《書評》喜田村洋一『報道しないメディア』著者の思想の整合性に疑問 黒薮哲哉

『報道しないメディア』(喜田村洋一著、岩波書店)は、英国BBCが点火したジャニー喜多川による性加害問題の背景を探った論考である。著者の喜田村氏は、弁護士で自由人権協会の代表理事の座にある。メディア問題への洞察が深く、出版関係者や大学の研究者からありがたがられる存在だ。

その喜田村弁護士が著した本書は、ジャニーズ問題がほとんど報じられなかった背景に、報道すれば返り血を浴びる構図があったと結論づけている。喜田村氏は、ジャニーズ問題を報じてきたマスコミが『週刊文春』と『週刊現代』の2媒体だけであった事実を指摘した上で、次のように述べている。

ジャニー喜多川氏の性加害だけでなく、マスメディアにジャニーズ事務所の気に入らない記事が掲載されたりすれば、ジャニーズ事務所は、当該メディアを出入り差し止めにしたり、そのメディアの発行会社の雑誌全部にジャニーズ事務所の所属タレントを出演させなかったり、さらにはそのメディアの上層部に直接不満を言いつけるということをやっていた。

報道に踏み切ることで、不利益を被る構図が存在したという説である。改めて言うまでもなく、そのような構図を構築したのは、報道対象であるジャニーズ事務所の側である。

◆「押し紙」問題の性質とも重なるジャニー喜多川の事件の性質

ワイセツ行為がらみの事件の裏付けを取る作業はそう簡単ではない。ジャニー喜多川から提訴された『週刊文春』の代理人を務めた喜田村弁護士は、法廷でそれを立証するための着目点として、被害の「訴えが10年以上も続けられている」点を上げている。「そんな告発が続けられるのは何か理由があるはずだ。私は、ジャニー喜多川に対する反対尋問で、この点を衝くことを決めた」という。

告発の数量と連続性という観点から言えば、ジャニー喜多川の事件の性質は、やはりほとんど報道されない「押し紙」問題の性質とも重なる。後者は、1960年代から内部告発が始まり、半世紀以上も告発が続いている。現在も、毎日新聞社に対する「押し紙」裁判が大阪地裁で進行している。時代をさかのぼり、今世紀に入るころには、福岡地裁・高裁で読売新聞社に対する「押し紙」裁判が多発した。

後述するように『週刊新潮』も法廷に立たされた。これら一連の裁判における新聞人の主張は、「押し紙」は歴史的に見ても、一部たりとも存在しないというものである。とりわけ読売のK弁護士は、この点を宮本友丘専務(当時)に尋問の場でも証言させた事実もある。一貫して、「押し紙」行為の存在と連続性を否定してきたのである。

◆なぜ「押し紙」問題が、ほとんど報道されないのか? 

筆者(黒薮)にとって、『報道しないメディア』は、「押し紙」問題や関係者の倫理観を考える上で参考になる。

なぜ、新聞業界の内部で公然の事実となってきた「押し紙」問題が、ほとんど報道されないのか? 答えは、本書で喜田村弁護士がジャニーズ問題を例に指摘した構図にある。「押し紙」行為を検証すれば、その連続性が明確であるにも関わらず、それを報じれば、マスコミが大変な不利益を被るリスクがあるからだ。その構図を構築したのも、ジャニー喜多川のケースと同様に報道対象にされる側である。つまり新聞社にほかならない。

具体的な不利益の中味については、たとえば自社の出版物の書評が新聞紙面から締め出されるリスクである。日本の新聞社が大量の「押し紙」を隠しているとはいえ、それにもかかわらず相対的に見れば部数は多く、書評の宣伝効果は高い。

新聞研究者やジャーナリストが「押し紙」にタッチしない点について言えば、新聞社問題の核心にふれると新聞紙上で自分の意見を表明する場を失うリスクが高くなるからだ。

しかし、誰もが最も恐れているのは、恐らく「押し紙」報道に対する高額訴訟である。読売による提訴件数は推論ではなく、具体的な事実が裁判記録として残っている。その記録は、今後も消えることはない。

◆福岡県の元販売店主が起こした地位保全裁判

意外に知られていないが、実はマスコミが「押し紙」を大々的に報道した時期が一度だけある。それは2008年ごろである。

その発端は、福岡県の元販売店主が起こした地位保全裁判で、福岡高裁が、読売の「押し紙」行為を認定したことである。これが2007年12月で、その後、「押し紙」報道が本格化するのである。

司法が新聞社の「押し紙」行為を認定したのは初めてだった。本題からはそれるが、参考までに判決文から、「押し紙」を認定した箇所を紹介しておこう。

販売部数にこだわるのは一審被告(黒薮注:読売のこと)も例外ではなく、一審被告は極端に減紙を嫌う。一審被告は、発行部数の増加を図るために、新聞販売店に対して、増紙が実現するよう営業活動に励むことを強く求め、その一環として毎年増紙目標を定め、その達成を新聞販売店に求めている。このため、『目標達成は全YCの責務である。』『増やした者にのみ栄冠があり、減紙をした者は理由の如何を問わず敗残兵である、増紙こそ正義である。』などと記した文章(甲64)を配布し、定期的に販売会議を開いて、増紙のための努力を求めている。

米満部長ら一審被告関係者は、一審被告の新聞販売店で構成する読売会において、『読売新聞販売店には増紙という言葉はあっても、減紙という言葉はない。』とも述べている。

[参照資料]福岡高裁判決の全文 

この福岡高裁判決の後、マスコミは「押し紙」問題を取り上げ始めた。『週刊ダイヤモンド』や『SAPIO』などが、新聞社特集を組み、その中で「押し紙」問題に言及するようになった。他のメディアも追随した。

しかし、同時に、読売による裁判攻勢が始まったのである。読売が裁判を連発して、言論機関が言論に対する審判を裁判所に委ねる異常な事態になったのだ。読売は、まず、最初に筆者に対して、2件の裁判を起こしてきた。メディア黒書に対する攻撃である。さらに『週刊新潮』が「押し紙」問題を連載すると、筆者と新潮社に対して約5500万円を請求する名誉毀損裁判を仕掛けてきた。この時点で、筆者に対する請求額は総額で約8000万円に膨れ上がった。3件の裁判の被告になった。

裁判を起こしていた元店主が、読売から「反訴」される事態も起きた。反訴で敗訴した元店主が、読売のK弁護士らによる法手続きにより、自宅を差し押さえられたこともある。提訴による委縮効果は計り知れない。

こうした状況の下で、極めて少数の例外を除いて、マスコミによる「押し紙」報道は沈黙したのである。喜田村弁護士が解析したジャニーズ問題の報道と同じ構図が、「押し紙」問題の報道でも表れたのである。

◆「押し紙」報道を抑制してきたK弁護士とは誰だったのか?

幸いにジャニーズ問題の方はBBCの報道により、一応の解決を見た。しかし、「押し紙」問題は、解決の目途が立っていない。筆者の試算では、35年で少なくとも32兆6200万円の不正な資金が新聞社に流れ込んでいる。全国霊感商法対策弁護士連絡会によると、統一教会の霊感商法による被害額が35年間で1237億円であるから、比較にならない状況が生まれているのである。

ところで読者は、読売から委託を受けて、「押し紙」報道を抑制してきたK弁護士の実名をご存じだろうか?それは、『報道しないメディア』を著した喜田村洋一弁護士なのである。喜田村弁護士は、一方ではジャニーズ事務所を批判し、もう一方では読売新聞社を擁護する。著者の思想の方向性が、筆者には分からない。

【参考記事】喜田村洋一弁護士に関するメディア黒書の全記録

【参考記事】読売の滝鼻広報部長からの抗議文に対する反論、真村訴訟の福岡高裁判決が「押し紙」を認定したと判例解釈した理由

【参考記事】国策としての「押し紙」問題の放置と黙認、毎日新聞の内部資料「発証数の推移」から不正な販売収入を試算、年間で259億円に

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年3月17日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

主役が揃ったKICK Insist、それぞれの運命! 堀田春樹

睦雅はONE Friday Fightsへの雪辱誓う前哨戦をKO勝利。
瀧澤博人も再挑戦へ復活のKO勝利。
細田昇吾は実力発揮する前にKO負け。
西原茉央、17歳のテクニシャンに敗れる波乱。
プロ第1試合前に行われた2024年度年間表彰式は6名が表彰されています。

◎KICK Insist.22 / 3月23日(日)後楽園ホール17:15~20:40
主催:(株)VICTORY SPIRITS、ビクトリージム / 認定:ジャパンキックボクシング協会

年間表彰選手
最優秀選手賞:睦雅(ビクトリー)
優秀選手賞2名:西原茉生(治政館)、勇成(Formed)
技能賞:勇成(Formed)
KO賞:睦雅(ビクトリー)
殊勲賞:皆川裕哉(KICK BOX)
功労賞:政斗(治政館)
新人賞:菊地拓人(市原)

年間表彰、前列左から菊地拓人、皆川裕哉、勇成、西原茉央、政斗、睦雅

最優秀選手賞の睦雅は昨年7月、WMOインターナショナル・スーパーライト級王座獲得し、国内は3勝。ONEでは5月の初出場から2連勝し、2022年9月から11連勝となりKO賞も受賞。

西原茉生は王座奪取と、初戦の三日月蹴りによるKO勝利がインパクトがあった。
勇成は挑戦者決定戦で樹(治政館)に勝利し、皆川裕哉を倒して王座奪取した成長が見られ技能賞も受賞。

◆第13試合 63.0kg契約 5回戦

WMOインターナショナル・スーパーライト級チャンピオン.睦雅
(=瀬戸睦雅/ビクトリー/ 1996.6.26東京都出身/ 62.7kg)27戦20勝(13KO)5敗2分
        VS
ポムロップ・ルークスワン(元・S-1スーパーフェザー級覇者/タイ/ 62.8kg)
98戦70勝24敗4分
勝者:睦雅 / TKO 1ラウンド2分30秒
主審:少白竜

初回、睦雅はローキックから前進し、ボディーブローから顔面狙った追い足でポムロップをロープ際に下がらせるとパンチ連打。ミドルキック、ローキックを加えて様子を見て更に戦略は練られて行く。ポムロップは前蹴り、間合い見て右ミドルキックで出て来るも、睦雅もハイキックで返し、軽くパンチの交錯後、左フック一発で仕留め、カウント中のレフェリーストップとなった。

ミドルキックで様子見、技を試しながら勝機を掴んで行く睦雅
画像は位置が悪いが、睦雅がこの左フックで倒した

睦雅は控室で「もう少し長いラウンド行きたいプランではあったのですけど、試したかったことや、引き出しも増やしたかったですけど、やっぱり前回のONEでの負けがあったので、1秒でも早く倒したいという気持ちが出てしまいましたね。」と語った。

リング上でのマイクアピールでは「前回、負けちゃったんで気が張ってて駄目だった部分もあるんですけど、まあKOで復活出来たので、でもまだ完全復活ではないので、近くまたあの舞台へやり返しに行くので、そっちの舞台でもKOするので楽しみにしていてください。」とONEでの雪辱戦も誓っていた。

再起戦を鮮やかノックアウト、低迷した訳でもない国内10連勝の協会エース格、睦雅

睦雅は昨年5月からタイ・ルンピニースタジアムでのONE Friday Fights に出場し2連勝していたが、今年1月31日のONE Friday Fights 95ではエー・ミウ(ミャンマー)に第2ラウンド、ダブルノックダウンでの41秒KO負けで初黒星を喫した。

今日は勝ったが、ONEでの雪辱は果たしていないことが、まだ大舞台での完全復活ではないということだろう。

◆第12試合 57.5契約3回戦

WMOインターナショナル・フェザー級チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/1991.2.20埼玉県出身/ 57.2kg)
43戦27勝(15KO)12敗4分
        VS
プラカイトーン・トー・タラヤン(タイ/ 57.5kg)
79戦55勝21敗3分
勝者:瀧澤博人 / KO 2ラウンド2分23秒
主審:椎名利一    

長身の瀧澤博人がローキックとパンチを上手くコントロールし。プラカイトーンの出方を見て臨機応変に攻める。プラカイトーンが圧力掛け、やや前進するも瀧澤はロープやコーナーに詰められても落ち着いて捌く、首相撲に持ち込むと上背の有利さからウェイトを掛け、左ヒジ打ちでプラカイトーン右眉辺りをカットした上、プラカイトーンの蹴りに合わせた右ストレートヒットをボディー打ち込み、ノックダウンを奪った。諦めた表情のプラカイトーンはテンカウントを聞いた。

瀧澤博人は距離に応じた攻めで主導権支配してノックアウトに繋げた
瀧澤博人の最後のヒットはみぞおちへストレート、その前にヒジ打ちでもダメージを与えていた

瀧澤博人は控室で、「最後はボディーストレート、みぞおちを打ち抜きました。その前の縦ヒジ打ちが眼球に当たった感じだったので、これは心折れたかなと。今後はもう一回ぐらい説得力ある試合で倒さないと納得して貰えないんで、皆が納得した形で再挑戦したいです。」と完全復活と昨年叶わなかった世界への再挑戦を誓っていた。

リング上では、「昨年、結果が振るわなかったこともあったんですけど、それでも応援してくださる皆さんの御陰で強くなった帰って来ることが出来ました。今日、更に強くなったことを証明することが出来たので、もう一度、昨年獲り損ねたWMCの世界王座と、そしてラジャダムナンスタジアム王座挑戦していくことをここに表明したいと思います。難しい夢だからこそ、叶わないと言われる夢だからこそ追う意義がありますし、叶った時は嬉しいんだと思います。だから僕は諦めず、最後までその夢を叶える為に一生懸命頑張って行きたいと思います!」と語り、このままでは終わる気は全く無く、ヤル気満々の闘志を物語っていた。

鮮やかノックアウトで観衆にアピールする瀧澤博人

◆第11試合 52.0契約3回戦

ジャパンキック協会フライ級チャンピオン.西原茉生(治政館/2003.6.27埼玉県出身/ 52.0kg)
16戦10勝(5KO)5敗1分
        VS
WMOインターナショナル・ミニフライ級チャンピオン.コウシ・ノーナクシン
(=曽我昂史/ノーナクシン/2007.10.3埼玉県出身/ 51.85kg)
18戦12勝(2KO)6敗=タイ現地5勝5敗含む
勝者:コウシ・ノーナクシン / 判定0-3
主審:西村洋
副審:椎名28-30. 中山28-30. 少白竜27-30

ローキックから距離が詰まり首相撲へ移るとムエタイテクニック優るコウシがバランス良く組み合ってヒザ蹴りで攻め西原茉央を苦しめる。ヒジ打ちで西原の鼻の左側面カットと腫れ上がらせるダメージを負わせた。ウェイト掛け優位に立つ首相撲はコウシが上手い攻め。離れても蹴りのタイミングが上手い17歳のムエタイボクサーが日本人でも可能なんだという時代となった。コウシがテクニックで圧倒の大差判定勝利となった。

コウシが多彩な技で西原茉央を攻め、チャンピオンを苦しめた
コウシが今17歳と言ったところで場内の響めきに笑顔がこぼれた

「今、17歳なんですけど!」とマイクで言った途端、場内が響めいた。「17歳でこんなテクニシャンとは!」といった空気。

「タイで試合と練習多くやっていて、自分(コウシ)のこと知らない人沢山居ると思うんですけど、今日リングに立って、フライ級チャンピオン倒して自分の名前売ろうと思って、階級上(の相手)でも勝てまして、それで今日、別の会場なんですけど、ONEとかやっていて、凄いなと思っているんですけど、自分も数年後、ああいう場所に立ったりとか、タイでラジャダムナンスタジアムのタイトルとか狙っているので、今日、自分の名前覚えて帰って貰えると有難いです。そうなる自信ありますし、それぐらいの覚悟決めてやっているので、自分のこと注目してください!」と1分半に渡る説得力あるアピール。17歳でこれだけ言えるのは大物の風格があった。

帰り際の控室では「まだ使っていないムエタイ技いっぱいあるんで今後も注目お願いします!」と語っていた。

◆第10試合 スーパーフライ級3回戦

ジャパンキック協会フライ級1位.細田昇吾(ビクトリー/1997.6.4埼玉県出身/ 51.9kg)
23戦14勝(3KO)7敗2分
      VS
NKBフライ級5位.滑飛レオン(テツジム滑飛一家/ 52.1kg)10戦7勝(5KO)2敗1分
勝者:滑飛レオン / KO 1ラウンド2分21秒
主審:勝本剛司

ローキックの様子見からパンチに入った滑飛レオン。右ストレートヒットしてノックダウンを奪うとすでに効いてしまったか細田昇吾。再開後も滑飛が間合いを計り、細田の反撃を警戒しながらパンチで詰めていく中、再び右ストレートでノックダウンを奪った。このラウンドを凌ぎたい細田だが、滑飛のラッシュを凌げず連打を受け、3ノックダウンを喫してしまった。あっけないノックアウト負けに、この先の展望も後退となってしまった細田はまた出直しだろう。

NKBとの交流戦、細田昇吾に三度目のノックダウンを与えた滑飛レオン、NKB陣営響めいた

◆第9試合 ウェルター級3回戦

ジャパンキック協会ウェルター級3位.正哉(誠真/ 66.4kg)11戦7勝(3KO)4敗
        VS
梅沢遼太郎(白山道場/ 66.0kg)10戦3勝(1KO)2敗5分
勝者:正哉 / TKO 2ラウンド1分9秒
主審:中山宏美

蹴りの攻防からパンチ、正哉が連打の猛攻を掛けたが、何とも危なっかしい打ち合いの中、ラウンド終了間際に右ストレートでノックダウンを奪った。梅沢遼太郎はゴングには救われず、カウントは8で第1ラウンド終了。第2ラウンド、正哉は蹴りもパンチも貰う危なっかしい中、右バックハンドブローでノックダウンを奪い、梅澤が立ち上がったところで連打のラッシュ。レフェリーストップとなった。

◆第8試合 ライト級3回戦

ジャパンキック協会ライト級2位.菊地拓人(市原/ 61.1kg)8戦6勝(3KO)2敗
      VS
青木大好き(OZ/ 60.5kg)13戦7勝6敗
勝者:菊地拓人 / 判定2-0
主審:少白竜      
副審:西村30-29. 勝本30-28. 中山29-29

殺伐とした開始から互いの蹴り合う間合いとパンチの攻防。青木のローキックがヒットしていたが、菊地拓人は効いた様子は無く、蹴りを加えたパンチの打ち合いとなるも、激しさ増す中、忍耐の戦いは菊地拓人が圧していく中、僅差で制した。

◆第7試合 58.0kg契約3回戦

ジャパンキック協会フェザー級5位.眞斗(KIX/ 57.4kg)13戦5勝(2KO)6敗2分
        VS
同級6位.石川智崇(KICKBOX/ 57.7kg)8戦4勝3敗1分
勝者:石川智崇 / 判定0-3
主審:椎名利一
副審:少白竜26-30. 勝本27-30. 中山27-30

初回、上下の蹴りの攻防、石川智崇がバランス良くやや圧した流れ。第2ラウンドにはパンチ連打か、石川がノックダウン奪い、組み合っても攻勢を維持してヒジ打ち、眞人の右眉尻辺りをカット、打ち合いから蹴りで両者の攻防が増し、第3ラウンドも激しい攻防の中、石川のヒジ打ちで更に眞人の額上部もカット、首相撲も石川が優勢を保っていく。眞人も諦めないパンチと蹴りで前進するも、石川智崇が大差判定勝利を掴んだ。

◆第6試合 70.0kg契約3回戦

我謝真人(E.D.O)VS白井大也(市原)は白井大也が体調不良に陥り試合中止

◆第5試合 バンタム級3回戦

松田悠哉(誠真/ 53.5kg)5戦1勝(1KO)4敗
      VS
JKイノベーション・バンタム級8位.翔力(拳伸/ 53.1kg)9戦5勝(1KO)3敗1分
勝者:翔力 / KO 1ラウンド1分2秒
主審:勝本剛司

パンチとローキックの攻防の中、翔力の左ボディブローヒットで松田悠哉は効いて蹲ってしまい、そのままテンカウントとなった。

◆第4試合 53.0kg契約3回戦

花澤一成(市原/ 53.0kg)10戦1勝(1KO)6敗3分
      VS
カズキ・シッソー(トースームエタイシン/ 53.0kg)11戦5勝(1KO)5敗1分
勝者:カズキ・シッソー / TKO 2ラウンド1分52秒
主審:中山宏美

蹴りの攻防は花澤一成がやや優勢気味に進み、第2ラウンドも花澤が蹴りで優る攻勢からカズキ・シッソーが花澤の左前蹴りに合わせた右ストレートでノックダウンを奪うと花澤は立ち上がろうとするも立ち上がる前に崩れ落ち、カウント中のレフェリーストップとなった。花澤はまたも打たれ脆いところを突かれた様子。

◆第3試合 ミドル級3回戦

前田啓伍(SOGA KICKBOXING)、怪我により欠場

JOE(=カンパイ・カンパナート/タイ/ROCK ON/ 71.6kg)代打出場
        VS
タイン・ノーナクシン(タイ/ 72.5kg)39戦27勝10敗2分
勝者:タイン・ノーナクシン / 判定0-3
主審:少白竜
副審:中山28-30. 勝本29-30. 西村28-30

◆第2試合 フェザー級3回戦

日本猿サトルJSK(治政館/ 57.0kg)1戦1勝
      VS
久住裕翔(白山道場/ 56.6kg)4戦1勝3敗
勝者:日本猿サトルJSK / 判定3-0 (30-28. 30-29. 30-29)

◆プロ第1試合 ライト級3回戦

西郷隆道(野本塾/ 61.0kg)1戦1敗
     VS
山守浩司(OZ/ 60.8kg)1戦1勝(1KO)
勝者:山守浩司 / TKO 2ラウンド1分10秒 / タオル投入による棄権

◆オープニングファイト アマチュア80.0kg級2回戦(90秒制)

西村寿一(SOGA KICKBOXING/ 78.4kg)VSTAKUMI(Y‘zd石神井公園/ 79.6kg)
勝者:TAKUMI / 判定0-3
主審:勝本剛司
副審:椎名18-19. 西村18-19. 少白竜18-19

《取材戦記》

今、注目の出場したい舞台は「ONE Champion Ship」と皆が口にするようになりました。これも現在のステータスである。瀧澤博人が目指すラジャダムナンスタジアムなどの殿堂スタジアム王座は90年代までのようなスーパースター揃った隆盛期には及ばないが、最高峰として永く継続して来た伝統が強み。プロモーター主導のビッグイベントタイトルは今盛り上がっていても、いつ廃れるか分からないからその時代の旬のものと、殿堂タイトルを獲得しておく意義はあるだろう。それが歴史に名を残し、群衆の記憶に残る存在となるのである。

睦雅は国内では10連勝中。タイ・ルンピニースタジアムでのONEで負けたと言っても今回が再起戦とか復活したとは感じ難い。ただ大舞台での敗戦は大舞台でしか返せないリベンジ精神はあるでしょう。

西原茉央をテクニックで優った17歳のコウシ=曽我昂史はアマチュアで268戦223勝(40KO・RSC)32敗13分。ジュニアキックで50冠という幼い頃から戦って来た戦歴である。プロでは国内8戦7勝(2KO)1敗。タイで10戦5勝5敗。さすがにタイでは勝率圧倒とはいかない壁の厚さがあります。幼い頃から始めるジュニアキックは2010年頃から始まり、那須川天心がその先駆者とも言える存在だが、曽我昂史が17歳でこれだけのテクニシャンとはタイで鍛えられてきた経験値が大きいが、今後が恐ろしく楽しみな選手である。これから先、いろいろなメディアにも登場するであろう。古い考え方だが、コウシでなく本名でやって欲しいな。

次回、ジャパンキックボクシング協会興行は、5月25日(日)に市原臨海体育館に於いて、「Road to KING3」が開催されます。メインイベントは、2月にONE Friday Fightsに出場し1ラウンドKO勝利したジャパンキック協会フェザー級チャンピオン、勇成(Formed)が出場します。昨年は皆川裕哉が務めたメインイベント。その皆川裕哉から11月に王座奪取した勇成が今年のメインイベンターとなりました。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

「4・5鹿砦社反転攻勢の集い」を成功させ流れを変えよう! 皆様方の総結集と圧倒的なご支援をお願いいたします! 鹿砦社代表 松岡利康

月刊『紙の爆弾』創刊20周年/唯一の反原発情報誌『季節』創刊10周年にあたり企図した「4・5鹿砦社反転攻勢の集い」が迫ってきました。

このかん再三申し述べさせていただいているように、新型コロナ襲来以来、引き起こされた鹿砦社の苦境を寄稿者、読者の皆様方と共に突破し、流れを変えようと、4月5日、反転攻勢の集いを開催することになりました。『紙の爆弾』の寄稿者を中心に、ちょっと声を掛けたところ、またたくまに30人ほどの発起人が集まってくださいました。

また、ご支援のカンパ、ご祝儀も日々お寄せいただいています。有り難いことです。あと数日後になりますが、日々、緊張感がみなぎってきています。

この20年間、いろいろなことがありました。なんと言っても『紙爆』創刊直後の私の逮捕―勾留で会社が壊滅的打撃を被ったことでしょう。囚われの身、それも接見禁止で、面会も手紙も、弁護士以外にはできなく、動こうにも動けなくて、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある」という心境でした。今は、会社の情況が苦しくても、電話もできるし動き回れます。これだけでも大きな違いです。

詳しいことは4月7日発売の『紙爆』(20周年記念号)5月号に記述してありますので、ぜひ購読いただきご一読ください。

4月5日の集いのご報告は、「デジタル鹿砦社通信」、『紙爆』6月号(5月7日発売)などで行います。

(松岡利康)

松岡の大学の後輩で、魂の書家・龍一郎が、今回の集いに送ってくれた、熱い激励のメッセージ

低賃金で人手不足、過重労働の悪循環の介護現場 筆者も肩に激痛! さとうしゅういち

3月29日朝、筆者は右肩の激痛を含む広範囲の痛みで体が動かなくなりました。急遽、勤務先に電話をし、夜勤明けの上司に報告して、休ませてほしいと伝えました。たとえ、タクシーで職場までたどり着いたとしても、とてもではないが仕事になる状況ではないからです。

少し痛みが治まった段階で土曜日の午前中の診療時間ギリギリに近所の病院へたどり着き、レントゲンを撮影してもらったところ、肩の骨が真っ白になっていました。いわゆる「関節炎」ですが、激しく腫れていたのです。

4月1日には筆者も仕事に再び出ましたが、肩が痛い状態は予断を許しません。

広島瀬戸内新聞ニュース3月29日号で苦痛に顔面を歪める筆者

◆動けなくても「見守りだけでも」という状態

弊社でも、世間の介護事業所のご多分に漏れず、このところ退職者が相次ぎ、人手が不足している状況です。日中は本来3人ですべき仕事を2人でなんとか繰り回している状況です。こうしたことも筆者の疲労蓄積の背景にありました。

ただ、こうした状況で誰かが休めば大変なことになります。筆者が休んだために、11連勤になってしまった人がおり、恐縮です。筆者も上司からは「先日は仕方がなかったが、今後は、たとえ仕事ができなくても、見守りだけでも来ることも検討してほしい」と言われました。

◆執行体制確保に責任を果たさない政府

とはいえ、そもそも、こうならないように余裕を持った業務執行体制を組む責任は経営者にあります。さらに言えば、介護保険制度は、日本国政府が法律で定め、それに基づいて市町=地方政府が保険者として執行する制度です。きちんとした執行体制を経営者が組めるように政府が制度を設計し、予算措置すべきです。市町も運営主体の保険者として努力すべきです。

都道府県は、市町が足りない部分で、国がなかなか腰を上げない部分については、市町を支援しつつ国を突き上げていくべきです。だが、現実には、そうなっていない。だから、こういうことになるのです。

◆世間の物価上昇・賃上げに追いつかず

岸田文雄前総理は、2021年の自民党総裁選および衆院選において、「賃上げ」を一丁目一番地とし、特に介護や保育などのケア労働者の給料アップに力を入れると公約。2022年は、期待ほどではないが一定程度それを守ってくれはしました。しかし、物価上昇も、また他業種の賃上げもはっきりしてきた2023年は、さらなる追加の手立てがありませんでした。

2024年は3年に一度の介護報酬改定の年であり、一定の対応がされました。しかし、平均2%、月6000円のアップではあまりにもショボすぎた。しかも、これはあくまで平均であり、中央値で見ればそんなにもらっている人はいない。さらにこの2024年度の介護保険法改定では訪問介護については、介護報酬本体の一律カットが強行されました。これにより、賃上げなど難しい状況になった事業所も多くあります。若い人がそんな希望のないところに来るはずもなく、訪問介護の従事者の高齢化はさらに進みました。

この年、全産業平均では5.33%という賃上げが行われるも、介護はそれに取り残されてしまいました。岸田政権一年目でせっかく縮小しかかった全産業平均との差が拡大。現場での退職が急増しています。

しかも、近年では、「金を払っているのだから」と、何でもかんでも事業所側に押し付けてこられるご利用者のご家族も少なくはありません。いわゆるペイハラ、カスハラです。職員たちも「そんなにおっしゃるならご自分で見られたらいかがですか?」と言い返したくなるのを押さえています。

また、最低賃金が引き上げられる中で、基本給が最低賃金に満たず、国からの処遇改善をあわせようやく最低賃金超えという事業所も多いのです。そういう事業所から最低賃金引き上げに応じて賃上げした事業所にどんどん職員が移動していく状況もあります。

介護職員が辞める時は「家庭の事情」などを理由にするのが定番です。だが、周囲もそんな理由を本気にする人はいません。「賃金が低すぎるから他所へ」というのが本当のところだし、そのことで、退職した人を責められません。

この状況をこれ以上、放置すれば、まさに介護「戦線」の完全崩壊となります。そうなれば、現役世代にも悪影響が及びます。いわゆるヤングケアラー、若者ケアラー、ダブルケアラー(子育てと介護)そしてビジネスケアラー(仕事をしながら介護)の問題が深刻化します。

◆ショボすぎる石破政権

石破政権は今通常国会で正規の介護職員平均で5.4万円の給付をする補正予算を成立させています。他方で野党第1党の立憲民主党は1万円の賃金アップ法案を出しています。

だが、どちらも「ショボすぎ」ます。せめて、ここ2,3年の全産業平均の賃金アップの遅れ分を補償するくらいの勢いがなければ、生活が成り立たずに辞めていく職員が増える一方です。れいわ新選組の「10万円アップ」を暴論とされる方も少なくはないですが、そこを最終的に目指すくらいの勢いで取り組まないと、大変なことになります。もう限界です。

広島県知事の湯崎英彦さんにも申し上げたい。県内の介護保険の保険者=市町で介護崩壊が食い止められないのなら、県が国の制度改正までのつなぎとして、バックアップをすべきではないか?

だが、湯崎知事は、大型箱物や啓発イベントなどには熱心ですが、現場が潤うような支援には後ろ向きです。湯崎英彦知事よ。あなたは、巨大病院建設にご執心のようですが、それよりまえに、介護の現場で働く職員に直接行き届く支援をすべきではないですか?

筆者は、広島県庁職員時代(2000-2011年)に、主には山間部や島しょ部の医療や介護事業所の指導をさせていただいた時期が長くありました。介護職員の皆様のお給料を見せていただき、「若造の公務員の俺より、現場の皆さんのお給料がこんなに低くて、これでいいのか?」「日本は将来大丈夫なのか?!」と衝撃を受けるとともに憤りを覚えました。

筆者は、今後、広島県知事としてであろうが広島市長としてであろうが、広島地盤の参院議員としてであろうが、県庁職員時代の憤りと、介護福祉士として体験したことを絶対に忘れず、高齢者・障がい者もご家族も安心して過ごせる、そしてサービス提供者も安心して働ける広島・日本へ体を張って取り組んで参ります。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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《4月のことば》凡事徹底 鹿砦社代表 松岡利康

《4月のことば》凡事徹底(鹿砦社カレンダー2025より。龍一郎揮毫)

「凡事徹底」── いい言葉です。小さなことや当たり前のことを徹底的にやることによって見えてくるものがあるという意味ですが、なかなかできそうでできるものではありません。四字熟語は中国から由来するものが多いということですが、これは最近(といっても、20、30年前ですが)日本で誕生したとされます。通説では、イエローハット社の創業者・鍵山秀三郎氏が作ったといわれています。プロ野球の野村克也やラミネスがよく使ったといわkれます。「凡事徹底」というタイトルの書籍もあります。

当社も1995年に「日々決戦」「一日一生」「一所懸命」などと共に社是に定めましたが、なにか精神的な訓示を上から押し付け、説教臭く思われたのか、あまり歓迎されませんでした。

とはいえ、環境が苦しい時にこそ、基本に立ち返り「凡事」を「徹底」して「一所懸命」にやることが大事で、そして、そこにまた見えてくるものがあるということでしょう。

◇     ◇     ◇     ◇     ◇     ◇

 「4・5鹿砦社反転攻勢の集い」で流れを変えよう!

このかん再三申し述べさせていただいているように、新型コロナ襲来以来、引き起こされた鹿砦社の苦境を寄稿者、読者の皆様方と共に突破し、流れを変えようと、4月5日、反転攻勢の集いを開催することになりました。『紙の爆弾』の寄稿者を中心に、ちょっと声を掛けたところ、またたくまに30人ほどの発起人が集まってくださいました。

また、ご支援のカンパ、ご祝儀も日々お寄せいただいています。有り難いことです。もう4日後になりますが、日々、緊張感がみなぎってきています。

この20年間、いろいろなことがありました。なんと言っても『紙爆』創刊直後の私の逮捕―勾留で会社が壊滅的打撃を被ったことでしょう。囚われの身、それも接見禁止で、面会も手紙も、弁護士以外にはできなく、動こうにも動けなくて、「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もある」という心境でした。今は、会社の情況が苦しくても、電話もできるし動き回れます。これだけでも大きな違いです。

詳しいことは4月7日発売の『紙爆』(20周年記念号)5月号に記述してありますので、ぜひ購読いただきご一読ください。

4月5日の集いのご報告は、「デジタル鹿砦社通信」、『紙爆』6月号(5月7日発売)などで行います。

(松岡利康)

多言語国家としての中国を理解していないTBS「報道特集」の暴論  黒薮哲哉

◆中国語と北京語を混同するTBS

極右からリベラル左派まで、音律が狂ったカラオケのように中国についての見方が歪んでいる。これらの層(セクト)を形成する人々は、声高々に「反中」を合唱している。背景には、新聞・テレビによる中国報道を過信して、現地に足を運んで事実を確認したり、自力で海外の多様な情報を収集しない姿勢があるようだ。一種の情報弱者にほかならない。

2025年2月8日、TBSは、報道特集で「中国による『同化政策』……言葉をめぐって揺れる『2つのモンゴル』」と題する番組を放送した。中国のモンゴル自治区で、中国共産党がモンゴル語よりも中国語を重視する教育を進めていることを捉えて、漢族への「同化政策」だと批判する内容だった。

この番組の問題点はいくつかあるが、最も根源的な間違いを指摘しておこう。それはTBSが中国語と北京語を混同し、それを前提として自論を展開している点である。議論の前提に重大な誤解があるわけだから、番組の最初から最後まで論理の歯車がかみ合っていない。最初にストーリーを組み立て、それに整合する事実だけを我田引水にこじつけたような印象がある。

◆多言語国家・中国の公用語

周知のように中国では中国語が主要な言語である。しかし、ひとくちに中国語と言っても、下記のイラスト地図が示すように、方言を含むさまざまな言語体系に分化している。発音も異なる。これらの言語の総称を中国語と呼ぶのである。

そこで必要不可欠になるのが、共通言語であり、公用語である北京語である。多言語国家といえば、日本ではインドがその代表格のように言われているが、中国も典型的な多言語国家のひとつなのである。インドでは英語が公用語に、中国語では北京語が公用語になっている。これらの国では、公用語が普及していなければ、国民相互のコミュニケーションが成立しない。

2024年10月、筆者は北京を訪れた。その際、現地の旅行会社が運営する観光ツアーに参加した。観光バスには、中国全土から北京にやってきた人々が乗車して、筆者がまったく聞いたことのない中国語が飛び交っていた。友人の中国人にこれらの多言語が理解できるかどうかを確認してもらったところ、まったく理解できないという答えが返ってきた。しかし、円卓を囲んだ昼食の席では、互いが北京語でコミュニケーションしていた。その光景に接して、わたしは多言語国家における公用語の役割を理解したのである。

このエピソードは、中国ではいかに北京語が重要な役割を果たしているかを示唆している。北京語が話せなければ、政治参加も社会参加できない。特定の言語空間の中に閉じ込めれてしまう。日本でいう「井の中の蛙」のなってしまうのである。

◆「北京語」の充実は「中国語による同化政策」か?

こうした国の事情を考慮して、中国では小学校の低学年から、北京語のピンインや声調の習得が義務付けられているのである。中国語が多種に及ぶから、このようような教育方針が敷かれているのだ。

余談になるが、言語の普及を重視する政策は、中国以外の社会主義を目指す国々でも常識になってきた。たとえば1959年のキューバ革命の後、大規模な文盲撲滅キャンペーンが始まった。無知から脱皮して、国政への参加を促すのが目的だった。

1979年のニカラグア革命の後も、文盲撲滅キャンペーンが展開された。読み書きを習得しなければ、革命が成就しても、政治参加ができないからだ。言語の習得は、参政権を行使するために不可欠な革命のプロセスなのだ。

TBSは、「中国語による同化政策」などと難癖をつけているが、中国政府が意図しているのは、「北京語」の充実である。公用語教育はむしろ必要不可欠なプロセスなのである。

モンゴル自治区の若者だけが、「北京語」の能力に劣るとすれば、知識の習得も遅れ、平等に高等教育を受ける機会も奪われてしまいかねない。

TBSは、このあたりの事情をまったく取材していない。現地へ特派員を送り込んでいながら、中国が多言語国家であることも十分に認識していないようだ。日本人の感覚で、自分勝手な暴論を吐いているのである。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月21日)掲載の同名記事
を本通信用に再編集したものです。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)

MuayThaiOpenもついに50回目、与那覇壱世は更なる頂点へ! 堀田春樹

注目の与那覇壱世が熟練の技、臨機応変にステップワーク使って右フックで倒し切った。
矢島直弥はONEに向けてのステップとなるタイトルは惜しくも僅差で逃がす。
大森弘太は主導権奪って大差となる戦略で王座獲得。

◎MuayThaiOpen.50 / 3月22日(土)ひがしんアリーナ / プロ興行17:00~20:50
主催:センチャイジム / 認定:ルンピニージャパン(LBSJ)

戦歴経歴は主催者側のデータによるものです。前日計量はセンチャイ中野ジムにて21日13時より行われています。

◆第13試合 ムエタイオープン・スーパーバンタム級王座決定戦 5回戦

KNOCK OUT(RED)スーパーバンタム級チャンピオン壱・センチャイジム
(=与那覇壱世/センチャイ/1997.8.15沖縄県出身/ 55.05kg)
          VS
シンクロン・コーイ・ヌムパグディー(2007.5.23タイ国出身/ 54.95kg)
勝者:壱・センチャイジム / TKO 2ラウンド 1分33秒
主審:神谷友和

壱世はミドルキックで前進。シンクロンにプレッシャーを与えロープ際に詰める。シンクロンも蹴り返すが、壱世が先手を打った流れで攻勢気味。

第2ラウンドも壱世が様子見ながらやや前進し、いきなりの右フックでノックダウンを奪うと、何とか立ち上がったシンクロンに距離を詰め、ミドルキックからパンチ連打、ロープ際に詰めている中、再び右フックで失神ノックアウト(TKO)に繋げた。

壱世がシンクロンをロープ際に追い詰めKOに繋げる間合いに入った
壱世が右フックカウンターで倒し切った

壱世は「5ラウンドある中で、敢えて早いうちに倒しに行きたいなという思惑があったので、僕が行き過ぎたんですけど、それで相手が警戒していた感じでしたが、1ラウンド後のインターバル中にセンチャイ会長がアドバイスをくれて、その指示どおり、スローペースでゆっくり溜めて入ってスッと素早く右フック入ってダウン取って、二度目のダウンも右フックで倒せました。」と狙いどおりのクリーンヒットだった様子。

グローブについてはタイ製の6オンスで、「当然オープンフィンガーグローブと違う感じでしたけど、これでも僕自身に倒す力が付いてきたのかと今回思いました。」と語った。

壱世が保持する二つのチャンピオンベルトを掲げてメインイベントを締めた

壱世は昨年12月までに行われたJAPAN CUP 55kg級トーナメントで準優勝ではあったが、今年2月28日にONE Championship(Friday Fight)でKO勝利してONEでは2戦2勝(1KO)となっています。

◆第12試合 ムエタイオープン・バンタム級王座決定戦 5回戦

矢島直弥(元・WPMF日本フライ級Champ/TSK Japan/1990.8.18神奈川県出身/ 53.35kg)
        VS
イティポン・シット・ポー・チョー・ウォー(2001.1.6タイ国出身/ 53.3kg)
勝者:イティポン・シット・ポー・チョー・ウォー / 判定1-2
主審:和田良覚
副審:ピリカ49-48. 河原48-49. 谷本48-49

初回、矢島直弥はローキックで牽制。イティポンをロープ際に詰めてパンチへ繋いで、プレッシャーを与える。イティポンは下がりながらも蹴って来る勢いと組み付くとイティポンの体勢が有利に動き、バランス良くヒザ蹴りを蹴って来る。

イティポンがヒザ蹴りで矢島直弥に圧力を掛けスタミナを奪っていく
矢島直弥も攻勢に転じたラッシュも光った

矢島直弥は後半に入ってもパンチ、蹴りで攻める勢いはあるが、イティポンの身の躱し、蹴るタイミングは上手い。ラストラウンドもパンチで行くしかない矢島直弥は倒すしかないという流れも、イティポンの躱す構え、逃げ凌ぐ上手さでイティポンのペース崩せず終了。判定は分かれる結果でイティポンの際どい判定勝利となった。

◆第11試合 ムエタイオープン・ライト級王座決定戦 5回戦

弘・センチャイジム(=大森弘太/センチャイ/2001.11.14東京都出身/ 61.1kg)
        VS
JKIスーパーフェザー級チャンピオン.新田宗一朗
(クロスポイント吉祥寺/1996.4.2沖縄県出身/ 61.0kg)
勝者:弘・センチャイジム / 判定3-0
主審:大澤武史
副審:ピリカ49-47. 河原49-47. 和田49-47

初回早々はローキックの攻防。上下の蹴り中心にパンチも加わるが、徐々に弘太が前に出る圧力が強まる。第3ラウンドにはパンチ中心の打ち合い増えるも、弘太はヒザ蹴りも加え攻勢を強め、劣勢に陥る新田は逆転狙ってパンチ打っても弘太の勢い止められない。弘太が中盤から主導権奪った攻勢を維持して内容的には大差となる展開で判定勝利。

弘太の勢いが増した終盤の圧倒の蹴り
終盤、弘太が圧力掛けて出ると新田宗一朗は劣勢から逃れられず

◆第10試合 58.0契約3回戦

稔之晟(=じんのじょう/マイウエイスピリッツ/2000.4.11山梨県出身/ 57.6kg)
        VS
チャイヤンレック・モー・コー・チョー・チェンマイ(2004.6.27タイ国出身/ 56.9kg)
勝者:稔之晟 / 判定3-0
主審:谷本弘行
副審:リカ30-28. 大澤30-28. 和田30-27

稔之晟はチャイヤンレックを上回る先手打ち、前蹴りや上下の蹴り、組み合ってのヒザ蹴りもそれぞれの間合いを上手く取って徐々に攻勢を強めてチャイヤンレックを後退させ、稔之晟が圧倒の展開で判定勝利。

稔之晟が前蹴りでチャイヤンレックの前進を止めムエタイ技で優った

◆第9試合 63.0kg契約3回戦

錦和道(FIGHTBASE都立大/1989.12.2京都府出身/ 63.15kg)
        VS
テレカ(NEXTLEVEL渋谷/1990.5.7東京都出身/ 63.1kg)
勝者:テレカ / TKO 2ラウンド 2分37秒
主審:河原聡一

両者、パンチの威嚇からローキック、更にミドルキックへ。錦和道のハイキックや後ろ蹴りも見せる中、テレカは冷静に打ち返し打ち合う中、連打から左フックか、錦和道がノックダウンし、カウント中のレフェリーストップとなる。

テレカが攻勢を維持して右ストレートヒット

◆プロ第8試合 ウェルター級3回戦

中村漣(BOUNCER/2000.8.26東京都出身/ 66.3kg)
        VS
ムン・ソンチョル(2005.1.7韓国出身/ 66.25kg)
勝者:ムン・ソンチョル / 判定1-2
主審:神谷友和
副審:ピリカ30-28. 大澤28-29. 谷本28-29

ムン・ソンチョルは韓国でプロ戦績は接戦の2戦2敗だが、アマチュアでは好成績を残している模様。“バシッ”と中村漣を捉える強い蹴り。中村漣も劣らぬ強い蹴りで返し互角に進む展開。採点が分かれる明暗はムン・ソンチョルの手が挙げられた。

韓国のムン・ソンチョルはアグレッシブに攻め続け、僅差ながら勝利を掴んだ

◆第7試合 アマチュアフェザー級3回戦

駒木根稔和(TSK Japan/2009.5.7神奈川県出身/ 55.15kg)
        VS
渡辺悠斗(センチャイムエタイ錦糸町/2008.3.9東京都出身/ 56.65kg)
勝者:駒木根稔和 / TKO 2ラウンド31秒
主審:和田良覚

後ろ蹴りも柔軟に多彩な蹴り技で前進する、まだ15歳の駒木根稔和がミドルキックで倒し、カウント中にレフェリーストップが掛かった。

駒木根稔和は昨年8月4日のWBCムエタイジュニアリーグ× EXPLOSION全国大会で、男子中学生クラス-55kg級優勝。

◆第6試合 アマチュア47.0kg契約3回戦

大久保海成(橋本道場/2010.8.10東京都出身/ 46.55kg)
        VS
姉帯心(ノーナクシン/2010.5.14東京都出身/ 46.2kg)
勝者:大久保海成 / 判定3-0 (29-28. 29-28. 29-28)

◆第5試合 アマチュア40.0kg契約3回戦

宮城壮一朗(FREEDOM@OZ/2012.2.17千葉県出身/ 39.9kg)
        VS
浦田七斗(CLIMB/2011.7.9宮崎県出身/ 39.0kg)
勝者:宮城壮一朗 / 判定3-0 (30-28. 30-27. 30-28)

◆第4試合 アマチュア32.0kg契約3回戦

川原さくら(橋本道場/2012.1.14福岡県出身/ 31.8kg)
        VS
小貝春喜(拳伸/2013.6.18千葉県出身/ 30.95kg)
勝者:川原さくら / 判定3-0 (29-28.30-28. 30-29)     

◆第3試合 アマチュア69.0kg契約3回戦          

志賀野真人(TSK Japan/2007.6.17神奈川県出身/ 69.1kg)
        VS
神山聖(トイカツ道場/1983.4.22埼玉県出身/ 69.35kg)
勝者:志賀野真人 / TKO 3ラウンド 1分3秒

◆第2試合 アマチュア34.0kg契約3回戦
        
林田海(橋本道場/2012.12.4中国出身/ 32.5kg)
        VS
富高蒼大(CLIMB/2013.7.21宮崎県出身/ 34.0kg)
引分け 1-0 (29-29. 30-29. 29-29)

◆第1試合 アマチュア28.0kg契約3回戦

鈴木翔大(CYCLONE/2012.10.30東京都出身/ 27.45kg)
        VS
佐藤蒼壬(CLIMB/2014.11.11宮崎県出身/ 27.0kg)
勝者:鈴木翔大 / 判定3-0 (30-28. 30-28. 30-28)

《取材戦記》

プロモーターのセンチャイ氏は興行について、「今日もまあまあ上手くいった興行と思います。お客さんはムエタイファンらしさがあって最後まで居て頂いて盛り上げてくれました。壱世もしっかり魅せてくれて良かったです。」と、いつもながらの穏やかな回答。

今回のタイトルマッチ、当初の確認ではルンピニージャパン王座決定戦でしたが、本場ルンピニースタジアム最高責任者が交代して今回のタイトルマッチ認可まで間に合わなかった模様で、センチャイ・トーングライセーン会長が務めるムエタイオープン王座決定戦に落ち着きました。

ルンピニージャパンは本場スタジアムの認可が下りないと行えないタイトルと言うだけでも任意のローカルタイトルよりは権威は高いところであり、今後の交渉でタイトルマッチ認可が下りれば開催へ向かうという状況です。

ただ、ルンピニージャパンという日本国内タイトルになぜタイ選手が出場出来るのか。センチャイ氏に聞いたところが、「ハイ、タイ選手でも大丈夫です!」と、意図するところが伝わり難い。

大雑把に纏めると、「“ムエタイオープン”という興行タイトルどおり、団体も国境も垣根の無いオープンな戦いです。」というところからルンピニージャパンに於いても国内に限らないインターナショナル的タイトルという解釈となる模様。

タイトルマッチについてはラウンドマストシステムで採点し、延長戦については規定を超えるラウンドは行なわないというシステムは本場タイの規定どおりで正論だった。

しかし、「マストシステムでも引分けは起こり得る」など、まだツッコミどころはあるが、選手が練習成果をしっかり発揮できるイベントとしては、更なるビッグイベントへ向けたステップとなるムエタイオープンでしょう。

次回興行は今のところ未定ながら、今年もあと3回開催予定の模様です。

センチャイ会長のコメントによると、壱世は4月18日にルンピニースタジアムでのONE Championship(Friday Fight)に出場し、6月の「KNOCK OUT」イベントにも出場希望していると言い、壱世は現在存在する世界のビッグイベントへの飛躍が続きそうである。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
昭和のキックボクシングから業界に潜入。フリーランス・カメラマンとして『スポーツライフ』、『ナイタイ』、『実話ナックルズ』などにキックレポートを寄稿展開。タイではムエタイジム生活も経験し、その縁からタイ仏門にも一時出家。最近のモットーは「悔いの無い完全燃焼の終活」

選挙ポスター規制法成立、NHKではなく日本のデモクラシーをぶっ壊す立花孝志さん さとうしゅういち

3月26日、公職選挙法改正案=選挙ポスター規制法案が賛成多数(反対はれいわ新選組とNHK党のみ)成立しました。この法案は「品位を損なう内容を記載してはならない」とする品位保持規定を新設し、特定商品などの営業を記載した場合は100万円以下の罰金とする、としています。

とりあえず、ポスター規制法で今夏の都議選や参院選の様子を見て、いわゆる「二馬力選挙」(後述)やSNS規制などについても議論していくことになります。

◆東京と兵庫の知事選挙で〈暴走〉する立花さん

この法案は、言うまでもなくNHK党党首で元参院議員の立花孝志さんによる東京都知事選挙2024や兵庫県知事選挙2024での「暴走」が背景にあります。

東京都知事選挙では、立花孝志さん率いるNHK党は有力女性格闘家らに対してポスターの掲示枠を「販売」したり、元同志の誹謗中傷とみられる内容をポスターに掲載したりしました。

また、兵庫県知事選挙2024では、立花さんが県議会の不信任決議で失職した斎藤元彦・兵庫県知事を援護すると称して立候補(いわゆる二馬力選挙)。2024年3月に斎藤知事によるパワハラなどを内部告発した後、7月に渡瀬元県民局長を誹謗中傷する内容の選挙ポスターを公営掲示板に掲示しました。

広島瀬戸内新聞関西支局の鈴木記者撮影

さらに立花さんは、兵庫県議会の百条委員会の奥谷委員長や丸尾牧議員、竹内英明議員らをSNS上で攻撃。これに影響された人々がこうした議員を誹謗中傷する投稿をしたり、奥谷委員長の自宅前に押し掛けたりしました。

その後、竹内議員が誹謗中傷に耐えかねて議員を辞職しても、立花さんらによる攻撃は続き、2025年1月18日に竹内さんは亡くなりました。そうすると、立花さんは「竹内元議員は逮捕予定だったことを苦に自死した」などとSNS上で発言。村井兵庫県県警本部長は県議会で「竹内議員を被疑者として事情聴取する予定もなければましてや逮捕の予定などもない」と立花さんの発言を否定する異例の事態となりました。

立花さんはその後も、泉大津市長選挙や千葉県知事選挙2025にも立候補。千葉県知事候補なのに兵庫県で兵庫のことを演説したり、財務省前で演説したり、暴走を続けています。こうした中で、立花さんが襲撃される事件も発生しました。
 
◆規制を支持する世論は理解できるが……

立花さんのこれだけの〈暴走〉を見ると、規制やむなしと言う世論は理解できます。

筆者も実は、竹内元議員とは2003年夏に名刺交換をさせていただいています。当時、姫路市議だった竹内さんが、筆者が参加する環境団体の勉強会に参加された際のことです。

瀬戸内海の環境問題についての講義を熱心に聴いておられる様子が、印象に残っています。竹内さんは立憲民主党系会派の方、筆者はどちらかと言えば立憲民主党は好きではない人間ですが、それでも、筆者は竹内さんについては、個人的にはリスペクしています。そんな真面目な竹内さんを追い込んだ立花さんやその支持者の皆さんによる誹謗中傷は許せないという思いは少なくとも広島県内では誰よりも強いと思っています。こういうことを防ぐための手立ては必要だという思いは強くあります。
 
◆規制強化には忸怩たる思い

ただ、国政選挙も含めて立候補経験のある筆者は、規制強化には忸怩たる思いがあります。なぜか?

2021年参院選広島における筆者とポスター

例えば、今回の規制が、今後は権力者に都合が悪い内容、例えば現職の政策への批判や対案まで誹謗中傷=品位を損なう=として規制される道も開きかねないからです。

実際、筆者は、普通に街頭演説で政策を訴えただけなのに「現職の先生に文句があるのか?!」などと、有権者にすごまれたこともあります。普通に政策を訴えることも、誹謗中傷と同じだと受け止めてしまう人もおられるし、そういう人が、権力側から権力に批判的な政治家を潰すために、ポスター規制法や、今後出て来るであろうSNS規制法案なども悪用するのではないか?と危惧しています。

◆治安維持法とセットだった公選法

そもそも日本の公選法は1925年、ちょうど100年前に男性普通選挙導入時に戦前の治安維持法とセットで出来たものです。おおざっぱに申し上げれば、高すぎる供託金制度やその難解さも含め、「庶民がえらい人に刃向かえない」ように設計されているのです。

1945年の第二次世界大戦敗戦に伴い、治安維持法は廃止されましたが、公選法はほぼそのままになっています。

それどころか、約30年前には選挙管理委員会主催の公開討論会がなくなるなど運用が改悪さえされています。

本来は、こうした難解な公選法をむしろ簡素化して、庶民の政治参加へのハードルを下げるのが筋と言うものでしょう。例えば、供託金の引き下げは、カネがかからない政治にするためにも必須です。被選挙権年齢の引き下げは結構ですが、それなら供託金を引き下げるなどしないと、政治に若者は参加しにくいのには変わりがないでしょう。

◆規制強化を招いた立花さんの大罪

しかし、立花孝志さんの「暴走」により、「規制強化」の世論も高まってきます。今後も立花さんが暴走すればするほど、例えば、斎藤元彦・兵庫県知事のファンの方は大喜びするでしょうが、大多数の国民は、規制強化やむなし、へ向かうのではないか?

だが規制強化は、デモクラシーのいわば、自殺にもつながりかねません。

立花孝志さんや立花孝志さんの尻馬に乗ってデマを振りまいた方々の罪は誠に重いといわざるをえません

◆警察やマスコミも立花さんを甘やかすな!

これ以上、警察もマスコミも立花孝志さんに甘い顔をしてはいけない。選挙期間中であっても、例えば、立花さんが嘘の情報で警察の業務を妨害したなら躊躇せずきちんと立件すべきでしょう。「竹内元県議が逮捕予定を苦に自死」?! こんなデマを訂正したのは良いのですが、これこそ、きちんと偽計業務妨害罪で立件すべきでしょう。

警察は、かつて、鹿砦社の松岡社長の不当逮捕や関西生コン労組の不当逮捕などを繰り返してきました。それらにくらべれば「立花逮捕」は、「無量大数」倍、正当ではないでしょうか?証拠隠滅の恐れはないにせよ、東谷義和=ガーシー氏のように海外へ高飛びした先例はあります。逃亡の恐れはないとは言えない。

またマスコミも立花孝志さんや支持者の手口の問題点を臆することなく報道すべきです。

よく、立花さん=ニューメディア VS オールドメディアと言われていますが、いわゆるオールドメディアだって、立花さん=NHK党を甘やかしてきたのです。

筆者自身の経験ですが、参院選広島再選挙2021では、筆者の方がNHK党の候補より得票が多かった。にもかかわらず、某地元メディアは、選挙後の報道で、NHK党の候補の名前を先に報じたことがありました。普通は得票順なのに。無所属ですがきちんと県内で選挙活動した筆者よりも、政党要件がある政党の候補だからとそれだけでNHK党や立花さんを優遇したのです。いわゆる立花信者の方はえらくマスコミに批判的ですが、あなたがたは十分、マスコミに優遇されてきたよ、と申し上げたい。逆にマスコミの皆様は猛省してほしい。

「自民党をぶっ壊す」と言ってきた小泉純一郎さんが日本をぶっ壊したように、立花氏は日本のデモクラシーをぶっ壊しつつある。

また、たかが立花、とまだ軽視しておられる方も少なくないかもしれません。だが、立花氏の発信が斎藤陣営の「軍師」折田楓社長と相まって、大きく兵庫県知事選挙の情勢を動かしたのは間違いない。いまだに立花氏の言うことを信じ込んでいる人が、多くおられる。外国の例で言えば、ヒトラーなど最初は誰も相手にしていなかった。米国で言えばトランプさんなんて誰も相手にしていなかった。だけど、今や大統領になって連日のように世界を振り回しています。

気が付いたら取り返しのつかないような事態にならないよう、立花氏については注意を喚起する一方で、規制強化についても忸怩たる思いがあることをここに表明します。

▼さとうしゅういち(佐藤周一)
元県庁マン/介護福祉士/参院選再選挙立候補者。1975年、広島県福山市生まれ、東京育ち。東京大学経済学部卒業後、2000年広島県入庁。介護や福祉、男女共同参画などの行政を担当。2011年、あの河井案里さんと県議選で対決するために退職。現在は広島市内で介護福祉士として勤務。2021年、案里さんの当選無効に伴う再選挙に立候補、6人中3位(20848票)。広島市男女共同参画審議会委員(2011-13)、広島介護福祉労働組合役員(現職)、片目失明者友の会参与。
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滝本太郎編著『トランスジェンダー神話 幻想と真実』をお届けするにあたって 鹿砦社代表 松岡利康

本年はオウム真理教事件から30年が経ち、メディアでもいろいろと報じられております。その詳細はここでは置いておきまして、殺気立ったオウムに敢然と立ち向かいカルトとの命を懸けた闘いを行った一人、滝本太郎弁護士が、ご存知のように、ここ数年闘っているのが新たなカルト=トランスジェンダリズム(性自認至上主義)です。

当社は、森奈津子編著『人権と利権 「多様性」と排他性』を、一昨年のLBGT法案が国会で審議―採択されるにあたり上梓し、以降、医師としての専門知識、堪能な語学力を駆使した女医・斉藤佳苗著『LGBT問題を考える 基礎知識から海外情報まで』、女性スペースを守る諸団体と有志の連絡会編著『LGBT異論 キャンセル・カルチャー、トランスジェンダー論争』、同『LGBT問題 混乱と対立を超えるために』、そして今回の『トランスジェンダー神話 幻想と真実』と5冊のLGBT問題関連書を発行してまいりました。累計5冊目となりますが、どの書も、決してLGBT関係団体や当事者といたずらに対立するのではなく、当事者の方々の声を盛り込みつつ、混乱を乗り越えるにはどうすべきか、問題提起をしてきました。

本書は、滝本太郎弁護士が、みずからの論考を数編収めつつ、単独で編纂されましたので、これまでの書とはまた違う趣きがあるものと思います。

当社は、LGBT諸団体や活動家におもねるのではなく、少しでも多角的に、提起された諸問題に取り組むために、今後もこの問題に切り込む書を漸次発行していきたいと考えています。月刊ペースは物理的に厳しくとも年間5~6点ほどの発行を考えています。

LGBT問題についての出版物のほとんどが「性の多様性」の名のもとにLGBT諸団体や活動家の主張礼賛の中で、これに異議を唱える出版物は極めて少ないです。「多様性」というのであれば、「多様」な意見を出し合い対話や議論しなければ混乱は収まりません。というと、「ノーディベート(議論しない)」と逃げるのなら話になりません。

皆様方には、私たちがなぜこの問題に関わり始めたのかご理解いただき、何卒ご購読をお願い申し上げます。(松岡利康)

◇     ◇     ◇     ◇     ◇

トランスジェンダー神話 幻想と真実

滝本太郎=編著
A5判 総164ページ(巻頭カラー4ページ+本文160ページ)
定価990円(税込み)3月27日発売!

オウム事件から30年 ──
命をかけてカルト=オウム真理教と闘った弁護士・滝本太郎が今、
新たなカルト=トランスジェンダー神話と闘う渾身の書!

1 座談会 ホルモン治療の現実 ── 当事者が語る身体的・社会的影響
2 美山みどり 私のこと ── 性同一性障害特例法を守りたい
3 浅利 進 性同一障害は「思い込み」なのか?
4 性同一障害特例法を守る会 最高裁へのメッセージに現れた「当事者のホンネ」
5 美山みどり 「性別」を変えることの難しさ
6 性同一障害特例法を守る会 [書評]『「性別」医療現場の苦悩——「手術なし」をどうやって…』
7 滝本太郎 トランス女性が希望するトイレ ── TOTOアンケートから
8 滝本太郎 外観要件は合憲である ── 広島高裁
9 滝本太郎 極端な主張と日本学術会議・関東弁護士会連合会(関弁連)の責任
10 滝本太郎 清水晶子氏の論理不明
11 森谷みのり 女性スペースを守る会の闘い ── 裁判の陳述から
12 滝本太郎 東京高裁——「悪質トランス差別団体」との表現は違法な名誉毀損
13 田中あつこ 性犯罪被害の支援者が、なぜこの問題にかかわるのか ── 参加者の発言をきっかけに
14 森 奈津子 トランス男性活動家の運動手法を問う
15 岩佐 凪 公共空間における多様性や安全性、オールジェンダートイレや女性専用スペースに関する課題
14「女性スペースの安心安全確保法案」の説明

西日本新聞押し紙訴訟 控訴理由書提出のお知らせ 江上武幸(弁護士)

去る2月17日、長崎県にある西日本新聞・販売店の押し紙訴訟の控訴理由書を福岡高裁に提出しましたので、ご報告致します。

*西日本新聞長崎県販売店の押し紙訴訟については、「西日本新聞押し紙裁判控訴のお知らせ」(2025年〈令和7年〉1月18日付)「西日本新聞福岡地裁押し紙敗訴判決のお知らせ」(2024年〈令和6年〉12月26日付)「西日本新聞押し紙訴訟判決とオスプレイ搭乗記事の掲載について」(同年12月22日付)「西日本新聞押し紙訴訟判決期日決定のご報告」(同年10月15日)を投稿しておりますので、ご一読いただければ幸いです。

また、1999年(平成11年)新聞特殊指定の改定の背景に、当時の日本新聞協会長で讀賣新聞の渡邉恒雄氏と公正取引委員会委員長の根來泰周氏の存在があったことを指摘した黒薮さんの記事、「1999年(平成11年)の新聞特殊指定の改定、押し紙容認への道を開く『策略』」(2024年(令和6年)12月31日付)も是非ご覧ください。

西日本新聞社の押し紙裁判は、現在、2つの裁判が継続しています。長崎県の元販売店経営者を原告とする裁判と、佐賀県の元販売店経営者を原告とする裁判です。

2つの裁判は、ほぼ同時期に提訴しましたので併合審理の申立を行うことも検討しましたが、認められる可能性は薄いと考えたのと、同じ裁判体で審理した場合、勝訴か敗訴判決のいずれか一方しかありませんので、敗訴の危険を分散するために別々の裁判体で審理をすすめることにしました。

これまでも指摘しましたが、今回の敗訴判決を言い渡した裁判官は、2023年(令和5年)4月1日に、東京高裁・東京地裁・札幌地裁から福岡地裁に転勤してきた裁判官です。しかも、裁判長は元司法研修所教官、右陪席は元最高裁の局付裁判官であることから、敗訴判決は想定の範囲内であり、あまり違和感はなかったのですが、原告勝訴の条件がそろっている本件について、三人の裁判官達が如何なる論理構成によって原告敗訴の判決を書いたのかについて、控訴理由書でその問題点を指摘すると共に、新聞特殊指定の押し紙に該当しない場合、独禁法2条9項5号ハの法定優越的地位濫用の有無の判断を求める新たは主張を追加しました。

高裁が、どのような判断を示すかについて、引き続き関心を寄せていただくようお願いします。

(1)注文方法について

西日本新聞社は、販売店の注文は電話で受け付けており、注文表記載の部数は単なる参考にすぎないと主張しています。電話は物的証拠が残らないので、注文表記載の注文部数は参考に過ぎないとの主張が可能となります。注文表記載の注文部数と実際の送り部数に違いがあっても、電話による注文が正式な注文であると主張しておけば、その矛盾を取り繕うことが出来ます。

西日本新聞の主張が欺瞞に満ちたものであることを証明するために、原告は佐賀県販売店主が録音した担当との電話の会話を反訳文を添付して証拠に提出し、原告ら販売店が電話で部数注文はしていない事実を立証しました。

ところが、西日本新聞社は、録音データーの最後の方で担当の言葉が聞きとれない箇所があり、そこで佐賀県販売店経営者が「はい」と答えているのをとらえて、その所で電話による注文がなされているという主張をしました。判決は採証法則に反し西日本新聞社の主張を認める不当な判断を示しました。

佐賀県販売店経営者が録音した会話は20回ありますので、私どもはその会話のすべてについて最後の30秒を一枚のCDに再録し高裁に提出しました。再録時間は全体で10分間ほどですので、高裁裁判官がCDを聴取すれば、電話での注文はしていないことを確認できると考えています。

(2)販売店の自由増減の権利について

西日本新聞社は、販売店に注文部数を自由に決定する権利(「自由増減の権利」)は認めていません。押し紙を抱えている新聞社は、西日本新聞社に限らず何処の新聞社も同じです。

この件についても、佐賀県販売店主は担当との面談で話題に取り上げ会話を録音しています。担当はその会話のなかで、販売店に注文部数自由増減の権利はないとの趣旨の発言をしています。

ところが、ここでも判決は、自由増減の権利を完全に否定したものではないとの西日本新聞社を救済する不当な判断を示しています。

(3)4・10増減について

西日本新聞の4・10増減の問題については、黒薮さんの2021年(令和3年)7月28日付の次の記事をご参照ください。

【参考記事】元店主が西日本新聞社を「押し紙」で提訴、3050万円の損害賠償、はじめて「4・10増減」問題が法廷へ、訴状を全面公開

西日本新聞社は郡部の販売店の折込広告主に対する販売店部数は4月と10月の部数を公表するようにしています。そのため、4月と10月の2ヶ月分の公表部数を他の月より増やしておけば、折込広告主は他の月もその部数を基準に折込広告枚数を決めることになります。西日本新聞社は、販売店の押し紙仕入代金の赤字を折込広告収入で補填するために、この仕組みを利用しています。原告販売店の場合、4月と10月の2ヶ月については、他の月より200部多い部数が供給されています。

これは、西日本新聞社主導による折込広告料の明らかな詐欺ですので、西日本新聞社はその事実が外部に知られないようするため、4月と10月の200部多い部数の供給も原告の注文によるものであるとの主張を行う必要があります。

原告の4月と10月の200部多い公表部数について、原告が折込広告収入を得るために西日本新聞社に他の月より多い部数を注文したものであるとの判断を示し、西日本新聞社の詐欺の責任を不問にしました。

判決は、30年前の平成7年に公正取引委員会事務局が刊行した「一般日刊新聞紙の流通実態等に関する調査報告書」に、「仮に、1部増紙するために新聞販売手数料を上回る経費を支出しても、折込広告収入だけで、増紙した部数あたりの利益は確保できるし、扱い部数がおおいほどより多くの広告主から折り込み広告を受注できる。」との記載があることを唯一の根拠に、原告が折込広告料を取得するために、4月と10月に前後の月より200部多い部数を注文したと判断して、西日本新聞社の責任を免責しました。採証法則に反する不当な判断であることは明らかです。

リーマンショックや東日本大震災、新型コロナウイルスの影響や、ネット社会の普及による広告媒体の多様化により折込広告収入の落ち込みが激しいことは裁判所に顕著な事実であるにもかかわらず、30年前の公正取引委員会事務局の調査報告書を唯一の証拠に、「折込広告収入だけで、増紙した部数の利益は確保できる」との判断をくだす裁判官には恐ろしさすら感じます。

裁判官は検察官と並んで司法官僚の中で最も忖度に長けた人種であるといっていいでしょう。そのことは、先ごろようやく再審裁判で無罪が確定した静岡県で発生した味噌工場社長一家の殺害・放火事件の袴田巌さんの死刑判決と再審棄却判決に、どれだけの人数の裁判官と検事が関わったかを想像するだけで十分ではないでしょうか。

黒薮さんの最新書『新聞と公権力の暗部』(2023年・鹿砦社)に、押し紙の売上金額が年間約932億円、過去35年間で32兆6200万円にも及ぶ試算結果が示されています。押し紙訴訟を担当する裁判官が、新聞業界に隠されたこのような巨額におよぶ利権構造を白日のもとに曝け出す販売店勝訴の判決をくだすには相当の勇気が必要でしょう。しかし、私はそのような勇気をもった裁判官が必ずいると信じています。

1991年(平成11年)にそれまでの新聞特殊指定が改定され、販売店が「注文した部数」を超える新聞を供給しないかぎり、新聞社には押し紙の責任はないとの解釈が、文言上は可能となりました。それまでの、1964年(昭和39年)新聞特殊指定では、購読部数の2%程度が適正予備紙の上限とされていました。

私どもは、平成11年の新聞特殊指定が押し紙を隠す隠れ蓑の役割しか果たせなくなっているのであれば、新聞特殊指定制定以前の独禁法第2条第9項第5号ハの法定優越的地位の濫用に基づいて「押し紙」の有無を判断するようにとの新しい主張を行いました。

福岡高裁がこの新しい主張について、どのような判断を示してくれるのか、大いに期待しているところです。

日本国憲法の施行前の1947年(昭和22年)4月14日に財閥解体を目的とする独禁法が制定されています。戦後、アメリカは帝国陸海軍を解体し、憲法9条に戦争放棄条項を定めました。財閥の解体は独禁法に規定し、二度と財閥が復活できないように法制度を整えました。

太平洋戦争によるアジア人の被害者数は2000万人、日本人の被害者数は300万人とも言われています。アメリカも5~6万人の若者の命を犠牲にしています。

戦後、米ソの冷戦構造が始まるとアメリカの占領政策の転換が図られ、反共の砦としての役割を日本に求めるようになりました。

アメリカの占領政策の転換の結果、A級戦犯指定の解除を受けた戦前の指導者達は、戦後日本の政治をアメリカの手先となって担いました。その事実は、ネット社会の普及によってひろく国民に知られています。A級戦犯指定の解除を受けた中には、大本営発表の報道で戦争熱を駆り立てた読売新聞の正力松太郎や朝日新聞の緒方竹虎らの新聞人もいます。

日本国憲法は、アメリカの押し付け憲法であるとして、学校教育で軽視され無視されてきた上に、改憲解釈によっていつしか戦争が出来る国に変化し、財閥の復活を許さないことを目指した独禁法も、持ち株会社を認める法律改正が行われ財閥と同様の株主集団が形成されるようになりました。新聞の押し紙禁止規定の制定とその後の骨抜きの経緯についても、もっと広い視点から検討する必要がありそうです。

長崎出身の通産官僚だった古賀茂明さんが、『日本中枢の崩壊』(2011年・講談社刊)という衝撃的な題名の本を出版されてから15年が過ぎました。その後も、失われた30年と言われるように、日本の政治・経済・社会のあらゆる分野で底なしのモラル崩壊が進行しています。日本社会の底はすでに抜けてしまったと評する向きもありますが、裁判官をはじめとする司法に携わるものに対して、民主主義の最後の砦としての司法の役割を今こそ発揮することが期待されていると考えます。

最近、再び若い世代の債務整理の相談が増えているように思います。数百万円に及ぶ奨学金の借金を抱えており、しかも、親が連帯保証人になっているという相談を受けると、政治の貧困さをつくづく感じます。

足元に目を向けると、非正規雇用の増大と貧困、結婚率の低下と少子化、高校生・大学生を親ともども借金製造工場のラインに乗せるような教育予算の貧困、はては子供食堂から災害ボランティア、インバウンドの観光客流入まで、かつての世界第二位の経済大国の面影はどこにも見当たりません。

佐賀県では1機200億円と言われるオスプレイが17機も配備される予定であり、沖縄の辺野古沖の飛行場埋め立て工事は、軟弱地盤のため天井知らずに工事費が増大し続けており、大阪万博会場跡地にはカジノを誘致する計画があると言われています。そんな金があるのなら、何故、北欧のように若者の教育費に使わないのでしょうか。

新聞業界の押し紙問題については、熊本日々新聞や新潟日報社などは昭和40年代後半に自主的解決をはかっていますので、新聞労連を中心とする新聞社で働く若い人たちが中心となって、ジャーナリスト精神にのっとり自社の「押し紙」を無くすことに尽力されることを願っております。

※本稿は黒薮哲哉氏主宰のHP『メディア黒書』(2025年2月28日)掲載の同名記事を本通信用に再編集したものです。

▼江上武幸(えがみ・たけゆき)
弁護士。福岡・佐賀押し紙弁護団。1951年福岡県生まれ。1973年静岡大学卒業後、1975年福岡県弁護士会に弁護士登録。福岡県弁護士会元副会長、綱紀委員会委員、八女市役所オンブズパーソン、大刀洗町政治倫理審査会委員、筑豊じんぱい訴訟弁護団初代事務局長等を歴任。著書に『新聞販売の闇と戦う 販売店の逆襲』(花伝社/共著)等。

▼黒薮哲哉(くろやぶ・てつや)
ジャーナリスト。著書に、『「押し紙」という新聞のタブー』(宝島新書)、『ルポ 最後の公害、電磁波に苦しむ人々 携帯基地局の放射線』(花伝社)、『名医の追放-滋賀医科大病院事件の記録』(緑風出版)、『禁煙ファシズム』(鹿砦社)他。
◎メディア黒書:http://www.kokusyo.jp/
◎twitter https://twitter.com/kuroyabu

黒薮哲哉『新聞と公権力の暗部 「押し紙」問題とメディアコントロール』(鹿砦社)