広島県教委の平川理恵前教育長(在任、2018年4月~2024年3月)らによる官製談合事件で、住民らの告発を受けて捜査していた広島地検は8月、平川被疑者を証拠不十分として不起訴処分にする一方、直接事務を担当していた当時の課長を略式起訴し、課長は50万円の罰金を納付しました。
この事件は、平川氏の故郷の京都が本部で平川氏と親交のあった『NPO法人パンゲア』のために平川氏が事実上、県費で仕事を作ってあげた、というものです。2022年8月、「文春砲」ですっぱ抜かれました。
確かに、直接的に平川氏が指示した証拠はないものの、平川氏のために仕事をつくって当たり前、と言う状況が当時の県教委にはありました。
◆市民団体の不服申し立ては当然
当然、10月1日、市民団体「県教委官製談合疑惑をただす市民の会」は、「平川氏が教育長でなければ事件は起きなかった」として、検察審査会に不服申し立てを行いました。検察審査会が二度【起訴相当】の議決を行えば、平川氏は「強制起訴」されます。
だいたい、「大阪城を造ったのは誰か?」と問われて「大工さん」と答える人はまずいないでしょう。「豊臣秀吉」と答えるのが普通です。では「パンゲアのために仕事を作ってあげたのは誰か?」と問われれば「平川さん」と答えるのが普通でしょう。その普通が通用しないのが広島県警であり、広島地検です。真面目にやっていただきたい。
◆持ち上げる東京マスコミ、反省のない平川氏
一方で、解せないのは、教育長退任後の平川氏を東京のマスコミが持ち上げまくっていることです。
例えば『AERA』は「平川理恵さんが語る広島の「タイムマシンで未来見る」教育改革 米・ビジネスハイスクール視察や不登校支援センター設置も」で、平川氏の自慢話を一方的に垂れ流しています。
官製談合事件についてこの記事の中で平川氏は「見方の問題だと思います。(最終出勤日の)3月29日の前日に250人が送別会を開いてくれました。教育関係者に限るということで、現場の先生や教育委員会の方が来てくれました。いろんな見方があると思います。でも私はこの来てくれた250人の皆さんが答えだと思っています」とまったく反省がありません。
上司の送別会ですから、少々上司が嫌な奴でも参加するのは、当然でしょうに。筆者も県庁時代、嫌な上司がいなかったと言えばうそになります。それでも職場の送別会には参加しました。当たり前のことです。その上司だって、「俺のためにみんな来てくれた」とは思っていないでしょう。
同記事のヤフー版のコメントでは「いろいろな改革に取り組んだのは良いかもしれない。だが、広島の教育で何か良くなったものはあるのだろうか。あまり良い話を聞かない。現場の意見を聞かなすぎたんじゃないか」など『AERA』と平川氏への批判が噴出していますが当然です。
おそらく、一部の東京のマスコミを主導するインテリの方々には以下のようなステレオタイプな考え方があるのではないか?
「腐った田舎者に、東京の進歩的な女性がいじめられている」
実際に、筆者も東京で大学卒業まで過ごしたのでわかるのですが、思想的に左翼だから共産党、社会党に投票していたわけではなく「自民党は田舎臭くてダサいから共産党、社会党」程度の考え方の方も結構おられました。そういう方や、そういう方々をマーケットとするマスコミが、石丸伸二さんとかが出てくると「田舎の老害をぶっ叩く」「田舎の老害にいじめられた若者」イメージで持ち上げてしまい、結果として石丸さんが都知事選挙で160万票も取ってしまう(それも、野党系から票を奪う形で)のはわかる気がします。
しかし、平川氏がやったことは所詮は「広島の公教育の米国化」です。米国の公教育も決して褒められたものではないでしょう。例えば、米国大統領選挙もついこの間まではトランプvsバイデンなどという不毛な対決構図でした。こんなことになるのも、米国の教育がもたらした米国の有権者の意識の問題もかなり大きいのではないか?日本も大概だが、有権者としての教育に米国も失敗していると言わざるを得ません。その米国に倣った教育改革をこれ以上広島でされたらさらにひどいことになりかねなかった。
◆任命責任重大な湯崎知事、「法令違反は改革の副作用」と開き直り
そして大問題なのは平川氏を任命した湯崎英彦知事です。広島県内にも女性の校長先生などいらっしゃいます。あるいは教育で全国でも有名な広島大学にも女性の教授は当然おられます。社会教育で活躍している医師や弁護士などいくらでも優秀な人材はいます。「女性教育長」が平川氏である必要はどこにもなかったのです。
そんな平川氏は散々、広島の教育をかき回した挙句、刑事責任は部下に押し付け、東京で好き放題、自慢話。そしてそもそも、こんな方を「一本釣り」で任命した湯崎知事の責任は重大です。その湯崎知事は、2024年2月、「法令違反は改革の副作用」などといって、公然と法令違反を是認しています。こんな知事でいいのでしょうか?!
▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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