インターネットのポータルサイトにニュースが溢れている。衆院選挙後の政界の動きから大谷翔平選手の活躍まで話題が尽きない。これらのニュースを、メディアリテラシーを知らない人々は、鵜呑みにしている。その情報が脳に蓄積して、個々人の価値観や世界観を形成する。人間の意識は、体内の分泌物ではないので、外かいから入ってくる情報が意識を形成する上で決定的に左右する。

その意味で、メディアを支配することは人間の意識をコントロールすることに外ならない。国家を牛耳っている層が、それを効果的に行う最良の方法は、新聞社(とテレビ局)を権力構造の歯車に組み入れることである。実際、公権力を持つ層は、新聞社に経済的な優遇措置を施すことで、新聞ジャーナリズムを世論誘導の道具に変質させている。

「押し紙」が生み出す不正な販売収入が業界全体で年間に、少なくとも932億円になる試算は、9月27日付けのメディア黒書で報じたとおりである。

※「押し紙」問題がジャーナリズムの根源的な問題である理由と構図、年間932億円の不正な販売収入、公権力によるメディアコントロールの温床に

前出の試算と同じ観点から、今回は毎日新聞社のケースをクローズアップしてみよう。幸いにわたしはそのための格好の内部資料を所有している。

毎日新聞社の社長室から外部へ漏れた「朝刊・発証数の推移」と題する内部資料によると、2002年10月の時点における毎日新聞の公式部数は、395万3,466部である。これに対して、新聞販売店が読者に発行した領収書の数(発証数)は、250万9,139枚である。差異にあたる144万(部)が、一日あたりに全国で発生していた毎日新聞の「押し紙」という計算になる。

※厳密に言えば、販売店に搬入される新聞の2%は予備紙で、「押し紙」の定義には入らない。

「押し紙」1部の卸代金を1,500円として試算すると、「押し紙」による販売収入は、月額で21億6,000万円になる。年間では259億円となる。「押し紙」は独禁法の新聞特殊指定に抵触するので、公正取引委員会が毎日新聞社にメスを入れれば、同社は年間で259億円の販売収入を失うことになる。「押し紙」を買い取るために販売店へ支出する補助金が相当な額にのぼるとしても、不正な販売収入の規模は尋常ではない。

※朝刊 発証数の推移(赤印に着目)

公権力機関は、新聞社による「押し紙」の汚点を把握することで、新聞社をみずからの「広報部」に組み込め、情報をコントロールすることが可能になる。「押し紙」による収入が少なければ、「押し紙」制度は、メディアコントロールの道具として機能しないが、毎日新聞社の例に見るように金額が莫大なので、公権力は「押し紙」の摘発をほのめかすことで、紙面に介入できるのだ。

恐ろしい制度と言わざるを得ないが、実はこれと類似した構図が戦前にもあった。それは新聞用紙の配給制度である。新聞社が自由に新聞用紙を調達できない状況の下で、政府が新聞社に新聞用紙を配給することで、新聞社を「広報部」へ変質させていのである。

日本の新聞ジャーナリズムが機能しないのは、新聞記者の職能が劣っているからではない。それ以前の問題として、「押し紙」制度と連動したメディアコントロールの政策があると考えるのが妥当である。繰り返しになるが、それが可能なのは、「押し紙」が生み出す販売収入が莫大な額になるからにほかならない。特に中央紙には、このような構図が当てはまる。発行部数が多く、それに連動して「押し紙」

による不正な販売収入の額で尋常ではないからだ。

「押し紙」問題は、単に新聞の商取引の問題ではない。ジャーナリズムの問題なのである。この点を度外視すると、いくらジャーナリズムの堕落を嘆き、新聞記者を批判しても、解決策は何も出てこない。

本稿は『メディア黒書』(2024年11月2日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

◆三団体首脳が集結!

500万円争奪オープントーナメントから3年程の間隔を空けた第2回開催は、業界の総力を結集したと言われる1000万円争奪オープントーナメントが52kg級、56kg級、62kg級の三階級に渡って開催されました。56kg級だけ13名でしたが、三階級総勢で48名が参加。辞退者、欠場者は幾らか居たものの、当時の業界団体の大部分が参加して開催されました。

このオープントーナメントが開催された1982年(昭和57年)は、春に更なる団体分裂が起こったり、完全にテレビ放映も無くなった時期。そこで集まったのが盛んに交流戦を行なっていた日本キックボクシング協会野口プロモーション、日本ナックモエ連盟、新格闘術連盟の三団体によりオープントーナメント開催を計画され、実行委員会を立ち上げられました。

[左]1000万円争奪オープントーナメントのプログラム初戦の表紙/[右]3回戦新人トーナメントも計画されました

◆オープントーナメント概要

開催は1982年11月19日から、12月18日、翌83年1月7日、2月5日、決勝戦は3月19日。賞金総額は1000万円を提示。一階級300万円。三階級で計900万円で、残り100万円は新人戦オープントーナメントに各階級30万円ずつ充てられました。「残り10万円は?」となりますが、総参加者の中からベストファイト賞的な枠が設けられていたかと思います。

階級リミットはちょっと変則的で、52kg級は±0.3kg、56kg級は±0.5kg、62kg級は±1.0kg枠が設けられていました。

試合は当然5回戦。決勝戦は7回戦となり、引分けの場合、ジャッジ三者の総数が規定となりました。50-50、50-50、50-49だった場合、150対149で、総数上回る側の勝者扱いとなります。総数が同数の場合は1ラウンド延長戦が行われ、優勢支持を受けた側の勝者扱い。そこでしっかりアナウンスされたことは「公式記録は引分け」ということです。延長戦の場合、公式戦は5ラウンドまでということです(決勝は7回戦)。

元々の企画は野口プロモーションだけにリングアナウンサーやタイムキーパーは主に日本キックボクシング協会スタッフが務め、ゴング(鐘)は以前に紹介した、アローンジム寄贈で沢村忠さんの引退テンカウントゴングにも使われた伝統のゴング。これらに拘る者は恐らく居らず、しっかり日本系カラーを植え付けた感のある野口プロモーションの戦略だったかもしれません。審判団については何かと不満が出るもので、公平に共催三団体から選出されました。

孤立状態だった日本プロキックボクシング連盟は肩書きを捨てての選手参加でした。唯一、不参加だったのは全日本マーシャルアーツ連盟。高橋宏、越川豊、長江国政といった有力選手が参加出来なかったのは残念な部分でした。

[左]準決勝戦を迎えた1983年2月5日のトーナメント進行表/[右]1983年3月19日のチケット。ポスターも同様の絵柄でした

タイガー大久保は丹代進に第4ラウンドKOに下して優勝(1983年3月19日)

度々御登場となる松本聖はローキックで酒寄晃を苦しめKO勝利(1983年3月19日)

 

52kg級優勝のタイガー大久保、もしかしたら私の最初のファイティングポーズ撮りかもしれません(1983年3月19日)

◆優勝と藤原敏男突然の引退の衝撃

決勝戦までの大雑把ながらの流れは、52kg級が混沌とした粒揃いの中、優勝候補は武藤英男(大拳)、高樫辰征(みなみ)、丹代進(早川)、松田利彦(士道館)、タイガー大久保(大久保貴司/北東京キング)、白鳥俊(ワールド流気掌)、ミッキー鈴木(目黒)などの絡みが見物でした。

決勝戦進出したタイガー大久保は初戦1回戦で伊吹剛(早川)辞退により勝者扱い。二回戦は沢入貴(市原)に圧倒のKO勝利。準々決勝で武藤英男に引分け勝者扱い。準決勝で白鳥俊に余裕の大差判定勝利。もう一方決勝進出者の丹代進は、負傷辞退の高樫辰征に初戦1回戦で勝者扱い。準々決勝で五島伊佐夫(大拳)にKO勝利。準決勝で松田利彦に僅差ながら判定勝利。決勝戦はタイガー大久保が右ストレートで丹代進を倒してしまった。まだ21歳で頂点を極めた形のタイガー大久保だった。
56kg級は優勝候補の松本聖(目黒)と酒寄晃(渡邉)に玉城荒次郎(横須賀中央)、小池忍(渡邉)、佐藤正広(早川)がどう絡んで来るかが見物でした。

決勝戦は下馬評どおりの松本聖vs酒寄晃。松本聖は準々決勝から出場。玉城荒次郎に苦戦しながら狙った右ストレートでKO勝利。準決勝は小池忍に逆転許すノックダウン喫するも余裕の判定勝利。一方の酒寄晃も準々決勝から出場で黒沢久男(東海北心)にKO勝利。準決勝で長年のライバル佐藤正広に判定勝利。決勝は第1ラウンドに松本聖が先に右フックでノックダウンを奪うも酒寄晃が得意のパンチで逆転のノックダウンを3度奪う圧倒を見せるも、第2ラウンドから松本聖が態勢を立て直し、ローキックでジワジワ攻め、第5ラウンドに大逆転ノックアウトで優勝を果たしました。

トーナメント初戦1回戦で負傷し敗者扱いに陥っていた元馬サトル(四元伸一郎/市原)は、この試合を観る為、仕事を終えてから後楽園ホールに駆け込んだ。20時を完全に過ぎていたという。入り口係員はもう居らず、事務所でチケットが有るか尋ねると「あと一試合だけですよ!」と言われたが、「その一試合が観たいんですよ!」と訴え、メインイベント決勝戦を観る為のチケット買って入り口を通らせて貰い観戦。そんなこの好カード一試合の為にこの日会場にやって来たファンも居ただろう。これで松本聖が堂々たる日本のエース格となった日だった。

56kg級優勝は頬を腫らしての松本聖、藤原敏男離脱の穴を埋めた(1983年3月19日)

62kg級は断トツで藤原敏男(黒崎)。続いて元・日本ライト級チャンピオンの千葉昌要(目黒)と前回準優勝の須田康徳(市原)、混沌と絡んで来るのが長浜勇(市原)、足立秀夫(西川)、ヤンガー舟木(仙台青葉)、弾正勝(習志野)らが居て、誰が藤原敏男と対峙することになるか、誰が藤原敏男と決勝を争うことになるかが注目されました。

藤原敏男は準々決勝で弾正勝を倒し切れぬも圧倒のレフェリーストップ勝ち。準決勝で足立秀夫を3ラウンドKOで下したが、藤原敏男はマイクを持って引退宣言してしまいました。黒崎健時会長の計画では、ラストファイトはムエタイ現役バリバリのチャンピオンと戦い、藤原敏男に相応しい引退試合が予定されていましたが、それを待たずに独自の判断で引退宣言でした。

引退宣言から1箇月あまり、落ち着いた表情で御挨拶する藤原敏男(1983年3月19日)

もう一方の準決勝戦では、優勝候補の須田康徳が初戦1回戦でヤンガー舟木に判定勝利。準々決勝で渋いベテラン対決、千葉昌要に逆転KO勝利。準決勝で長浜勇との同門対決は長浜勇が3ラウンド終了TKOで須田康徳を下す番狂わせ。

「須田康徳が勝ち上がっていたら藤原敏男は決勝戦を戦っていたのではないか。」と言う声も多かった。この時代を代表する好カードを前にして敵前逃亡するような引退は考え難い。しかし長浜勇が勝ち上がったことで藤原敏男当人が語る、身体がボロボロという理由も加えて、「ここで区切りの世代交代として優勝の座を譲ったのではないか。」という声が大きい。それが一番分かり易い流れである。

終わってみれば各階級優勝者は松本聖の他、長浜勇とタイガー大久保という特別参加の日本プロキック連盟勢が二階級を攫って行きました。

62kg級決勝となるはずだった藤原敏男と長浜勇の御対面(1983年3月19日)

◆第3回オープントーナメントは行なわれるか?

3回戦新人トーナメントは最終戦までに終わらず、4月以降の各団体興行に持ち越しとなりましたが、このまま立ち消えとなってしまったようでした。

そのオープントーナメント実行委員会は暫く継続され、6月半ば、簡易的に日本統一ランキングが制定されました。ここから真の日本統一王座制定へ進むかと思われたところが、何の音沙汰もなくなったところを見ると、それぞれの団体の思惑が纏まらなかったことが窺えます。

あれから41年経過した現在まで、この業界が一丸となる大掛かりなオープントーナメントに匹敵するイベントは行なわれておらず、知名度は低くマイナー域は脱していませんが、ネット配信も充実し今が一番盛り上がっている感のあるキックボクシング界かもしれません。

一部イベントでは短期間で終える為の少人数制トーナメントだったり、ワンデートーナメントなるものは存在しますが、団体や選手個人の目指す方向性が日本国内だけではなく、ONEやRWS等もある現在は、かつてのスケールのオープントーナメント開催は難しいでしょう。

次回は1000万円争奪戦優勝者のその後をテーマとして書き綴れたらと思います。

1000万円争奪オープントーナメントに関しては過去に幾度か触れていますので重複する部分もありますが御容赦ください。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

38年前に起きた「福井女子中学生殺人事件」で10月23日、名古屋高裁金沢支部は再審開始の決定を出した。この事件は、確定審の一審で無罪判決、その後の控訴審で逆転有罪判決がくだされ、被告の前川彰司さん(現在59歳)は7年間服役、その後、第一次再審請求審でも再審開始が決定したのち、検察が異議申し立てを行い、その後決定が棄却された。今回の第二次再審請求審でも再審開始の決定が下されたが、検察がどうでるかが注目されていた。そして10月28日、検察は異議申し立てを断念し、再審開始が決定した。

ある意味、事件で被告となった前川さんは2回無罪となり、今回で3度目の無罪判決を下されたようなもの。ここまで38年かかった。

これまでの経緯を調べてみると、前川さんのお父さん、亡くなったお母さんも息子の無実を信じずっと一緒に闘ってきた。お父さんが言っているように、事件のあったその日、まさにお父さんらは前川さんと一緒にいたのだもの……。

◎[参考動画]無実の証明へ決意新た 前川彰司さんが施設入所の父親に再審決定を報告(FBC福井放送2024年10月24日配信

◎[参考動画]【福井女子中学生殺人】「38年…長すぎた」と91歳父 前川彰司さん再審確定を報告(福井テレビ10月29日配信

事件当時、地元のシンナーなど吸っている不良仲間も多数取り調べられ、そこには前川さんも入っていた。しかし、前川さんはすぐに容疑者からはずされた。両親が一緒にいたという強固で完璧なアリバイがあったからだ。しかし、福井警察署は、容疑者逮捕にいたらず、世間の非難をあびるなか、勾留中のヤクザの組員のうその供述をきっかけに、前川さんを犯人にしたてていった。

事件当日、衣類や身体に血のついている前川さんを見たという関係者をつくりあげ、前川さんを包囲していった。主要関係者のほとんどは、シンナーや覚せい剤事件に関わっていたりするうえ、20歳前後の若く社会的にも弱い立場であり、警察のいうがままに、前川さんが犯人だとのうその供述を述べていった。いや、警察で言わされていった。その際、先の家族が一緒にいたとのアリバイは「家族のいうことだから信用できない」と否定されていった。お父さん、どんなに悔しかったろうか。

再審開始の決定を聞かされ、前川さんのお父さんは「馬鹿にされた」と号泣していた。調べてみると、お父さんは福井市の職員で、福井市長候補にまでなったような人のようだ。前川さんにお父さんのお話をお聞きした。前川さんが逮捕されたのちは、お父さんは職場でも四面楚歌状態だったという。そりゃ、そうだ。息子が殺人犯とされたのだ。それでもお父さんは職を辞さず働き、その後徐々にお父さんを信じ、お父さんとともに闘うという人たちが増えてきたという。

このお父さんに読んで欲しいと思い、拙著『日本の冤罪』を前川さんに送った。施設に入っているお父さんに届けますと前川さん。

お父さんがいうように、本当に警察、検察は前川さんらを馬鹿にしてきた。再審(裁判のやり直し)をやるためには、これまでなかった新しい証拠を裁判で提出しなければならない。関係者が犯行後に前川さんが乗った車には、血がべったりついていたと証言したが、ルミノール反応は陰性だった。これに対して、検察は関係者がヤバいと思ってめっちゃ丁寧に拭いたと証言していた。これに対して弁護団は「いやいや、どんなに丁寧に拭いても絶対反応は陽性になるよ」という鑑定を行い、それを含めた新たな証拠を提出していた。

しかし、驚くことに今回明らかになった証拠があった。それは「前川が犯人だ」と供述した関係者が事件のあった当日、「夜のヒットスタジオ」を見ていたが、そこでアン・ルイスの後ろで吉川晃司が腰を振る非常にいやらしいダンスを踊っていたと供述していた。

あんな場面を見た日だから、その日のことは良く覚えていると。しかし、今回、検察が新たに開示した証拠の中に、そのいやらしい場面が放送されたのは事件のあった19日ではなく、翌週26日だったこと、事件のあった19日アン・ルイスが歌ったのは「ああ無常」で、26日にいやらしいパフォーマンスで歌ったのが「六本木心中」だったことがわかった。

当時のこの番組を知らない人はピンとこないかもしれない。「夜のヒットスタジオ」は当時ヒット曲を出した歌手が毎週でている。アン・ルイスも吉川晃司も当時ヒット曲があったのだろう。だから毎週のように出ていたのだろう。私はこの二人が共演した非常にいやらしいパフォーマンスは覚えていないが、当時あの番組はバブル前夜ということもあり、セットなどにも非常に金をかけて凝った豪華な演出をしていた。

しかも警察、検察は、このいやらしい場面が放送されたのは事件当日の翌週であることを知っていた。それをずっと隠していた。関係者には当日の新聞の番組欄を見せ「ほら、ここにアン・ルイス、吉川晃司と書いてある。この日だろう?」と確認していた。でも、放送日の動画を取り寄せ視聴していた警察、検察は、アン・ルイスと吉川があんなにいやらしい、今では絶対放送できないであろう場面を放送していたのは、事件の翌週という事実を知っていたのだ。

「あの日ではないが、間違っているが黙っていよう。隠しておこう」と裁判でもその場面について証人尋問を回避した検察官は、そのことを今、どう思っているのだろう。恥ずかしくないのか。

まもなく始まる福井女子中学生殺人事件の再審裁判に注目していただきたい。


◎[参考動画]袴田ひで子さん「励まし合ってきた。とても喜んでいる」 殺人事件で有罪が確定した前川さんの再審開始決定】(テレビ静岡2024年10月23日配信)

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

11月5日執行された米国大統領選挙でドナルド・トランプさん=共和・元職=がカマラ・ハリスさん=民主・新人=を破り、返り咲きました。

いわゆる激戦州でも思ったよりトランプさんがハリスさんに差をつけたな、と思いました。差がついた要因は、「イスラエルのネタニヤフ被疑者によるパレスチナ大虐殺・レバノン侵略」でしょう。

◆米国人の間にも反発広がるネタニヤフ被疑者の蛮行

アラブ系の有権者や、アラブ系でなくとも若者の間には、ネタニヤフ被疑者が「10・7」のハマス政権による越境攻撃を口実に、ガザなどパレスチナでの大虐殺を加速し、さらにレバノン侵略も進めていることに強い反発が起きています。広島でも、原爆ドーム前でFree Palestineのスタンディングを呼び掛けているのはユダヤ系米国人の30代の若者(広島市立大学の大学院生)です。

米国はドイツと並んで国際社会におけるイスラエルの最大の後ろ盾です。しかし、そんな米国でも若者がイスラエルに反発しているというのは、上記の原爆ドーム前の動きから、広島にいても感じました。そして、米国では若者ほど民主党支持が多く、年配者ほど共和党支持が多い傾向はあります。

◆やけくそでトランプさんへ流れた? パレスチナ虐殺反対派

ところが、今回、若者が民主党から離反。やけくそでトランプさんに投票してしまった人も多いようです。アラブ系の中でも、最後まで迷った挙句にトランプさんに投票した。そういうことが、いわゆる激戦州で、予想外にトランプさんが勝った背景にあるでしょう。

もちろん、トランプさんもバリバリの新イスラエル。前回の任期中、駐イスラエル大使館をテルアビブからエルサレムに移すという暴挙を行っています。エルサレムはユダヤ教の聖地でもあるが、イスラム教の聖地でもあり、キリスト教の聖地でもあります。デリケートな問題があるから、日本も含む各国はテルアビブに大使館を置いているのです。それでも、トランプさんにアフリカ系も含む若者やアラブ系も結構投票してしまったわけです。

◆パレスチナ虐殺反対派の若者に横柄な態度が致命傷のハリスさん

わたしは、ハリスさんが、パレスチナ虐殺反対を叫んで抗議に来た若者たちに対して、横柄な態度を取ったニュース映像を見て、トランプさんの勝ちを確信しました。あんなことを言われたら、誰でもカチンと来ます。全米でパレスチナ虐殺反対派がトランプさんに雪崩を打ったのではないでしょうか。

確かに、一応、ハリスさんもネタニヤフに対して停戦合意は呼びかけてはいる。だけれども、武器はなんだかんだ言って送り続けているわけです。実効性を上げているとはいいがたい。その上で、無礼な発言。

筆者はトランプさんが良いと言っているのではありません。トランプさんは、前回の大統領選挙で敗けた後、支持者が連邦議会議事堂を襲撃する事件を止めなかった。クーデターを起こしかねない、そういう男です。

しかし、あまりにもハリスさんがパレスチナ問題を憂える若者たちの神経を逆なでしすぎた。彼らの数は少ないかもしれないが、接戦の激戦州でハリスさんに致命傷を与えるには十分な力を持っていたのです。

◆米国民主党政権と広島 原爆投下と広島への謝罪・反省なき和解

さて、今回の結果は、平和都市としての広島にはどういう影響を与えるのか?その前に、民主党政権と広島のかかわりを振り返っておきたい。 

広島に原爆を投下したのは米国民主党政権です。そもそも、伝統的に、民主党の方が、「人権派」ではあるが〈相手国を人権を尊重しない野蛮な連中とみなした〉場合には、むしろ共和党以上に武力でせん滅する。そういう傾向が強いのではないでしょうか? なお、共和党政権でもジョージ・ブッシュ・ジュニア(任期2001-2009)は、いわゆるネオコンであって、民主党の上記のような部分をパクっています。

民主党は現代でもLGBT推進でもありますが、それによって、中東一のLGBT推進国家でもあるイスラエルを持ち上げてしまうという弱点もあります。

そして、最近、米国民主党政権は広島・長崎に対する〈謝罪・反省なき和解〉を推進しています。すなわち、2016年にはオバマ大統領が来広しました。しかし、オバマは平和記念公園で〈死が空から舞い降りてきた〉という表現でまるで他人事のような挨拶をしました。そのオバマ政権ですが、ヒラリー・クリントン国務長官はネオコン的であり、アフガンやシリアへの空爆を推進したのです。

そして、2022年、G7広島サミット開催が決定すると、急激に広島では米国への忖度が強まりました。たぶん、トランプさんが大統領だったら、そこまで忖度にはならずに淡々と進めた可能性もあります。これは、エマニュエル駐日大使が、平和記念公園の原爆慰霊碑に献花するなどの一定の「どぶ板」も奏功したと思われます。

広島市は、バイデン大統領に忖度してか、はだしのゲンや第五福竜丸を平和教材から削除。そして、過剰警備や法的根拠のない立ち入り禁止区域設定など、戒厳令のような状態を広島に敷きました。そして、広島市の松井市長はエマニュエル駐日大使の要求に応じて、パールハーバーと平和記念公園の姉妹協定を結んでしまいました。

米国は何も〈反省も謝罪もしていない〉のに姉妹協定。これは、広島が核兵器使用を許してしまったと受け取られかねません。ひいては、ロシアや中国などが核で威嚇することを後押ししかねません。重大な誤りです。

また、広島市の松井市長は2022年の平和記念式典からはロシアを招待していません。これも表向きは式典の円滑な実行の妨げになる恐れがあるから、ですが、実際には米国への忖度で間違いないでしょう。自分でやらかした核兵器使用を正当化するために広島を取り込む。これが民主党政権の姑息なところです。大統領がトランプさんに代わったことで、いい意味で広島が米国政府と距離を置く。これは悪いことではないでしょう。

◆中東停戦や米朝緩和、「有言実行」にさせよう

中東での停戦を当選前からトランプさんは実現すると明言しています。戦火が西岸地区やレバノンにも広がる中、公約をきちんと実行するように広島からも声を上げていきたい。

また、米朝首脳会談を実現した実績を強調し、朝鮮半島和平にも積極的です。これをうまく日本も生かしていけば朝鮮戦争の終戦、ひいては東アジアの平和、非核兵器地帯条約などにつながります。

中華民国の民進党政権に対しては、トランプさんはバイデン大統領よりは冷たいと見られますが、逆に言えば、下手に「台湾独立」で中華民国の民進党政府が暴走するリスクはこれで減ります。そもそも、米国も日本も中華人民共和国が中国を代表する唯一の政府と認定しているわけです。そんな中で、自衛隊を送るだの、台湾有事に関連して日本が敵基地攻撃を行うだの、そもそも、あり得ない話です。しかし、バイデン政権下ではそういうことが煽られてきました。日本は引き続き、専守防衛を維持しつつ、外交努力を進めていくべきです。

もちろん、人権や環境の面でトランプさんはいろいろ問題があります。それについては、ここでは詳しくは触れません。ただ、民主党は民主党で、その人権とは、米国と旧白人帝国主義国家くらいの範囲の人権でしかない。例えばアフガニスタンやシリアの民衆は平気で殺すわけです。戦争は最大の人権侵害であり環境破壊です。

◆二大政党制は人類を平和にするのか?

そして、そもそも、「ハリスかトランプ」しかない事実上選択肢がない、二大政党とは本当に人類を平和にするのでしょうか?そのことを強く問いたい。日本の衆院選でも、二大政党以外が大きく躍進しました。人々の価値観が多様化する中で、いかに、民主的に物事を進めていくか。どういう仕組みにしていけばいいのか?そのことも皆様と一緒にこの広島から考え、また提案をしていきたいと思います。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

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10月の総選挙で自公政権が過半数割れとなったことは、今の流れにブレーキをかける点で意味があったと思います。ただし選挙では、裏金と消費税は焦点として浮上したものの、原発、対米自立、そして憲法など重要なテーマが問われたとはいえません。現在、マスメディアでは国民民主党・玉木雄一郎代表の動向に注目が集まっています。これは単なる政局の問題ではなく、憲法改正や原発政策の観点から見るべきだと考えています。

前号では鳩山由紀夫元首相や原口一博元総務相らによる対米自立と消費税廃止の主張を採り上げ、鈴木宣弘・東京大学大学院特任教授が食と農業の危機を解説しました。また足立昌勝・関東学院大学名誉教授が9月の自民党総裁選での改憲を争点化する策謀を批判。平和主義・国民主権・基本的人権の尊重という日本国憲法の原則を変える自民党改憲案は「改憲」ではなく「新憲法」の制定であると指摘しました。総選挙で低投票率にもかかわらず自民党が惨敗したことは、裏金問題の“熱さ”が喉元を過ぎれば情勢は、より悪い形で元に戻ることも示しています。

12月号は優生保護法と一連の訴訟に焦点を当てました。旧優生保護法の違憲性と“罪”は誰もが認めるところであり、原告の方々の被害が認められるのは当然です。しかしその一方で、同法とその下での強制不妊手術が主たる対象としていた人々が、裁判に参加していないという事実があります。そして、1948年に制定された旧優生保護法が1996年に母体保護法に改正されたように、優生保護法が善意の下でつくられた法律であることも見逃せません。その裏に日本社会の偏見があったのはもちろん、それが特定の人物らを中心に刷り込まれたものであったことを、本誌で解説しています。そして残念ながら、その総括は今もってなされたとはいえず、形を変えた偏見と“常識”が、現在の社会にもはびこっているようです。

本誌10月号では和田秀樹医師が、体制に従順でない者を排除する医学部入試面接の問題を提起しました。今月号では山口研一郎医師が、学生運動に参加する医学生を退学させる大学の策謀を振り返っています。これらによって醸成される医学部・医療界の体質も、コロナ騒動やワクチン問題、そして旧優生保護法と優生保護法裁判の問題の背景のひとつといえるのでしょう。そうした中で、東京都知事選に続き衆院選にも出馬して「デマ太郎」と対決した内海聡医師の視点は、人間を診て社会を診るものだといえます。私たちが受けている「医療」とは、本当に医療なのか。「健康」とは何か。あらためて見直す必要があります。「政治」も同じです。

今月号で清谷信一氏が指摘する、「5年で43兆円以上」の防衛増税が国内防衛産業にも寄与しないまったくの無駄だという事実。これまで岸田軍拡=米軍産複合体への献金という点に注目してきましたが、より鮮明に事態を把握する視点といえます。ほか、公明党代表を降りた石井啓一元国交大臣の森友事件における“大ウソ”を改めて解説、札幌の「安倍晋三ヤジ訴訟」、11月17日投開票の兵庫県知事選の動向など、今回も多彩なテーマに切り込みました。全国書店で発売中です。ぜひご一読をお願いいたします。

『紙の爆弾』編集長 中川志大

タブーなきラディカルスキャンダルマガジン 月刊『紙の爆弾』2024年12月号

『紙の爆弾』2024年 12月号
A5判 130頁 定価700円(税込み)
2024年11月07日発売

野田正彰
優生保護法をめぐるお祭り訴訟 犯人と被害者のいない殺人事件

清谷信一
税金を浪費して弱体化する防衛産業 防衛費「GDP比2%」無駄遣いの全実態

内海聡(医師)×長井秀和(西東京市議)
日本人と日本社会が罹った薬と政治の「依存症」

広岡裕児
ハマス攻撃「10・7」から一年 ネタニヤフは何を考えているのか 

足立昌勝
袴田巌さん再審無罪判決が切り拓く死刑廃止への道

浜田和幸
拉致問題を「解決させない」のは誰か 日本と北朝鮮の間の語られざる闇 

青木泰
公明党代表・石井啓一は元森友大ウソ国交大臣 

横田一
兵庫県版“石丸現象”で斎藤前知事再選も 兵庫県知事選で問われる“民意”とは何か 

浅野健一
札幌・安倍晋三ヤジ訴訟 最高裁は「憲法の番人」の役割を捨てた 

木村三浩
フィリピンの「キングメーカー」ロドリゲス前官房長官 「アジア版NATO」よりもアジア諸国の団結を 

上條影虎
なぜ世界は戦争を終わらせようとしないのか? アメリカが牽引する歪んだ正義の正体

小西隆裕
終焉するグローバリズムと新自由主義 日米一体戦争体制から日本が脱却するために

片岡亮
ジャンポケ斎藤事件の背景 「観るべきではない」メディアに堕したテレビ現場の惨状 

“嵐”来年3月復活説の背景 NHKも全面協力 ジャニーズ「幕引き工作」

佐藤雅彦
「来た、見た、逝った」架空体験記「SEXPO 2025」 

青柳雄介
シリーズ 日本の冤罪54 袴田巖冤罪事件 

山口研一郎
一九七四年「学園闘争」から半世紀 長崎大学医学部闘争の全資料発掘 

〈連載〉
あの人の家
NEWS レスQ
コイツらのゼニ儲け 西田健
「格差」を読む 中川淳一郎
シアワセのイイ気持ち道講座 東陽片岡
The NEWer WORLD ORDER Kダブシャイン
「ニッポン崩壊」の近現代史 西本頑司
まけへんで!! 今月の西宮冷蔵

◎鹿砦社 https://www.kaminobakudan.com/
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◆〔1〕実現性のない電力供給計画

第6次エネルギー基本計画(エネ基)は2021年に策定された。内容は2030年に再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、火力40%(天然ガス20%、石炭19%、水素・アンモニア1%程度)としている。

今から5年余り先の見通しだが、これが実現できる可能性は全くない。

原発が20~22%占めるためには、概ね27~30基程度が稼働していなければならない。その出力は2700万kw程度。しかし現在再稼働しているのは12基、約1100万kw。

新規制基準適合性審査を通過した原発全てが動いたとしてもプラス5基で17基。1700万kw余り、全電力の15%程度に過ぎない。あと5年で再稼働できる原発は他に存在しないから、現段階で、目標値はもはや成り立たない目標であることは明白だ。

第7次エネルギー基本計画(第7次エネ基)では、これがどのような数値になるのか未だ不明だが、原子力の利活用という方針に大転換すると見られるので、2030年ではなく2035年に原発が36~38%占めるという計画になるのだと思われる。

しかし結局これも実現することはない。仮に36基とした場合、新規制基準適合性審査を通過した17基に加えて19基ほど必要になるが、現在審査中のものは7基、合計で2300万kw程度だ。建設中の大間と島根3号が稼働しても26基、2500万kw程度だが、それでも圧倒的に足りない。

加えて再稼働原発は全て60年超の老朽炉になる(*)から、これが進んだとしても新増設をしない限りいつかは脱原発になる。経産省や原子力ムラにとって絶対に避けねばならない事態だ。

*例えば高浜1号は10月16日に50年の「長期管理計画」が規制委により認可されたが、GX法により最大限延長したとしても2050年までには廃炉になる。これは高浜2、3号、美浜3号、川内1号も同じだ。

◆〔2〕経産省は原発依存を「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった

政府は福島第一原発事故の教訓から、2014年の第4次エネ基から現在の第6次エネ基まで原発依存を「可能な限り低減」するとしてきた。

このような表現の下でも原子力は常に推進されてきた。特に核燃料サイクル政策は六ヶ所再処理工場の建設が大幅に遅れ、実現可能性さえ危ぶまれているのに一切見直しの気配すらない。

原発の利用を低減するのならば再処理は最初に中止するべきものだ。

しかし核燃料サイクル事業は中止されなかった。原子力政策は見せかけの「原発依存の低減」のもとで「推進」されてきたのである。

その中でも特徴的なのは一貫して原発を推進してきた経産省だ。責任官庁として「可能な限り低減」させる具体的な計画を策定するべきなのにしなかった。むしろ計画的かつ段階的に原発を復活させ推進してきた。

これに呼応する原子力規制委も、40年の運転期間制限を炉規法で定めていながら、「極めて例外的」(当時の田中俊一委員長)といいつつ20年延長を認める規定のもとで60年運転を既成事実化した。

さらに2023年、脱炭素電源法(GX電源法)で運転期間の規定を規制委所管の原子炉等規制法から経産省所管の電気事業法に移したことで、ついに微かな歯止めさえなくなり、全ての再稼働原発が事実上60年運転許可を得ることになる法律改訂が強行された。

この「GX」が、そもそも欺瞞と詐欺の温床である。GX(グリーン・トランスフォーメーション)という名目の「脱炭素」方針を利用して、発電時に二酸化炭素を出さないという点だけを取り上げて「ゼロエミッション電源」などと原発を規定している。

ゼロエミッションとは「廃棄物を出さない」という意味だが、放射性廃棄物を大量に発生させる原発に使っているということだけで、その意味のすり替えぶりが分かる。

カーボンニュートラルという言葉も飛び交うが、化石燃料を燃やすタイミングを殊更問題視するために使っている用語であり、原発が極めて大きな環境汚染源であることを見えなくさせる言葉遣いだ。

本気で達成するための議論ではなく、原子力推進体制を再構築することを目的に「あらゆる政策を動員する」ために用いられるのが「脱炭素」だ。

グリーントランスフォーメーション(GX)とは、化石燃料中心の産業や社会構造を、クリーンエネルギー中心の構造に転換していく取り組みのこと。地球温暖化による環境課題を解決し、持続可能な社会を作ることを目的とする、という名目だ。

しかし原子力開発の暗部を知らなかった時代に「無限に安定的に供給でき廃棄物も少ないバラ色のエネルギー」として原子力を想像していた時代ならばいざ知らず、度重なる原発事故と開発による放射能汚染の現実を知った今、「クリーンエネルギー」と言った時点で、完全に破綻した理念である。

原発が二酸化炭素を出さないことなどあり得ない。

核分裂時に出ないことを殊更強調しているだけだ。ライフサイクルにおける原発の排出原単位は極めて大きいと考えられ、キロワット当たり180~288グラムという研究もある。なお国は19~20グラムとしている。

LNG火力は470グラムで、原発との差は2倍程度というのが実相。とりわけ三分の二の原発が止まっている日本の場合、それらは単に二酸化炭素を出すだけの存在になっている。

◆〔3〕徹底した省エネルギーこそが最大の政策だ

「第7次エネ基」において、政府・経産省は、原発の再稼働と新増設を含むGX法の完全反映を目指す。

「エネ基」を議論している資源エネルギー庁の「基本政策分科会」では原発推進意見のオンパレード。その前提としての電力需要増の議論が席巻している。

これに対して実行可能で最も確実な政策は、徹底した省エネ・節電をおこなうことである。

第6次エネ基では年間の電力消費量について2050年では30~50%も増えるのに2030年までは10%以上減るという、呆れるほど矛盾した見通しを出している。

電気自動車、データストレージ(データセンター)、AI(人工知能の活用)など、新たな電力多消費産業の開発により電力消費量は増加するというのが政府の基本的認識のはずだが、2030年の再生可能エネルギー電源比率および原子力発電比率を極めて高く設定するトリックとして、電力消費量の分母を小さくする偽装を用いたためだ。

「第7次エネ基」では、もはや「偽装」ではなく現実問題として2035年および50年の「電力消費量見通し」を引き下げなければ、いわゆる「目標値」を達成できないことになる。

分母を減らすということは消費電力量の大幅な削減、すなわち省エネしか方法はない。

再エネの導入規模も大幅な上方修正が迫られることになる。この場合、大量の再エネを安定供給するため、2つの施策が必須となる。

1つは広域連系の拡大、もう一つは電力貯蔵システムの構築だ。また、将来は再エネの拡大しか道はないことは明らかだ。

再エネはどうしても出力変動を免れない。そのため貯蔵システムの構築以外にも電力のバックアップシステムが必須となる。

まだ火力発電の役割があるとしたら、この点である。

また、バックアップを従来の蓄電池に依存するのは不安定要因がつきまとう。価格の面や供給力にはまだ限界があり、さらにレアメタル資源の偏在、国際情勢に大きく左右されること、今後蓄電池市場が高騰することも考慮しなければならない。

当面は火力発電によるバックアップが不可欠になるのである。

その火力はガス火力発電。

エネルギー効率を85%以上に高め、温排水や二酸化炭素排出を極限まで減少させる技術が必須になる。

廃熱も回収し使い尽くすシステムだ。この技術は世界中で必須になる。

日本が海外に売り込める技術になるだろう。

◎初出:2024年10月18日たんぽぽ舎発行「金曜ビラ」494号

▼山崎久隆(やまざき・ひさたか)
たんぽぽ舎共同代表。脱原発東電株主運動、東電株主代表訴訟に参加。共著に『核時代の神話と虚像』(2015年、明石書店)ほか多数。

◎たんぽぽ舎 https://www.tanpoposya.com/
◎たんぽぽ舎メルマガ:「地震と原発情報」 メルマガ申込み(無料)

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

 

ハンセン病、薬害エイズ被害患者の救済から飯塚事件などの冤罪訴訟まで、常に弱者の立場に立ち、法廷で声なき声を代弁してきた徳田靖之(とくだ・やすゆき)弁護士 ──。「6・5 飯塚事件『不当決定』を許さない」と題された9月14日大阪講演の記録を全6回連載で報告する。(企画・構成=尾﨑美代子)

◆2つ目に明らかになったこと ── 目撃証拠は警察官の誘導で作成された

2つ目に明らかになったことです。女の子らの遺留品が発見された場所の近くで、久間さんの車に似た車を見たという目撃者の供述調書は、実は3月9日につくられた。そこには「自分が見た車は紺色のワンボックスカーでした。車はトヨタや日産ではありません。車の車体にはラインがありませんでした。車の後ろのタイヤがダブルでした」という非常に詳細な調書だった。

これについて再審請求で、私たちが証拠開示させ記録をみたら、3月9日の2日前の7日に警察官が久間さんの車を見に行っていたことが明らかになった。つまり2日後に目撃者から供述調書をとる警察官が、久間さんの車を見にいって、その特徴を全部頭に入れていた。

久間さんの車はマツダのウエストコーストという車です。久間さんは車を購入したあとに、その車の特徴である車体のラインを派手すぎるからと消していました。そういう特徴を警察官は全部把握したうえで、2日後に目撃者の供述調書をつくった。

これで私たちは謎が解けたのです。「トヨタや日産ではない」という供述がどうしてでてきたんだろうと思っていました。皆さん、車を見たとき「トヨタや日産じゃない」と言いますか? 言わないでしょう。警察官は、マツダの車とわかっているから「トヨタや日産ではない」と誘導したわけです。

また、皆さん、この[写真2]を見て「車体にラインがない」といいますか? 警察官は久間さんが車を買ったあとにラインを消したことを知っている。だから供述調書をとるときに、車を見た人から「ラインがない」という供述をとっている。

[写真2]

それだけではないんです。この目撃者は「後輪がダブルタイヤだった」と言っています。[資料4]に目撃者が車をみたという場所があります。カーブが続く山道にアと書いてあるのが目撃された車で、ここを通り過ぎた人が車の後輪がダブルタイヤだったといっているわけです。しかし、後ろのタイヤがダブルだということを確認するためには、目撃者は通り過ぎてから8メートルほどあとで振り返らなければ後輪はみえないことがわかった。

[資料4]

そのときの実況見分の写真が[写真4]です。警察が目撃者を現場に連れていって、そういう風にして後輪がダブルだとみたかという実験をしたときの写真です。目撃者は右腕が窓からでています。つまり運転席側の窓を開けていたということになるわけです。こんなカーブの多い山道を走行して、すれ違ってから8メートルくらい進んで振り返って、その車の後輪がダブルだったという供述です。しかし事件が起きたのは2月20日、寒い冬のさなかに山の中を運転する人が運転席の窓を開けて運転するだろうか? しかも、こんな山道で8メート走って、振り返るだろうか? すぐにカーブがくるわけです。それで、これはおかしいということになりました。

[写真4]実況見分の様子

この実況見分のあとに、久間さんが売り飛ばしたその車を警察が押収しています。そして8メートル先でみたということに納得いかないということで、警察は何を考えたか。後輪のダブルのタイヤは前のタイヤより直径が短いということがわかって、目撃者の供述を訂正させました。振り返って後輪のタイヤがダブルだといっていたのに、実は後ろのタイヤは前のタイヤより小さかったので後輪のタイヤがダブルだと思ったというふうに供述を変えさせたということが明らかになった。

つまり、第2の柱、遺留品の発見現場で久間さんの車とよく似た車を見たという証言は、警察が久間さんの車の特徴にあわせて、目撃者の話を誘導して作り上げたものだったということです。それでも、第一次再審請求で再審は認められなかった。

それはもう、私にいわせれば、死刑にしてしまっているから、うかつなことで再審したら、日本の裁判所は無実の人を殺してしまった、殺人の罪を犯してしまったということになる。日本の死刑制度の根幹を揺るがしてしまう。この厚いハードルのプレッシャーに裁判官が負けて、真実を見るということを怠ったとしか考えられません。(つづく)

◎徳田靖之弁護士講演会 6月5日飯塚事件「不当決定」を許さない(2024年9月14日 大阪浪速区大国 社会福祉法人ピースクラブにて)

◎《講演》徳田靖之弁護士・声なき声を聞く ── 飯塚事件再審[全6回連載](構成=尾﨑美代子)
〈1〉弁護士として、自ら犯してしまった過ちをいかに一人の人間としてどう償うのか
〈2〉失われていた物証と証拠の改竄
〈3〉無実の人を殺してしまった日本の裁判所

▼徳田靖之(とくだ・やすゆき)
弁護士。1944年4月大分県別府市生まれ。東京大学法学部卒。1969年弁護士登録。大分県弁護士会所属。「らい予防法」違憲国家賠償請求訴訟西日本弁護団共同代表、ハンセン病市民学会共同代表、薬害エイズ九州訴訟共同代表。飯塚事件弁護団共同代表

▼尾﨑美代子(おざき みよこ)
新潟県出身。大学時代に日雇い労働者の町・山谷に支援で関わる。80年代末より大阪に移り住み、釜ケ崎に関わる。フリースペースを兼ねた居酒屋「集い処はな」を経営。3・11後仲間と福島県飯舘村の支援や被ばく労働問題を考える講演会などを「西成青い空カンパ」として主催。自身は福島に通い、福島の実態を訴え続けている。
◎著者ツイッター(はなままさん)https://twitter.com/hanamama58

尾﨑美代子著『日本の冤罪』

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4846315304/

◆1.4. 花崗岩層と泥岩層、礫層

経産省資源エネルギー庁とNUMOが開催した説明会では、説明員がやたら「岩盤、岩盤」といい、最終処分法にしたがい、ガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を人工バリアで包み、50年かけて地下300m以深の「岩盤」に埋設する、といいます。NUMOの説明員がいう「岩盤」とは、何のことでしょうか(ちなみに、最終処分法に「岩盤」という言葉は記載されていません)。

地表には、生物の死骸や糞尿等が積み重なってできた土壌があります。土壌の下に礫層があり、地下水が流れています。礫層の下に泥岩層があり、化石水が滞水しています。そして、泥岩層の下に花崗岩層があり、岩盤水が滞水している場合があります。

NUMOが「岩盤」と呼んでいるものは、花崗岩層です。[図5]は、経産省資源エネルギー庁やNUMOが考える、地層のイメージです。NUMOは、岩盤=花崗岩層内に広さ6~10平方㎞の地下施設をつくり、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、埋設するつもりでいます。

[図5]

NUMOは、岩盤=花崗岩層を「天然バリア」と呼んでいます。天然バリアは花崗岩なので、1万年後に人工バリアが壊れても、埋設したガラス固化体=高レベル放射性廃棄物を10万年保管できるというのがNUMOの考えです。しかし、地下300~400mが必ず花崗岩層であるとの保障がありません。説明は後述しますが、日本の場合、花崗岩層でない場合が多いとさえいえます。

[図6]は、経産省資源エネルギー庁とNUMOが考える、地下施設のイメージです。地下施設の広さは6~10平方㎞です。[図6]では、まっすぐな立坑が地上施設と地下施設をつないでいますが、NUMOは、らせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐつもりでいます。坑道の長さは200~300㎞になるとのことです。

[図6]

フランスは、ビュール県に地層処分施設を建設しました。フランスの人工バリア(当然、内部にガラス固化体を含んでいます)の重量は10トン未満です。10トン未満の重量物は、大型のクレーンで上げ下げできます。したがって、ビュール県の地層処分施設はまっすぐな立坑で地上施設と地下施設をつないでいます。しかし、日本の人工バリアの重量は17.5トンです。現状、10トン以上の重量物を上げ下げできるクレーンはありません。NUMOが全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐことにしたのは、そのような理由によると考えます。

日本の地層処分施設では、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、その人工バリアを搭載した無人搬送車がらせん状の坑道をゆっくり走り、地上施設から地下施設に下降します。地下施設内では、ロボットのような機械が人工バリアを埋設します。

NUMOは、このような方法で、50年かけてガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を地層処分するつもりでいますが、その50年間に、大きな事故が生じた場合どう対処するか、まともな説明しません。たとえば、地下水が地下施設に流入した場合、クラッキング工事で塞ぐといい、岐阜県瑞浪市の地下研究所での漏水で効果を実証した、などといいますが、瑞浪市の地下研究所で漏水した水は地下水ではありません。化石水あるいは岩盤水です。化石水や岩盤水は泥炭層や花崗岩層に帯水している水です。しかし、地下水は礫層の中を流れる水です。つまり、地下水系は地下を流れる「川」です。地下水系の高低差は1000~2000m以上あると考えられ、水流のパワーはかなり強く、クラッキング工事等で浸水を阻止することはできません。

礫層内の地下水系が坑道の壁を突き破り、水が流れ込めば、短時間で地下施設と坑道が満水状態になり、地上施設に水が溢れ出ます。そして、人工バリアで包んだオーバーパックとTRU廃棄物が水没します。ビュール県の地層処分施設でしたら、水没する前に地上に引き上げることができるかもしれませんが、日本の場合、全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつないでいるので、引き上げることができません。そして、「大惨事」が勃発しますが、大惨事の説明をする前に、TRU廃棄物と中深度処分を説明させてください。(つづく)

◎平宮康広 僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由(全7回連載)
〈1〉日本原燃が再処理工場を新設する可能性
〈2〉ガラス固化体の発熱量は無視できても、地温は無視できない
〈3〉NUMOがいう地下300m以深の「岩盤」は、本当に「天然のバリア」なのか

▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)

《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

◎鹿砦社 https://www.rokusaisha.com/kikan.php?bookid=000748

龍一郎揮毫

私たちは唯一の脱原発雑誌『季節』を応援しています!

全103試合(3試合中止)の長丁場。1試合の時間は1分から2分制の2回戦と少なく、試合と試合の間も短いので進行は速かった。

次代を担うジュニア選手は最軽量級が19kg以下、王座は23kg以下級より上位へ、一般男子では82kg級、無差別級まである模様。この日は78kg級まででした。あくまでこのDEAD HEATの制定によるもので、他団体ではまた違った制定があるでしょう。

この日のDEAD HEAT王座挑戦者決定戦は7試合、王座決定戦は8試合、王座防衛戦が2試合ありました。

新日本キックボクシング協会興行前座枠に何度か出場経験ある武田竜之介が、やや劣勢から巻き返せず接戦の敗戦。

一般男子では40歳超えと50歳超えの試合もあり、今年1月28日に全日本キックボクシング協会アマチュア大会に出場した、かつての日本ライト級チャンピオン、飛鳥信也さんがこの日も出場。1分制2ラウンドで、対戦相手の染谷勝がアグレッシブにスピードと手数圧倒、飛鳥信也はコーナーに追い込まれ、第1ラウンドにスタンディングダウン。第2ラウンドもスタンディングダウンを奪われ連打されたところでレフェリーストップとなった。

◎DEAD HEAT AMATEUR COMPETITION 20 /
10月27日(日)大森ゴールドジム10:00~17:10
後援:全日本キックボクシング協会

 

55kg級王座奪取した深谷千穂乃と実行委員会代表の遠藤裕之氏

チャンピオン&挑戦者決定1dayトーナメント 主要17試合(+1試合)

◆ジュニア男子27kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

鈴木翔太(CYCLONE)vs 島川琉空(KAGAYAKI)
勝者:鈴木翔太 / 判定3-0

◆ジュニア男子29kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

石川竜之介(健成会)vs 姉帯礼恩(CYCLONE)
勝者:姉帯礼恩 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

小貝春喜(拳伸)vs 晴空(Master’s pit)
勝者:晴空 / 判定0-3

◆ジュニア男子40kg級次期挑戦者決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

中里晃聖(AKIRA budo school)vs 島川湊翔(KAGAYAKI)
勝者:中里晃聖 / 判定3-0

◆ジュニア女子29kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

鈴木彩心(KAGAYAKI)vs YUNON(KING)
勝者:YUNON / 判定0-3

◆ジュニア女子31kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

SARA(Team SRK)vs YU-NA(KING)
勝者:YU-NA / 判定1-2

◆ジュニア男子52kg級次期挑戦者決定戦2回戦(2分制)

塚原陸翔(PAL)vs 渡邉麟生(JTクラブ)
勝者:塚原陸翔 / 判定2-1

◆ジュニア男子46kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

姉帯心(CYCLONE)vs 京太郎(TEAM KAMIKAZE)
勝者:姉帯心 / 判定3-0

◆ジュニア女子34kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野本かれん(WIVERN)vs 原ななみ(Team SRK)
勝者:野本かれん / 判定3-0

◆ジュニア女子43kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

野中あいら(HIDE)vs 渡邉名那佳(拳伸)
勝者:渡邉名那佳 / 判定0-3

◆ジュニア男子37kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

大井鼓哲太(チームドラゴン)vs 日野原晴海(HIDE)
勝者:日野原晴海 / 判定0-2

◆ジュニア男子49kg級チャンピオン決定戦2回戦(2分制)

阿部一心(KDK)vs 英義(稲城)
勝者:英義 / 判定0-3

◆ジュニア男子31kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.武田竜之介(伊原越谷)vs 挑戦者.岡月音(SUCCEED)
勝者:岡月音 / 判定0-3

武田竜之介(左/伊原越谷)、今回は勝てずも落ち込む様子無く先を見据えていた

◆ジュニア男子52kg級タイトルマッチ2回戦(2分制)

チャンピオン.八十島陸翔(昌平校柏道場)vs 挑戦者.横山琉希(SUCCEED)
勝者:八十島陸翔 / 判定3-0

八十島陸翔、初回は連打でノックダウンを奪った

◆一般女子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(90秒制)

深谷千穂乃(北眞館)vs MAHO(北眞館)
勝者:深谷千穂乃 / 判定3-0

一般女子、深谷千穂乃は果敢に攻めて判定勝利

◆一般男子55kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

篠原翔夢(Team SRK)vs 鬼久保海斗流(健成会)
勝者:鬼久保海斗流 / 判定0-3

◆一般男子62kg級チャンピオン決定トーナメント決勝戦2回戦(2分制)

遅刻100%(team YU-TO)vs 郁哉TORNADO(TORNADO)
勝者:郁哉TORNADO / 判定0-3

一般男子、郁哉トルネードの飛びヒザ蹴り、楽しんでいるかのような表情

郁哉トルネードが62kg級王座奪取

◆第66試合 一般男子(OVER50)62kg以下級Dクラス2回戦(1分制)

飛鳥信也(目黒)vs 染谷勝(GRIT)
勝者:染谷勝 / TKO 2ラウンド / レフェリーストップ

《取材戦記》

アマチュア大会も取り上げること増えたこの頃、今回はDEAD HEATを取り上げてみました。

アマチュアキックボクシング(ムエタイ)は多くの主催者、団体が存在する中、DEAD HEAT主催者の遠藤裕之氏は茨城県水戸市の平戸ジムでキックボクシングを始めた人。1993年6月19日、当時の日本キックボクシング連盟フェザー級チャンピオン、遠藤周作(伊原)との遠藤対決では逆転KO勝利。後の10月9日、再戦での王座挑戦は敗れるも1勝1敗の星を残しました。平戸ジムに於いては小野瀬邦英の先輩となる遠藤裕之氏である。

[左]現役時代の遠藤裕之氏、精悍な顔つきである/[右]現在の遠藤裕之代表。渋い風貌、存在感である

 

出番前の飛鳥信也さん。ベテランの落ち着きぶりは語り口調が変わらなかった

2018年には地元の水戸市でアマチュアキックボクシングDEAD HEAT興し、20回目となる今回初めて東京進出となりました。

遠藤裕之氏は今回の大会終了後、「初めての東京大会で、地方のアマチュア大会が東京に来てどれだけ通用するかなと思いましたが、遠い所は富山から来てくれたり、近県の方から来てくれたりと皆さん頑張ってくれましたので、良い大会になったと思います。」と来場関係者との対面で忙しかった中、語ってくれました。

一般男子50歳超えに出場した飛鳥信也氏は試合後、「相手(染谷勝)は強かったですよ。開始からアグレッシブに勢いよく出て来られたら、効いてはいなかったけど打たれると印象悪いですね。ああいう相手とは戦略的には5ラウンドがあればいいですね。躱していなして疲れるの待って崩していく。けどまあ私も筋力落ちてるし、スタミナもたないからダメですけど、私とかつて戦った越川豊タイプならガンガン打ち合いに出て、今日の相手とは噛み合うでしょうね。今回は62kg以下級というのも無理があって、もう少し落としていきたいですね。元々現役時代にライト級でも軽い方だったので。」と語る。

かつて東京ドームでベニー・ユキーデと対戦した飛鳥信也さんが、今ではアマチュア、一般枠に戻ってまで、敢えて出場料払って試合しているのも生涯青春を貫きたい拘りがあるからだろう。打たれると周囲からすれば心配になりますが、戦って来た試合勘はしっかりしていて、怯まずカウンターパンチ入れる上手さも垣間見れるのも実力者の証でしょう。今年は10戦こなしており、年内あと2試合予定しているという。プロの厳しさは無い一般枠での戦いは楽しそうで“生涯青春”をまだ暫くは続けられそうである。

飛鳥信也さんは染谷勝の勢いに勝てずとも、返しのパンチ蹴りが上手かった

アマチュア大会の取材で、ジュニアなど若年層から対象がテーマズレした感のレポートとなり、主催者の遠藤裕之氏と試合を続ける飛鳥信也氏が主役となりました。「継続力は力なり」を実践するお二人。また東京大会が開催される場合は他興行と被らなければ追っていきたいと思います。

次回のDEAD HEAT 21は来年2月9日(日)に水戸市民会館で開催が予定されています。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

◆自民も立憲も原発容認・推進に向かって雪崩を打った

立憲民主党の代表選(9月23日)、自民党の総裁選(9月27日)から衆院選(10月27日)にかけての「原発に関する主張」からは、両党とも、雪崩を打って原発容認、推進に向かって変節したと言えます。

立憲民主党は綱領で「原発ゼロ」を掲げていますが、4人の代表候補者は、積極的な脱原発の主張を避けました。何れもが「避難計画の不備」などを指摘したものの、当面の原発稼働を容認しています。国民民主党に配慮したためとの報道もあります。

自民党の総裁候補者の内、総裁・首相に選出された石破氏は、8月28日の総裁選出馬時には、「原発をゼロに近付けていく」と表明しながら、首相になってからは、ほぼ岸田政権のエネルギー政策を踏襲して、「原発依存社会」に向かおうとしています。経団連や経済同友会の主張に迎合・屈服しようとしています。人の命や生活の犠牲の上に、電力会社、原発産業、ゼネコンなどの大企業に税金と電力料金を垂れ流すための政策です。河野、小泉両氏は、つい最近まで、原発に関しては慎重派でしたが、総裁選では、これを放棄しました。自らの立場の擁護のために平気で主張を翻すことは、人間として失格です。

◆国民民主党は原発推進の最先鋒

日本維新の会、国民民主党は、元来原発推進です。維新は「次世代原発、とくに核融合発電を推進する」としています。労使協調路線の全国電力関連産業労働組合総連合(電力総連)を支持母体とする国民民主党は「原発の建て替え・新増設により、輸入に頼らない安定的なエネルギーを確保する」とする原発推進の最先鋒です。

このように、立民、自民の変貌、維新、国民民主の原発推進は目に余りますが、彼らがいかに変貌し、何を願望しようとも、選挙の都合、政治的思惑、経済的利益で原発の老朽化を防ぐ技術、安全性を高める技術、使用済み核燃料の処理・処分技術が急に向上することはありません。彼らが原発推進に暴走すればするほど、原発過酷事故の確率は拡大します。許してはなりません。

◆失敗を取り繕うための「原発依存社会」への暴走

そもそも、政府や電力会社の「原発依存社会」への暴走は、脱原発の流れに乗り遅れた失敗を取り繕うためです(その裏には、潜在的な核武装推進への願望も見え隠れします)。

もし、福島原発事故以降の政権や電力会社が事故の教訓を生かして、原発ときっぱり決別し、自然エネルギーに切り替える政策をとっていたなら、今頃、化石燃料発電や、原発に依存することなく、電気を供給し、世界の自然エネルギーへの流れをリードできていたでしょう。彼らは、資本主義経済の視点からも失敗したのです。自らの失敗を反省せず、更なる原発推進へと暴走する政府と電力会社を厳しく糾弾し、自然エネルギーへの政策転換を求めましょう!

ところで、10月27日投開票の衆院選では、自公・石破政権が大幅後退し、立民、国民民主、れいわ新選組などが躍進しました。

衆院選での自公両党の大幅減は悦ばしいことながら、この選挙での大きな争点が「裏金問題」であり、その裏で進められる物価高騰、インフレ、弱者切り捨て、格差拡大、軍拡、原発依存などの政策がほとんど議論の対象にならなかったことに政治の貧困を覚えます。

原発問題でも、大勝した立民が、政権獲得のために、議席を伸ばした国民民主に忖度して、原発政策を「原発容認」に大きくシフトさせる可能性があります。また、「原発(とくに核融合)推進」を掲げる維新は議席を減らしたものの、それでも政権の行方の狭間にあり、自公、立民の何れもが、これに擦り寄ると思われます。

原発推進政党を抱きこむことによって、当面の政権を維持すると予想される石破自民党が、「原発推進」にさらに暴走する可能性は大です。とくに、政権の行方にキャスティングボートを握る国民民主は、自公政権との「部分連合」を通して、原発推進を先導するものと考えられます。

なお、「原発即時廃止、地方分散型再エネ普及」を掲げるれいわは躍進したものの、「原発はすみやかににゼロ」「30年度に石炭火力ゼロ」とした共産党は減少しています。社会の右傾化が危ぶまれます。

今回の衆院選の争点は「金権問題」でしたが、それを「裏金」だけに矮小化させてはなりません。

もっと大きな「金権」は、人々から吸い上げた税金や電力料金を、軍需産業や原発産業(旧財閥、電力会社、ゼネコン、自動車産業など)に垂れ流し、軍備拡大、原発推進に暴走する政府の「権力」です。現政府は、人々の命と生活を守るために使用されるべき税金を大企業に垂れ流す「トンネル機関」といっても過言ではありません。

このような理不尽がまかり通り、閉塞感漂う状態の打開のために、いま最も求められているのは「目に見え、耳に聞こえる市民の行動」の高揚です。

12.8「とめよう!原発依存社会への暴走関電包囲大集会」の大成功を勝ち取り、原発のない、人の命と尊厳が大切にされる社会に向かって前進しましょう!

2024年10月31日
木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)

12.8 とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会

とめよう!原発依存社会への暴走 関電包囲大集会
原発やめて自然エネルギーへ
使用済み核燃料ふやすな

日 時:2024年12月8日(日)13:00~ ※集会後、大阪駅前までデモ

場 所:関西電力本店前
〒530-8270 大阪市北区中之島3-6-16
地下鉄「肥後橋駅」徒歩約5分 京阪「渡辺橋駅」徒歩約4分
地図 https://x.gd/DsbEz
内 容
・13:00 集会開始
 原発の風下・米原市の平尾道雄市長がアピール
 集会後大阪駅前までデモ
・16:00すぎ 解散

主 催:老朽原発うごかすな!実行委員会
連絡先:090-1965-7102
チラシ https://x.gd/hHdCY 

▼木原壯林(きはら・そうりん)
老朽原発うごかすな! 実行委員会。1967年京都大学理学部化学科卒。理学博士。専門は分析化学、電気化学、溶液化学。熊本大学、京都工芸繊維大学名誉教授等を歴任。京都悠悠化学研究所主宰。

〈原発なき社会〉を求めて集う 不屈の〈脱原発〉季刊誌『季節』2024年夏・秋合併号《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ(本文144ページ+巻頭カラー4ページ) 定価880円(税込み)
お陰様で10周年を迎えました!
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa

《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか

《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
 原子力からこの国が撤退できない理由

《報告》樋口英明(元福井地裁裁判長)
 なぜ日本は原発をやめなければならないのか

《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
 事実を知り、それを人々に伝える

《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
 核武装に執着する者たち

《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
 課題は放置されたまま

《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
 原発被害の本質を知る

《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
 珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった

《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
 東京圏の反原発 ── これまでとこれから

《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え

※          ※          ※

《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
 創刊から10周年を迎えるまでの想い出

《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
 お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記

《季節創刊10周年応援メッセージ》

 菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
 守りに入らず攻めの雑誌を

 中村敦夫(作家・俳優)
 混乱とチャンス  

 中嶌哲演(明通寺住職)
「立地地元」と「消費地元」の連帯で〈犠牲のシステム〉を終わらせる

 水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう

 山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために

 今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
 裁判も出版も「継続は力なり」

 あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
 隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい

※          ※          ※

《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
《検証》あらかぶさん裁判 原発被ばく労働の本質的問題 

《報告》北村敏泰(ジャーナリスト)
 棄民の呻きを聞け 福島第一原発事故被害地から

《講演》和田央子(放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会)
「復興利権」のメガ拠点 「福島イノベーション・コースト構想」の内実〈前編〉

《報告》平宮康広(元技術者)
 水冷コンビナートの提案〈1〉

《報告》原田弘三(翻訳者)
 COP28・原発をめぐる二つの動き
「原発三倍化宣言」と「気候変動対策のための原発推進」合意

《報告》三上 治(「経産省前テントひろば」スタッフ)
 総裁選より、政権交代だ

《報告》板坂 剛(作家/舞踊家)
   タイガー・ジェット・シンに勲章! 問われる悪役の存在意義

《報告》山田悦子(甲山事件冤罪被害者)
   山田悦子の語る世界〈24〉
   甲山事件50年を迎えるにあたり
   誰にでも起こりうる予期せぬ災禍にどう立ち向かうか(下)

《報告》大今 歩(高校講師・農業)
   洋上風力発電を問う 秋本議員収賄事件を受けて

《報告》再稼働阻止全国ネットワーク
 時代遅れの「原発依存社会」から決別を!
 政府と電力各社が画策する再稼働推進の強行をくい止める

《老朽原発》木原壯林(老朽原発うごかすな!実行委員会)
 6・9大阪「とめよう!原発依存社会への暴走大集会」に1400人超が結集

《女川原発》舘脇章宏(みやぎ脱原発・風の会)
 女川原発の再稼働はあり得ない 福島事故を忘れたのか

《福島》黒田節子(請戸川河口テントひろば共同代表)
 浪江町「請戸川河口テントひろば・学ぶ会」で
 北茨城市大津漁協裁判で闘う永山さんと鈴木さんの話を聞く

《柏崎刈羽原発》小木曽茂子(さようなら柏崎刈羽原発プロジェクト)
 7号機再稼働で惨劇が起きる前に、すべての原発を止めよう!

《首都圏》けしば誠一(反原発自治体議員・市民連盟事務局長)
 福島原発事故の責任もとれない東京電力に
 柏崎刈羽原発を動かす資格はない!

《浜岡原発》沖基幸(浜岡原発を考える静岡ネットワーク)
 静岡県知事と御前崎市長が交代して
「一番危険な原発」はどうなるか

《島根原発》芦原康江(さよなら島根原発ネットワーク)
 政治に忖度し、島根原発2号機運転差止請求を却下
 それでも私たちは諦めない!

《玄海原発》石丸初美(玄海原発プルサーマルと全基をみんなで止める裁判の会)
 玄海町「高レベル放射性廃棄物・最終処分場に関する文献調査」受入!

《川内原発》向原祥隆(反原発・かごしまネット代表)
 私たちは歩み続ける

《規制委》木村雅英(再稼働阻止全国ネットワーク)
 原子力規制委員会を責め続けて11年
 原子力規制委員会は、再稼動推進委員会・被曝強要委員会

《反原発川柳》乱鬼龍

◎amazon https://www.amazon.co.jp/dp/B0DB1GZ5CM/

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