事務所に判決文と控訴申立書を貰いにいく。30分だけお話した。

◆検察側証人が15人と非常に多い異例の裁判

山本さんがある男性を殺害したとして逮捕、起訴されたこの事件、詳細はまた何かで報告させてもらうが、6月に始まったこの裁判員裁判、審理が3ケ月半と長期に及ぶこと、検察側証人が15人と非常に多い異例の裁判となった。

私は被告人尋問しか傍聴出来てないが、新聞記事や事前に頂いた最終弁論要旨などを読み、とにかく気になっていたことがあった。

それは被害男性への殺害方法だ。近所のドラレコに映った画像(人がいるというだけで顔貌など判別できない)からわかるのは、犯人は被害者とすれ違いざま、被害者の顔を確認するような行為を行い、一旦すれ違ったあと、被害者に後ろから近づき、被害者の背中の肋骨と肋骨の間にナイフを横にして差し込み、心臓をいわば裏側からひとつきして殺害している。なので返り血など浴びておらず、被害者の死を確認することなく、現場からもすすっと離れている。

◆軍隊経験のない人が、そんな殺し方をできるのか

しかし、実は被害者と山本さんには面識がある。山本さんが被害者に殺したいほど恨みがあるとしても、いや、ならば当然、すれ違いざま、わざわざ顔を確認しないだろう。いや、もしかして、暗がりだから確認したかもしれない。なにしろ殺害するのだから。

でも、より確実に相手を殺害したいなら、しなければならないなら、山本さんはすれ違いざま、正面からどうどうと心臓めがけてナイフをさしいれるはずだ。わざわざ、後ろにまわり、肋骨と肋骨の間にナイフを横に差し入れるなどという、特殊な訓練を受けた殺し屋のような方法を、不謹慎な言い方だが、殺害初心者の山本さんは取らないだろう。

失敗したら大変だ。「山本に殺られた~」と叫ぶだろう。(実際ドラレコには被害者の最後の声が残されている)。

山本さんは長年スーパー勤務の男性だ。事件当日も、仕事から戻り酒を呑み、家族で夕食をとり、風呂にはいり、長女と居間でテレビを見ていた。そんな普通のおやじさんだ。紀州のドンファン事件の早紀被告ではないが(早紀被告だって検索していただけで犯行に及んだかは不明だ)、「背中から刺して殺す」「肋骨と肋骨の間からからナイフを入れて殺す方法」などを検索した履歴もない。

判決文には「検察官の主張する各間接証拠を検討した結果、その相当部分は、弁護人の主張するとおり、検察官の立証に問題があり、被告人が犯人であることを基礎付ける事実関係として採用することができないが、一部の間接事実は疑いを容れずに認定することができ、その間接事実を総合して推認することにより、常識的に考えて被告人以外の犯人を想定することができず、被告人が本件の犯人であると認めることに、合理的な疑いを容れる余地はないものと判断した」とある。

何度も言うが、スーパー勤務、仕事から帰宅後、大好きな酒を飲みながら家族との団欒を楽しむ山本さんが、まるでプロの殺し屋のような殺害方法で人を殺すなんて、「常識的に考えて」ありえないだろう!

そんな話をしたら、伊賀弁護士に「尾崎さん、鋭いですね」と言われた。いや、鋭いも何も、普通スーパー勤務で、自衛隊など軍隊経験のない人が、そんな殺し方しないだろうよ。

ほかにも不可解な点は山程あるが、山本さんには有罪判決が下され、控訴することになった。

「尾崎さんは驚いてくれたが、裁判員からは何の疑問や質問も出ないんですよ」と諦め顔の伊賀弁護士。そして「この事件についてはもっともっと広めていかないと」と。はい、頑張って広めていきますね。


◎【参考動画】【大阪・羽曳野隣人殺害事件】「懲役16年」有罪判決 捜査機関が有罪立証のもととした「ドラレコ映像」は「被告と犯人の特徴合致すると評価できない」(カンテレ「newsランナー」2024年9月27日)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

月刊『紙の爆弾』の最新号記事がnoteで一部公開・購読可能となりました。記事単位での購入も可能になりましたが、『紙の爆弾』はあくまで紙がメインのメディアです。興味を持っていただけましたら、ぜひ書店でお手にとっていただければ幸いです。定価700円(税込)、年間定期購読7700円(1号分お得です)。ここでは最新刊11月号(10月7日刊行)の注目記事2本の一部を紹介します。

◆鈴木宣弘東大大学院教授が語る「食料安全保障」日本の農と食を潰す洗脳を解く
 構成・文責◎本誌編集部

 

 

「紙の爆弾」4月号で残留農薬・人工肉の問題や、食料・農業・農村基本法改悪について解説した鈴木宣弘東大大学院教授が5月21日に横浜市で行なった講演「大人が学び考えよう『食の安全保障をどう守るか』」(豈プロジェクト主催)の内容を編集部でまとめた。現在のコメ価格高騰の〝真犯人?と、事態が示す真の危険性も見えてくる。(本誌編集部)

 米国と経産省の思惑が一致

まず、日本の食料安全保障の問題から始めたいと思います。低すぎる食料自給率は、なぜそうなったのか。一番の理由はアメリカとの関係です。

アメリカでは戦後、膨大な農産物が余りました。それをどこで処理するか、日本が処分場の役割を果たすことになりました。米(コメ)以外の農産物の関税が実質的に撤廃させられ、アメリカの農産物がどんどん日本に入ってきた。日本の麦や大豆、トウモロコシの生産は壊滅しました。

それでも、アメリカにとって都合が悪いことが1つありました。それは日本人の主食が米だということです。アメリカの小麦が胃袋に入れられない。そこで回し者の学者も使われて「米を食べると頭が悪くなる」という内容の本(林髞著『頭脳才能をひきだす処方箋』光文社カッパブックス/1958年刊。著者は慶應義塾大学医学部生理学教授)が出て、大ベストセラーになりました。このような洗脳政策で、私たちはアメリカの食料への依存症にどんどん冒されました。

日本国内の勢力もこれをうまく活用しました。経済産業省(旧通産省)が中心の経済政策です。経産省と農林水産省は犬猿の仲。農水は私が15年勤めた省ですか、まだ人がいい。対して経産省は優秀な者は多いが、ずる賢くて手が早い(これは褒め言葉です)。

賢い経産省は「アメリカを喜ばせばいい」と考えた。だから食料の輸入関税の撤廃を進めた。その代わりに日本は自動車などを輸出して、そのお金で食料を安く買えばよいと考えた。そして、これを「食料安全保障」と呼び、その流れを強めてきました。

もう1つの問題は、財務省(旧大蔵省)です。彼らは税金の取り立てばかりやっていますが、それを国民のために使っているのか? 1970年時、当時の農林省の予算は1兆円近くありました。その規模は防衛予算の2倍ほど。それが50年以上経った現在、農業予算2兆円に対して防衛予算は10兆円規模に膨れ上がっています。

ちなみに再生エネルギーの買い取りで、事業者に支払われている金額が4.2兆円。これだけで農水省予算の2倍です。

軍事と食料とエネルギーは「国家存立の三本柱」といわれるものの、命を一番に守る大事な要かなめは食料です。その食料の予算だけがどんどん減らされてきた。これでは、農業が苦しめられ、輸入が増えて自給率が低下するという流れは止められません。

 食料は安全保障の基本

そうした中で、私が「クワトロショック」と呼んでいる4つのショック、すなわち①コロナ・ショック②中国の爆買い③異常気象の通常化④紛争リスクの高まり、が起き、食料とその生産資材が海外から調達しにくい世界的危機が続いています。

食料は武器です。ロシアやベラルーシはもう日本に農産物を売ってくれません。世界の穀倉地帯であるウクライナの土地は破壊されました。

一番深刻なのは、食料の囲い込みです。インドのように麦や米の生産において世界で1、2位を争う輸出国が、自国民を守るために輸出を止めた。今や世界の30カ国ほどが食料の輸出を止めています。これで大変になってきたのが日本の農業です。まず、餌と穀物が十分に手に入らない。酪農畜産農家は餌の価格が2倍に上がったためにどんどん倒産しています。

もっと深刻な問題は化学肥料です。肥料の原料を日本はほぼ100%輸入に頼ってきました。それが当たり前だと思っていた。ところが今では中国もロシアも売ってくれずお手上げです。これで日本の慣行農業が重大な岐路に立たされています。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n5945473386a3

◆「政教分離」をかなぐり捨てる創価学会 公明党・山口那津男代表〝一転〞退任の真相
 取材・文◎大山友樹

 

 

 5月まで「続投」を明言していた

公明党は9月28日の党大会で代表の交代を発表した。2009年9月から15年もの長きにわたって代表を務めた山口那津男参院議員が退任し、石井啓一幹事長(衆院議員・元国土交通相)が新代表に就任した。

退任の理由は「世代交代」。党大会に先立つ9月10日、山口氏は国会内で記者会見し、「公明党は定年制を設けて党の活力を維持してきたが、私はその例外として代表を継続してきた。その間、中堅・若手の人材も育ち、新しい陣容を整える状況が来たと認識した。今、国内外とも政治の世界で世代交代の波が押し寄せているようにも感じる。70歳を超えた私としては、次の世代にバトンを譲るべきだと決断した」(公明新聞9月11日付)と述べた。

もっとも今年5月にBS11の番組に出演した際、山口氏は自らの進退について「代表任期が9月で満了した後の対応に関し、『無責任に放り投げることは考えていない』と述べ、続投する可能性を示唆した。自民党の政治資金規正法違反事件を受けた与党への逆風を念頭に、『党勢維持にしっかり道筋をつけるのが責任だ』」(読売新聞オンライン5月31日付)と続投の意思を示していた。

にもかかわらず急遽、退任へと変節したのは、岸田前首相の総裁選不出馬宣言を受けて自民党がお得意の看板の掛け替えで新総裁を選出し、「刷新」「世代交代」を大義名分に衆院の解散総選挙に突入する一方、公明党が古い看板のままで総選挙を戦うのは印象が悪く、選挙戦術上不都合と組織母体である創価学会が判断したからにほかならない。

自民党が旧統一教会問題や裏金事件など、安倍晋三元首相の“負の遺産”を糊塗するために「刷新」を掲げて選挙戦に臨むにもかかわらず、公明党は「桜を見る会」で安倍首相とともに杯を挙げる姿を幾度もニュース映像で流されている山口代表が看板では、あまりにもきまりが悪いということだろう。「自民党は新総裁を選ぶやすぐに衆院の解散総選挙に打って出るだろう。その日程は最短で10月27日投票といわれている。この選挙日程は昨年11月15日に死去した池田大作創価学会三代会長の一周忌、公明党創立60周年の節目と重なっている。そんな大事な時期の衆院選、しかも組織の求心力の要だった絶対的カリスマの池田氏を失って初めて挑む国政選挙に、創価学会は負けるわけにはいかない。

まさに乾坤一擲を賭けてのぞむ衆院選に、オールドネームの山口代表のまま戦ったのでは展望は開けない。ここは厳しい政治状況だが、世代交代の波に乗る形で新代表を押し立て、危機感を煽って組織の全力を挙げて中央突破を図るしかないと創価学会も腹を括ったのだろう」(創価学会問題に詳しいジャーナリストの段勲氏)

 アベ・スガ・キシダ追従、公明党の「平和・清潔・福祉」を地に落とした十余年

振り返れば2009年8月の衆院選での自公惨敗による民主党への政権交代と、大田昭宏代表(当時)の小選挙区落選という事態を受けて、参院議員でありながら緊急避難的に代表に選任されたのが山口氏だった。

その15年に及ぶ代表期間の大半は、2012年末に政権に返り咲いた第二次安倍政権(二次~四次)との二人三脚であり、さらに菅・岸田と続いた自公政権では、格差と分断の拡大、平和憲法と議会制民主主義の破壊、そしてアメリカの属国化に拍車がかかった。その意味では、公明党における山口時代とは、「平和・清潔・福祉」を金看板とした公明党の政治理念を地に落とし、存在意義を自ら破壊した「暗愚の10余年」だったといえるのではないか。

退任に言及した9月10日の記者会見において山口代表は、「公明党らしさは、立党精神にある。民主政治の基本として掲げているものであり、議員の政治姿勢、政党のあり方、政策の方向の根底にある。これからもしっかりと守っていきたい」と語るとともに、今後の政治課題として、「大きな政策目標の柱は『大衆福祉』」「もう一つは『世界平和』だ」と、「福祉」と「平和」の重要性を訴えているが、これはもうブラックジョークとしか言いようがない。

特に山口代表は、公明党創立者の池田氏が示した「大衆とともに」との結党理念の順守・励行を口にしているが、その池田氏が主張した核兵器廃絶や憲法九条の護持、脱原発や軍事費の削減に尽力することはなかった。むしろ池田氏が自らのライフワークとする小説『人間革命』を沖縄で書き始めたことが象徴する、戦火に苦しんだ沖縄を「平和の楽土に」との池田氏の強い思い、ことに「沖縄には核も基地もいらない」との池田氏の再三の叫びを無視して、米軍海兵隊の辺野古新基地の建設を公明党の歴代の国土交通大臣が推進してきたことは、党創立者の意志に反する自家撞着でしかない。

※記事全文はhttps://note.com/famous_ruff900/n/n8d06e59f0a54

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年11月号

『紙の爆弾』2024年 11月号
A5判 130ページ 定価700円(税込み)
【特集】いま政治が問うべきこと
鈴木宣弘東大大学院教授が語る「食料安全保障」 日本の農と食を潰す洗脳を解く
国民を騙して導入し、人と国を弱体化させる消費税を廃止せよ 
川内博史・原口一博(立憲民主党衆院議員)
米国植民地からの脱却が東アジアの平和をつくる 
鳩山友紀夫(元首相)・末松義規(立憲民主党衆院議員)

河野太郎「マイナ保険証」の愚行 米アマゾンに売られる日本の「情報主権」 高野孟
巨大製薬企業は日本人を狙っている! 明らかになった子宮頸がんワクチンの危険性 神山徹
ウクライナ化するフィリピン 米中対立と「アジア有事」の現在地 浜田和幸
日本人が知らされない“極東”の隆盛 ロシア「東方経済フォーラム」で見た世界の現実 木村三浩
自民党総裁選「憲法改正」争点化の姑息 自民憲法改正案は「改憲」とはいえない 足立昌勝
告発者潰しにも維新議員が関与 兵庫パワハラ知事を生んだ維新の無責任と凋落 横田一
「政教分離」をかなぐり捨てる創価学会 公明党・山口那津男代表“一転”退任の真相 大山友樹
総裁選とは何だったのか 衆院解散・総選挙とその後の自民党 山田厚俊
プロボクシングに見た躍進するサウジアラビア 片岡亮
ジャニーズとNHK、そして大阪・関西万博 本誌芸能取材班
統一教会のオカルト洗脳で「脳死」させられたニッポン 佐藤雅彦
シリーズ日本の冤罪 53 茨城上申書殺人事件 片岡健

連載
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け:西田健
「格差」を読む:中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座:東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER:Kダブシャイン
【新連載】「ニッポン崩壊」の近現代史:西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DJ2KG1N5/

60年安保闘争時の東大医学部自治会委員長が、聴診器一本とかんじきで、
半世紀余り地域医療に飛び込んだ著者の自伝的感動のノンフィクション!
在宅医療のパイオニアとして未来に挑戦する!

この一冊からは昭和・平成・令和を生きた
現役の医師である87歳の筆者の静かなる叫びが聞こえてくる。
日本のみならず世界中が不安定な今、戦争・政治・教育・家族・老い、
そして医療とさまざまな角度から導いてくれる、心を打つ、道しるべである。
安藤和津(エッセイスト)推薦

『アルプス少年 医を拓く』黒岩卓夫=著

『アルプス少年 医を拓く』
黒岩卓夫=著
 
A5判 ソフトカバー装280ページ(+カラーグラビア8ページ) 
定価2200円(税込み) 10月15日発売

《目次》
序 章  若栗峰
第一章  滿洲開拓団・棄民
第二章  ソ連(ロシア)侵略と難民
第三章  ハルビンから帰国
第四章  山猿ランプ少年
第五章  松本深志高校から東大合格(理Ⅱ)
第六章  Z旗を掲げて覚悟の医学部へ
第七章  北大路秩子 異次元の女子学生
第八章  六〇年安保闘争
第九章  結婚への脅迫状
第十章  聴診器一本とかんじきで
第十一章 健康やまとぴあ
第十二章 萌気会と桐鈴会の誕生
第十三章 「ゆきぐに大和総合病院」から「魚沼基幹病院」へ
第十四章 在宅医療を語ろう
第十五章 地域共生と「おふたりさま」
第十六章 医療と宗教を考える会
第十七章 ふるさと高地と「半農半医」
第十八章 柄澤和子先生の文化革命
第十九章 萌気会三〇周年――三代黒岩巌志の抱負――
第二十章 茨の道に赤い薔薇を
後 記  革命とは何か

ご購読のほどよろしくお願いいたします! 連休明けの書店発売となりますが、
アマゾンなどのネット書店、鹿砦社通販では予約を受け付けています。

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315649/
◎紀伊國屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784846315641
◎ヨドバシドットコム https://www.yodobashi.com/product/100000009003905456/
◎版元ドットコム https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784846315641

活気あった頃の新日本キックボクシング協会らしさが出たレジェンド登場。

脳腫瘍の手術を経て、再起を目指していた江幡塁はドクター勧告により再起は断念。潔く引退の道を選び、試合に向ける程のトレーニング量と減量を課して引退セレモニーに臨んだ。

エキシビジョンマッチに登場した深津飛成と泰史も激しい攻防で、レジェンド達が会場を盛り上げた。

ダブルメインイベントと位置付けられた総合格闘技Mixed Martial Arts(MMA)は無名の外国人による1ラウンド決着。江幡塁の引退セレモニーの後で、前座の消化試合のような観衆少ない中、盛り上がりに欠けていた。

日本のメインイベンター、瀬戸口勝也は、前回7月7日にジョニー・オリベイラに判定勝利している辰樹に倒される完敗。

ジョニー・オリベイラは匠に判定負け。瀬戸口と二人揃って新日本キックボクシング協会の牙城を守れなかった。

◎TITANS NEOS 35 / 10月6日(日)後楽園ホール 17:15~21:36
主催:伊原プロモーション / 認定:新日本キックボクシング協会

◆第13試合 120.0kg契約3回戦(MMAルール)

ビジュ・ロイク(フランス/ 115.0kg)vsマヌエル・ロデリゲス(スペイン/ 116.0kg)
勝者:ビジュ・ロイク / KO 1ラウンド 1分8秒 /
主審:宮沢誠

ビジュ・ロイクが寝技でマヌエル・ロドリゲスの左腕を極めたところでマヌエルがタップ、棄権し一本勝ち。

◆第12試合 68.0kg契約3回戦(MMAルール)

タフイキ・ダミエン(フランス/ 67.45kg)
        VS
モハメド・アマホウド(モロッコ/ 70.0kg/2.0kgオーバー/開催に影響無し)
勝者:モハメド・アマホウド / TKO 1ラウンド 2分48秒 /
主審:小池秀信

立ち技から寝技に移り、モハメド・アマホウドが体勢上になり、タフイキ・ダミエンがうつ伏せになるとパンチ連打でレフェリーストップ。

モハメド・アマホウドがタフイキ・ダミエンに馬乗りになって連打していく

◆江幡塁引退セレモニー

江幡塁は公式試合もエキシビジョンマッチも行なえない為、師匠の伊原信一氏とのミット蹴りの披露を2分制の2ラウンドを行なった。これが現役最後のミット蹴りだけに完全燃焼する一層の気合いが入った蹴り連打となった。

江幡塁の現役最後のミット蹴り、受けるのは師匠の伊原信一会長

セレモニーに参列した関係者からの花束、記念品、御祝儀等の贈呈に、江幡塁にパンチの指導した内山高志(元・WBA世界スーパーフェザー級Champ)さんも御登壇。

引退セレモニーで御挨拶の江幡塁。堂々たる語り口も伊原信一氏直伝だろう

江幡塁の御挨拶は、「最後に師匠である会長に、選手として最後のトレーニングをして貰って最高の選手生活を締め括ることができます。僕の引退式にこんなに沢山の人が観に来てくださり、こんな最高の景色が見れて僕は幸せ者です。応援に来てくださった皆様、本当に有難うございます。」と語り、昨年2月の脳腫瘍を患ってからの想い、手術は成功し、腫瘍は良性であったことからの復帰を目指した日々、那須川天心に敗れた後のこと等、最後に「会長の下で選手を育成し、協会の発展に努めていきます。」と7分に渡る熱い語り口で締め括り、テンカウントゴングに送られリングを去った。リングに上がる前はファンに導かれる入場で泣き顔でリングに向かったが、リングを下りる際は爽やかな表情でファンに囲まれての去り際だった。

テンカウントゴング後。WKBAとKNOCK OUTのベルトを持って最後のアピール

◆第11試合 59.0kg契約3回戦

日本フェザー級チャンピオン.瀬戸口勝也(横須賀太賀/ 58.8kg)44戦31勝(14KO)10敗3分
        VS
IOCインターコンチネンタル・フェザー級チャンピオン.辰樹(Y’ZD/ 59.0kg)
16戦7勝(3KO)6敗3分
勝者:辰樹 / TKO 1ラウンド 2分22秒 / 2度目のノックダウンでレフェリーストップ
主審:椎名利一

瀬戸口勝也が強打で仕留めるか、その距離に持ち込もうとする中、辰樹のハイキックを貰ってその蹴り足を掴んで離さなかったところを辰樹の左フックを浴びてノックダウン。迂闊なパンチを貰ってしまったが、再開後、再び連打を浴びてノックダウンとなったところでレフェリーストップとなってしまった。

辰樹は前回、スーパーフェザー級チャンピオンのジョニー・オリベイラ、今回はフェザー級チャンピオンに勝利したことで「WKBAの世界タイトルに挑戦させてください。」と勝利後のマイクアピールだった。

辰樹のハイキックを喰らってしまう瀬戸口勝也、倒れないがこの後、悪夢となる

二度目のノックダウンとなった辰樹の連打を喰らって前のめりに倒れた瀬戸口勝也

◆第10試合 59.0kg契約3回戦

日本スーパーフェザー級チャンピオン.ジョニー・オリベイラ(トーエル/58.85kg)
64戦16勝(1KO)30敗18分
        VS
匠(KING/ 58.75kg)7戦5勝(2KO)1敗1分
勝者:匠 / 判定0-2
主審:勝本剛司
副審:少白竜29-30. 宮沢29-29. 中山28-29

ベテラン対新鋭の攻防。テクニックでは匠が上回るか。負けない展開に導く駆引きはジョニー・オリベイラと言える中、匠のカーフキックでジョニー・オリベイラのバランスが崩れるも、パンチからクリンチへ持ち込むジョニー・オリベイラだったが、差が出難い中での匠の蹴りがやや攻勢となったか、匠が僅差判定勝利を導いた。

匠のローキック、カーフキックに苦戦したジョニー・オリベイラ

◆エキシビションマッチ 3回戦(2分制)

深津飛成(元・日本フライ級、バンタム級Champ/伊原)
        EX
泰史(元・日本フライ級Champ/伊原)

近年のエキシビジョンマッチとしては長めのラウンド、計6分間となった。昔のエキシビジョンマッチ並みの長さである。

泰史は遠慮ない蹴りを深津飛成に蹴り込む。深津も互角に蹴り合う展開を見せた。第1ラウンド終わると、深津が青コーナーまで、泰史に何か言いに行っていたが、エキシビジョン終了後、「2ラウンド目はレガース外すつもりでやったけど、泰史の蹴りが痛過ぎて、レガース着けたままやってくれって言った!」という笑いを誘うマイクによるコメント。

第3ラウンド終了間近では、深津飛成の右フックで泰史からノックダウンを奪う見せ場を作った。

泰史は引退を発表していたが、深津は先輩命令で「引退試合やれよ!」と檄を飛ばし、泰史は引退試合を行なうことを宣言した。 

エキシビジョンマッチながら深津飛成の右フックで泰史がノックダウン

◆第9試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級王座決定戦3回戦

5位.鈴木咲耶(チーム鈴桜)4戦3勝1敗
      VS
1位.NA☆NA(元・Champ/エスジム川崎)22戦14勝6敗2分
勝者:NA☆NA / 判定0-3 /
主審:中山宏美
副審:椎名29-30. 少白竜28-29. 宮沢29-30

ワンデートーナメントでの王座決定戦は望ましくは無いが、これもローカルタイトルとしての近年の流れ。鈴木咲耶は長身を活かした蹴りとパンチにNANAは徐々に距離を詰めて、パンチや首相撲に持ち込む。その圧力に鈴木はリズムを狂わされていく。両者の蹴りパンチとも攻勢維持には至らない展開もNANAがパンチで圧して行き僅差判定勝利で王座奪還となった。

長身、鈴木咲耶の距離を潰してパンチで攻めたNANA。圧力が優った

 

王座返り咲きのNANA、ミネルヴァ・バンタム級王座新設を要望した

◆第8試合 64.0kg契約3回戦

NJKFスーパーライト級2位.佐々木勝海(エスジム日吉/ 63.85kg)11戦8勝(2KO)1敗2分
        VS
梅沢遼太郎(白山道場/ 63.4kg)8戦3勝(1KO)1敗4分
引分け 1-0
主審:少白竜
副審:椎名29-29. 中山29-28. 宮沢29-29

パンチから組み合う首相撲の展開が多いが決定打に繋がらない両者。スタミナ削り合いは差が付かない結果となった。

◆第7試合 53.0kg契約3回戦 愁斗(Bombo Freely)欠場、井原俊平代打出場

井原俊平(ワイルドシーサーゴザ/ 52.85kg)11戦3勝6敗2分
        VS
大久保貴宏(京都野口/ 52.95kg)5戦4勝1敗
勝者:井原俊平 / 判定2-0
主審:勝本剛司
副審:椎名30-29. 中山30-28. 宮沢29-29

◆第6試合 女子(ミネルヴァ)48.0kg契約3回戦(2分制)

ミネルヴァ・アトム級チャンピオン.Nao(AX/ 47.35kg)8戦6勝(2KO)1敗1分
        VS
坂本梨香(BELLWOOD FIGHT/ 47.8kg)4戦1勝2敗1分
引分け 1-0
主審:少白竜
副審:椎名29-29. 中山30-29. 勝本29-29

離れた距離では坂本梨香のパンチと蹴りのペースも、組み合えばNaoのヒザ蹴りが巻き返すも差が付かない結果となる。

◆第5試合 女子(ミネルヴァ)54.0kg契約3回戦(2分制)

松藤麻衣(クロスポイント吉祥寺/ 53.7kg)5戦3勝2敗
        VS
MIO LaReyna(TEAM REY DE REYES/ 53.85kg)3戦3敗
勝者:松藤麻衣 / 判定3-0 (30-27. 30-27. 30-28)

◆第4試合 アマチュア49.0kg契約2回戦(2分制)

原龍之介(伊原越谷)vs堀内遥輝(TAKEDA)
勝者:原龍之介 / 判定3-0 (20-18. 20-18. 20-18)

◆第3試合 アマチュア 33.0kg契約2回戦(2分制)

渋谷剛(伊原越谷)vs石井利空(TAKEDA)
引分け 1-0 (20-19. 19-19. 19-19)

◆第2試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級王座争奪4人制トーナメント(1day)

3位.YURIKO SHOBUKAI(尚武会/ 51.9kg)12戦5勝5敗2分
        VS
1位.NA☆NA(元・Champ/エスジム川崎/ 51.9kg)21戦13勝6敗2分
勝者:NA☆NA / 判定0-3
主審:中山宏美
副審:椎名28-29. 少白竜28-30. 宮沢28-30

多彩に攻め合う両者、NANAのパンチとヒザ蹴りで僅差のポイントを奪ったNANAが判定勝利。

◆第1試合 女子(ミネルヴァ)スーパーフライ級王座争奪4人制トーナメント(1day)

5位.鈴木咲耶(チーム鈴桜/ 51.35kg)3戦3勝(1KO)
        VS
ミネルヴァ・ライトフライ級チャンピオン.Yuka☆(SHINE沖縄/ 51.85kg)
14戦6勝6敗2分
勝者:鈴木咲耶 / 判定3-0
主審:中山宏美
副審:椎名30-28. 少白竜30-29. 宮沢30-28

長身を活かした鈴木咲耶の蹴りとパンチ、組み合ってもヒザ蹴りの攻勢で判定勝利。

《取材戦記》

最後の現役選手としてリングに立った江幡塁は公開ミット蹴りについて、
「疲れました。本当は1分1ラウンドだったんですけど、あの場でいきなり2分2ラウンドになって想定外でした。でも試合に向ける程の練習して来たので、5ラウンド戦えるぐらいの体力着けて来ました。疲れましたけど体力はあるので充実したミット打ちでした。」と語った。

相手は攻めて来ないのでダメージの心配は無いが、連続で蹴るので観る側の想像以上に疲れることだろう。

公開されている前日動画では、「公式試合もエキシビジョンマッチも出来ませんが、自分に課した1年間の挑戦でした。」という最後のリングに向け、試合をやるつもりで減量して58.0kgに標準を絞って練習し、試合には出ないけれど前日計量では自分も計量するつもりで、計量の前日(10月4日)には60.1kg。サウナスーツ着て走って59.1kg。半身浴して58.8kg。前日計量時(10月5日14時)には目標の58.0kgに達し、試合に向けた懐かしい感情だったという。

堂々と会長のミット蹴りに臨める充実した気合いで当日、後楽園ホール入り。引退セレモニーでは予定どおりのミット蹴り(パンチ、ヒジ打ちも含む)。セレモニーでは多くの支援してくれて来た関係者に囲まれ、ここまでの想いを語る御挨拶を残してテンカウントゴングに臨めた。

この江幡塁の引退セレモニーがこの日のメインイベントの存在感でした。最近はセミファイナルより以前に行われる、アンダーカード的引退式が多く、江幡塁も実質メインイベント前に行なう似た位置付けでしたが、メインイベントクラスのMMA試合が霞んでしまうほど、観衆は江幡塁への応援で、引退式が終わると会場を後にする姿が多かったようです。

深津飛成と泰史のエキシビジョンマッチも存在感があり、深津飛成のマイクアピールも「俺も経営苦しいタイ料理屋を頑張るから、キミも、あなたも、お前も、一生懸命頑張ろう。」と観衆を指さし、頑張っていない者が聞けば心にグッとくるトークが熱かった。深津の威圧的命令で泰史も引退試合を行なうことに話が進み、旧エース格たちの存在が輝いた興行でした。

この日のメインイベントクラス最終2試合のMMAルール試合は今回限りという話もあるようですが、実際に今後も続けることは難しいでしょう。キックボクシングの興行でMMAの試合がダメという意味ではなく、リングマットの硬さの問題です。
後楽園ホールのリングでのキックボクシング試合は、常駐のボクシング用リングを使用しますが、投げ技の有る総合格闘技系は、ボクシングリングは硬過ぎて不向きでしょう。

実際、修斗などの試合では後楽園ホールでも、分厚い体操用のマットを敷いた上にキャンバスを覆う布マット(色付き、スポンサー名入り、競技団体名入り)を敷きます(過去に見た限りでは)。

キックボクシング試合がMMA試合用に合わせる手段もありますが、修斗同様にそのマットを運ぶ運搬設営に時間と経費が掛かることも懸念されるでしょう。その柔らかいマットではフットワークに影響も出る恐れもあります。最近はジムでの床も柔らかいジョイントマットが敷かれているので、慣れから大きな影響は無いかもしれませんが、昔は木の床やコンクリートの上での練習はタイでは当たり前でしたし、ラジャダムナンスタジアムのマットも日本以上に硬かったものです。という話より、キックボクシングは競技性を重視し、今後も立ち技打撃競技として興行を行なっていくでしょう。

新日本キックボクシング協会次回興行は2025年3月12日(日)に後楽園ホールに於いてMAGNUM.61が開催予定となっています。

瀬戸口勝也を倒した辰樹がWKBAの世界タイトルに挑戦をアピールしましたが、そんな路線も在り得る2025年です。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

最新刊! タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年11月号

読売新聞社会部(大阪)が、情報提供を呼び掛けている。インターネット上の「あなたの情報が社会を動かします」というキャッチフレーズに続いて、次のように社会部への内部告発を奨励している。

「不正が行われている」「おかしい」「被害にあっている」こうした情報が、重大な問題を報道するきっかけになります。読売新聞は情報提供や内部告発をもとに取材します。具体的な情報をお持ちの方はお寄せください。情報提供者の秘密は必ず守ります。

この機会に全国の新聞販売店は、「押し紙」の実態を内部告発すべきではないか。読売社会部が「押し紙」を調査して報道する可能性はほとんどないが、同社のジャーナリズムがどの程度のレベルなのかを知るための指標になる。

◆年間932億円の不正販売収入を生み出す「押し紙」

数年前、わたしはNHKに対して「押し紙」に関する資料を提起しようとしたことがある。結論を先に言えば、この時は門前払いされた。NHKの職員は、資料の受け取りを拒否したのである。その理由は、NHKには部署が多いので、たとえ資料を受取っても行方が分からなくなる可能性があるというものだった。(電話での会話)

他の大メディアに「押し紙」の資料を提供しても、取材対象にはならない公算が強い。「押し紙」問題を報道することが、自分たちの小市民としての経済基盤を崩壊させかねない懸念があるからだ。

しかし、「押し紙」問題は、新聞ジャーナリズムを考える上で最も根本的な着目的である。と、いうのも「押し紙」が生み出す不正な販売収入の額が尋常ではないからだ。この汚点に、公正取引委員会や警察などの公権力が着目すれば、「押し紙」の摘発をほのめかすだけで、暗黙裡に新聞の紙面内容に介入することが可能になる。わたしの試算ででは、新聞業界全体で年間932億円の不正な販売収入が発生している。これは過少に試算した数字である。

試算の詳細については、『新聞と公権力の暗部』(鹿砦社)に詳しいが、概要は次の通りである。2021年度の全国の朝刊発行部数は約2590万部だった。このうちの20%にあたる518万部が「押し紙」と仮定する。また、新聞1部の「押し紙」代金を月額1500円をと仮定する。「押し紙」による販売収入は、次の計算式で導きだせる。

518万部×1500円×12カ月=年間932億円

新聞は「朝刊単独版」と「朝夕セット版」の2種類があるが、誇張を避けるために、すべての新聞が価格がより安い「朝刊単独版」として計算した。

それにもかかわらず「押し紙」による販売収入は、932億円になるのだ。この数字がいかに異常かは、たとえば次のデータと比較すると分かりやすい。

(1)統一教会の霊感商法による被害額は、全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、35年間で1237億円である。年間に換算するとたった3億5000万円程度である。

マスコミは、鈴木エイト氏の後追い取材のかたちで、霊感商法の問題を大きく取り上げた。しかし、それよりも被害が深刻なのは、「押し紙」代金の取り立てである。

(2)しんぶん赤旗(2020年9月15日)によると、自民党から電通に支出された広告費は、19年間で100億円超である。年間に換算すると5000万円強である。この広告費は、倫理的な問題を孕んでいるが、不法行為ではない。これに対して「押し紙」による販売収入は、不法行為である。しかし、しんぶん赤旗もこの問題は避けている。暴露した場合の「反共攻撃」が予測されるからではないか。あるいは新聞記者の生活を守ることを優先するからではないか。

「押し紙」が生み出す不正収入が莫大な額であるからこそ、公権力によるメディアコントロールの温床になり得るのだ。公権力の側も、この点を熟知しているから、「押し紙」問題は黙認しているのだ。裁判所は、サラ金の武富士にはメスを入れても、新聞社に対しては、メスを入れない。

実はこのような構図は、戦前・戦中にも存在した。政府が新聞用紙の配給の権限を握ることで、新聞社を大本営の広報部に変質させていった歴史がある。かつては新聞用紙の配給制度がメディアコントロールの装置として機能し、戦後は「押し紙」制度が公権力による世論誘導の装置として定着したのである。この点を認識することなしに、日本の新聞ジャーナリズムの本質を捉えることはできない。

◆新聞ジャーナリズムの衰退を生み出す「押し紙」

新聞ジャーナリズムの衰退について考える時、大別して2つの視点がある。ひとつは精神的なもの(記者魂の欠落や勉強不足)にその原因を求める論法である。もうひとつは物質的なもの(記者クラブ制度、税制の優遇措置、「押し紙」問題など)にその原因を求める論法である。哲学上の言葉を使うと、観念論の論法と唯物論の論法の違いということになる。

前者の典型としては、「望月記者と共に歩む会」である。このグループは、それぞれの記者が東京新聞の望月記者のような積極性を発揮すれば、ジャーナリズムはよくなるという考えのようだ。新聞ジャーナリズムに対する手厳しい批判は、わたしが調べた限りでは、1960年代には始まっているが、現在まで、その評論の大半が観念論に基づいたものである。結果、ほとんど何も変わっていない。

これに対して後者の例としては、既に述べたように、記者クラブ制度、税制の優遇措置、「押し紙」問題などがある。これらの中で最も問題なのは「押し紙」である。と、いうのも「押し紙」問題は、不正な金銭がらみで、しかもその金額が尋常ではないからだ。

◆販売店主の自殺者などを生み出す「押し紙」

新聞社による「押し紙」代金の回収は、販売店主の自殺者などを引き起している。かつてサラリーマン金融や商工ローンの取り立てが大きな問題になったことがあるが、その比ではない。しかも、問題の中心にいるのが、「社会の木鐸」である新聞社であることに、大きな問題がある。

出版社も、そのほとんどが「押し紙」問題を扱わない。新聞の書評欄から、自社の書籍が締め出されると、大きな打撃を受けるからだ。

読売新聞社会部(大阪)は、内部告発を奨励することで、そのジャーナリズム性をPRしているようだが、こうした戦略を読者はどう考えるだろうか?

 

本稿は『メディア黒書』(2024年09月27日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

« 次の記事を読む前の記事を読む »