◆1.4. 花崗岩層と泥岩層、礫層
経産省資源エネルギー庁とNUMOが開催した説明会では、説明員がやたら「岩盤、岩盤」といい、最終処分法にしたがい、ガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を人工バリアで包み、50年かけて地下300m以深の「岩盤」に埋設する、といいます。NUMOの説明員がいう「岩盤」とは、何のことでしょうか(ちなみに、最終処分法に「岩盤」という言葉は記載されていません)。
地表には、生物の死骸や糞尿等が積み重なってできた土壌があります。土壌の下に礫層があり、地下水が流れています。礫層の下に泥岩層があり、化石水が滞水しています。そして、泥岩層の下に花崗岩層があり、岩盤水が滞水している場合があります。
NUMOが「岩盤」と呼んでいるものは、花崗岩層です。[図5]は、経産省資源エネルギー庁やNUMOが考える、地層のイメージです。NUMOは、岩盤=花崗岩層内に広さ6~10平方㎞の地下施設をつくり、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、埋設するつもりでいます。
NUMOは、岩盤=花崗岩層を「天然バリア」と呼んでいます。天然バリアは花崗岩なので、1万年後に人工バリアが壊れても、埋設したガラス固化体=高レベル放射性廃棄物を10万年保管できるというのがNUMOの考えです。しかし、地下300~400mが必ず花崗岩層であるとの保障がありません。説明は後述しますが、日本の場合、花崗岩層でない場合が多いとさえいえます。
[図6]は、経産省資源エネルギー庁とNUMOが考える、地下施設のイメージです。地下施設の広さは6~10平方㎞です。[図6]では、まっすぐな立坑が地上施設と地下施設をつないでいますが、NUMOは、らせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐつもりでいます。坑道の長さは200~300㎞になるとのことです。
フランスは、ビュール県に地層処分施設を建設しました。フランスの人工バリア(当然、内部にガラス固化体を含んでいます)の重量は10トン未満です。10トン未満の重量物は、大型のクレーンで上げ下げできます。したがって、ビュール県の地層処分施設はまっすぐな立坑で地上施設と地下施設をつないでいます。しかし、日本の人工バリアの重量は17.5トンです。現状、10トン以上の重量物を上げ下げできるクレーンはありません。NUMOが全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつなぐことにしたのは、そのような理由によると考えます。
日本の地層処分施設では、ガラス固化体を格納したオーバーパックを人工バリアで包み、その人工バリアを搭載した無人搬送車がらせん状の坑道をゆっくり走り、地上施設から地下施設に下降します。地下施設内では、ロボットのような機械が人工バリアを埋設します。
NUMOは、このような方法で、50年かけてガラス固化体を格納したオーバーパック4万体を地層処分するつもりでいますが、その50年間に、大きな事故が生じた場合どう対処するか、まともな説明しません。たとえば、地下水が地下施設に流入した場合、クラッキング工事で塞ぐといい、岐阜県瑞浪市の地下研究所での漏水で効果を実証した、などといいますが、瑞浪市の地下研究所で漏水した水は地下水ではありません。化石水あるいは岩盤水です。化石水や岩盤水は泥炭層や花崗岩層に帯水している水です。しかし、地下水は礫層の中を流れる水です。つまり、地下水系は地下を流れる「川」です。地下水系の高低差は1000~2000m以上あると考えられ、水流のパワーはかなり強く、クラッキング工事等で浸水を阻止することはできません。
礫層内の地下水系が坑道の壁を突き破り、水が流れ込めば、短時間で地下施設と坑道が満水状態になり、地上施設に水が溢れ出ます。そして、人工バリアで包んだオーバーパックとTRU廃棄物が水没します。ビュール県の地層処分施設でしたら、水没する前に地上に引き上げることができるかもしれませんが、日本の場合、全長200~300㎞のらせん状の坑道で地上施設と地下施設をつないでいるので、引き上げることができません。そして、「大惨事」が勃発しますが、大惨事の説明をする前に、TRU廃棄物と中深度処分を説明させてください。(つづく)
◎平宮康広 僕が放射性廃棄物の地層処分に反対する理由(全7回連載)
〈1〉日本原燃が再処理工場を新設する可能性
〈2〉ガラス固化体の発熱量は無視できても、地温は無視できない
〈3〉NUMOがいう地下300m以深の「岩盤」は、本当に「天然のバリア」なのか
▼平宮康広(ひらみや・やすひろ)
1955年生まれ。元技術者。オールドウェーブの一員として原発反対運動に参加している。富山県在住。
『季節』2024年夏・秋合併号(NO NUKES voice 改題)
A5判 148ページ 定価880円(税込み)
《グラビア》
「幻の珠洲原発」建設予定地 岩盤隆起4メートルの驚愕(写真=北野 進)
「さよなら!志賀原発」金沢集会(写真=Kouji Nakazawa)
《創刊10周年記念特集》どうすれば日本は原発を止められるのか
《報告》小出裕章(元京都大学原子炉実験所助教)
原子力からこの国が撤退できない理由
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なぜ日本は原発をやめなければならないのか
《報告》井戸謙一(元裁判官/弁護士)
事実を知り、それを人々に伝える
《報告》山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)
核武装に執着する者たち
《報告》後藤政志(元東芝・原子力プラント設計技術者)
課題は放置されたまま
《報告》森松明希子(原発賠償関西訴訟原告団代表)
原発被害の本質を知る
《インタビュー》北野 進(「志賀原発を廃炉に!訴訟」原告団団長)
珠洲原発・建設阻止の闘いは、民主主義を勝ち取っていく闘いだった
《対談》鎌田 慧(ルポライター)×柳田 真(たんぽぽ舎共同代表)
東京圏の反原発 ── これまでとこれから
《報告》今中哲二(京都大学複合原子力科学研究所研究員)
「核融合発電」蜃気楼に足が生え
※ ※ ※
《回想》松岡利康(鹿砦社代表)
創刊から10周年を迎えるまでの想い出
《墓碑銘》松岡利康(鹿砦社代表)
お世話になりながら途上で亡くなった方への追悼記
《季節創刊10周年応援メッセージ》
菅 直人(衆議院議員・元内閣総理大臣)
守りに入らず攻めの雑誌を
中村敦夫(作家・俳優)
混乱とチャンス
中嶌哲演(明通寺住職)
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水戸喜世子(「子ども脱被ばく裁判の会」共同代表)
『季節』丸の漕ぎ手をふやして、一刻も早く脱原発社会を実現しよう
山崎隆敏(元越前市議)
「核のゴミ」をこれ以上増やさないために
今野寿美雄(「子ども脱被ばく裁判」原告代表)
裁判も出版も「継続は力なり」
あらかぶ(「福島原発被ばく労災損害賠償裁判」原告)
隠された「被ばく労働」問題を追及し、報じてほしい
※ ※ ※
《報告》なすび(被ばく労働を考えるネットワーク)
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