《屁世滑稽新聞18》淀長の映画専科・『猿の惑政』……の巻

屁世滑稽新聞(屁世27年2月16日)

淀長の映画専科・『猿の惑政』……の巻

ハイ! 皆さんコンニチわ!
大変ごぶさたしておりました。淀川長冶でございます。
親友の大監督・黒沢明クンが夢の国に引っ越したので、ワタシも彼を追って
夢の国におうちを移し、いまはそこで楽しい日々を送っております。

でもワタシ、わが人生の信条として、
1.「私は未だかつて嫌いな人にあったことはない!」
2.「苦労歓迎!」
3.「他人歓迎!」
の三か条をモットーにしていたほどですから、根っからの苦労性なんですわ。
だから天国での楽ちん生活は、しばらく居(お)ったら退屈してしまいました、ハイ!
それで時々こうやって俗世に降りてきて、皆さんとハイ! 映画のお話しをしたいと思います。

ハイ! それではお話しをはじめますが、さて皆さん、
20世紀は、何の時代だったでしょう?
ハイ、20世紀は映画の時代でございました。ハリウッドでは、名作が、毎日毎日
つぎつぎと作られておりました。 ワタシ、その時代に生きてこれて
本当にシアワセだったと今さらながら思います、ハイ!

で、20世紀に名作をつくった映画監督やら、スターのかたがたが、
今ではワタシが住んでいる夢の国に、マア!次から次へと引っ越してきて、
大にぎわいです。スゴイですねぇ。うれしいですねえ。
ワタシ、ほんとに死んだ甲斐がありましたよ、ハイ!

そうした名監督、往年の名スターたちと、あの世で日々、
茶飲み話をしてるんですねえ。 そうしますとカレら、
「いまもまだ俗世に生きていたなら、ワシはこんな映画を作りたい」
「アタシはこんな映画に出たいワ」といったお話しを、ギョウサンするんですわ。
それでワタシ、せっかくこの世に降りてきたついでだから、ハイ!そういう
天国で聞いた映画裏話などを、まだ昇天できない俗世の皆さんにお話ししたいと思います。

さあ!淀川長冶の映画専科の始まり始まりぃ!

★          ★          ★

第1回のきょうは、1968年のアメリカ映画『猿の惑星』についてのお話しです。
原作は『戦場にかける橋』でおなじみのフランス人作家ピエール・ブール。
監督はフランクリン・シャフナー。そして主演はチャールトン・ヘストンの大作でした。

じつはこれホンマの話ですけど、この映画の原作を書いたピエール・ブールさん、
どうも戦争中に日本軍に捕虜としてつかまって、そのときの悪夢のような体験が
『猿の惑星』を生み出すことになったようなんですわ。 ……そう考えると、コワイ
ですねぇ。 あの凶暴なサル軍団って、どうやら日本軍を描いたらしいんですわ。

第二次大戦が始まった頃、日本人は欧米では“凶暴なサルの群れ”だと言われて
おりました。ヒドイですねぇ。 まあニッポンだって、敵国のことを「鬼畜米英」って
ゆうとったんですから、マア、これお互いさまですわ。

それにしても、第二次大戦が始まった当初は、欧米の戦争扇動者たちは、
ニッポン人を「小さいサル」いうて馬鹿にしとったんですねぇ。

ところが戦争が長びいてニッポンが簡単に倒れない敵だと知るにつれて、何とマア、
今度は獰猛(どうもう)な大ザルにたとえて、海の向こうの一般庶民を怖がらせた
んですねぇ。コワイですねえ。ヒドイですねぇ。

第二次世界大戦の当時、欧米「連合国」では敵国ニッポンの
脅威をサルになぞらえて宣伝した。

「諸君おしゃべりを続けたまえ。ぜんぶ盗み聞きしてやるぜ」


世界の学者たちを悩ます新たな難問の出現。
「ニッポン人って一体何を考えてんだ?」

「文明の威力で抹殺せよ」

「なんでなかなかクタばらないんだ、ニッポン人ども?!」

さてこの『猿の惑星』の原作者、ピエール・ブールさんのお話しでした。
この人、1912年に南フランスのアヴィニョンに生まれました。第二次世界大戦の
ときには仏領インドシナに居(お)ったんですねぇ。仏領インドシナといえば真っ先に
ベトナムが思い浮かぶわけですが、ハイ! 現在のラオスとカンボジアも、
仏領インドシナに含まれていたわけでした。 ワタシらこの時代を生きてきた
現役世代は、「フランス領インドシナ」なんて長ったらしい言い方はせずに、
単に「仏印(ふついん)」って、呼んでました、ハイ!

……で、ピエール・ブールさんは、フランスでは理工系の最高学府である
エコール・スペリュール・デレクトリシテ……すなわち「高等電気学校」で
電気技師としての学位を得ました。 その後、二十代なかばに、「英領マラヤ」の
ゴム園で、監督者として働いておったんですねぇ。 植民地共和国フランスの
前途有望な若者だったわけであります。

「英領マラヤ」いうても、今の皆さんはご存じありません。 第二次大戦前はこれ、
イギリス領のマレー半島とシンガポールを指しておりました。 ハイ! 感慨深い
ですねぇ。 ワタシ、たまたま今になって俗世に降りて参りましたが、なんと今年は
敗戦からちょうど70年でございます。 あの太平洋戦争が始まるまで、アジアの国々は
ヨーロッパに乗っ取られておったんですねぇ。 コワイですねぇ……。これは歴史の
現実ですから、皆さんも、忘れないでほしい思いますよ、ハイ!

ブールさんが英領マラヤの植民地農園で管理人をしていたときに、ハイ!
第二次世界大戦が起きました。 彼はフランス人ですから、海外フランス人
として、兵役に就きました。 皆さんも、もしふたたびニッポンが戦争に
なったら、若ければ、国内におったら確実に徴兵されるわけですが、
海外に居っても、日本人である以上は、かならず兵役に就くことになると
考えとったほうがええです。 ワタシの経験から言うと、戦争になったら
逃げ場はないです。……コワイですねえ。ほんとにアカンことですわ。
皆さん、覚悟はできておりますか?

……で、ブールさん、第二次世界大戦が始まるや、本国から遠くはなれた
東南アジアでフランス兵になったんですが、ヨーロッパではなんとマア!
ナチスドイツがたちまちパリを占領し、フランス本国はドイツに屈してしまいました。
時は昭和15年で、ちょうどそんときニッポンは「紀元二千六百年」を、国を
あげて祝っておったわけです。 同盟国のナチスドイツは、あのヨーロッパの
花の都パリをあっというまに占領したんですから、当時のニッポン人としては
同盟国の勇者たちの大手柄に、喝采をさけんでおったんですわ。
いま生きてる皆さんには想像もできんでしょうけど、マア、そんな時代でした。

さてブールさんですが、この人はフランス兵になったのに、お国がたちまち
ナチスドイツに負けてしまいました。 これは困ったことになりましたねぇ……。
ナチスに降伏したフランスは、お国の、ど真ん中の、温泉保養地ヴィシーに
首都を移して「フランス国」を立ち上げ、とりあえずヒトラーに忠誠を示した
ペタン元帥を、首相に据えることになったんです。 ペタン元帥は第一次大戦
の功績から政界で出世した軍人でしたから、心の底からナチスドイツを崇拝
していたわけではなかったようです。 じっさい、オモテづらではドイツに服従
するポーズをとりながら、ウラでは反ナチの抵抗運動を支援していたわけで、
とにかくフランスという国が完全に滅んでしまうのを恐れて、侵略者のナチス
ドイツに上っ面で服従するふりをしていたのでしょう。

ところがマア! ナチスに服従をみせるペタン首相の「フランス国」に、我慢が
できなかった人がおりました。彼の腹心の部下だったドゴール准将です。
ドゴールはイギリスに逃げ出して、ロンドンで自称「自由フランス」と名乗って
亡命政府を立ち上げたんですねぇ。 そしてドーバー海峡をへだてた敵国の
イギリスから、祖国フランスにむけて反乱を呼びかけました。 この展開、スゴイですねえ。

ワタシらのニッポンは、こういう経験がないから、こんな劇的な展開は皆さんも
想像できないでしょうね。 まるで映画のなかの世界やからね。
でもこれって、いまの「イスラム国」と同じなんですねぇ。 あれも10年ばかり前の
戦争で負けてアメリカに占領されちゃった中東のイラクで、占領にけっして屈服しない
イラクの軍人とか役人の連中が、首都バクダードからサダム・フセインの
故郷だった北部の奥地に逃げ込んで、そこで態勢をたてなおし、「イスラム国」
という旗をかかげて、反乱勢力として逆襲してきてるんやからね。 ハイ!

歴史は繰り返します。 そしてそれが、映画の基本的なモチーフになってきました。
映画というのは、現実の世界を鏡にうつした映像なんですねぇ。ワタシ、映画の
仕事ができてホントに幸せだったと思います。

あらマア! ま~た話が脇道にそれてしまいました。 『猿の惑星』の原作者
ピエール・ブールのお話でございました。 ……第二次世界大戦がはじまって
フランスの兵士になったブールさん。 かんじんの祖国が、ナチスに迎合する
「フランス国」を名乗りだし、そこから逃げ出した連中が「自由フランス」を名乗って
自称の「政府」をを勝手に立ち上げました。 フランス人としては、どっちにつくかが大問題ですわ。

ブールさんの場合は、ドゴール准将がロンドンで旗揚げした「自由フランス」と
称する亡命政府に加勢することを決めました。……つまりナチスとか日独伊の
三国同盟を宿敵とする反乱勢力、パルチザンに身を置くことを選んだんですねぇ。

いまワタシらは、第二次世界大戦で最終的にアメリカ・イギリス・ソ連を中心と
する連合国が勝ち、日独伊三国同盟やらそれに同調する国々が負けたことを、
すでにあった事実としてあたりまえのように受け止めておるわけですが、
こうやって過去の歴史になりはてたことを、未来の時点から「正しい」とか
「間違ってる」とか決めつけるのは、お馬鹿なナマケものが気楽に参加できる
道楽でしかありませんワ。 むかしの事実をしらない血気盛んな坊やとかアンちゃん
なら、若気のいたりで苦笑いして済ませることもできるんやけどね……。
大切なのは、現代から過去を裁くことじゃなくて、歴史的な事件に直面したときに
アンタならどうするんや、という問いかけを、つねに自分に発することなんですわ。
それこそが歴史映画の価値なんですねぇ……。ハイ!余計なことを申し上げました。
でもコレ、ほ~んとに大事なことやからね。

さて「自由フランス」は、本家「フランス国」の転覆をたくらむ武装反乱勢力です。
一方、ナチスドイツに命乞いをして延命が決まった昔ながらの「フランス国」は、
パリを占領されてナチスドイツの部下みたいな国になったので、日独伊
三国同盟の仲間です。……つまりアジアでは大日本帝国の友好国、という
位置づけだったわけです。 その大日本帝国と戦っていたのは、当時の中国、
つまり中華民国でした。

だから「自由フランス」の“聖戦士”に志願したピエール・ブールさんは、
中華民国の国民軍とも接触してゲリラ活動をしていたんですねぇ。
一説によれば、ピエールさんは「ピーター・ジョン・ルール」っていう英語の偽名
を使って、「自由フランス」組織の秘密諜報員をつとめていた、とも伝えられてまっせ。

フランス領インドシナは、宗主国のフランスがナチスドイツに負けて「フランス国」
になったせいで、日独伊三国同盟の仲間に加わりました。 そんなわけで、
大日本帝国の軍勢が仏領インドシナに駐留も、すんなりとうまくいったのです。
なにしろ植民地政府は日本軍の進駐を歓迎したんやからね。

一方、ピエール・ブールさんは、パルチザン兵士として、親ナチスの「フランス国」
ヴィシー政権を転覆しようと、祖国からはるか彼方の熱帯アジアの密林地帯で、
仏領インドシナや、それを支える大日本帝国軍を相手に、ゲリラ戦を行なって
いたわけです。……ところが1943年のある日、船でメコン川をわたっていた時に、
仏領インドシナの植民地政府軍に捕まってしまいました。 捕まえた側からすれば
ブール氏はただの「反政府ゲリラ」です。反乱軍のテロリストにすぎなかったわけや。

なお、彼を捕まえたのは、仏領インドシナの植民地政府軍ではなく、そこに駐留していた
日本軍だった、という説も伝えられとります。 日本軍兵士が不審者をつかまえたら
フランス人やったんで、現地の植民地政府に引き渡したらしいのです。

けっきょく逮捕された“武装テロリスト”のブールさんは、仏領インドシナの捕虜収容所に
入れられて、強制労働の刑に服しました。 しかし翌年、あの「Dデイ」、ノルマンディー
上陸作戦が大成功して、連合軍がノルマンディーの海岸からナチス占領下のフランスに
進撃し、ついにパリを奪い返しました。 このあたりのことは、ルネ・クレマン監督の
1966年の米仏合作映画『パリは燃えているか』など、ぎょうさん名作が出ておりますから、
ハイ、皆さん、ぎょうさん映画を見ましょうね!

……そんなわけで、ブールさんはサイゴンの捕虜収容所に1年ばかりおったんやけど、
1944年、昭和19年になって、収容所の看守の手引きで脱走しました。
そしてイギリス軍の水上飛行機でインドシナを脱出し、インドのカルカッタにあった
イギリス軍の軍事諜報機関「特殊作戦執行部」に志願入りして、連合軍の秘密工作員
として終戦を迎えたわけであります。

終戦後もブールさんはしばらくマレーシアで農園経営を続けておったんですが、
やがてパリに帰って、戦争中の体験を元にした日記や小説を発表し、職業作家に
転身しました。 代表作はこの『猿の惑星』と、『戦場にかける橋』です。
マア! あの有名な「クワイ川マーチ」でおなじみの、アカデミー賞受賞の名作映画も、
このブールさんが原作者だったんですねぇ。 それだけ彼の仏印での戦争体験と
戦火のなかでの冒険は、劇的だったということですわ、……つまり『猿の惑星』は
われわれは単なるSF活劇だととらえがちやけど、物語の土台にあるのは、
熱帯のジャングルで武装ゲリラ戦士として戦ったピエール・ブールさん自身の、
敵国ニッポン軍との死闘の体験だったってことやね。

そう考えると、『猿の惑星』ってコワイ映画ですねぇ。
ワタシらは、あの映画のポスターに出てくる凶暴な猿、チャールトン・ヘストンら
アメリカ人の主人公にとっては、何を考えているのか得体の知れない不気味な
類人猿が、ニッポン人とダブっていることを、ちょっとは自覚する必要があるわけやね。

1968年に公開された『猿の惑星』第1作のポスター

昨(2014)年公開の『猿の惑星:新世紀』に向けて
英国のイラストレーター、マット・ファーガソン氏が描いたポスター
http://blurppy.com/2014/05/21/members-of-the-poster-posse-rise-up-with-some-dawn-of-the-planet-of-the-apes-inspiration/

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いま映画版『猿の惑星』のポスターを見てもらいましたが、
このシリーズの最高傑作である第一作は、1970年アカデミー賞受賞作の
『パットン大戦車軍団』や、73年の大脱獄活劇『パピヨン』を監督した
フランクリン・シャフナーの作品であります。
そしてマア! シャフナー監督も、ニッポンとは特別な縁(えにし)をもつ人やったんですねぇ。

シャフナー監督は1920年、大正9年に、宣教師の息子として東京に
生まれておるんですわ。16歳まで日本におったということですから、
関東大震災も体験しておったんでしょう。 日中戦争が起きたころに
お父さんが亡くなって、シャフナー一家はアメリカに戻りました。
フランクリン青年はニューヨークのコロンビア大学で法律を学んでおったんですが、
第2次大戦が勃発して海軍に入隊し、ヨーロッパや北アフリカの戦線を
転々とします。やがて戦争の終盤になると米軍の特務機関OSS、
これCIAの前身の特務機関だったんやけど、この戦略諜報部に配属
されて、太平洋極東地域で従軍しておったそうです。

終戦後にハリウッドでドラマ製作の仕事に就き、それで大成功して
『猿の惑星』の監督を手がけたわけであります。 しかしシャフナーさん監督の
第一作は大成功やったけど、ハリウッドの連中はこれに気をよくして、
二作目からは別の監督で低予算のSF映画シリーズを次々と粗製濫造(そせい
らんぞう)したんやね。……で結局、『猿の惑星』は陳腐なSFシリーズとして、
スクリーンから姿を消すことになりました。

『猿の惑星』が公開された1968年は、SF作家のアーサー・クラークが脚本を
書いて、鬼才スタンリー・キューブリックが監督した『2001年宇宙の旅』が
公開された年でもあり、SF映画が“映画幼年期の終わり”を迎えた年やったのね。
これはハリウッドの映画産業の雰囲気をガラッと変えることになった重大事件
やったのね。その翌年にピーター・フォンダ製作主演、デニス・ホッパー監督主演
の『イージーライダー』が登場して、これはもうハリウッドの古くさい映画帝国が
ガラガラと音を立てて崩れ去ることになるんやけどね。

ピエール・ブールさんにとって、ニッポンはナチスドイツの盟友であり、
仏領インドシナに図々しく侵入してきた蛮族であり、倒すべき“凶暴な猿”
だったのかも知れません。 そやけどフランクリン・シャフナー監督にとっては
生まれ故郷の、幼なじみであり、こころの古里の人々であったでしょう。
ただし少年期のシャフナー君の目には、中国に攻め込んで勝ち鬨(どき)をあげている
集団的狂気をはらんだ“モンゴロイド”という、それまでと違う日本人の姿が
映っていたかも知れないけどね。……そういう愛憎入り混じった感情を抱えながら
『猿の惑星』を撮ったのかも知れへんな。 だからこそ、自分たちとは似ているけど
まったく異質な文明をもつ「類人猿」との、緊張感あふれるファーストコンタクトと
葛藤や交流が、うまく描けたのかも知れへんね。

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……というわけで、第一回の淀長の映画専科は『猿の惑星』でした。
皆さん、ご堪能いただけました? でもここで終わりやないんですわ。
なぜってワタシ、天国でピエール・ブールさんにガッチリ嫌味を言われて
きたからです。 ハイ! 彼はこう言ったんですねぇ。

「ヨドチョーさん、俺の見立ては正しかった。
あんたの国はやっぱり『猿の惑星』じゃないか!」

マア! 驚きましたねえ!
ワタシ、なんてことを言うのかってビックリしました。
そして彼にむかってこう言ったんですわ。

「なあピエールはん、アンタちょっと失礼ちゃいまっか?
天国まできたんだから、もう下界の“おフランス帝国主義”はやめなはれ!
日本のどこが『猿の惑星』なんですか? 人種差別は許しまへんで!」

するとブールさん、こう言ったんですよ。 スゴイですねえ。

ピエール氏 「ヨドチョーさん、あんた、自分の国の政界が、凶暴な猿に乗っ取られて
しまったのをご存じないのか? もし今、俺が日活あたりからカネをもらって
映画が撮れるなら、『猿の惑政』ってのを作るだろうな。
日活なんて怪獣映画は『大巨獣ガッパ』しか作れなかったから、俺の作品は
大ヒットすると思うぜ。 もうストーリーラインも考えてあるんだ。」
淀長さん 「ピエールはん、どんなあらすじでっか?」
ピエール氏 「主人公は日本人のワタミという青年宇宙飛行士。彼は宇宙ステーションISISの整備工として宇宙に長期滞在していたが、とつぜん予算が打ち切られて食糧補給用
のスペースシャトルが来なくなり、仲間の宇宙飛行士たちが餓死するなかで、決死の
覚悟で地上に帰還した。 ……地球にもどってみると、何だか様子がちがう。
国会で歓迎会をするというので議事堂にいくと、なんと内閣が全員サルになっていた。」
淀長さん 「プラネット・オブ・エイプス(猿の惑星)でなくて、キャビネット・オブ・エイプス(猿の内閣)になっていたわけか?」
ピエール氏 「ウィ! 『猿の惑星』では地球が猿に乗っ取られた未来世界を描いたが、
この『猿の惑政』では、政治が猿に乗っ取られた現代日本を描いたのさ。
ほら、ポスターだって試作品ができてるぜ。」

天国のピエール・ブール氏が見せてくれた
『猿の惑政』(Cabinet of the Apes)のポスター試作品。
「Prime Minister(首相)」ではなく、「Primer(爆弾の導火線)」の
「Minion(権力者の愛玩動物)」の「シンゾー猿(Ape Shinzo)」
が、この怪獣映画のメインキャラクターだ。

『猿の惑政:新世紀』のポスター試作品。

 

淀長さん 「ピエールはん、このポスターに描かれているエイプですけど、
これじゃお猿さんそのものやないですか! あんた日本の政治を
何と思うてはるんや? これ人種差別でっせ!」
ピエール氏 「ヨドチョーさん、俺はそんなつもりはないんだけどな。
じゃあもうちょっと、人間みたいな表情を出してみようか。
どっちにしても日本の政治をハイジャックしたのは人でなくて猿、
ヒト似ザルだってことは変わらないんだけどな。 ほらよ、ちょっと
進化した『猿の惑政』のポスターがこれだ!」

ちょっと進化した『猿の惑政』

淀長さん 「ピエールはん、まことに残念なんやけど、日活はもうほとんど映画を
作ってないんや。こういう映画を作れるのは、おそらく今のニッポンでは
壇蜜の主演で『地球防衛未亡人』を作った河崎実監督くらいしかおらへんで。
どうしても日本での映像製作を望むんなら、もはや裏ビデオくらいしか
ないかも知れんわ。……まあ、裏ビデオなら瞬時に全世界に広まるというメリットもありますけどな。」
ピエール氏 「ノンノンノン! ヨドチョーさん、さすがの俺でも、凶暴なサルが出てくる
ポルノなんてゴメンですわ。 猿どもの乱交なんて、ワイセツすぎて見る気もしないわ。
猿の交尾のドキュメンタリーなんざ、デヴィッド・アッテンボロー君の仕事の領分だぜ。」
淀長さん 「ピエールはん、あんたエエなあ。 ワタシら日本人は、国会中継で
日がな一日じゅう、猿どもの乱交を見せられてんのや。 公共放送がポルノを
垂れ流しにしてるんやで。」
ピエール氏 「セ・シュペール! 素晴らしい! それこそ自由・平等・博愛ですな。
フランス革命の理想が、極東の島国で実現してしまったのか……。」
淀長さん 「……だとしたら、ピエール・ブールはん。あんたが命がけで守った
“自由フランス”ってのは、猿どもに政治権力を与える栄養剤だったってことですかね?」
ピエール氏 「だけどヨドチョーさん、うちの国の極右『国民戦線』のマリーヌ・ルペン党首は、最近、あんたのところの“民衆パワーでやりほうだい党”こそが、『国民戦線』の目標であると公言してるぜ。」
淀長さん 「“民衆パワーでやりほうだい党”って……そんな政党ニッポンにはおらへんで!」
ピエール氏 「PLDのことだよ。パルティ・リベラル・デモクラット(Parti lib?ral-d?mocrate)。あんた日本人だったんだろ?
知らないの?」
淀長さん 「それって自由民主党のことやがな。“民衆パワーでやりほうだい党”って名前やないで!」
ピエール氏 「俺はシナ文字のことはよくわからないけど、フランス語でいえば『民衆パワーでやりほうだい党』ってことだぜ。
ニッポン人は「リベラル」とか「デモクラット」の意味をぜんぜん理解せぬままに、こういう外来語を乱用してるんだろ。後進国の土人社会にはありがちなことだけどな。」
淀長さん 「なあピエールはん、ワタシの知るかぎり、自由民主党のイデオロギーは『自由主義』でも『民主主義』でもないよ。
自由民主党の連中が自分で言っているから間違いないんだろうけど、彼らのイデオロギーは
『自由民主主義』だからね。」
ピエール氏 「そういうのを、サル知恵っていうのさ。」
淀長さん 「やっぱり“サルの惑政”だったか……。」

★          ★          ★

……というわけでハイ! ブールさんとの天国での会話は、なんだか気まずい雰囲気で
終わってしまいました。マア!悔しいですねえ。残念ですねえ。 永田町のサル山の
お猿さんたちには、せめて「反省!」してほしいですねぇ。 日光サル軍団はりっぱに
「反省!」できたんですから……。 では次回まで、サヨナラ!サヨナラ!サヨナラ!

 

 

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(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6644)から引用》と明記して下さい。)

労働者にメリット・ゼロの「残業代ゼロ」法案を強行する「悪の枢軸」企業群

厚生労働省の労働政策審議会は2月13日、長時間働いても残業代などが払われない新しい働き方を創設する報告書をまとめた。安倍は12日の施政方針演説で「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度、社会の発想を、大きく改めていかなければならない」と語り、「残業代ゼロ」となる働き方をつくるのは、その岩盤規制に風穴を開ける「改革」という位置づけ、更に「時間ではなく、成果で評価する新たな労働制度を選べるようにする」として、政権の成長戦略にこの制度の創設を盛り込んだそうだ。

ここまでは、どの新聞でも読める。

◆真っ当な労組が存在していればゼネストをを打つ事態

この「残業代抹殺法」制定への動きを報道している方々は単純な疑問に気が付かないだろうか。

「フレックス制」はどこへ行ったのか?
消えてはいない。多くの企業で出勤時間の自己申告による調整は行われている。新聞社にも夜勤はあるだろう。自己申告により自分の生活と仕事の調整をはかる「フレックス制」には企業、労働者双方にメリットがある。それで「労働時間の画一的な枠」は解決済みじゃないか?

でも安倍の本音は「労働時間」うんぬんではなく「残業代」という概念を消し去ってしまいたいのだ。これを明言するから恐れ入る。安倍の暴走に私の語彙がついてゆけない。

「残業代抹殺法」による労働者のメリットは皆無である。この「蟹工船政策」とでも呼んでやりたい安倍の本心は何も隠すことなく吐露されているから、これ以上の説明は不要なのかもしれないけれども、あまりにもえげつなさすぎる。「連合」などといった腐れ組合ではなく、本当の労組が生きていればゼネストを打つだろう。

◆労働者の基本的権利を「審議会」の密議で奪う日本

安倍が「改めていかなくてはならない」としている「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度」とは世界の資本主義発展の中で膨大に生まれた労働者階級の労働条件を如何に「人間的なもの」とするかの闘争の末に勝ち取られた基本権ではなかったのか。国により労働時間の長短はあるが、当初は1日10時間労働、そして1日8時間勤務実質7時間労働(週40時間労働)という基本合意が日本では成立した。その合意を超える労働はいわば「約束違反」だから本俸よりも高い割合で「残業代」が支払われる。これ、常識じゃなかったのか?

何故その基本的権利を「労働政策審議会」などと言う一部の人間の密議で奪われなければならないのか(議事録が公開されていたって内容がインチキだからあんなものは「密議」もしくは「謀議」と呼ぶ)。安倍があたかも旧弊のように言う「労働時間に画一的な枠をはめる労働制度」とは「資本により過剰な労働時間を労働者が押し付けられないように防御する権利」であり労働者と使用者間で最低限の約束ではなかったのか。

対象は年収1075万円以上(平均年収額の3倍以上)、個人と会社の合意が前提、研究開発や金融ディーラーなど専門職に限る、とあたかも一部の労働者のみを対象にしているとの印象造りに余念がない。読者の皆さんはこの約束は守られるとお考えになるだろうか。

◆PKO法と同様に「残業代抹殺法」も必ず変容する

例が違うがPKOは当初「紛争地帯」へは絶対に行かないはずだった。政府は「武器も小火器しか持たせません。日本には平和憲法があるから、あくまでも非軍事部門での国際貢献です。決して戦闘地域へ行くようなことはありません」と嘯いていたではないか。だがカンボジアを皮切りに気が付けばアフリカにまで派兵する実績を作った後に安倍が言い出したのが「解釈改憲」と「積極的平和主義」=「軍事国家化宣言」だ。さっそくその反作用として「イスラム国」から「テロ支援国家」指定をされたではないか。

「残業代抹殺法」も必ず変容する。対象者の年収が700万円に下がりやがて500万円、300万円を経て最後には「全労働者」に広げたいというのが本音だ。「個人と会社の合意」など最初から守られることはないだろう。中規模以上の企業へお勤めの方であればお分かりだろう。職場にそんな「個人の自由」など端からありはしないことを。労組だってあてにならない中で、勇気をもって「拒否」の姿勢を明らかにすることは「兵役拒否」宣言をするに等しい。出来るわけがない。

専門職とされている対象だって、舌の根も乾かぬ内に無原則に広げられるだろう。詭弁使いにかけてこの国の政治家・官僚は世界でもトップクラスだ。「朝令暮改」、「羊頭狗肉」は一切気にならない。無神経と開き直りが成功する政治家の必須条件なのだ。

◆NTT、ベネッセ、イオン、日本郵船などが名を連ねる審議会

「労働者奴隷化計画」は着々と進行する。「労働政策審議会」の中には労働側代表として10名の大規模組合関係者が入っていた。使用者側はNTT、ベネッセ、イオン、日本郵船、経団連など同様に10人だ。これに「公益代表委員」が10名、主として大学教員で構成されている。

この手の「審議会」や「諮問委員会」は最初から結論ありきで、その結論に賛成するであろう者を7割ほど、反対するだろう者を3割ほど入れて、一応「審議」をした形跡だけは残しておく。が、反対意見が多数を占めて政府の思惑通りに進まないことは絶対と言ってよいほどない。

金の亡者「経団連」、「イオン」、「ベネッセ」(社長兼会長は元日本マクドナルド社長の原田泳幸)らと安倍が織りなす「悪の枢軸」の暴走を止めなければならない。ただでさえ非正規労働者はまともな生活をおくることすらままならないのに、「残業代抹殺法」が成立すれば「働いても食えない」社会が益々進行するのは明らかだ。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎イオン蔓延で「資本の寡占」──それで暮らしは豊かで便利になったのか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎リクルートの「就活」支配──なぜ国は勧告指導しないのか?
◎日本の「新幹線」輸出で最初から破綻が運命づけられていた台湾高速鉄道
◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致

同時多発に事件を追う!話題の『紙の爆弾』3月号発売中!

 

円安からデフォルト──税金引上げ、年金引下げ、社保切り捨ての後の総崩れ

110円台あたりにほぼ落ち着いた感のある円安。これまでの政府や経団連の説明によれば、輸出が促進され輸出企業を中心に収益が好転し経済活動が活発になるはずだった。確かに一部の輸出企業は収益を伸ばしている。でもそれは1ドルあたりの円の価値が下がった為にその差額が転がり込んできているだけの事であり、実際の商品売上数が伸びているわけではない。米国の自動車販売実績を見ても円安にもかかわらず米国勢が販売実績を伸ばしている。

◆日本も米国もすでに「破産」している国

原材料を輸入して製品化し、輸出で利益を得る「加工貿易」とも呼ばれる大枠日本の経済構造にとって「円安」は必ずしも喜ばしいことではない。日本企業や政府の原材料調達はごくまれな例を除いて未だに「ドル建て」である。過去あまたの世界的不況やドルの乱高下を経験しているのだから「円建て」決済に何故踏み切らないのか、そうすれば為替の相場の影響をこれほど受けずに済むのではないかと思うのだが、専門家に言わせると「気が小さいから」日本の企業は「円建て決済」が出来ないらしい。

だから円安は原材料調達の高騰に直結する。原油、各種金属材料、小麦、大豆など。米を除けば日常多量消費する物資を輸入に頼っているこの国を円安は痛撃し、物価がじりじりと上がってゆく。「インフレ目標」など定めなくても消費税のボッタくり的上乗せと円安誘導に引き起こされた物価上昇は生活感覚からすると2%(政府インフレ目標)どころではない。貧乏人はいつもレジで清算の時に1円玉を財布から取り出さなければならず、1円玉は薄くてつかみにくいものだからつい、落としてしまい「また!」と舌打ちさせられるはめになる。

但し円安は自国通貨の価値を下げるから、これからじりじりと投機的外資を呼び込む効果は出てくるのかもしれない。外資ファンドが郵貯や優良株乗っ取りを狙って侵入してくるだろう。他方、常に日本より金利の高かった米国が実質「ゼロ金利」に突入し、それでも尚国債の発行は止まらない。円の価値は対米ドルでは下がっているが、米ドルも対ユーロやポンドで自国通貨安を引き起こそうと必死になっている。

何故かと言えば日本も米国も実は既に「破産」している国だからだ。

◆日米「多重債務国」同盟

米国は世界最大の債務国だ。借金世界一ということだ。IMFによると米国の総国債発行残高は2014年に18.395兆ドル(1ドル=110円で計算すると約2000兆円)。2004年の8.039兆ドルからこの10年で倍以上に膨張している。米国債を最もたくさん保有しているのは中国で、日本が二番目だ。この2国が裏で交渉して一気に米国債を売りに出したら(そんなことは出来ないだろうが)、その瞬間に米ドルは暴落し、米国はデフォルトを起こす。「世界一の大国」はその気になればいつでも転がすことが出来る。

でも、それが出来ない理由の一つは、日本も同様に言わば「多重債務者」状態だからだ。国債、地方債の発行残高は1000兆円を超えている。赤ちゃんから老人まで一人当たり1000万円以上の借金を背負わされているわけだ。勤労者人口のみに限定すれば一人当たり3000~4000万円に上る「国の借金」の「連帯保証人」を知らないうちに引き受けさせられている。

来年度の政府予算は補正を含めれば100兆円を超えるだろうが、税収は40兆円前後だ。月収40万円の家庭が毎月100万円の出費をしているわけだ。こんな状態がいつまでも続くだろうか。

◆「ちゃぶ台返し」が必ずやってくる

いったい誰が返済の責任を負ってくれるのかといえば、それは政府ではない。もちろん財務省を始めとする行政機関でもない。いわんや政治家個人など知らん顔を決め込む。負債を返済させられる「連帯保証人」はあなただ。国が借金をする時にあなたに相談があっただろうか? 連帯保証人になってくれと頼まれ、あなたは借用書に印鑑をついただろうか。記憶はないはずだ。そんな方法でこの巧妙な借金は展開されてはいない。あなたに解りにくい「お伺い」があったのは敢えて言うなら「選挙」の時だ。

「皆様のお力でどうぞ国会に送ってください」と連呼するあのやかましい声のなかに本音は隠されていたのだ。「当選すれば私は歳費を年間約2300万円、その他政務調査費や諸々の利権が手に入りますんや。皆さんには『税金引き上げ』と『年金の引き下げ』その他『社会保障の切り捨て』で国の借金負担してもらいますねんけど、ここでは言えまへんわな」との本音が聞こえていたのは有権者100人に1人くらいだろうか。

何の根拠もなく世界の力関係はいつだって同じように見えるかもしれないけれども、一つ刺激があれば総崩れがいつ起きても不思議ではない。いや遅かれ早かれ常識のように見える世界秩序を根底からひっくり返す「ちゃぶ台返し」が必ずやってくる。多重債務者であるこの国の言うことを諾々と聞いていると下劣な表現だが、

「ケツの毛までむしられるで」

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎安倍「国富喪失」解散──アベノミクス失策の責任を問う選挙へ
◎2015年日本の現実──日本に戦争がやってくる
◎イオン蔓延で「資本の寡占」──それで暮らしは豊かで便利になったのか?
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」

あらゆる事件は同時多発!──『紙の爆弾』3月号発売中!

《大学異論32》大学・刑務所・造幣局──入学試験で繋がる意外な関係

「A大学入試、『数学』問題に誤り」。大学入試の出題ミスは大小含め連日報道される。新聞に記事が出ていても読み飛ばす読者が多いだろう。大学の肩を持つわけではないがこと「入試問題」にかけて大学は、その「秘匿性」と「正確さ」にかなりの神経を使っている。努力はしている。それでも「入試問題」の間違いを根絶は出来ない。以前も本コラムで述べたが入試実施の回数が増え、それに合わせた出題を準備しなければならない大学の負担は増すばかりだ。そこで出題者を予備校に依頼している実態もご紹介した。

一般に入試が行われている時間内に現場で大学側から「問題の訂正」や「回答方法の変更」を受験生に伝えることが出来た場合は報道されるような「出題ミス」とは取り上げられない。受験生が試験を終え、会場を後にして関係者が「おい、これ間違いじゃないか」と大学に連絡をよこしてきて、初めて大学が気付いた時に「事件化」する。

◆入学試験は大学の要──だから入試当日、大学関係者は大変!

入試には必ず教室ごとに監督者が数名配置され、受験に関する注意伝達や問題配布を行う。大規模大学の教職員は年度を通して1度(あるいはゼロ回)の監督担当で済ませられるが、小規模大学で受験生の数がそこそこあると、教職員は連日試験監督にあたることになる。「入試課」とか「入試広報課」が教職員の監督配置を決め各人に連絡が来る。私も毎年この時期には連日試験監督に駆り出されていた。

当然の事ながら、監督者も試験会場で初めて試験問題を目にする。受験生が着席し開始5分ほど前までに回答用紙と問題用紙の配布を終え、試験中の注意事項を伝える。試験開始までの数分は特にすることはないので、教壇の上で配布し終えた問題用紙に誤植などがないか目を通してみる。私の勤務していた大学は入試の「英語」は比較的基礎的な力を試す良問が多いのが特徴だった。言い換えればそれほど難しくはないわけだ。開始定刻になると「はい、回答用紙を表に向けてまず、受験番号と氏名を記入してください」とマニュアル通りに伝える。受験生があらかじめ提出している写真と受験票及び本人かどうかの確認に回り、欠席者を記録しておくとしばらくは手が空く。

そこで再び、今度は受験生になりきったつもりで問題を読む。すると「これ、複数形じゃないとおかしいんじゃないか」と長文問題の中に疑問箇所を見つけることがある。静寂な教室内からは連絡できないから廊下に出て、内線電話や携帯から「入試本部」に連絡する。「入試本部」には「問題発生」の際に対応するため必ず出題者が控えている。「3ページの下から5行目の単語です。これ単数ですが、主語が複数だから複数じゃないかなと思うんですが」と要点を伝える。即答はない。「確認して連絡します」ということになり教室に戻る。

私の勘違いで出題に間違いがなければ、「入試本部」から誰から走ってきて「問題ナシ」と書いた紙を手渡される。逆に私の指摘が正しい場合には正誤表と黒板に書く訂正内容、及び受験生に口頭で伝える内容をコピーした紙を息を切らして伝令が持ってくる。訂正箇所を板書し口頭でそれを伝える。

大学内で実施している試験の時はさほど緊張もしないけれども、地方試験で「入試問題」の間違いを見つけると大慌てだ。やはり教室の外に出て携帯電話から「入試本部」に電話をかけ疑問箇所を伝える。この時は電話は切らない。なんせ地方試験は全国で同時に行っているから、もし「出題ミス」なら「正誤」を確認するだけでなく、場合によってはこちらも他の地方入試会場に訂正を伝える「伝令」を担わなければいけない時もあるからだ。不幸にも私の指摘通り「出題ミス」が確認されると、手書きで「正誤表」を作成し教室に控える別の担当者に速やかに手渡し「入試本部」」と調整してこちらから連絡をする会場を決め担当者の携帯電話に大急ぎで電話連絡をする。

と、現場では「ミスがあっても最小限に」という努力が結構真剣に行われていた(当たり前だが)。

◆刑務所、造幣局と大学を繋げる「入試」

ところで「刑務所」と「入試問題」。この二つには深い関係がある。一見無関係な両者だが読者には想像がつくだろうか。

かつて、相当数大学の入試問題は「刑務所」の中で印刷されていた。理由は「刑務所」は問題漏えいの心配が限りなく低い場所だからだ。印刷費用も妥当な額だったと記憶する。「刑務所」内の作業日程を書いたカレンダーにはイニシャルで「A大学納期」「B大学校正」などびっしり日程が埋まっていた。大学の人間が服役中の方と接することはなく、「刑務所」の職員の方とやり取りをするのだが、印刷が終了すると今で言う警備会社の車両で大学に運び厳重に保管されていた。

ある時期を境に、刑務所ではなく印刷は別の場所に移動した。噂程度でしか聞いたことはないけれども「刑務所」から何らかの方法で問題が外部に漏れたような話を耳にはした。

次なる場所はさらに「機密性」が高いところでなければならない。そこで選ばれたのが「造幣局」であるお金を印刷する機械と入試問題を印刷する機械が同じなのかどうかは知らないが「造幣局」での入試問題印刷も歴史は長い。「造幣局」も「刑務所」も納期や印刷の確かさに関しては民間の印刷会社の比ではなく任せる方としては安心度が比較にならない。

「入試問題」の内容は「どのような学生が学びに来てほしいか」を受験生に伝えるメッセージでもある。私には入試問題作成を予備校に依頼したり、「センター試験」の点数だけで」合否を決めるなど、私立大学としての存立自体を否定する行為のように思えてならない。今では少数派になってしまったけれども、私と同じように考える大学関係者もかつては数少なくはなかった。

受験生にとっては苦痛以外の何物でもない「入試」だが、「入試問題」にはそういう裏面の歴史もある。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎《大学異論31》経営の内情が透けて見えてくる各大学のネット広告・入試戦略
◎《大学異論30》リクルートの「就活」支配──なぜ国は勧告指導しないのか?
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小向美奈子逮捕は警察の協力要求を蹴った意趣返し?「後ろ盾」とも決別か?

セクシー女優の小向美奈子が覚醒剤取締法違反(所持)の疑いで3度目の逮捕となった。厚生省麻薬取締部によると、小向容疑者は6日朝、自宅マンションで覚醒剤約0.1グラムを所持していた疑い。取締部の家宅捜索で見つかった。

小向容疑者は同法違反(使用)の罪に問われ、09年に東京地裁で懲役1年6カ月執行猶予3年の有罪判決を受けている。

◆警察は小向を泳がせ麻薬流通ルート解明を狙っていた?

「この逮捕は警察が小向に対して『協力者になってルートを解明してほしい』という協力者要請をしたが、蹴った意趣返しというウワサもあった」と大手新聞記者。

「11年に2度目の逮捕のとき、証拠不十分で釈放されています。このとき警察側が持っていた証拠を引っ込め、情報提供と引き換えにしたとも言われてました。そうしたウラ交渉をしたのが警察に顔の利くウラ社会の人物で、小向の後ろ盾ともいわれてます。狙いは小向を泳がせ、麻薬流通ルートを解明をしようとしたわけですが、小向は警察との約束をいくつか破ってしまっていたらしいんです。さらに小向は警察との連絡をとだえさせてしまった。警察は1度、不起訴にした案件だけにこれを麻取に持って行って再逮捕につなげたという説があります」(同)

◆「後ろ盾」の人物が小向を見放した?

一説には小向の逮捕は、後ろ盾となってきた人物が“見放した”ことも遠因ともいわれている。AVライターによると、これは業界内でよくあることだという。

「作品数を重ねるとマンネリ打破のため、内容が次第にハードになるのがAVですが、それに嫌気がさして引退ししたがる女優も少なくないです。小向もAV引退でタレント業に戻りたいと漏らしていて、後ろ盾と方向性で揉めていたというウワサがあったんです」(同)

◆戦々恐々のAVメーカーと「共犯疑惑」のタレントたち

一方、通販サイトのAMAZONでは小向のAV作品がバカ売れ中だ。2月13日発売の作品「夫の目の前で犯されて―哀しみを背負った夫婦」(ムーディーズ)も発売中止にせずリリースされ、こちらも大ヒット。気をよくしたメーカーは過去作品のベスト版を作るかもしれないと話している。

ただ、喜ぶのはちょっと早い。実は捜査官の中には「小向が薬物をやっているのを知っていて作品が収録された可能性」を見ている者がいるからだ。ある捜査官は収録時のノーカットのマスターテープを見たがっており、そこに薬物使用が分かる場面が映っていた場合、スタッフが罪に問われるばかりかメーカー自体が摘発対象になる。

それを察知したか、一部のAV関係者はマスコミの取材に「そういえば酒を飲んでいるように見えるときがあった」などと予防線を張るコメントをしていた。

小向と共犯が疑われるのは夜遊びが目撃されていたタレントも同じ。戦々恐々としている遊び仲間がいる。2回目の逮捕に動いた警視庁の関係者にそのあたりを聞くと「言えるわけがない」と電話を切られてしまったが、一部ではすでにその名前が浮上している。

逮捕されるたびにストリッパー、AV女優と肩書きを変えてきた小向だが、今回はタレント業に戻るのは非常に難しそうだ。

「AVメーカーもさすがに犯罪者の復帰作を作ることは難しい。それどころか小向との関係を清算すべく、書類や仕事のロンダリングを始めた者もいる。AV業界からも追放されそう」(業界関係者)

こういうとき切り札になる暴露本もすでに1冊を出しており、内容もセールスも評判は悪かった。前著のタイトルは「いっぱい、ごめんネ。」。だが、今度こそは「ごめんネ」で済まされそうにない。[ハイセーヤスダ]

◎《脱法芸能》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
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◎《我が暴走》元同僚が実名顔出しで語る「マツダ工場暴走犯の素顔」
◎《紫煙革命》発がんリスクが低い「スヌース」は煙草より健康的か?
◎《屁世滑稽新聞》既知害国会の“ハンザイ三唱”は何だったのか……の巻

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第1回前田日明ゼミ開催!──新右翼鈴木邦男さんと「真の愛国者」を問う!

2月8日鹿砦社主催の「前田日明ゼミin西宮」の第1回がお馴染みの鈴木邦男さんをゲストに迎え60余名の聴衆が集散し、これまで同様cafeインティラミで開催された。「前田日明ゼミ」への関心の高さは『紙の爆弾』誌上で発表後時間をおかずに定員に達したことからも伺われたが、この日も会場へ直接申し込みなく訪れた方々が10名を超えた。

会場スペースと消防法の規定もあり、当日会場に来られた方々は入場することが出来ずにお帰り頂いたそうだが、鹿砦社の担当者の方からは「大変申し訳ないが事情を理解していただき、次回以降申し込みをして頂き是非ご参加を」とのコメントがあった。

会場には鹿砦社のロゴやカレンダーなどを手掛ける「龍一郎」さん(前田さんの大ファンだそうだ)も駆けつけ、対談開始前に会場で書を実践披露していただいた。書かれたのは「誠」。清々しいサプライズを受けて対談が始まった。

この日のテーマは「真の愛国者とは~現代日本は社会を読み解く~」であった。新右翼でありながら今や「境界なき思想家」である鈴木さんと韓国籍から日本国籍へ帰化された前田さんの間でどんな激論が交わされるのか。「愛国」を語らせたら、これ以上ないスリリングな組み合わせに会場は静かながら緊張感に包まれた。

鈴木さんは吉田松陰や幕末に活躍した人間が専ら中国の古典から教養の基礎を学んでいたことを紹介し、日本で昨今見られる排外主義に疑問を呈すると、前田さんはすかさずそれに呼応する。いわく武士の教本は「四書五経」にあったと。

◆サンフランシスコ講和条約──問題はそこから始まってる

前田さんが恐るべき読書家で、それには鈴木さんすら一目置くほどだという事実は知る人ぞ知るところだが、その後も歴史的にあまり知られていない重要な事実を前田さんはどんどん明かしてゆく。

「吉田茂と白洲次郎は売国奴ですよ」

「サンフランシスコ講和条約は何語で書かれているか皆さんご存知ですか?英語、フランス語、スペイン語、付け足しで日本語と書かれてるけど、政府答弁ではサンフランシスコ講和条約の日本語版は存在しない!」

「サンフランシスコ講和条約の中で、日本に主権を返すという記述はある。でもそれは日本国にじゃなくて”Japanese People”と書かれてる。これ日本人でしょ。日本国じゃないですよ。でも政府は日本国と偽訳で国民を誤魔化してるんです。」

「敗戦に伴う賠償請求はしないことになったると言われてるけど嘘ですよ。よく読んだら戦費以外は『いつでも、私企業にも賠償させることが出来る』て書いてある。だから日本は国連やIMFへの出資が多い。ODAもそうですよ。日米安保以前にサンフランシスコ講和条約の問題を誰も言わないでしょ。問題はそこから始まってるんですよ」

「今まで何百人という政治家に会ってきましたけど、この人は本物だなと思える人は2、3人ですね。あとは皆だめですね。私の質問にも答えられない」

◆彼ら(在特会)のやってること自体が『在日』そのもの

そして、いよいよ「愛国者」に関係の深い昨今の差別問題へと鈴木さんが話題を向ける。前田さんは実際に「在特会」のデモやヘイトスピーチを目にしたことはないというが、

「彼らのやってること自体が『在日』そのものなんですよ。『在日』にもいろんな人間いるから変な奴もいる。正に『在日』の悪い部分そのものですね」

と在特会こそ『在日』の闇の部分だと指摘する。だが、

「もし目の前であんな事言われたら、日本刀でぶった切るかもね(笑)」

とやはり前田さんにも許し難い行為のようだ。更に新井将敬(元韓国籍から日本国籍に帰化、自民党から国会議員に当選するも自殺)、中川一郎、果ては橋本龍太郎の死に対して疑いの目が向けられる。

「謀略って日本人はあまり信用しないけどあるんですよ」

前田日明ゼミ第一回は早速ダッシュで始まった印象だ。本当はゲストである鈴木さんの「聞き出し方の旨さ」も際立っていた。鈴木さんに取調官をやらせたらきっと優秀だろう。

ゼミ終了後、同じ場所で懇親会が開催された。前田日明ファンが写真を撮ったり、握手を求めたり列をなした。中には時価1千万円の価値があるという「テレホンカード」の数々を持参して前田さんにサインをもらっている方もいた。極め付けは「技をかけて!」と願い出る女性へのコブラツイスト!

次回以降も何が起こるかわからない。期待を寄せる刺激に満ちた初回スペシャルだった。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎渡辺昇一の「朝日憎し」提訴原告数が「在特会」構成員数とほぼ一致
◎粗悪な食文化の伝道企業=マクドナルドの衰退は「自然の理」
◎人質事件で露呈した安倍首相の人並み外れた「問題発生能力」こそが大問題

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制度は作るが責任は取らない厚労省「健康な食事を普及するマーク」の怪

厚生労働省が昨年10月16日、「健康な食事」に関する珍妙な報告書を発表している。

報告書の主旨はこんな感じだ。
「この度、『日本人の長寿を支える「健康な食事」のあり方に関する検討会』(座長:中村丁次神奈川県立保健福祉大学学長)の報告書を取りまとめましたので、公表します。 本検討会は、日本人の長寿を支える「健康な食事」とは何かを明らかにし、その目安を提示し、普及することで、国民や社会の「健康な食事」についての理解を深め、「健康な食事」に取り組みやすい環境の整備が図られるよう、平成25年6月より検討を行ってきました。 」とのことだが、この報告書、記述のあちこちに怪しい箇所が満載されている。

◆まったく整理されていないのに無理やり「整理」の非現実

その内容は、
【主なポイント】
1)日本人の長寿を支える「健康な食事」のとらえ方を整理
「健康な食事」とは何かについて、健康、栄養、食品、加工・調理、食文化、生産・流通、経済など多様な側面から、構成する要因を踏まえ、整理。

2)生活習慣病の予防に資する「健康な食事」を事業者が提供するための基準を策定
食事摂取基準(2015年版)における主要な栄養素の摂取基準値を満たし、かつ、現在の日本人の食習慣を踏まえた食品の量と組合せを求め、1食当たりの料理を組み合せることで「健康な食事」の食事パターンを実現するための基準を策定した。この基準は、食事を提供する事業者が使用するものである。事業者は、この基準を満たした料理を市販する場合にマークを表示することができる。

3)「健康な食事」を普及するためのマークを決定
市販された料理(調理済みの食品)の中で、消費者が「健康な食事」の基準に合致していることを一目で分かり、手軽に入手し、適切に料理を組み合わせて食べることができるよう、公募によりマークを決定。

とされている。医療・健康に関する厚生労働省の施策に長年疑念を感じているひねくれ者の私は、ご指導を頂いたからといって「はい そうですか」と有難く盲従する気はさらさらない。

でも、国が定めればその指針を信用・信頼して食生活を考えたり、何を食材として購買するかの参考とされる方も少なくないであろう。

【主なポイント】にはその記述からして、怪しい箇所がいくつか見受けられる。

1)は「健康な食事」とらえ方を整理とある。つまり「健康な食事」を定義しているのだが、その中に「健康、栄養、食品、加工・調理、食文化」とあるのは肯けるが、「生産・流通、経済など」と「経済」が入っている。ここでいう「経済」は生活者の「経済状況」ではなく、国や地域の「経済」を指すことは報告書の全文を読めばわかる。健康食と「経済」の結びつきに「経済が第一」を叫ぶ安倍政権下でなされた「報告書」の暗部を感じる。厚生労働省が示している「日本人の長寿を支える『健康な食事』を構成している要因例」では「健康な食事」を示しているはずなのに、それを構成する要素をまとめる項目は3つで、「自然」「社会・経済」「文化」とされていて、中でも中心に「社会・経済」が描かれている。表題、あるいは図表全体が示す内容と「社会・経済」には相当な乖離がある。

◆乱暴であいまいな「健康食」指定がなされる危険性

また、2)から導かれる、3)の「健康な食事」を普及するためのマークを決定 に至ってはかなり乱暴な「健康食」指定がなされることを示しており、警戒が必要だ。

「健康な食事」の普及のためのマーク(厚生労働省)

ここに示したような「健康な食事を普及するマーク」が4月から店頭に登場することになる。ところが、このマーク使用にあたっての厚生労働省の基準は以下の通りだ。

(1)マークの対象とする料理
対象とする料理は、市販される1食当たりの料理(調理済みの食品)であり、外食や給食など提供される場所、パック詰めやパウチ詰めなど提供される形態を特定するものではない。仮に基準を満たしても、1食分となってないものは対象とはならない。また、特定の保健の用途に資することを目的とした食品や素材は使用しないこととする。

(2)マークの表示に当たっての留意事項
事業者は、マークの適切な普及のために、主食、主菜、副菜を組み合わせて食べることなど、マークの意味することについて、消費者に適切に情報提供できる体制を確保すること。
○ 事業者は、マークとともに、おいしさや楽しみを付与するために工夫している旬の食材や地域産物の利用などの情報について積極的に提供すること。
○ 事業者は、マークの表示に際して、おいしさや楽しみのために工夫した食材の特徴があれば、あわせて、分かりやすく表示すること。
事業者は、基準に合致したレシピの作成など、「健康な食事」に関する企画や運用に当たって、管理栄養士などの関与により、適切に実施できる体制を確保すること。
国は、マークの普及状況をモニタリングする観点から、事業者のマークの使用状況について、国に報告する仕組みを構築すること。この他、基準を満たすためのそれぞれの食品の重量は、生の重量を基本とし(ただし主食においては、調理後重量を基本)、栄養素の量は、成分分析値でも食品標準成分表からの計算値でも構わないこととするなど、基準の運用に必要な事項の詳細は、今後、別途作成するガイドラインに示すこととする。

赤や青文字部分が多くて恐縮だが、要するに「売る人間の判断で、国や公的機関の検査もなく勝手に」利用できるのが「健康な食事を普及するマーク」であるということだ。「何の検査も審査もなく誰でも勝手にお使いください。国は制度は作りますが責任は取りません」という恐るべき制度である。

仮に私が弁当屋を開業して、自家商品を売る際に「勝手」に張り付けたり、印刷しても構わない、それが「健康な食事を普及するマーク」である。マクドナルドだって利用するかもしれない。

◆「国民の生命・健康」という最低限の責任すら取らない官民ビジネス

よくまあこんな無責任をお役所が許すものだと呆れるばかりだ。「国は、マークの普及状況をモニタリングする観点から、事業者のマークの使用状況について、国に報告する仕組みを構築すること」などと呑気に言い訳のように付け足しているけれども、この「健康な食事を普及するマーク」は使用開始前から「何の保証も安全も担保されない、無責任な制度」であることを認識しておく必要がある。

コンビニエンスストアやスパーマーケットの店頭にはやがてこのマークが並ぶことだろう。本当に食材の内容や新鮮さ栄養バランスに自信のある生産者は、こんないい加減な制度は、むしろ無視するのではないだろうか。私が自信を持った商品の提供者ならこんないい加減なマークを付けるのは「恥」だから絶対に利用しない。いい加減な商品としっかり作った商品を混同されてはかなわない。

「官から民へ」の実態をここで垣間見ることが出来る。行政は「国民の生命・健康」という最低限の責任すら取ろうとしなくなっている。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

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《大学異論31》経営の内情が透けて見えてくる各大学のネット広告・入試戦略

大学入試が真っ盛りだ。入試業務は煩雑で多忙ではあるが、志願者の多い有名私大にとっては「入試検定料」(受験料)で、副収入を稼ぎ出す「美味しい」季節の到来である。

一方、学生集めに苦戦してる大学は「入学試験」をどのような形で行うかをめぐり右往左往している。その激化は近年益々際立ってきている。

インターネットで検索を行ったり、フリーメールを利用したりすると、画面に表示される広告がその内容に応じて利用者向けに調整される薄気味悪い機機能を読者もご存知だと思うが、私は大学に関する記事を書くことが少なくないので、画面には大学の学生募集広告が次々に表示される。

◆勢いがある近畿大広告とクドイほど現われる甲南大MBA広告

昨年志願者数が初めて日本一になった「近畿大学」もその一つだった。さすがに勢いがある。「お父さん、怪しい履歴消しといてね」という際どくも気の利いたほほえましいコピーは余裕のなせる技か。パソコンをご家族で共用している「お父さん」は本当に気を付けないといけない。深夜や休日の「お楽しみ」後にはくれぐれも検索結果を消去しておくようにお勧めする。

また、くどいほど画面に現れたのは「甲南大学MBA」(「MBA」は「ビジネススクール」とも呼ばれる)だった。「何回受験しても受験料は5000円」、「実質学費は60万円」とこちらはひたすらに「お値打ち感」を前面に出していた。「MBA」でありながら教学内容ではなく「お値打ち感」をアッピールする広告を打つことに躊躇いはないらしい。こういう学校の教育内容は推して知るべしだ。本コラムで何度か言及している通り学生(院生)確保に苦しんだ挙句「学費」の値下げ競争(ダンピング)に足を突っ込んだところは「破綻」が近い。

日本の大学は私学、国公立とも世界で一番学費が高い。これは大問題だと思う。国が教養の豊かさや教育を重視していないことの現れで、経済格差が生活格差に直結する一大問題であるから、こちらの問題は近く詳述したい。

◆学生募集に苦しんでいる大学ほど「ネット出願」に積極的

そのことを認識しながらも、入試や広告に見られる「ドタバタ」は大学の内実を示唆する。

「インターネット出願」(以下「ネット出願」)を採用する大学が増加している。「ネット出願」が可能な大学は「受験料」も安く設定され、通常出願であれば25000~35000円するところ、「受験料」が5000円~7000円程度に抑えられている。

受験生にとっては有難い。「ネット出願」を利用すれば通常出願の5分の1程度の出費で受験できる。大学側にとっても受験生情報の入力作業が大幅に簡素化できるから業務効率化というメリットがある。

受験生が多い大学は出願開始時期に併せて、臨時のパートや派遣スタッフを雇う。常勤メンバーでは到底さばききれないので3月中旬の2次試験終了まで、入試業務専属の「期間限定」増員を行う。「ネット出願」が今後増加すれば、このような「期間限定」のスタッフ増員も不要になるかもしれない。「センター試験」の成績だけで合否を決める試験もあるので、そのような「無機質」な試験に従来の「受験料」は高すぎたし、願書出願の手間も省けるというメリットは評価されよう。但し忘れてはならないのは「ネット出願」と言ったところで、インターネット上で全ての情報を大学に送ることが出来るわけではなく、調査書や写真、推薦状などは必ず郵送しなければならないことだ。

「ネット出願」を実施している大学の顔ぶれを見ると、「受験生の負担軽減」や「業務の効率化」といった合理的な理由ではなく、別の側面も浮かび上がってくる。
有名どころでは東洋、東海、法政、亜細亜、龍谷、同志社女子、近畿各大学なども「ネット出願」を導入している。が、これら以外の「ネット出願」採用大学は概ね学生募集に苦しむ大学だ。とにかく受験生確保のためならば手段は問わない、「受験料もお安くしときます」との本音が垣間見える。この中には同一学部同一学科を受験するのに6つも7つも試験が用意されている大学がある。

◆一度の試験で3回合否チャンスを与える大学まで出現

NG大学は「センター試験の結果のみ」で合否が決まる入試と、その日の「独自問題」による入試、さらに「センター試験の結果と独自問題を総合して」合否が判断される「実質3つの入試」を同時に受験できるという、俄かには理解に苦しむ制度まで駆使している。

何を言っているかご理解いただけるであろうか? あなたが受験生であるとする。あなたは「センター試験」を既に受験していて「ネット出願」でその大学に3つの方法の受験を出願している。通常、3通りの試験を出願すれば、3回試験を受けるのかなとお感じになるのではないだろうか。まあ、このケースでは「センター試験の結果」だけという試験があるから2回かもしれない。しかしそうではないのだ。あなたは1回だけ「独自問題」による試験を受ければよい。でも「受験料」は3つの形式で受験しているので3回分支払う。

手が込んでいてわかりにくいが、このケースでNG大学は一度の「入試」3回分の「受験料」を「儲ける」ことが出来る仕組みだ。ここを本命に、と考える受験生の弱みを狙った賢くも、小賢しい手法である。

また、極一部の難関私学にとっては相変わらず「入試」は格好の副収入である。大方私学の大学案内パンフレットや願書は実質的に無料になったけれども、早稲田大学は今でも950円で販売している。全国の高校に大学案内や願書を配りまくっている弱小私大にはうらやましい限りだろう。

ともあれ、寒さ厳しいおり受験生の皆さんのご健闘をお祈りする。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ

◎《大学異論30》リクルートの「就活」支配──なぜ国は勧告指導しないのか?
◎《大学異論29》小学校統廃合と「限界集落化」する大都市ニュータウン
◎《大学異論28》気障で詭弁で悪質すぎる竹内洋の「現状肯定」社会学
◎《大学異論27》「学ぶ権利」を奪われたマスプロ教育の罪──私的経験から
◎《大学異論26》「東大は軍事研究を推進する」と宣言した濱田純一総長声明文

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アギーレ解任前から密かに後任候補を探していた日本サッカー協会の本末転倒

ハビエル・アギーレ前監督の解任による影響は大きい。就任からわずか半年、八百長疑惑による契約解除は日本サッカー協会(JFA)の任命責任も問われている。

協会は2月2日、ハビエル・アギーレ前監督の代理人弁護士から、スペインのバレンシア予審裁判所が八百長疑惑に関する検察側の告発を受理したという事実を確認。これをもって前監督に契約の解除を申し入れた。当時メキシコにいたアギーレ前監督はその場で了承したという。

◆「密命」を受けたサッカー記者たちが後任探しに奔走

しかし、後任探しはこの解任前から始まっていた。この決定が近いことは関係者なら察知していたが、事前に表立って動けないでいたため、忙しくしていたのは一部のサッカー記者だ。

「協会に近い存在の一部サッカー記者たちが、非公式に密命を帯びた形で奔走していた」とスポーツ紙の記者。

「アギーレ前監督の二の舞は踏めないということで、次の監督候補となっているルイス・フェリペ・スコラーリ(ブラジル)やドラガン・ストイコビッチ(セルビア)、グレゴリオ・マンサーノ(スペイン)、ホセ・アントニオ・カマーチョ(スペイン)らの現在の状況や契約相場、そしてゴシップの有無を協会に頼まれて探っていたんです。特に協会が知りたがっていたのは監督候補の私生活で、マフィアとのつながりがある噂はないか、『飲む、打つ、買う』といった部分にだらしないところがあるのかどうか、潔癖さ優先で一応の身体検査をしていたんです」(スポーツ紙記者)

中でも「レッドスター会長時代に選手移籍に乗じて不正に金を得た」というウワサのストイコビッチについては有力候補として詳しく情報を集めようとしていたという。
「ある記者は仕事でもないのにセルビアに出入りしていたほど」(同)

◆アギーレ解任の決め手となったのはスポンサー企業からの不快感

そこで実際に『密命』を受けたと話すサッカー記者A氏を直撃してみた。A氏は「誰の周辺を探っているかは言えない」としながらも、匿名を条件にこう打ち明けた。

「こういうのは記者であっても易々と情報が集まるものでもないので、海外の記者や関係者に金を渡して協力してもらってます。こっちはただの橋渡しみたいなもんです」

記者はあくまで協会の意向に沿ってやっていることだと言いたげだった。4年契約で2億円もの契約金をかけながら無駄になった今回の事例とあって、経費を使ってでも慎重に動いていることが分かる。

「報酬? それは言えませんが、基本給と日当。信頼関係でやっていることなので成功報酬とかはないですよ。ただ、金よりも協会に恩を売れることの方が大きいです。ワールドカップがらみの“おいしい情報”を独占入手できたりもしますから、そっちがメリット」(A氏)

一方、選手たちの間でアギーレ前監督の損失は大きいという話もある。

「バカのひとつ覚えのように数の論理で勝つというフォーメーション優先のサッカーを捨て、個の力で突破してフィールドを縦横無尽に使う新スタイルを打ち出したばかりだった。その戦術が理解され始めた矢先だったので、ぎりぎりアジア杯まで指揮をとらせたという部分もあった」とA氏。

最終的に解任を決めたのは協会と億単位で契約するスポンサー企業からの不快感だった。八百長騒動については広告代理店が大相撲の例を持ち出し企業へのマイナス試算を提示。これを受けた企業側が協会に早期解任を求めていた。中には昨年中の解任を要求したところもあったと聞く。

「選手間ではアジア杯でいい試合を見せれば日本代表の価値が上がり、相応の優秀な監督が後任になるという思惑もあった」(A氏)

一方で後任に色気を見せる人間からはアジアチームに関心が低くとも『ホンダ、カガワには注目している』などといかにも用意してきたようなおべんちゃらを言い出す『自称、日本びいき』の監督候補も増えているという話だ。そういうところもA氏の情報収集の範疇のうちだという。

◆失敗の本質は「欲しがる金を出せるか出せないか」で判断するJFAの姿勢

非公式とはいえ、恥も外聞もなく記者に探偵ごっこをやらせる協会は身体検査に「想像以上の費用を投じている」ともいわれるが、A氏によると「大きな壁がある」とする。

「協会は、各監督をバックアップする各国の大物関係者の接待など根回しがないことです。こういうのは交渉をスムーズにさせることなので、他国ではもっと積極的にやっていることですが、日本ではロビー活動が苦手なんです。相手がほしがる金を出せるか出せないか、というのが、いつも日本側のやり方ですが、実際には金額だけではないものだって武器になるんですよ。私のような記者を使うこと自体、海外とのやり取りが弱い証拠」(A氏)

本来、協会がやるべきなのは、監督候補の身辺調査ではなく、日本のサッカーの方向性を具現化してくれる、論理的な日本の指導者を育てるべきだったという声は多い。そもそも著名な外国人監督を大金出して呼べばいいという姿勢が今回の失敗につながったようにも思える。成績が悪ければあっさり詰め腹を切らせるというマネーだけがつながりのアプローチはJリーグから踏襲してきた悪い慣例かもしれない。[ハイセーヤスダ]

◎「イスラム国」人質事件で暗躍──胡散臭い仲介人やブローカーたちの罪と罰
◎《屁世滑稽新聞》既知害国会の“ハンザイ三唱”は何だったのか……の巻
◎《脱法芸能》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?

同時多発の事件を撃つ!話題の『紙の爆弾』3月号7日発売!

 

《屁世滑稽新聞17》既知害国会の“ハンザイ三唱”は何だったのか……の巻

屁世滑稽新聞(屁世27年2月7日)

既知害国会の“ハンザイ三唱”は何だったのか……の巻
(ヤン・デンネン特派員の大江戸情報)

【東京発】 当然のことだが我々ニッポンで活躍する外国人記者たちは、独自の記者ネットワークを有している。それは畜獣のクソにしがみついて自分のエサ場に転がしていく習性しかもたない“フンコロガシ”のような、ニッポンマスコミの社畜記者たちには想像もできないだろう。もちろん“社会性昆虫”にすぎないニッポンの社畜記者たちなど、我々の情報ネットワークから完全にシャットアウトしている。なぜなら連中は、役所の一室にあてがわれた「記者クラブ室」なる“特殊権益の小部屋”にご丁寧に置かれた、ゲタ箱のような報道各社むけの“お手紙受け”に日々投げ込まれる報道資料とか、大企業の広報担当のおネエちゃんがご丁寧に配達してくれる発表レジュメを、そのままペラの原稿用紙になぞりがきしていれば、もうそれだけでお仕事が完了するからだ。ニッポンの記者クラブでお仕事をしている社畜ジャーナリストというのは、餌付けされた伝書鳩にひとしい。

我々外人記者はそんな呑気な伝書鳩とはちがう。政府や企業の不都合な秘密をあばく“真実の狩人”なのだ。

ジャーナリストとしての見識も情報収集能力も、ドン臭い日本の社畜ジャーナリストなど及びもつかぬ我らトーキョー特派員が、年に一度の楽しみにしており、同時にまた他社のジャーナリストたちとの重要な情報交換の場にしてきたのが、年末恒例の忘年会にほかならない。

ところが昨年すなわち2014年の忘年会が、なぜか今年の2月上旬になってしまった。日本の旧暦の大晦日に行なう“豆まき”が終わった頃に、我々は去年の忘年会をようやく構えるという体たらくなのであった……。どうしてそんなに遅れてしまったのか? それは幹事がフランス野郎だったからだ。このリード記事は“ムッシュー幹事氏”が見ていないから、わたくしヤン・デンネンの本音をブッチャケて申し上げるが、フランス人が無能なくせに独善的だというのは数百年来の世界の常識なのである。

なにせフランスという国は、200年ばかりまえにナマイキな小ブルジョワどもが勝手に騒動を起こして王家を首狩りで惨殺したばかりか、コルシカ島出身の小男(ナポレオンのことだ!)がヨーロッパ大陸全域を武力侵攻して周辺諸国に多大な惨害を及ぼし、それで終わらずに現代でもなお、勘違いな「革命家」どものアジトになっている。中国の周恩来も、カンボジアのポルポトも、イランのホメイニも、みんなパリで不穏な革命思想を培ってきたのである。

第二次大戦当時だってフランスの無能と独善は連合国をあきれさせた。戦争が始まるやフランスはあっという間にナチスドイツに占領され、パリは何年も“ナチスの花の都”だったわけだが、ドゴール将軍はイギリスにさっさと逃亡し、霧の都ロンドンで勝手に「自由フランス」と称する疑似国家の誕生を宣言した。連合国はもちろんそんなものは正式な「政府」とは認めなかったのだが、やがてドゴールの自称「自由フランス」武装組織は従来のフランスが海外に拡げてきた植民地での支配権を、ナチス傀儡政権になりはてた本家フランスから横取りし、北アフリカ植民地のアルジェに自称「フランス共和国臨時政府」を設置した。こうしてフランス植民地の新たな宗主になったドゴールの武装組織を、連合国もしぶしぶ認めることになったわけである。そしてノルマンディーのあの過酷な上陸作戦が敢行され、西から攻め上った米軍主導の連合軍はナチスの手からパリを奪還し、一方、ソ連軍は東から進撃してついにベルリンを陥落させた。こうして連合軍が四苦八苦のすえにフランスをナチスの手から奪還するや、自称「フランス共和国臨時政府」のドゴールがすでに安全になっていたパリでちゃっかりと「凱旋」を飾り、かつてのナポレオン皇帝のように、自分が共和国の新たな主だと僭称しはじめた。……多大な犠牲を払ってフランスを解放したのはアメリカとかソ連の連合軍である。だから連合国の指導者たちは逃亡将軍ドゴールのこの“手柄の横取り”をまことに苦々しくとらえていたのである。

……70年ほどまえのこの話が、なにかに似てると気づいた諸氏は賢明である。いまの自称「イスラム国」がまさにこれの二番煎じなのだ。逆にいうと、第二次世界大戦の最中には、逃亡将軍ドゴールの武装組織なんて、いまの「イスラム国」みたいなものと見られていたわけである。

……あ~あ、愚痴が長くなっちゃった。わたくしの祖国オランダも、フランスの田舎者どもには散々迷惑をかけられたから、どうもこの連中を信頼できない。それはともかくトーキョー特派員秘密クラブの、昨年の忘年会幹事に当たっていたフランス人記者の話であるが、なんと滑稽なことにご存じ『シャルリ・エブド』の特派員だという。ところが彼が送った記事が、あのタブロイド新聞に載ったためしがないのだ。聞いた話では、この特派員ジャンピエール氏は、パリ『シャリリ・エブド』本社の地下に秘匿されていたハシッシュを不良外国人などに勝手に横流しして、それがバレて極東に島流しになったという。日本風の表現でいえば「窓際族」ってことだ。……ちなみにハシッシュとは精製大麻のことだが、ナポレオン将軍のエジプト遠征のときにヨーロッパに持ち込まれた「麻薬」なのである。フランス万歳!(ヴィヴラ・フランス!)……ってか。(笑)

前置きはこれぐらいにして、先日都内の某居酒屋で我々がひらいた忘年会での会話を、公開可能な範囲でここに紹介したいと思う。これを読めば、我々トーキョー特派員のジャーナリストとしての能力が、日本の報道機関の社畜どもとは格段にちがうことを理解してもらえるだろう……。

 

トーキョー特派員たちの「忘年会」での会話(2月上旬の某日、都内某居酒屋にて)

フランス特派員(ジャンピエール) 「お待たせしました。では2014年の忘年会を始めます。じゃあイタリア病から帰還した脳梅毒のジョバンニ君に、乾杯の音頭をとってもらいましょう!」
イタリア特派員(ジョバンニ) 「では諸君! 世界一おいしいイタリアワインをマンマンと満たしたワイングラスを手に持って! ハイっ!チンチン!」
オランダ特派員(ヤン・デンネン) 「プロースト!」
ポルトガル特派員 「サウーヂ!」
スウェーデン特派員 「スコール!」
フランス特派員(ジャンピエール) 「アヴォトルサンテ!」
(以下略)

オランダ特派員 「ところで幹事、なんで2月になってから去年の忘年会をやるのさ? もう“締切”がとっくに過ぎてるぞ!」
フランス特派員 「オランダ人は船乗りの子孫なんだから、世界事情をちょっとは知ったらどうよ? 太陰暦では2014年は、西暦2014年の1月31日に始まり、15年の2月18日に終わるんだよ。だからまだ太陰暦では2014年12月ってことだ。それくらい知っておけ。唐変木(とうへんぼく)が!」
スウェーデン特派員 「おいジャンピエール、いつから君の国は旧暦になったんだ? ま~たクソみたいな革命やらかして暦を変えたのか?(笑)」
フランス特派員 「腐ったニシンの缶詰くらいしかグルメ料理がない貧乏漁労民の国のくせに、自由の国フランスに喧嘩売ろうってのか? 本業が忙しすぎて忘年会の幹事のヒマ仕事なんて翌年まわしにしてたダケさ!」
ドイツ特派員 「やっぱりフランス人は嘘つきだな(笑)。本業って、おまえ『シャルリ・エブド』に記事を何も書いてないくせによく言うぜ。」
フランス特派員 「だまれナチの鉄兜みたいなハゲ野郎! ちゃんと書きましたよ! なんならここで原稿みせようか! ほれ! フランス語版と英語版のために二つも記事を書いたんだぜ!」

「ab?tissant(アベッチサン)」は「馬鹿」という意味。 「JE SUIS AB?ETISSANT(ジュ・スィ・アベッチサン)」は フランス語で「わたしは馬鹿」。

「ab?tissant(アベッチサン)」は「馬鹿」という意味。
「JE SUIS AB?ETISSANT(ジュ・スィ・アベッチサン)」はフランス語で「わたしは馬鹿」。

「ape」は「テナガザル,オランウータン,チンパンジー,ゴリラなどの類人猿」、
早い話が「ヒト似ザル」。
「I AM APE」は英語で「わたしはサルです」。

ドイツ特派員 「なんだよこれ? こんなの、おまえのところのクズ新聞に全然載らなかったじゃないか。」
フランス特派員 「ああそうだよ。バカ編集長が、ニホンザルなんか載せてもインパクトがないから、モハメットを表紙にして『おらはシャルリだ』って言わせたのさ。だから俺の記事はボツになったけど、パリの奴ら、モハメットをまたおちょくったから、ま~た死人がでるぞ。まあ俺の知ったこっちゃないけどな。」
オランダ特派員 「おまえ自分の会社のことなのに、ずいぶん冷淡じゃねえか?」
フランス特派員 「だってコチトラ、左遷の身ですからね。フランス領インドシナにでも左遷してくれれば、南国でおネエちゃんを抱き放題だったんだけどな(笑)。」
イタリア特派員 「おいフニャチン野郎、ベトナムはもう“フランス領インドシナ”じゃねえぞ! いつまで植民地の夢を見てるんだよ唐変木! ハッタリかましてると、ここでスクープを発表するぞこの野郎!」
フランス特派員 「イタリア病の脳梅毒の分際で、スクープとはチャンチャラ可笑しいワイ! できるもんならやってみな!」
イタリア特派員 「おおやったろじゃねえか、フニャチン野郎! おまえ去年は11月からずっとバカンスをとってタイで少女買春してただろ。映画の『ラマン』のようには行かねえんだよ、半勃(はんだ)ちのおまえじゃな。むこうで少女を抱きながら年越しして、1月中旬に日本の成人式を見物するためにようやく帰ってきた好色変態が! だ~から忘年会幹事の重職をほっぽり投げてたくせに、屁理屈こねてんじゃねえよ!」
フランス特派員 「言ったなこと野郎! わが世界最強のナポレオン国民軍がアルプス山脈をこえて半島の農奴どもをコテンパンにしてやるぞ、この野郎! ……ハイハイ、たしかに行きましたよ。タイに少女を買いにね。でもそれはあくまでも自由恋愛だぜ。バチカンの金魚の糞みたいなオマエらイタリアの分際で、2000年まえからの腐った倫理に縛られている、ロンバルジア平原の類人猿のお説教なんて聞きたくないぜ!」

(ここで店員がやってきて「お客様たち、店内でワイセツな言葉づかいでケンカするのはやめて下さい」と厳重注意され、興奮状態の特派員たちはシュンとなった、)

オランダ記者(ヤン・デンネン) 「ところで諸君、遅すぎた開催ではあるが、いちおう忘年会なのだから、恒例の年末回顧を語ろうじゃないか。」
イタリア特派員 「やっぱり年末の国会解散にはビックリしたよな。こちとらクリスマス休暇のお楽しみをいろいろと予定していたのにブチこわしにされた。迷惑きわまる話だったぜ。」
フランス特派員 「まあアベッチサンは文字どおりの馬鹿で、うちの国じゃ規制対象になっている既知害カルト、ムーニー教団ともネンゴロな関係だもんな。それに慢性下痢の治療でステロイド剤を投与されていて、これは精神が不安定になる副作用があるからなあ……」
スウェーデン特派員 「その件についてだが、うちの国はご存じのとおり、生物分類学の始祖・リンネの出身国だ。わたしも便所虫の分類学についてはちょっと詳しいわけだが、最近、注目すべき人類学的研究が出たのを知っているか?」
ポルトガル特派員 「ニッポン民族がホビットの末裔であるとか、そういうたぐいの話か?」
スウェーデン特派員 「いや。類人猿が進化の方向をまちがえて、月のような天体へと変態しつつある、という観察報告だ。まさに月のように、つまりルナティックに変化しつつある変異種がいるのだとさ。」


フランス特派員 「おやまあ! アベッチサンの顔がどんどん膨張しているのは、故なきことではなかったんだな。」
ポルトガル特派員 「人が“月”に変質しつつあるというのは、我々の想像をこえる進化路線だな。人間が“月”に変わっていったら、一体どうなってしまうんだろうか?」
スウェーデン特派員 「確実に言えるのは、昇天するってことだろうね。」
イタリア特派員 「ルナティックゆえに年末のいちばん忙しい時期に、独断で国会解散なんてやらかしたのか……。お月さまに総理大臣をやらせるなんて、恐ろしい話だよな。かぐや姫みたいにさっさと昇天すればいのに……」

ドイツ特派員 「国会解散のときに、天皇の詔書(しょうしょ)が議長のもとに運ばれただろ。記者席で見てたんだけど、あれを議長に渡した衆院事務総長の手がブルブル震えていて、そりゃスゴイものだったぜ。」
スウェーデン特派員 「だって議長が解散詔書を朗読して、それで議会が解散したら、その瞬間に国会議員は一斉解雇だもんな。“おまえら全員クビ!”って言い渡すのは、そりゃ気が重いだろうさ。心理的なストレスでブルブル震えもくるわさ。」
ドイツ特派員 「心霊家スウェーデンボルグの国のキミなら直感的にわかるかも知れないが、じつはロシアの特派員がオカルトに凝っていて、キルリアン写真術を研究して心霊カメラを自作したんだ。そのカメラで国会解散式の一部始終を撮影していたんだが、奇妙なものが写っていた。」
スウェーデン特派員 「地獄の閻魔大王でも写っていたのか?」
ドイツ特派員 「いや。なんとスターリンの首が写っていた。ソ連時代に大粛清をやらかしたスターリンがニッポンの国会議事堂内でちゃっかり写っているのを見て、このロシア人記者は腰を抜かした。」

昨(2014)年11月21日、安倍総理が衆議院をいきなり解散した。
天皇が発した解散の詔書(しょうしょ)を、衆院議会の事務総長が、
伊吹議長のもとに持っていく。キルリアン写真の心霊カメラで
撮影したら、解散詔書にはベッタリと、スターリンの亡霊が張り
ついていた。

解散詔書を議長席にひろげた事務総長の手が、
不気味に震えているのをカメラは見逃しはしなかった!
衆院議員全員が、この一枚の詔書で、その場でクビになるのだから、
議会の重さと国民への責任を自覚している者であれば、
戦慄のあまり手が震えて当然であろう……。

ブルブル震えながら解散詔書を準備する衆院事務局長の狼狽(ろうばい)ぶりを、
ニヤニヤと笑って見ているのは衆院議長の伊吹文明であった。
「非文明」を体現したようなこの男は、国会の解散が
どれほどの重みを持っているか理解できず、
ヘラヘラ顔で「衆院最後の瞬間」に臨んだのである。

国会がいきなり解散するのは、国会議員にとっては文字どおり
「議員生命」にかかわること死活問題だ。
伊吹「非文明」さんは、人の死に冷淡な人物であることが知られている。
2007年5月の末、第1次安倍政権の松岡利勝・農林水産大臣が
衆議院議員宿舎で首吊り状態で「変死」した。
当時の文部大臣だった伊吹は、親しき閣僚の変死に対して
「死人に口なし」だと言い放った。

スウェーデン特派員 「日本の国会にスターリンの亡霊が現れる必然性なんて、ぜんぜん思いつかないんだけど、一体どうしてオバケが出たのかなぁ?」
ドイツ特派員 「イタコ稼業の大川隆法にでも口寄せしたもらえばいいさ(笑)。外人から口寄せを頼まれたら、奴のことだから尻尾ふってやるだろうよ。……まあ、ロシア語のままスターリンの霊言が出てくることは、奴の能力から考えてゼッタイ無理だけどな(笑)。」
イタリア特派員 「うちの国もムッソリーニという妖怪に荒らされた過去があったわけだが、そんな国で生まれ育ったオレの感覚から言わせてもらえば、スターリンの亡霊をわざわざ地獄から引き寄せるほどの、政治陰謀とか血の臭いが、このときニッポン国会の議事堂のなかに充満してたんじゃないの?」
フランス特派員 「それって、夜食のチーズを寝室に持っていったら、寝ていたナポレオン皇帝が『ジョセフィーヌ! 今夜は勘弁してくれ!」と叫んでガバっと目ざめた、という逸話を連想させるわな(笑)。スターリンの場合は血なまぐさい政治陰謀の臭いがすると地獄から呼ばれて来るのかもな。」
ポルトガル特派員 「つまりミイラみたいな顔をした衆議院の議長どのが、スターリンの亡霊を呼び寄せたってわけか?」
フランス特派員 「ノンノン! あんな生気のないミイラに、スターリンの荒ぶる怨霊を呼び寄せるなんて無理ムリ。人間の理解をこえた凶暴な妖獣の雄叫(おたけ)びを聞いて、地獄から嬉々として現れたのでしょうな。」
ポルトガル特派員 「凶暴な妖獣といったら、最近、冬の福島に出現したあの化け物しかありえないわけだが……。」
ドイツ特派員 「まさにそのとおり。日本の妖怪は墓場鬼太郎がたいてい成敗してきたから、いまだに生き残っているのは“昭和の妖怪”岸信介の末裔(まつえい)の、悲惨な妖怪くらいなもんだろうな。」

昭和の妖怪”岸信介の末裔の、悲惨な妖怪。

★          ★          ★

オランダ特派員(ヤンデンネン) 「ところで諸君。国会の議長が解散宣言を発したとたんに、議員たちが、なんかワケもわからないハシャギぶりだったよね。」
イタリア特派員 「あれはニッポンの古都であるキョートの、伝統的な家庭料理を讃美する雄叫びだったんだぜ。京都では夕食の家庭料理を“晩材(ばんざい)”というのだが、国会が解散したら、議員たちはすぐにマンマ・ミーア〔=おふくろさん〕のところに駆けつけて、家庭料理を食べるわけだろ。なにせ奴らは、議会にいるときだって食いもののことしか頭にないからな(笑)。」

フランス特派員 「…ったくイタリア人ってのは食いもののことしか頭にないのかよ! 70年代にイタリアでさかんに作られたソフトポルノ映画『青い~』シリーズに必ず出てくる”食いしん坊のデブ神父”が、おまえら半島国の国民性なのか?(笑) ジャポネ国会が解散したときに議員たちが叫んでいたのは『オバンザーイ!』じゃなく、『バンダーイ!』だったんだぜ。イタリア人は植民地が少ないから外国語もまともに聞き取れないのな(笑)。」


ポルトガル特派員 「やっぱりフランス野郎は頭のなかにワイセツな妄想が渦巻いてるんだな(笑)。なんで国会議事堂に女湯が出現するんだよ! ジャンピエール君、おまえは変質者だから、かつてオマエの国の植民地だったモロッコにでも行って、キンタマを切りとってもらったほうが世のため人のためだぞ。オマエのようなフランス人が男性のまま存在していること、それ自体が、世界の脅威なんだからな(笑)。」
フランス特派員 「ヨーロッパの果ての没落国家のくせして、ナマイキ言うんじゃねえや! じゃああの国会議員どもは、一体なんて叫んでいたんだよ?」
ポルトガル特派員 「あれは『ザンパーイ! ザンパーイ!』と叫んでいたんだ。国会解散の宣言は、議員たちにとっては死刑宣告だからな。ミイラみたいなあのボケ議長に『惨敗したらどうするんだコノヤロー!』って抗議してたわけさ。」

ドイツ特派員 「ポルトガル人は劣悪なワインを飲み過ぎて耳が腐ってるんじゃないか? あれがどうして『ザンパ~イ!』に聞こえるんだ? そんなふうにインチキな感覚だから、500年まえにオマエの国が発見した世界じゅうの秘境が、フランスとかイギリスとかオランダみたいに小ずるい国々に横取りされたんだぞ(笑)。」
ポルトガル特派員 「うるせえよ、鉄兜ハゲ! あれは『惨敗~!』って怒鳴ってたに決まってるじゃねえか! ヨーロッパの負け組ポルトガルの出身者がそういうのだから、これは確かな感覚だぜ!」
ドイツ特派員 「ちがうね! あれは『ハンザーイ! ハンザーイ!』と叫んでいたんだ。だって、なんにも解散する理由のない国会がいきなり解散したんだぜ。それでクビ切りされる議員たちにとっては、こりゃイスラム国の野蛮人なみの犯罪行為じゃないか。」
フランス特派員 「でも、その犯罪者ってのは一体だれなのさ?」
ドイツ特派員 「そりゃキミ、昭和の妖怪の末裔にきまってるじゃないか。」
フランス特派員 「けっきょく、世が世であれば、その妖怪も打ち首で処刑されてたってことか。」
ドイツ特派員 「真のニッポン男子なら切腹してるはずだが、“ウチュクしい国”とかホザきながら屁理屈をこねてる屁たれ野郎だから、切腹しきれずに介錯されるのがオチだろうよ(笑)。」


スウェーデン特派員 「ところで皆さんに聞きたいのだが、ニッポンの国会ってのはゾンビに支配されているのかね?」
ドイツ特派員 「キミは『ワールドウォーZ』とかのゾンビ映画を見すぎたんじゃないの? なんでそんな突拍子もないことを聞くのさ?」
スウェーデン特派員 「ミイラ男のイブーキ議長が国会解散の宣言を口にしたとたん、一部のゾンビが反射的に両手を挙げたのを、キミは見ていなかったのか?」

オランダ特派員 「なるほど北欧出身だけあって、頭脳がクールだな。記録写真をみると“Mr.Asshole”(ミスター・アソー)などは、ハッキリとゾンビの兆候を示しているな。こうやって日本の政治拠点を、死霊が人知れず占拠しつつあるのだな。これは貴重なドキュメントだ。」
イタリア特派員 「とりあえず“ケツの穴”野郎と会うときは、ニンニクと十字架は必須のお守りってことだな。」
フランス特派員 「俺もひとつ質問していいかい? なんで日本の国会議員どもは、『バンダ~イ!』って叫びながら降参のポーズを取るのかな? コイツらって心の底から敗北主義者なのか?(笑)」

オランダ特派員(ヤン・デンネン) 「これについては俺も『週刊侵腸』にレギュラー執筆していたときから、ずっと訝(いぶか)しく思っていたよ。……で、調べたんだが、大日本帝国時代にニッポンが初めて近代憲法を発布したとき、その発表会に出席した明治天皇を讃えるために、当時の維新政府の連中が、『バンザ~イ!』って叫んで手を挙げるポーズを考え出したそうだ。考え出したといっても、実際はシナの王朝で昔から行なわれてきた皇帝礼賛の儀式の、もろパクリだったんだけどね(笑)。……で、大日本帝国憲法の発布の当日なんだけど、実際に天皇を乗せた馬車がやってきて、烏合(うごう)の衆どもがこれをやらかしたら、馬車を引いていた馬がビックリして、立ち止まってしまったとさ(笑)。……つまり『バンザーイ!』ってのは、最初から、天皇の権威を挫(くじ)く呪文だったってわけさ。」
フランス特派員 「……だけど、その『バンザ~イ!』ってのを、太平洋戦争のときには、日本兵たちがアメリカ軍に対して行なってきたんだろ?」
オランダ特派員 「まあ結局、日本はアメリカ連合軍に負けて、天皇よりもアメリカ様を拝むようになったからな。戦場の兵士は本能的に、アメリカに対して“バンザ~イ!”したんだろうね。現代の日本人にそんなことを話せば、おそらく火病をおこして卒倒するだろうさ(笑)。だけど今の日本の現実を見てごらん。完全にアメリカ様にバンザイしてる国だからなぁ……」

ドイツ特派員 「なんだかニッポンが哀れに思えてきた。俺らのドイツも、ニッポンといっしょに負けた側なんだけど、これほど惨めじゃないからなぁ……。楽しい酒が飲めると思って忘年会にきたのに、悲しい酒になっちゃったよ。」
オランダ特派員 「おい鉄兜ハゲ。だったらニッポンのお座敷芸の、ドドイツを一曲おしえてやるから、これを口ずさんでりゃ気も楽になるだろう。」
ドイツ特派員 「なんだオイ! ケツの穴野郎が歌うドドイツかよ! 屁みたいなもんだな(笑)。」

(屁世滑稽新聞は無断引用・転載を大歓迎します。
ただし《屁世滑稽新聞(http://www.rokusaisha.com/wp/?p=6484)から引用》と明記して下さい。
なお、ヤン・デンネン記者たち外国人特派員の秘密忘年会の模様は、本紙記者が都内の某ブラック企業系居酒屋で一人酒していたときに、たまたまそばの席で行なわれていたのが、聞くとはなしに聞こえてきたのを速記したものですから、当然、速記にともなう誤記などがたくさん含まれていると思います。登場人物の名前も悪酔いしながら書きとめたものですので、賢明な読者諸氏におかれましては、お迷いのないよう……)