テレビを見ていて、今年のニュースでもっとも唖然とした映像が目に飛び込んできた。なんと「消費税と修正協議」を民主党は自民党と始めるという。
「すわっ、ご乱心か、谷垣総裁」と永田町の記者たちはいろめきたった。
「いったい、なんのために野党がいるのかね。この前まで『小沢を切らない限り修正協議には応じられない』と言っていた自民党の谷垣総裁は、それまでの発言と、今のありようをどう説明するのかね」(全国紙政治部記者)
自民党の谷垣禎一総裁は6月6日夕、世間がAKB48の総選挙一色でだれも政治ニュースに見向きもしない頃に、党本部で幹部会合を開いた。
消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案をめぐり「民主党との修正協議を始める準備に入ってほしい」と指示したのである。
5月7日の臨時役員会で谷垣氏が修正協議への参加を表明する予定だ。
「このままゴネていても、ゴネなかったとしても、総選挙には勝てない。だから、少しでも解散を引き延ばそうということで、話がまとまったのだろう。また、自民党が消費税の修正協議に参加するということは、自民党の目線でいうと『小沢を抜いた民主党と選挙で戦いたい』ということに尽きる。加えて、谷垣総裁の任期が9月で切れるから、その前にひと汗かいて総裁としての延命を図ろうということです」(永田町に詰めている週刊誌記者)
これほど国民をバカした話があるだろうか。消費税をあげて、景気がよくなった例は極めて少ない。現在、あらゆる経済学者を悩ませているのが、日銀も財務省も適宜なビルバランス(お金の供給量の調節)がもはやできなくなっているということだ。しかも、消費税を上げれば、低所得な人たちに負担がかかる点も心配されている。
元内閣参事官の高橋洋一氏は新聞にこう書く。
『「消費税増税で解散なし」というのは、国民にとっては悪夢のような話だが、財務省にとっては好ましいシナリオだ。財務省は、今の野田・谷垣のゴールデンコンビの時が増税の絶好期と考えている。そのために増税に必死だ。一方、解散総選挙をすると、ひょっとして増税に反対する第三極が台頭し、増税廃止法案を出して増税をひっくり返すのではと恐れているふしがある。いま総選挙が行われれば、4割の増税賛成票を民主・自民が奪い合って、残り6割の増税反対票を第三極が取るかもしれないからだ。ということは、民主と自民も、第三極の勢いが落ちるまで総選挙を先送りしたくなっても不思議ではない。』
ここでいう「ゴールデンコンビ」とは、言うまでもなく「財務省の言いなりコンビ」ということだ。
民主党の輿石東幹事長が「政府と党の考えは同じです。ブレないほうがいい。自信を」と野田総理に伝えたという。
これを通訳すると「政府と党と、財務省との考えは同じです。このほど、自民ものってきます」となる。
残念ながら、総理や与党の幹事長よりも、財務省官僚のほうが一枚も二枚も上手だということがはっきりした。
大手企業は、すでに「消費税増税」を前提として動き始めた。しかし中小企業は、原価が上がっても小売価格に転嫁できない。「弱者を殺す論理」の消費税増税が始まる。無能な政治家についていく国民は、まことに哀れなり、である。
(渋谷三七十)