《脱法芸能08》小栗旬は権力者と闘う「助六」になれるか?

小栗旬が俳優の労働組合結成の旗振り役として名乗り出たことを知った私は、「意外と適任かもしれない」と思った。

なぜそう思うかというと、伝統芸能のストーリーに「権力者と闘う役者」というロールモデルがあり、それが小栗と重なるからだ。

江戸時代、歌舞伎などの役者は風紀と秩序を乱すと見なされ制度的に差別され、住む場所を制限され、外出する際は編み笠の着用を義務づけられ、町人との交流を禁じられ、「河原乞食」「河原者」と言われ、汚らわしい存在として忌避された。

明治維新が起きて、表向き身分制度はなくなったが、芸能者に対する卑賤視は消えなかった。今でも年輩の俳優は、「俺たちは所詮、河原乞食だから」という言葉を口にする。

2009年に他界したタレントの山城新伍は、1997年に刊行された著書『現代・河原乞食考~役者の世界って何やねん?』(解放出版社)の中で、「この間」の話として、一般人から「河原乞食」と言われ、喧嘩になったエピソードを明かしている。

◆芸能界に求められている新たな「助六」の登場

だが、役者が権力に立ち向かい、差別と闘った歴史もある。

江戸中期まで役者は弾左右衛門という被差別民の頭領に支配され、櫓銭(やぐらせん)という興行税を払っていた。ところが、1707年、京都のからくり師(人形を操る芸人)小林新助が弾左右衛門に許可なく江戸で興行を打ったとして弾左右衛門の配下300人に芝居小屋を破壊されるという事件が起きた。

小林は弾左右衛門の不当性を訴えて幕府に裁判を起こした。結果、新助の主張が認められ、役者は弾左衛門に櫓銭を払わなくてよいという判決が出た。

これを聞いた江戸の歌舞伎役者たちは、もはや役者は不浄の民ではないということが公に認められたと捉え、大いに喜び、二代目市川団十郎は裁判の経過を「勝扇子(かちおうぎ)」という書物としてまとめ、家宝にした。

作家の塩見鮮一郎によれば、この事件をモチーフにしてつくられたのが、1713年に初めて上演され、現在の歌舞伎でももっとも人気がある演目である『助六』だと指摘している。
『助六』のストーリーは、主役の助六が意休という老人から友切丸という宝刀を奪うというものだが、助六が勝扇子事件を下敷きにしているとすると、助六は役者であり、意休は弾左右衛門であり、友切丸は当時の役者が支配者である弾左右衛門から奪い返した「興行の自由」が仮託されていたと見るべきだろう。

これを今の芸能界に置き換えると、助六はタレントの労働組合の委員長であり、意休は「芸能界のドン」であるバーニングプロダクションの周防郁雄社長であり、友切丸は契約書で芸能事務所に奪われたタレントの「実演の権利」にあたる、と解釈することもできる。

◆「助六」と重なる俳優「小栗旬」の軌跡

では、助六というのは、どんな人物なのか。

まず、助六は喧嘩に強い。物語の中で、助六は本来は鎌倉時代の武士である曾我時致だが、侠客の姿に身をやつし、吉原に出入りし、客に喧嘩をふっかけて刀を抜かせ、友切丸を探している。意休が友切丸を持っていることに気づいた助六は、意休を斬り殺し、友切丸を取り返す。

そして、助六は女性にめっぽうモテる。物語には、揚巻(あげまき)という花魁がヒロインとして出てくるが、揚巻は言い寄ってくる意休を嫌い、助六に夢中だ。そして、居並ぶ遊女十数人が一斉に「吸いつけキセル」を助六に手渡し、それを意休がうらやましそうに見ているシーンが出てくる。助六は女性の憧れの的だ。

一方、俳優の労働組合結成を宣言した小栗旬も、助六と同じく、喧嘩に強くて、女性にもモテる。

『クローズZERO』(2007年公開)、『クローズZERO II』(2009年公開)で、小栗は凶悪な転校生の主人公、滝谷源治役で、激しい喧嘩シーンをガチンコで演じきった。また、私生活では山田優との結婚後も浮気スキャンダルが絶えない無類の女性好きでもある。まさに助六を彷彿とさせる俳優ではないか。

小栗は『宇宙兄弟』(2012年)で、主役の南波六太役を演じた。少年時代にUFOを見たことから宇宙にあこがれ、宇宙飛行士になるという夢を負う兄弟の物語だが、出演のきっかなったのは、もともと小栗が漫画誌で連載されていた『宇宙兄弟』が大のお気に入りで、プロデューサーに「絶対、『宇宙兄弟』をやりたい」と話したことだったという。

小栗自身、とてつもない夢を追いかける、純粋な人柄なのだろう。歴史上、誰もなしえなかったタレントの労働組合を実現できる、無二の俳優なのかもしれない。

(星野陽平)

《脱法芸能01》私が『芸能人はなぜ干されるのか?』を書いた理由
《脱法芸能02》安室奈美恵「独立騒動」──なぜ、メディアは安室を叩くのか?
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《脱法芸能04》安室「奴隷契約」問題が突きつける日米アーティストの印税格差
《脱法芸能05》江角マキコ騒動──独立直後の芸能人を襲う「暴露報道」の法則
《脱法芸能06》安室奈美恵は干されるのか?──「骨肉の独立戦争」の勝機
《脱法芸能07》小栗旬は「タレント労働組合の結成」を実現できるか?

芸能界の「構造と力」を読み解く!
『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

 

《原発放談01》福島の放射能被害はチェルノブイリより酷くなる(小野俊一)

onodekitaさんこと小野俊一医師

 

「西村博之」と聞いて2ちゃんの「ひろゆき」氏がすぐには思い浮かばないように、「小野俊一」と聞いてピンとくる人はまだまだ少ない。だが、「onodekita」さんといえば、放射能情報に敏感な人は即座に「知ってる!」と答えるはずだ。

3.11直後から毎日休みなく福島第一原発動向をブログで発信し続けてきた「onodekita」さんこと小野俊一医師。東電、福島、被曝をめぐる諸相からメディア・識者批判にいたるまで、縦横無尽に語ってもらった200分インタビューを8回に分けて随時掲載する。

◆一日30人のアクセス数が事故後は1万人越え

── 「やむにやまれず書き始めた」という小野さんのブログは事故直後から話題でした。実際、アクセス数の急増はいつ頃からでしたか?

ブログの読者が目に見えて増え出したのは事故の2ヵ月後ぐらいだったと思います。ブログ自体は以前から医院の宣伝用に一般患者向けに始めていましたが、事故前のアクセス数は一日30人程度でした。

それが3.11の後、2011年の4月29日には一日1000人を超え、5月に入ると3000人、さらにその後は毎日1万人を越えるようになった。いまは若干落ち着いて1万人前後です。不思議なものでアクセス数が増えるとやる気が出ます。読者が減ると私のやる気も出てこない(笑)

── 2012年11月には『フクシマの真実と内部被曝』(七桃舎)を自費出版され、同書はすでに三刷目。累計販売部数はどれぐらいですか?(『フクシマの真実と内部被曝』Amazonリンク

『フクシマの真実と内部被曝』(2012年七桃舎)

4500部を越えました(2014年6月末時点)。ブログでの直販が2000部ほどであとはアマゾン経由がほとんどです。アマゾンで売り始めた直後は一週間に200冊とか300冊の注文が入り、配送するだけで大変でした。直販とアマゾンは一長一短。ブログ経由の販売は書籍代をなかなか振り込んでくれない人もいて、売り掛けチェックに手間がかかる。アマゾンはそういうことはないので便利ですが、販売価格の4割はアマゾンが持っていく。講演会での販売は600部ほど、キンドル版も販売していますが、まだまだ一日数冊程度です。

出版にあたっては当初、大手の出版社も興味を持ってくれましたが、あれこれ内容に口を出してくるので止めにしました。それで自分でISBNコードを買って出版業を立ち上げた。出版はずぶの素人だったので大変でした。誤字脱字がないようにできるだけ多くの方に読んでいただきながら原稿をまとめましたが校正は本当に難しい。引用・転載の許可手続きも自分でやってみて、一冊の本を作る大変さを思い知りました。

例えば当初、井伏鱒二の『黒い雨』も引用したかったのですが、これは日本文藝家協会という公益社団法人が著作権を管理していた。まるでJASRACのような団体で、わずかの引用でも結構な使用料をとられそうだったので諦めました。

逆にありがたかったのは、漫画『はだしのゲン』の転載ですぐに許可をいただけたこと。直接、作者の中沢啓治さん(2012年12月逝去)の御宅に電話をしてお願いしたのですが、奥様に趣旨を説明して、それを奥様が中沢先生に伝えると、電話口の遠くから「良しと言え!」と叫ぶ中沢先生の声が聞こえてきた。『はだしのゲン』は英語版など海外でも人気ですが、いかに中沢先生が『はだしのゲン』を世界の人たちに読んでほしかったがわかります。

◆東電時代の上司は武藤栄

── 小野さんが東電に入社したのは1988年。チェルノブイリ事故の二年後です。当時は原発にどんなイメージを持っていたのですか?

入社時には原子力の知識などゼロでした。ただ、日本に原発は必要だと思っていました。その一方で日本の原発は本当に安全なのか?と疑念もあった。原発問題でだれもが思う疑問は、原発を稼動して生まれる放射性廃棄物をどう処理するのかです。当時は東電社員として原発業務に携わっていながらも、核廃棄物の処理についてはきっと他の誰かがある程度考えているのだろうと他人事のように思っていた。しかし、現実にはだれも考えていなかったことがわかりました。

本にも書きましたが、日本の原発の安全性の根拠である格納容器にも素朴な疑問がありました。容器は所詮容器です。素朴に考えて、内部で圧力をかけ過ぎたら破裂することはありうると思っていた。そして、福島ではやっぱり破裂したわけです。

── 東電時代の上司のひとりが3.11時の武藤栄副社長ですね。

武藤さんはむちゃくちゃできる人。原発に関して言えば、一を聞いて十を知るぐらいの人でした。そんなに変な人ではないです。当時の武藤さんは原子力技術課長で40代。いまの私より若かった。

武藤さんが東大の学生だった頃は、「原子力は未来のエネルギー」と言われていた。だから、東大の原子力工学にはかなり優秀な学生が集まっていた。彼もその中の一人でした。いまの60代の原発技術者たちは皆優秀な人ばかりでした。

ただし、優秀だからといって、原発をめぐるすべての問題を考えているわけではありません。3.11以後の私のブログも武藤さんはおそらく知っていると思います。でも、そうした件で武藤さんからなにか言われたことはありません。いまも年賀状のやりとりはしていて、今年の年賀状には、「LNT仮説について調べています」と書いてありました。LNT仮説というのは直線しきい値無し仮説。被曝の線量に下限はないという説です。

── 朝日新聞がスクープした『吉田調書』を読むと福島原発事故の時、菅首相の対応は必ずしも間違っていなかったように思います。むしろ、事故当時、問題をこじれさせたのは、首相官邸と事故現場のコミュニケーションを仲介していた東京電力の武黒一郎フェロー(現国際原子力開発株式会社社長)の対応のようにも思えますが、東電時代に武黒さんをご存知でしたか?

菅さんついては私もそう思います。事故当時、菅さんの行動には頭に来ていたけれど、いまふりかえってみるとよく対応してくれたと思います。武黒さんとは直接仕事をしたことはありません。

ただ、社内の話を聞く限り、「話が通りやすい人」だとは聞いていました。武藤さんもそうですが、東電で「できる人間」というのは、役人の言うことをよく聞く。とにかく役人には「はい」という。役人の言い分が間違っているとわかっていても反論せずに一旦引き下がる。

ずいぶん以前の東電の元副社長で初期の原子力部門トップだった豊田正敏という方がいます。いま90歳ぐらいの方ですが、事故の最中、武黒さんが彼に会いに来たと週刊誌の記事で以前、語っていました。武黒さんは豊田さんに「こんなの二、三日で止めさせてみせますよ」と言って、官邸に向かったそうです。

◆被害はチェルノブイリより酷くなる

── でも、実際は二、三日どころか、二、三年経っても、酷い状況が続いています。

「現実的な回答がない」というのが事実でしょう。どういうことかというと、汚染があまりにも酷く広範だということです。放射能汚染が福島県だけではなく、もっと広範囲。福島県だけならば、行政は福島に限定して汚染対応をすればいい。しかし、現実は首都圏まで汚染されている。さらに新潟などまで入れだしたら、日本列島の半分ぐらいは汚染されていて、行政は対処しきれない。本州だって汚染範囲は必ずしも東日本だけではない。西日本も汚染されているでしょう。名古屋あたりでは突然死が出てきています。大阪などでも顔が焼けたように赤くなるベータ熱傷が多数出てきている。もっといえば、九州、ここ熊本だってなんらかの核汚染が出てきています。

◎[参考リンク]大熊町内の土壌汚染調査結果のお知らせ(大熊町役場会津若松出張所2011年6月30日付)

福島から出た放射能は公式にはチェルノブイリの7分の1とされています。これはウソなんですが、「公式発表」ではそうなっています。しかし希ガスの発生量はチェルノブイリより福島の方が公式でも多い。公式発表の数値を百歩譲って認めたとしても、福島土壌の最汚染のレベルはチェルノブイリと変わらないかむしろひどいといえます。したがって被曝の被害は日本でも絶対に出る。しかも土壌汚染の度合いが同じに加えて、日本の方が被爆地の人口密度は格段に高い。それを加味すれば、被害はチェルノブイリより酷くなると公式発表からでもそういえます。

放出量で何倍だったのかの論議をすると水掛け論になってしまう。でも、実際の土壌汚染で見れば最も汚染レベルが高い最汚染地帯の値はセシウム137でチェルノブイリが1800万ベクレル。対して福島の大熊町は3000万ベクレルです。公式発表でも最高土壌汚染値では福島の方が高いです。[つづく]

 

ブログ「院長の独り言」 

▼小野俊一(おの しゅんいち)(小野・出来田内科医院院長)

1964年広島生まれ宮崎育ち。東京大学工学部(精密機械工学科)を卒業後、1988年に東電に入社。福島第二原発(5年間)と本店原子力技術課安全グループ(2年間)で7年間勤務。1995年に退社後、熊本大学医学部に入学し、2002年卒業。NTT病院等の勤務を経て、熊本市の小野・出来田内科医院院長。『フクシマの真実と内部被曝』(2012年11月七桃舎)

◎ブログ「院長の独り言」 http://onodekita.sblo.jp/

[2014年6月26日熊本市 小野・出来田内科医院にて] (構成=デジタル鹿砦社通信編集部)

 

◎onodekitaさんこと小野俊一医師200分インタビュー![全8回]

《原発放談01》福島の放射能被害はチェルノブイリより酷くなる(2014年9月15日)

《原発放談02》東電の「できる人」は役人に決してNOと言わない(2014年9月17日)

《原発放談03》自分で真実を想定していくしかない(2014年9月19日)

《原発放談04》そもそも早野龍五さんは原発を知らないです(2014年9月21日)

《原発放談05》被曝由来の病気は「個発」でなく「群発」(2014年9月24日)

《原発放談06》分断される「原爆」と「原発」(2014年9月26日)

※《07》《08》は近日公開予定!

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「朝日新聞叩き」で進行する「原発事故の本質」隠し

断言する。吉田調書、慰安婦報道問題で朝日新聞に対する批判は全く不当だ。双方の問題に共通するのは、細部に誤報があったのは事実にしても、それによって報道被害を受けたのが一体誰であるかという視点での批判、報道が決定的に欠落している点である。

私は朝日新聞の信者でも擁護者でもない。破格の給料を得て、エリート面した一部の朝日新聞記者の顔を思い出すと庇ってやるのは気が引ける。しかし朝日新聞を攻撃する陣営(安倍、読売新聞、産経新聞、週刊文春、週刊新潮)の攻撃論拠には全く同意できないし、明確な悪意に満ちている。攻撃者が批判したいのは「朝日新聞」自体ではなく、慰安婦問題、原発問題における「朝日新聞的主張」ではないのか。

吉田調書の扱いなどそもそも勘違いしようが、しまいが何一つ未来が変わることがない枝葉末節の問題だ。産経だって朝日に先立ちネット記事に吉田調書の要約を掲載していたし、その中には「これが産経の記事か!」思われるような記述もあった。9月12日の朝刊に「吉田調書」の全文が掲載されていたので読んだ。やはり枝葉末節の勘違いに過ぎない。これによって市民が傷つくことはない。

◆原発事故の本質をなぜ放置する?

そうだ。留意すべきは、この報道により、一体誰が傷つくとかということである。困るのは東電と国だけではないのか。しかもそれがどのような経緯であったにせよ、争われている事実関係は、既に3年前のことであり、その時に作業員が福島第二に退避していようが、いまいが今日の惨状になんら影響するものではないではないか。

事故検証の間違いを指摘するならば、「政府事故調査委員会」(畑村洋太郎会長)が「個人の責任は問わない」として始めた事故調査のあり様を批判した報道機関がどれほどあったというのか。航空事故や食中毒で国の「調査委員会」が発足すれば、必ず責任者や問題点を特定する。そして警察や検察が責任を追及する。そうしなければ「調査委員会」の意義はないから当然だ。だが、原発事故の「政府事故調査委員会」は当初より個人責任の追求を放棄して調査を行った。そんな調査のどこに意味があるのかという議論は、今回の朝日新聞叩きに比べれば行われなかったに等しい。

大手全国紙、地方紙、週刊誌などがこぞって朝日批判を展開しているが、それよりも現在も連続的に進行している原発事故の本質をなぜ放置するのだろうか。今回、ここぞとばかりに朝日新聞批判に熱心な勢力は、原発推進の旗色を明確にしているメディアが中心だ。

慰安婦問題も同様である。週刊誌は「1億人が被害者」などと書き立てるが、バカもいい加減にしろだ。吉田発言が虚構であっても、それを凌駕する日本軍自体の公式文書や当時の政府文書で「慰安所」設置が行われたことは既に立証済みであり、吉田清治発言は傍証に過ぎない。政府の公式見解だって「慰安婦」の存在を認めている。朝日新聞叩きに熱心な連中は吉田発言を朝日が掲載したことよりも、「従軍慰安婦」は無かったことに葬り去ろうという本音を隠さない。桜井よし子など右派の論客を多用して「この国の誇り」だの「自尊心」だのを相も変わらず繰り返しているが、この国の「ホコリ」を問題にするのであれば、東日本、いや世界中に拡散した放射性物質の「ホコリ」をなぜ取り上げないのだ。

◆「朝日叩き」が示すのは日本社会の「戦時下」状態

奇しくも同姓の「吉田」発言が引き金となって異なる2つの事件で総攻撃を受けている朝日新聞。でもこの2事件には共通点がある。

まず加害者とされる立場の者がいずれも国である点。次にその被害者に対して加害者は保障を頑なに拒み続けている点、さらにいずれも国民を騙しながら進められ詭弁によって正当化を図ろうとしていた欺瞞に満ちた国策である点である。

つまり、メディアが結託して国が犯した、裁ききれないほど重大な犯罪を「無かったもの」に仕立て上げようとする大規模な世論操作・誘導であるのだ。

朝日新聞を叩くのであれば、その社名の後ろにはためく旭日旗のような社章をいまだに使い続けていることや、2011年に福島県健康リスクアドバイザーとしてわざわざ長崎から着任し「100ミリシーベルト以下は安全」と大嘘をのたまった山下俊一(現福島県立医大副学長)に「日本癌大賞」を授けたことこそ指弾されるべきだ。

体制派マスコミにそのような視点は見当たらなし、今後も期待するのは無理であろう。言論も既に「戦時下」状態に置かれていることを示したのが今回の朝日新聞叩きの本質と見るべきだ。

(田所敏夫)

 

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《屁世滑稽新聞05》凍土壁づくりは大失敗!氷水かぶって東電幹部が“みそぎ”?

(屁世26年9月13日)

凍土壁づくりは大失敗!東電幹部が氷水かぶって“みそぎ”?……の巻

 

2011年3月、爆発した福島第一原発3号機を冷やすために、

自衛隊の消防車が必死で放水をつづけた。

その水をあびて謝罪の“みそぎ”をする東電幹部たち。

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福島原発災害の発生直後(2013年4月)から翌年5月末まで

NHK経営委員会の委員長として国民の耳目をすっかりシビれ

させることに貢献。この4月にはシビれ稼業の総本山・東電の

会長に就いた数土文夫(すど・ふみお)氏。さすがは元・

放送業界の重鎮。ふくいち原発4号機の再処理燃料プールに

トップアイドルグループを招き、和気あいあいとアイスバケツ

チャレンジを楽しんだ。

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YCO with 廣瀬社長 「Sorry State Survivor」

東電社長の廣瀬直己(ひろせ・なおみ)氏は、日本原子力発電と

日本原燃株式会社の取締役もつとめる原子力業界の大ボスである。

しかも小ブッシュ・父ブッシュ・爺ブッシュが三代つづけて学んだ

米国イェール大学の出身。けれども新宿高校時代には、坂本龍一先輩

に誘われてデモに参加していたこともある。坂本先輩に誘われて、

イエローケーキ・オーケストラのアルバム制作にも参加したが、

ジャケ写撮影ではかつてデモでかぶった“あぶない集団”のヘルメット

姿でアイスバケツ・チャレンジに挑むという、お茶目な一面をみせた。

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ご隠居 「おい与太郎、おまえさんが持ってるバケツ、煙が出てるぞ!

この暑い日に、バケツに何いれて持ち歩いてんだ?」

与太郎 「あゝ、ご隠居さん、暑中お見舞いもうします。

バケツのこれ、ドライアイスです。これからちょいと田んぼに行って

ドジョウをごっそり捕ってくるんですァ!」

ご隠居 「お見舞いモウします……って、なんだおめえ、他人様の田んぼで

ドジョウを盗んでくるのか。モウします、じゃねえだろ!

もうそんなことするなよ、オトナなんだから」

与太郎 「とんでもねえや、ご隠居。ドジョウに逃げられっぱなしの

あっしですが、すごいことを思いついたんですァ~」

ご隠居 「それがバケツ一杯のドライアイスってことか?」

与太郎 「ご名答! こうやってわざわざドライアイスを買い込んだのは他でもない。

田んぼにぶちこんでカチンカチンに凍らせれば、泥んなかに隠れてるドジョウが

とり放題だ! どんなにトロい奴でも、池ごと凍らせればサカナの取り放題!

どうっすか? あっしって天才でしょ? 天才って言って下さいな、旦那」

ご隠居 「わざわいのほうの“天災”だわな。おまえさん、この暑いさなかに

田んぼにそれっぱかりのドライアイスをぶちこんで、凍るとでも思っているのかい?

……だから義務教育くらい受けておけって、おまえのご両親にさんざん言ったんだけどなぁ」

与太郎 「ご隠居、あっしを馬鹿にするんですかい? この件にかぎっては、あっしを

馬鹿にするのは日本の最高頭脳のトーダイのえらい先生がたや、トーデンのえらい

社長さまを馬鹿にするってことにシトしいんですから! 覚悟がいりますぜ」

ご隠居 「で、そのトーダイの先生とやらは、どんな仕事してるんだ?」

与太郎 「きまってるでしょ。たまごっち作ってるんですよ」

ご隠居 「馬鹿、それはバンダイだっての。じゃあトーデンでどんな会社だよ?」

与太郎 「へい、結婚式場ですァ」

ご隠居 「馬鹿、それは玉姫殿だろ」

与太郎 「だけどトーデンだってきっとお目出てえ会社にちげえねえ」

ご隠居 「なんでだよ?」

与太郎 「だって犬エッチケーのニュースで、光りもんを全国津々浦々にばらまいたって

言ってましたぜ。いまどき金貨や銀貨をほうぼうにばらまくなんて、ほんとに

ありがたい会社じゃねえですか」

ご隠居 「馬鹿。トーデンがばらまいたのは金貨や銀貨じゃねえよ。光りもんじゃなくて

ピカりもんよ。そりゃ金や銀よりも重たいウランとかプルトニウムとかを

ばらまいたけど、そんなもん吸い込んだらあの世行きだぜ」

与太郎 「極楽浄土に導いてくれるなんて、ありがてえ!ありがてえ!

南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏!」

ご隠居 「おお、こいつ。習わぬお経を詠んでやがる。まったく門前の小僧だわこりゃ……。

で、与太郎よ、トーダイとかトーデンの連中が何をしてるって?」

与太郎 「へい。福島の原発の小便もれが止まらないから、ドライアイスをぶちこんで

地べたを凍らせて“氷の塀”をつくって、それで小便が海に流れ出るのを

食い止めるっていってますぜ」

ご隠居 「馬鹿。そんなことで“氷の塀”なんかできねえぜ。“地べたを凍らせて囲いを

作るんだって?”“へい”……って、そりゃ身も凍るオヤジギャグじゃねえか。

しかも駄洒落にしても馬鹿すぎるだろ。馬鹿しか思いつかねえよ、そんなこと。」

与太郎 「でも天下のトーダイとトーデンですぜ?」

ご隠居 「だったらおまえ、腹巻きにドライアイスを仕込んで寝りゃイイじゃねえか。

腹がすっかり凍りついて、小便もカチカチに凍って、寝小便せずにすむぞ。」

与太郎 「いくらご隠居でも、そんな馬鹿げた子供だましで、あっしをダマせませんぜ」

ご隠居 「ほらみろ。トーデンがやってるのはナ、“おらサの会社はがんばって対策とってる

から許してクンろ”って見せびらかすだけの、アリバイ作業なんだよ。

真夏の炎天下に、熱がこもった地べたの穴にドライアイスをぶちこんで、それで

地下が凍るなんて、本気で信じているとすれば、そりゃ正真正銘のバカだってことだ」

与太郎 「……だけどトーデンは氷水で原発を救おうとしてるじゃないですか! じっさい!」

ご隠居 「トーデンの社長とか会長は、それこそ氷水をかぶって頭を冷やすべきだな。

それに今どきは、人まえで氷水をかぶって見せびらかして、“おらサは善人でげす!”と

宣伝するような不粋なもんが流行ってるようだし」

与太郎 「氷水なんかかぶったら、脳みそがこごえ死んじまいますぜ!」

ご隠居 「だ~から~、たかだかバケツ一杯の氷水をかぶったところで、そんなことは起きないの!」

与太郎 「バケツの氷水をかぶりますか? それとも1万円寄付しますか?

それとも両方ともやりますか?」

ご隠居 「なんだそれ?」

与太郎 「いま世界じゅうで流行ってる“アス・バケツ・チャレンジ”とかいうのが、そういうルール

だってことです。ただ氷水かぶるよりも、お金がもらえてお得です」

ご隠居 「馬鹿。あす(明日)じゃねえよ。英語の“アス(ass)”はケツの穴だ。だれがケツの穴で

バケツチャレンジするんだよ? それこそ“尻にチカラ”の東京臀力じゃねえか。

それに氷水をかぶった奴が金をもらえるわけじゃないよ」

与太郎 「だけど、もしトーデンのえらい人が“東京臀力を救うためにマ~タマタ値上げしますよ。

お金をわが社に寄付してくださいね。それがイヤなら氷水をかぶって下さい。両方やっても

かまいませんよ”とか言いながらテメエで氷水をかぶって“ハイ、次はお客さん、あんたの番だ!”

って宣言したら、トーデンのお客からガッポガッポと寄付があつまるわけでしょ?」

ご隠居 「だまされて金を払う奴もきっといるから、おまえさんの言ったとおりになりそうだが、

でもそれは無限連鎖講という詐欺とおなじ手口だからな」

与太郎 「日本の頂上をきわめる学校を出て、頂上をきわめる大会社の、その頂上をきわめたエラい人が、

詐欺まがいのことをやってるとしたらスゲエこってすね。あっしは悪役ってのが好きだから

こりゃシビレちまうわ」

ご隠居 「そりゃ相手は電気屋だ、シビレることをしても不思議じゃねえや」

 

無断引用・転載を大歓迎します。

ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=4469)から引用》と明記して下さい。

なお、ここに記した内容はすべて、寝苦しい真夏の夜にみた、夢にすぎません

 

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《脱法芸能07》小栗旬は「タレント労働組合の結成」を実現できるか?

私は拙著『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』では、様々な資料を駆使して、あらゆる角度から日本の芸能界を検証しその問題点を浮き彫りにすることを目指した。

日本の芸能界の問題は、構造的なものであり、連綿と続く歴史的背景がある。では、どうすれば解決できるのか。私はそのモデルを求めて、世界屈指の市場規模を誇るアメリカのエンターテインメント産業の歴史と構造を調べた。

日本と比べ、アメリカのタレントが主体的にパフォーマンスに取り組め、報酬面でも権利面でも擁護されているのは、3つの柱がある。すなわち、①「タレントによる労働組合の結成」、②「反トラスト法(独占禁止法)による芸能資本の独占排除」、③「専門法によるエージェントの規制」だ。

歴史的経緯を調べると、まず、最初に出てきて、なおかつ重要度が高いのが①の「タレントによる労働組合の結成」だ。私は『芸能人はなぜ干されるのか?』を出版すれば、いずれタレントから労働組合結成の声が上がってくるはずだと思っていたが、遂にその時がやってきた。

8月に出版された『クイック・ジャパン115』(太田出版)で売れっ子の若手俳優、小栗旬が友人の俳優、鈴木亮平との対談で労組結成への思いを打ち明け、「ぼちぼち本格的にやるべきだなと思っています」と語っているのだ。

◆「巨大組織」に抗する覚悟はあるか?

労働組合の結成の目的は、優れた作品をつくり、俳優の労働条件を改善することが目的で小栗が旗振り役になるつもりだという。

小栗のその決意の背景にあるのは、芸能界の現状に対するいらだちだ。たとえば、「アメリカなんかは、メジャー作品にこの前まで無名だった俳優が、ある日突然主役に抜擢されることがあるのに、日本ではそういうことはほとんどないという現状がある。それを起こすためには、大前提としてスキルを持っていないとできないので、その力をみんなでつける場所を作りたいということですね」」として、自ら借金をして、俳優が自分たちを向上させるための稽古場を建てているという。

日本の芸能界では大手芸能事務所によるパワーゲームでキャスティングが決まる。その悪習を打破して、真の実力主義を導入すべきだというのである。

その先には、俳優による本格的な労働組合の結成という目標があるが、「みんなけっこう、いざとなると乗ってくれないんですよ」「ここのところはちょっとね、負け始めてます」と言っている。その理由は、「組織に。やっぱり組織ってとてつもなくでかいから、『自分は誰かに殺されるかもしれない』くらいの覚悟で戦わないと、日本の芸能界を変えるのは相当難しいっすね」と述べている。

小栗が言うところの「組織」とは、「芸能界のドン」と呼ばれる、バーニングプロダクションの周防郁雄社長を盟主として仰ぐ、業界団体、日本音楽事業者協会(音事協)のことだろう。

小栗が所属する芸能事務所は、トライストーン・エンタテイメント。あまり知名度はないが、音事協に加盟している。また、小栗の対談相手の鈴木亮平は、音事協加盟で老舗のホリプロに所属している。タレントの生殺与奪の権利を握る「組織」に所属し、多くのメジャー作品に出演している2人による労働組合構想はきわめてリスクが高い。

◆業界権力者の意向を恐れず、闘い続けた米国タレント労組の歴史

アメリカのエンターテインメント産業においてもタレントの労働組合の結成は難事業だった。

アメリカの演劇界では1913年に労働条件の改善を訴えて俳優が労働組合、アクターズ・エクイティ・アソシエーション(AEA)を結成したが、劇場マネージャーの連合体である劇場シンジケート側は、AEAの有力メンバーを買収し第2組合を設立させたり、AEAに加盟していない地方の俳優を使って公演をしたりして、AEAの活動を妨害した。

この動きに対抗するべく、AEAは日本の連合(日本労働組合連合会)にあたるアメリカ労働総同盟に加盟し、他のタレントの組合と連携して組織力を強め、大々的なストライキを実施し、チャリティ公演を行ない資金不足を補った。そうした努力を積み重ね、最終的に劇場シンジケート側は、白旗を揚げ、俳優たちの要求を飲んだ。

ハリウッドの映画俳優たちは1933年に「スクリーン・アクターズ・ギルド」という労働組合を立ち上げた。

ハリウッド・スターといえば、今でこそ莫大な報酬を得ることで知られるが、当時の労働環境は劣悪だった。当時のハリウッドは「スタジオ」と呼ばれるメジャー映画会社が牛耳り、俳優たちはスタジオの裁量で自動更新される長期契約を強いられ、朝8時から深夜まで及ぶ長時間労働を余儀なくされた。

SAGが設立された直接のきっかけは、映画会社による大幅な賃下げの実施だった。当初、SAG加盟社は少数だったが、プロデューサー同士が俳優の競争入札をしないという、日本の五社協定のような申し合わせが成立したことがきっかけとなり、SAGの加入者は3週間で80人から4000人まで膨れあがった。

1935年5月9日、数千人の俳優たちがハリウッドのリージョン・スタジアムに集まり、ストライキの実施を支持した。これ以降、SAGと映画会社が交渉し、映画界のルールを決める習慣が定着するようになった。

アメリカのタレントたちが業界の権力者の意向を恐れず、パフォーマンスに専念でき、なおかつ高収入を得られるのは、そうした努力の積み重ねによるものだ。

そして、ようやく日本の芸能界にも、団結して立ち上がることを主張する俳優が現れた。今、日本の芸能界は歴史的な曲がり角を迎えているのかもしれない。

(星野陽平)

《脱法芸能01》私が『芸能人はなぜ干されるのか?』を書いた理由

《脱法芸能02》安室奈美恵「独立騒動」──なぜ、メディアは安室を叩くのか?

《脱法芸能03》安室奈美恵の「奴隷契約」発言は音事協「統一契約書」批判である

《脱法芸能04》安室「奴隷契約」問題が突きつける日米アーティストの印税格差

《脱法芸能05》江角マキコ騒動──独立直後の芸能人を襲う「暴露報道」の法則

《脱法芸能06》安室奈美恵は干されるのか?──「骨肉の独立戦争」の勝機

業界水面下で話題沸騰6刷目!

『芸能人はなぜ干されるのか? 芸能界独占禁止法違反』

高市・稲田ネオナチ写真騒動──2年前の茶番写真を欧米メディアが報じた理由

9月3日、安倍晋三首相は内閣改造に踏み切った。話題となっているのは、女性の起用が目立つこと。女性閣僚の数は、過去最多の5人。党三役の政調会長を加えれば、6名が女性だ。

内閣改造後、支持率も上昇し、国民からの期待も高まっているが、思わぬ横やりが入った。

総務相に就任した高市早苗氏と自民党政務調査会長となった稲田朋美氏が、ネオナチを標榜する極右団体代表とともにツーショットで収まった写真がネット上で公開されていることが発覚し、国際問題となっているのだ。

写真が公開されていたのは、「国家社会主義日本労働者党」を名乗る右翼団体のウェブサイトで、高市総務相、稲田政調会長とともに写っているのは、同団体代表の山田一成氏。

この問題は、英紙ガーディアンなど海外の主要メディアが日本の右傾化と絡めて報じ、さらに世界的に有名なユダヤ系団体の「サイモン・ウィーゼンタール・センター」(本部・米ロサンゼルス)が「議員らは(同団体が掲げる)ネオナチの思想を明確に非難すべきだ」と声名をだすなど、世界中に波紋を呼んでいる。

なぜ、このような写真が撮影されたのか。

事情を知る関係者は、「写真が掲載されたのは、2年前のこと。これまでずっと掲載されていたのに、なぜ今ごろ問題になったのか」と首をかしげる。関係者が続ける。

「高市氏も稲田氏も山田氏の素性を知らないで写真を撮影したのでしょう。もともとこの写真は、オークラ出版が刊行していた『撃論』という保守系の雑誌の企画で山田氏がインタビュアーとして面談した際に撮影されたものです」

では、なぜ山田氏は写真を公開したのか。

「もともと山田氏は『撃論』の仕事をフリー編集者のI氏から受けていましたが、2011年に版元のオークラ出版が『撃論』を休刊にするという方針を出しました。仕事がなくなることを恐れたI氏は、山田氏に『オークラ出版の社長を脅して、休刊の決定を覆して下さい』と依頼。それを受けて、山田氏はオークラ出版の社長と交渉し、休刊を思いとどまるよう説得しました」

それが功を奏したのか、『撃論』の休刊は撤回されたという。

「ところが、I氏は義理のある山田氏を『撃論』から排除してしまったのです。山田氏は自分が切られたのは、『撃論』にの編集方針に影響力を持っていた筑波大学名誉教授の中川八洋氏がI氏を操っているためだと考えていたようです。ともかく、右翼としてのメンツを潰された格好の山田氏は、ただちにI氏を追い込もうと行動を開始し、I氏や『撃論』を中傷するネット記事を公開したり、新聞を作ったり、I氏が過去に関わった事件を問題にしてI氏の取引先に質問状を提出して、警察沙汰になったりしました」

その活動の一環として、山田氏は取材の際に撮影した高市議員、稲田議員の写真をネットに公開したのだという。

「極右活動家の自分とのツーショット写真が公開されたら、『撃論』を出版しているオークラ出版も困るだろう」というのが山田氏の考えのようだったが、写真は世間からは注目されず、山田氏の思惑は不発に終わった。

高市、稲田両議員がたまたま今回の内閣改造人事で出世したのを機に写真の存在が注目されるに至ったが、問題の写真には政治的な背景などないというのが結論だ。

2年前に話題にならなかった写真が今になって注目された理由には、これまでになかった本格的な保守政権である第2次安倍政権の誕生と在特会のようなネオナチを彷彿とさせる市民団体の跋扈していることも。バカバカしい話が発端の今回の騒動が国際ニュースとして大々的に採り上げられたのは、「日本の右傾化」が現実的なものとして語られるようになったことを示している。

(星野陽平)

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《書評》訴訟顛末も暴露した宝塚カゲキ100周年記念本!

タカラヅカ スキャンダルの中の百周年

 

宝塚歌劇100周年ということで、久しぶりに鹿砦社から宝塚に関する書籍『タカラヅカ スキャンダルの中の百周年』が上梓された。鹿砦社では、過去に多くの宝塚書籍を出版してきたが、本書は、宝塚の歴史が通観できるよう、それらをわかりやすくまとめたものである。

百周年ということで、テレビや雑誌などでも、宝塚に関する明るく華やかな話題には事欠かないが、それは宝塚の一面に過ぎない。

何事も、表があれば裏があり、宝塚もその例外ではない。しかし、宝塚の裏の部分は、90年代に鹿砦社が書籍を通じて報じるまでは、ほとんど表立って語れられることはなかった。それは、宝塚歌劇団が阪急という大資本の傘下にあったからだ。

首都圏在住者には実感しづらいかもしれないが、関西圏での阪急資本の力は絶大で、阪急に睨まれるようなことは絶対的なタブーなのである。

そのタブーを侵した鹿砦社は、当然ながら無傷ではいられず、出版差し止め訴訟を争うことになる。その経緯は、本書補章「『タカラヅカおっかけマップ』出版差し止め始末記」に詳しい。ネズミが象に挑むような厳しい戦いの中で一矢報いたことで、鹿砦社は、宝塚の批判書を出しても阪急に見て見ぬフリをされるという「特権」を手に入れ、今日もこういった書籍を出すことができている次第である。

◆「清く正しく美しく」の裏側を真っ当に検証した独自情報も満載!

本書は以下のような構成となっている。

まず、一章「タカラヅカのオモテとウラ」では、宝塚の全体イメージがつかめるように、宝塚とはどんなところかということを記している。

鹿砦社の出版物というと、批判ばかりと誤解されがちだが、決してそんなことはない。他がアゲ記事ばかりに著しく偏向しているのでそのように見えてしまうだけであり、ここでは、問題点は提起しつつも評価すべき点は評価し、いたって中立の立場で宝塚を論じている。宝塚の歩みから、お金のかかり続ける構造、特異なファンクラブの実態など、宝塚を理解する上で欠くことのできない基本事項が一通り網羅され、バランスの取れた「宝塚観」を得ることができるであろう。

第二章「タカラヅカいじめ裁判」は、2008年に起こった、音楽学校でのいじめ事件をたどったものである。これに関しては2010年、鹿砦社が出版した『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判─乙女の花園の今─』(山下教介)に詳しいが、本書では、事件の経緯を簡潔にまとめ、事実関係だけなら、こちらよりもシンプルに把握しやすくなっている。

この事件では、いじめ事件の当事者たちもさることながら、一番の元凶は、適切な対処を講じるどころかむしろいじめの加担に回った音楽学校職員の大人たちであったことが良くわかる。一番弱い被害者にすべてを押し付けてやり過ごした彼らは、公務員も顔負けの、無責任と事無かれ主義に徹した、悪い意味でのサラリーマン根性丸出しの人種だ。これはおそらく、阪急という企業の体質と社員のレベルを端的に示すものであろう。

事件の概要を頭に入れた上で、ぜひより詳細な『ドキュメント タカラヅカいじめ裁判─乙女の花園の今─』も併せて一読することをおすすめする。

第三章「ジェンヌの金にまつわる事件」、第四章「ジェンヌの受難」では、ジェンヌや元ジェンヌにまつわる、過去の様々な事件や事故を具体的に網羅している。特に古い事件・事故に関しては、今となっては掘り起こしの難しいものも多く、貴重な記録となっている。「自治労横領金でタカラジェンヌが接待!?」「福知山線脱線事故に遭遇したサラブレッドジェンヌ」など、時代を反映した騒動にジェンヌたちが巻き込まれる様が生々しく伝わってくる。

また、宝塚のみならず、舞台エンターテインメントの歴史の中でも最悪の事故といわれる、ジェンヌが胴体を切断されて亡くなった「宝塚を震撼させたあまりにも悲惨な事故」は、長年語られることなく埋もれていた話が、90年代の鹿砦社の書籍を通じて、広く知られるところとなったものである。

第5章「ジェンヌの結婚・家庭・家族」では、ジェンヌや元ジェンヌのプライベートな人間関係に迫っている。スターであり、人気芸能人である彼女たちもまた、一人の人間であり女性である。華やかな生活の裏に、一般人にも通じる喜びや苦悩を秘めて生々しく生きる姿は、特に女性にとっては、共感が持てる興味深いものであろう。

情報化社会にあって、宝塚が標傍する「清く正しく美しく」を真に受けている人は、もはやファンを含めてもそんなにいるものではないだろう。本書は、そんな現代人の常識にかなった、きわめてまっとうな宝塚書なのである。

(斉藤 香)

タカラヅカ スキャンダルの中の百周年

 

新聞協会賞「和歌山カレー事件報道」も実は誤報まみれだった朝日新聞

慰安婦問題に関する誤報を長年放置したうえ、いざ誤報を認めても謝罪をせずに大バッシングにさらされている朝日新聞。実は同紙には、他にも長年に渡って放置し続けている重大誤報がある。それは、あの和歌山カレー事件に関することである。

何者かが夏祭りのカレーにヒ素を混入し、60人以上が死傷した大事件をめぐり、朝日新聞が「大スクープ」を飛ばしたのは1998年8月25日のこと。事件発生から1カ月になるこの日、同紙の朝刊一面には次のような見出しが大々的に踊った。

《事件前にもヒ素中毒 和歌山毒物混入 地区の民家で飲食の2人》(大阪本社版)

この「大スクープ」は、のちに死刑判決を受けた林眞須美(一貫して無実を訴え、現在も再審請求中)に対するマスコミ総出の犯人視報道を誘発。朝日新聞自身もこの日以降、眞須美らが人にヒ素を飲ませる手口で保険金詐欺を繰り返していた疑惑を連日大々的に報じた。その結果、同紙は1999年度の新聞協会賞を受賞しているが――。実はその報道はおびただしい誤報の連続だったのである。

「架空のヒ素中毒」を連日報じるなど、誤報まみれだった朝日新聞のカレー事件報道

◆実は「大スクープ」も誤報

たとえば、上記の「大スクープ」もそうだ。この記事では、事件前に林眞須美宅を訪ねた2人の男性がヒ素中毒に陥っていたように報じられていた。さらに朝日新聞はこの「大スクープ」以降も大阪本社版だけでゆうに10回以上、同様の情報を伝える記事を掲載している。しかし、のちに林眞須美の裁判で明らかになったところでは、この2人のうち、本当にヒ素中毒に陥っていたのは1人だけだった。しかもヒ素中毒に陥っていた1人についても、保険金を詐取するために自らヒ素を飲んでいた疑惑が公判で浮上しているのである。

マスコミはほとんど報じていないが、実はこの2人の男性は林眞須美やその夫・健治と保険金詐欺の共犯関係にあったことが裁判で判明済みだ。しかし事件発生当時、朝日新聞はそのことに一切触れず、他にも以下のような誤報を連日飛ばし、林眞須美がカレー事件の犯人だと世間に印象づけていったのである。

【1】上記2人の男性が3年間に少なくともそれぞれ10数回にわたって救急車で運ばれていたと報道(大阪本社版1998年8月26日朝刊)→証拠上、そんな事実は存在しない。

【2】上記2人の男性のうち、本当はヒ素中毒に陥っていなかったほうの男性について、林眞須美夫婦が詐取した保険金の受取人だった法人の「従業員」だったと報道(大阪本社版1998年8月26日夕刊)→正しくは、この男性は法人の「代表取締役」で、保険金詐欺に使われていると知りながら法人の名義を林夫婦に貸していた。

【3】上記の2人の男性以外にも事件の数年前から林眞須美宅をたびたび訪れ、手足のしびれや吐き気を訴えていた30代の男性が存在し、その男性が受取人は第三者とする複数の生命保険を契約していたかのように報道(大阪本社版1998年8月31日朝刊)→証拠上、そんな人物は存在しない。

……とまあ、朝日新聞のカレー事件報道はまさに誤報、誤報の連続だった。しかし、同紙がひた隠しにしているため、この誤報問題を知る人は世の中にほとんどいないだろう。

◆誤報を認めない朝日新聞

筆者は2008年ごろ、この誤報問題に関する考えなどを聞こうと、同紙を代表して新聞協会賞を受賞した大阪本社編集局地域報道部長(受賞当時)の法花敏郎氏に取材を申し込んだことがある。しかし、折り返しで電話をかけてきた法花氏は「『朝日』では、記者個人が記事に関する問い合わせには応じない。大阪本社の広報部に電話してくれ」という旨を一方的にまくし立て、話の途中で電話を切ってしまうような人だった。そこで筆者は大阪本社の広報部に対し、書面で同紙のカレー事件関連の誤報を26点指摘したうえ、訂正記事を掲載したか否かなどを質問したのだが、「弊社としましては、何もお答えすることはありません」という回答が返ってきただけだった。つまり朝日新聞はよほど切羽詰った状態にならないと、決して誤報を認めたりしないということである。

公平のために記しておくが、和歌山カレー事件の発生当時、林眞須美を犯人視した誤報を連日飛ばしていたのは朝日新聞だけではない。筆者が検証した限り、新聞や週刊誌はどこも当時、朝日新聞と同次元の誤報を連発させている。それでも、マスコミ総出の犯人視報道を誘発する誤報を飛ばした朝日新聞の罪が一番重いことは間違いない。林眞須美については近年、冤罪を疑う声が急速に増えている。慰安婦問題の誤報同様、この事件に関して飛ばした膨大な誤報についても、朝日新聞が言い逃れできなくなる日はきっとくるはずだ。

(片岡 健)

《脱法芸能06》安室奈美恵は干されるのか?──「骨肉の独立戦争」の勝機

「骨肉の独立戦争」を所属するライジングプロダクションに仕掛けた安室奈美恵。過去、独立問題がこじれて、芸能界から姿を消したタレントは少なくない。では、安室は干されるのだろうか。

まず、契約の問題がある。報道によれば、安室とライジングプロは5年ごとに契約を更新しており、現在の契約が切れるのは2017年2月末。2年以上の残余期間を残して、契約を破棄することはできるのか。

結論を先に言えば、法的にはできる、ということになる。

労働基準法の規定によれば、1年を超える期間の雇用契約は申し出をすればいつでも退職できることになっている。安室とライジングプロが交わしている契約書は、事務所が安室に対し一方的に指示・命令することにより芸能活動をすることになっているから、法的には雇用契約であり、契約を結んでから1年が過ぎれば、安室の意志で解除できる。仮に訴訟沙汰になったとしても、安室の勝訴は間違いない。過去の判例でも、それは明らかだ。

◆NHKで進行する「バーニング排除」の動き

ただ、タレントの独立騒動で、法律の話はあまり意味がない。タレントの独立が成功するかどうかは、業界の力関係で決まるからだ。

安室が所属するライジングプロは、業界でも大手だ。では、安室は潰されてしまうのかというと、そうとも言い切れない。

まず、ライジングプロが大手と言っても、最大の稼ぎ頭は安室だ。安室が抜けてしまえば、経営の弱体化は否めない。

そんなときの保険として、多くの芸能事務所は「後ろ盾」と呼ばれる業界の実力者とのパイプを持っている。ライジングプロの場合は、以前から「芸能界のドン」と呼ばれるバーニングプロダクションの系列事務所だと指摘されてきた。ただ、バーニングプロとの関係はすでに切れているという噂もある。仮にまだ関係が深いとしても、芸能界におけるバーニングプロ自体の影響力低下を指摘する向きもある。

バーニングプロといえば、90年代末までは小室哲哉の楽曲の権利を支配していたことで巨額の利益を得てきたとされるが、そのビジネスモデルも崩壊してしまった。近年はNHKの幹部を接待漬けにして徹底的に食い込んで、『紅白歌合戦』や大河ドラマ、朝の連続テレビ小説などに支配下のタレントを大量に出演させ、ハクを付けさせ、それから民放に降ろして稼ぐという手法を採ってきた。

ところが、今年1月、NHK会長に就任した籾井勝人氏が幹部社員とバーニングとの癒着を問題視しているという。昨年末の『紅白』は、放送直前にバーニングの横やりでキャスティングが大幅に入れ替わったと言われているが、最近になって『紅白』を担当するエンタテインメント番組部長が長崎支局長に異動となった。

バーニングプロが台頭するまで芸能界を支配していた渡辺プロダクションは、70年代に入ってから日本テレビから排除されたことで、その地位を大きく低下させるということがあった。

日本テレビとの戦争のきっかけとなったのは、『紅白歌のベストテン』という番組だった。渡辺プロは、その裏番組に大量にタレントを出演させる予定になっており、『ベストテン』への出演を渋っていた。そこで、日本テレビのプロデューサー、井原高忠が渡辺プロ社長、渡辺晋に『ベストテン』へのタレント供給を頼み込んだところ、晋は「そんなにウチのタレントが欲しいんなら、『紅白歌のベストテン』の放送日を変えたら……」と言った。井原はこの発言に激怒し、局内のすべての番組で渡辺プロを締め出すことを宣言。それと同時にオーディション番組の『スター誕生!』で輩出したタレントを渡辺プロ以外の事務所に振り分け、芸能界の勢力図を大きく塗り替えた。

それと同じことが現在の芸能界でも起こるかもしれないのだ。仮にNHKからバーニングが排除され、威光に陰りが見えてくるとすると、芸能界はどうなるだろうか。

芸能界には、タレントの引き抜き禁止という掟がある。だが、個々のプロダクションの事情を考えた場合、有力タレントを他の事務所から引き抜けば儲かるのは確実だ。「芸能界の掟」をどの事務所も守っているのは、談合を主導するリーダーであるバーニングプロの影響力が強いからだ。そのバーニングプロの実力が低下してゆくと、談合破り、すなわちタレントの引き抜きが活発化する恐れがある。つまり、バーニングプロの凋落は、芸能界の液状化現象をもたらす可能性がある。

◆地上波テレビの時代が終われば芸能界の構造は変わる

また、業界の構造変化という事情も考慮しなければならない。従来、日本のエンターテインメント産業は、テレビに依存してきたが、この10年ほどインターネットがテレビの地位を脅かしてきた。

大量の視聴者を抱える地上波テレビ局は、数が少なく、芸能事務所にとってはコントロールしやすい。だが、参入障壁が低く、誰でも情報を発信できるネットはそうもゆかない。
2010年に東方神起から分裂してできた韓流アイドルグループ、JYJは、それまで所属していた日韓の芸能事務所からの妨害でテレビには出演できない。だが、ネットのプロモーションだけで、CDをリリースしたり、大規模なコンサートを行うには支障がなく、売上も大きいという。

安室も近年はほとんどテレビに出演せず、CDリリースとライブ公演を中心とした芸能活動をしている。仮に独立してテレビに出れないとしても、それほど大きな影響はないのだ。安室の独立騒動の黒幕とされる西茂弘は、長年、音楽プロモーターとして活動し、実績がある人物だ。思いつきで独立騒動を仕掛けてきたとは到底思えない。勝算があってのことではないだろうか。

(星野陽平)

《脱法芸能01》私が『芸能人はなぜ干されるのか?』を書いた理由
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《屁世滑稽新聞04》風刺歌伝~あらたなフォークソングのために~

(屁世26年9月7日付)

 

全国の大きなお友だちの方々、ごきげんよう。
屁世滑稽新聞のお時間です。

本紙ではきょうから、浮き世の皆さまが、ふと思いついて、勝手に歌詞をつけて唄っているような鼻歌、ざれ歌、替え歌を紹介していこうと思います。題して「風刺歌伝」。

「ふうしかでん」といえば、学校の国語の授業にでてきた「風姿花伝」を連想するかたもいらっしゃるでしょう。
それは六〇〇年まえの今ごろ、室町時代が始まったばかりの頃ですが、当時の演芸(猿楽と呼ばれていた)の人気芸人で、俳優で劇作家でもあった世阿弥(ぜあみ)さんが書いた“芸道の理論書”でした。

でも『屁世滑稽新聞』で行なおうとしているのは、能や狂言でもないし、その理論的ウンチクでもありません。
ふつうの人たちが作って唄うような鼻歌・ざれ歌・替え歌、とりわけ世間を風刺した、よみ人しらずの“落書き”のような歌を、世に伝えようとするものです。

鼻歌やざれ歌、替え歌は、すべての唄の基本です。人間というのは、何とはナシに唄をを生み出し、何とはナシに歌ってしまう本能があります。楽譜とか器楽演奏なんかは、それを保存したり記録したり再生するために、あとから考え出された道具にすぎません。鼻歌こそ音楽の本質、歌曲の基本なのです。

そういう意味では、鼻歌・ざれ歌・替え歌こそ、民謡やフォークソングの根源であり、本質なのです。
そういうわけですから、ここで高らかに「風刺歌伝」の開会宣言をいたしましょう。

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風刺歌伝 ~あらたなフォークソングのために~

フォークソングは、日本語でいえば民衆歌謡、もっと約(つづ)めていえば「民謡」に他ならない。人々の日常生活のなかでの喜怒哀楽、なかでも労働のつらさを嘆き、社会悪への怒りを叫び、愛する人への気持ちを歌ってきたのがフォークソングであった。

日本では、明治時代の自由民権運動のころに、「市民の自由」と「民権の獲得」をもとめる若者たち、いわゆる壮士や書生が街頭で歌った「壮士節」や「書生節」がフォークソングのルーツである。彼らは革命を訴えて街頭でアジテーション演説を行なったが、官憲に弾圧されたので、「演説の代わりとしての歌」を唄ったのだ。だから社会批判を歌にこめたこれらの歌は、当時、「演歌」と呼ばれた。

アメリカでは移民たちが祖国から民謡を持ち込み、それが現在の「カントリー音楽」に発展したが、アメリカで生まれたフォークソングの最大最強のルーツは、なんといっても黒人奴隷の労働歌に端を発するブルースである。

ところがレコード産業の登場で、「著作権」ビジネスが増長し、フォークソングは、歌の作り手……いや、何よりもレコード会社の独占的財産に変質してしまった。一九六〇年代、ボブ・ディランの登場以降に爆発的に流行し、増長した若者音楽としての「フォークソング」は、じつは民衆から金をくすねる“商材”だったのである。「フォークソング」が「著作権」最優先の財物と化し、民衆が自由に唄うのを阻んできた……。これほど馬鹿馬鹿しい皮肉はない。

本当のフォークソングを産み出し、発展させねばならない。だれでも自由に唄い、自由に作り変えて楽しむことができる歌。それこそが民衆の歌。フォークソングなのだから。

そういうわけで、この『屁世滑稽新聞』では、だれもが自由に歌えることを大前提にした「あたらしいフォークソング」を提案したい。ここに紹介する唄は、メロディも歌詞も、歌い手が自由に変えて歌ってほしい。民衆の創意と工夫こそが、ゆたかな文化を創っていくのだから。
▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲▲

……さて今回は手始めに、福島原発災害を嘆く唄です。
(歌詞の上に記したアルファベットは、ギターのコードです)

*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*

雨を見たかい

G       G
ヒロシマの雨、ナガサキの雨。
D   D   G
雨! 原爆の、黒い雨
G       G
ビキニの島々、マーシャル群島。
D   D   G
雨! 水爆の、黒い雨
★———————————-
C  D     G   D  Em
雨を見たかい? 放射能の黒い雨
C  D     G   D  Em
雨を見たかい? 放射能の黒い雨
C    D    G
いのち むしばむ 雨
———————————————-★

G        G
ユーゴスラビア、ボスニア、コソボ。
D   D     G
雨! 劣化ウランの黒い雨
G         G
イラクをむしばみ、アフガンをころす。
D   D     G
雨! 劣化ウランの黒い雨

(★をくりかえす)

G        G
スリーマイルの、不気味なきざし。
D   D    G
雨! 原発事故の黒い雨
G         G
チェルノブイリの、こどもをころす。
D   D    G
雨! 原発事故の黒い雨

(★をくりかえす)

G     G
福島の雨、茨城の雨。
D   D    G
雨! 原発事故の黒い雨
G     G
東京の雨、仙台の雨。
D   D    G
雨! 原発事故の黒い雨

C  D     G  D  Em
雨を見たかい? 黒い死の灰の雨
C  D     G  D  Em
雨を見たかい? 黒い死の灰の雨
C      D   G
おれたちの、あびる雨

*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*’“’*:-.,_,.-:*

おそうじオジチャン
(原発リクビダートルに捧げる歌)

A
おいらは 原発 おそうじ おじちゃん
D7(またはD)  A
ふくしま 原発 おそうじ おじちゃん
E        A
被曝 しながら 仕事 する

A
朝から 死ぬほど 放射線あびて
D7(またはD)    A
いのちを かけての 汚れ仕事
E        A
被曝で死んでも 使い捨て
★——————————————–
【1】
A
1日はたらいて 8千円
A
今日もはたらいて 8千円
D7(またはD)
明日もはたらいて 8千円
A
放射能にまみれて 8千円
E          A
死ぬまで はたらく お国のために
——————————–
【2】
A
放射線あびたら どーなんの?
A
はかっとらんから わからへん
D7(またはD)
たくさんあびたら どーんなんの?
A
バッチもつけへん わからへん
E        A
天国いったら おしえてもらおう
——————————————–★
A
そんな おいらも 夢がある
D7(またはD) A
でっかい 借金 かえしたい
E         A
家族と ふたたび くらしたい

(★をくりかえす、一番は【1】、二番は【2】)
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きょうはこれでおしまい。
また今度、お話しましょうね。
では皆さん、ごきげんよう。 さようなら。

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ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=4433)から引用》と明記して下さい