2015年8月6日、東京地方裁判所806号法廷において、ミス・インターナショナル2012年グランプリの吉松育美さんが大手芸能事務所、ケイダッシュ幹部の谷口元一氏を訴えた裁判の証人尋問が行われた。

2014年2月4日付吉松育美FBより

裁判に至るまでの経緯をざっと説明する。

吉松さんと谷口氏とのトラブルの発端は、2012年春、吉松さんがミス・インターナショナルのグランプリを獲得すると、元所属事務所顧問で総合格闘技団体、K-1の元プロデューサー、石井和義氏が現れ、吉松さんを「芸能界のドン」と呼ばれる周防郁雄社長が経営する芸能事務所、バーニングプロダクションに連れてゆき、「われわれが日本の芸能界の掟を決めている。芸能の仕事をしたければ、バーニングプロダクションの周防社長の許しを得なければならない」と諭し、バーニンググループに入るよう要請した。

吉松さんがミス・インターナショナルを獲得し、それまで所属していた芸能事務所から独立すると、石井が再び現れ、「独立は支援するが、われわれのグループに入ることが条件だ」と主張し、自分と周防社長の親しい友人であるケイダッシュの谷口氏と面会するよう求めた。

それからしばらくして、吉松さんが出演していた日本テレビの番組「真相報道 バンキシャ!」の撮影現場に谷口が現れ、控室まで吉松さんを追いかけ、腕をつかんで拉致しようとし、番組スタッフに吉松さんに新しいマネージャーをつけると主張した。以降、谷口氏は業界中に圧力を強め、様々な嫌がらせが続き、吉松さんは仕事を失ってしまった。

2013年12月16日、吉松さんは日本外国特派員協会で記者会見を行い、谷口氏から受けたストーカー被害の実態を明らかにし、その後、提訴に踏み切った。


◎[参考動画]日本外国特派員協会での吉松育美さん記者会見(日本外国特派員協会=FCCJ公式チャンネル2013年12月16日公開)

一部報道では、2014年8月15日に吉松さんの訴えが却下されたと報じられているが、これは仮処分の申請についてのものであり、その後、吉松さんは東京地裁に提訴し、今回の証人尋問はそれに関わるものである。なお、谷口氏からも吉松さんに対し、名誉毀損があったとして反訴している模様だ。

以下、吉松育美さんの主尋問(吉松さんの訴訟代理人側からの質問)の模様をレポートする。

◆私は谷口元一氏という名前を聞いただけでも怖い、恐怖を感じていました

西川紀男弁護士 本件で被告になっている谷口さん、ご存じですか? お会いしたのは、2012年の12月30日が最初でしたね。日本テレビが最初。それ以前に噂とか、あるいは雑誌、新聞で話を聞いたことは?

吉松育美 あります。私が最初に谷口元一氏の名前を知ったのは、2008年の元アナウンサーであります川田亜子さんの自殺の件で知りました。

西川紀男弁護士 その時から怖い人とか、優しい人とか、どういう印象を持ちましたか?

吉松育美 その事件をきっかけに、川田亜子さんの自殺は、不明な点も多く、大きな波紋を呼んでいました。謎の死、謎の自殺に深く関わっていたのが谷口元一氏であり、また、谷口さんの所属している事務所、反社会的組織と深く繋がっていると噂されております。それはネットや週刊誌、新聞などからでも一般的に誰もが知っている知識です。そういうことから、私は谷口元一氏という名前を聞いただけでも怖い、恐怖を感じていました。

西川紀男弁護士 司法記者クラブでお話になったのがありますね。甲24号証に出ているんですけど、司法記者クラブで言ったのと間違いない? マットさん(※)からは谷口さんのことについて、何か聞いていますか?(※マットさん=吉松さんの海外エージェントであるマット・テイラー氏のこと。)

吉松育美 谷口さんとマット・テイラーさん、間に1000万円の債務関係があることを知っています。

西川紀男弁護士 それはいつごろの話ですか? 聞いたのは?

吉松育美 私が(マット氏から)コーチングを始めてわりと最初の方です。

西川紀男弁護士 日本テレビにおける、谷口さんとあなたが最初に会ったその時の出来事を、2012年の12月30日、『バンキシャ!』という番組でしたよね。その時に谷口さんが来た。谷口さんは、その番組の関係者だった?

吉松育美 当時、谷口さんは『バンキシャ!』の関係者としてまったく関係がない。でも、なぜ彼がその場にいたかというと、別の入館許可証を首からぶら下げていて、その番組にいました。

西川紀男弁護士 そうすると、谷口さんは番組と関係ない。いわば無断侵入のようなものですか?

吉松育美 はい。その後、谷口さんが現れたあと、スタッフさんからも、大変申し訳ありませんでしたと何度も言われました。

西川紀男弁護士 その時、谷口さんは、簡単に言うと、あなたに対して、どういうことを言ったんでしょうか?

吉松育美 まず、「吉松さんはこっちに来てください」と。それからマット・テイラー氏に対しては、「詐欺師だ」そして、「本物のマネージャーではない」と。私に向かっても「金返せ、金返せ」と心当たりのないことを、彼は私に向かって発言しました。(続く)

○吉松育美さん公式サイト=http://ikumiyoshimatsu.com
○吉松育美さんFacebook=https://www.facebook.com/yoshimatsuikumi?ref=hl
○吉松育美さんYouTube=http://www.youtube.com/user/yoshimatsuikumi

▼星野陽平(ほしの ようへい)
フリーライター。1976年生まれ、東京都出身。早稻田大学商学部卒業。著書に『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社)、編著に『実録!株式市場のカラクリ』(イースト・プレス)などがある。

◎《脱法芸能36》宮根誠司──バーニングはなぜミヤネ独立を支援したのか?
◎《脱法芸能37》『あまちゃん』能年玲奈さえ干される「悪しき因習」の不条理
◎《脱法芸能38》音事協の違法性──芸能界が「独占禁止法違反」である根拠
◎《脱法芸能39》叶姉妹──芸能界に蔓延する「枕営業」という人身売買
◎《脱法芸能40》安室奈美恵──「移籍劇」は芸能界決壊への「パンドラの箱」を開いたか?

芸能界の歪んだ「仕組み」を綿密に解き明かしたタブーなき傑作ノンフィクション『芸能人はなぜ干されるのか?』(鹿砦社2014年5月13日刊)