ミャンマーの『民主化』は本当か!? ヤンゴンで生活してみた 13

ミャンマー(ビルマ)では、2013年4月に、政府による新聞や雑誌の検閲が完全撤廃される予定だ。それを受けて、民主化活動を長く続けてきた現在の最大野党、国民民主連盟(NLD)が新聞を発行することになっている。新聞検閲撤廃に対するミャンマー国民の期待は高い。
現在、ミャンマーの日刊紙は、ミャンマー政府が発行する新聞「チェーモン(ビルマ語で「鏡」の意)」のみ。

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父と私に引かれた、38度線

先日、大学の旧友たちと会った。恩師の退官式以来の顔合わせだから、ほとんどが20年ぶりだ。健康を祝って、恩師の家に集ったのは、20人ほど。日本人は私を含めて3人で、あとは在日の韓国人、朝鮮人たちだ。
誇らしい友人たちである。韓国籍として初めて、東京都の職員として教師になった者。韓国民族学校の教頭になった者。北朝鮮との貿易を営んでいる者。日本の大学の教授になった者。商店主や、もちろん会社員もいるが、皆たくましく生きている。

朝鮮語を教えていた恩師は朝鮮籍だが、「大学内に38度線を持ち込まない」が信念だった。
朝鮮半島が38度線で北朝鮮と韓国に分かれているように、在日の団体も朝鮮総連と韓国民団とがある。
私が大学に入ったのは、1978年。今では状況も変わっているだろうが、その当時は、どこの大学でも在日のサークルは朝鮮籍と韓国籍とで分かれ、交流することはなかった。
恩師の信念によって、私のいた神奈川大学では、「高麗(こりょ)」という名で、統一のサークルができていた。

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社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (12)

「こりゃいよいよアカンよ。戸次君、次の仕事探した方がええ」
仕事後にセントラル社の梅田さんを誘って、尚坂と飲みに行く。連日社内に土方さんの関西弁が響くせいか、尚坂に関西弁の影響がみえる。
「以前も同じ話してましたよね」
「いやもう、今度はどうしようもないワ。俺も社長と長い付き合いだけど、見切りつけるより他無いよ。システムは完成しない」
援助額は一年弱の間に一千万を優に超えている。そのまま借金になったら、銀行の返済もあるうちのような零細企業は、存続できるはずがない。
「社長サンは仕事できない方ナンデスカ?」
梅田さんは日本人男性と結婚して、国籍は日本だが元は中国人だ。真っ黒な長いストレートな髪が、今風ではなく少し前の日本人女性っぽい。中国の田舎育ちで、流暢に日本語を話すものの語尾のイントネーションが少しおかしい。酒に弱いけど日本酒が大好きで、その日も一杯でもう顔が真っ赤だ。
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PC遠隔捜査事件と、「足利事件」初期報道

「どうかマスコミの皆さん、皆さんも何度も過ちを犯してきたわけです、足利事件を含めて。報道のあり方も問われているんだから。警察がこれからも拘束したら犯罪だと言いましたが、いいですか、これから皆さんも同じように警察情報を垂れ流したら、皆さん自身の犯罪です! 犯罪報道の犯罪だと思う。だからどうか皆さん、自分の胸に手を当てて、自分はいったいどういうことでペンをにぎっているのか、考えてもらいたい」

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『思想の混迷、混迷の時代に  鈴木邦男ゼミin西宮 報告集 Vol.2』【ブックレビュー】

パレスチナで育った重信メイと、「夜と霧」を訳した池田香代子が、一つの本に載っている。
『思想の混迷、混迷の時代に』(鹿砦社)は、そんな凄い本だ。
重信メイは、パレスチナに渡って日本赤軍のリーダーとなった、重信房子の娘だ。イスラエルのユダヤ人たちによって、パレスチナの街が破壊され、命が奪われていくのを目の当たりにしながら育っている。
ナチスの収容所から生還したユダヤ人、ヴィクトール・フランクルが記したものが、「夜と霧」である。

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WBC日本代表の投打は大丈夫なのか

2月17日、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)日本代表が、初の強化試合で完封負けを喫した。日本チームはサンマリンスタジアム宮崎で行われた、広島との強化試合初戦で0-7で完封負け。先発の田中将大は1回に2失点し、不安なスタートを切った。3月2日のブラジル戦の先発が予告された田中は2イニングを3安打2失点した後、3回に能見篤史にマウンドを譲った。能見は2イニングを1四球の無失点に抑えたが、5回に3番手で登板した山井大介が2失点した。9回には内海哲也が鈴木に3ランを浴びた。

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電力エゴイズムが露わになった、 東北電力・料金値上げ

「よりによって震災で一番つらい地域の電気料金をあげるとは、いったい復興税は何に使われているというのかね」(いわき市住民)
ついにパンドラの箱を開けてしまった。東北電力が家庭向け電気料金の平均11.41%引き上げを政府に申請したのだ。
東京電力は、昨年値上げを実施。関西電力、九州電力、四国電力が値上げ申請をしている。
どれも納得のいくものではないが、被災地を多く抱える東北電力の値上げ申請は、電力会社というものの体質を浮き彫りにしている。

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ミャンマーの『民主化』は本当か!? ヤンゴンで生活してみた 12

社会主義体制が敷かれていた約30年前のミャンマー(ビルマ)では、アメリカやヨーロッパの映画を観る機会があまりなかった。ミャンマー人の夫が育ったミャンマー第四の都市、ラカイン州シットウエーでは、町に1つしかない海外映画が観られる映画館で、「インディ・ジョーンズ」や「007」などの上映が決まると、そこに住民が大勢やってきた。映画館入口で、われ先に入場すべしと、押し合いへし合いの大喧嘩をする。
あまりに住民がもめるので、映画館に警察官が出てくる。チケット売り場で整列しない住民を、警察官が自分のズボンのベルトを腰から抜いて、鞭代わりにして叩く。映画を観たい人々は、叩かれても、必死で映画館に入ろうとする。
テレビが普及しておらず、また世界中の情報から隔絶した社会主義国のなかで、国民はわずかな娯楽を得ようとしていたのだ。

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アメリカ好きから韓国好きになった、父

中学生の時に、東京大空襲を受けた父は、夕焼けが空襲に見えるようになってしまった。
多感な少年時代に、一夜にして殺された、おびただしい数の死体を見たのだ。
九死に一生を得た父は、埼玉に疎開している家族のところに、何とかしてたどり着いた。
「なんだって、家を置いて帰ってきたんだ」
と、自分の父親、つまり私の祖父から言われた、という。
「退くな、逃げるな、必死で消化! 消せば消せる焼夷弾!」
などという標語が街中に躍っていた時代のことだが、父が深く傷ついたことは間違いがない。

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社長が夜逃げ! あるIT企業社員の手記 (11)

一般的な人の感覚を持ち合わせていない。自分大好き過ぎて、自分の好き嫌いが全ての判断基準になっている。興味があるものは何でもやろうとする半面、興味なくなるとすぐ投げ出そうとする。他の人に迷惑がかかろうと、何とも思わないのだ。以前から多少、おかしいとは思うことがあったが、ここまで来ると不思議でしょうがない。

完成しないままさらに日が経ち、8月を迎える。土方さんは怒りの色を隠さなくなる。
「あのな、社長。あんた一人で出来る言うたんやで。出来んモンを出来る言うのは詐欺や。契約違反やで。ウチの社員は何も言わんけど、申し訳ないと思わんのか?」
「……」
「何で勤務中にマッサージなんて行きよるねん。こっちがピリピリしてんの、わからん?」
「……」
社長は正論で問い詰められると、すぐ黙ってしまう。それが余計に土方さんを怒らせる。苦し紛れに出る返事は「やる気がでない」だ。

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