『週刊新潮』が『東京新聞』を揶揄していた。
タイトルは「『反原発』読者におもねり媚びる『東京新聞』」で、6月15日夕方、首相官邸前で行われた「大飯原発再稼働反対のデモ」を報じなかったことに対する東京新聞の「応答室だより」を取り上げている。「6月15日夕方、首相官邸周辺で大規模な抗議デモがあったが、本紙では報じていなかった。掲載に圧力がかかったわけでなく、連絡ミスで現場に出向いた記者がいなかった」という、「応答室だより」の内容を紹介している。
評論家の本郷美則氏に「読者の反原発という感情に迎合しすぎています」と語らせている。
揶揄するというのは、週刊新潮のいつものスタイルだが、デモそのものではなく、東京新聞に矛先を向けているのは、婉曲すぎて、週刊新潮らしくない。
「以前は、経産省にできている反原発テントに行って、中では夜になると酒宴が始まり、話題は原発のことだが居酒屋レベルの真偽不明の与太話に明け暮れている、とテント内の写真まで載せて揶揄していました。デモにも当然、週刊新潮は行っているでしょうが、そちらは主催者がしっかりしていて、ツイッターやフェイスブックを見て集まった割には整然と行動していた。揶揄する材料が見つからなかったんでしょうかね」(夕刊紙記者)
その前の号には「聡明な『キャスター』は原発再稼働にご不満 ならばなぜ『テレビ放送』一時停止で節電を言わないか!」という特集記事が載っていた。
6月8日の野田首相の原発再稼働発言に対して、テレビ朝日『報道ステーション』の古舘伊知郎、NHK『ニュースウオッチ9』の大越健介、フジテレビ『とくダネ!』の小倉智昭が、再稼働に懸念を現した発言を紹介している。
だが誰1人として、電力使用のピーク時に、テレビ放送を停止する、と発言しなかったことを揶揄している。
そして、総務省のデータを元にしながら、昼間の1時間全国すべてのテレビを消せば、大型原発3基分の電力が節約できるという試算を行っている。
趣旨は、再稼働に懸念を示すキャスターへの揶揄なのだが、テレビ停止で節電、というのは、脱原発派も賛成できる内容だ。
さらにその前の号を見ると、軽井沢の水力発電を、巻頭グラビアで紹介している。
清流の中で回る水車は美しく、それが最新のテクノロジーで電気になり、町の7割の消費エネルギーを賄っている、という記事。
もちろん、水力発電の記事が、原発を否定することにはならない。
それでも、こういった自然と一体になった発電のほうが望ましい、と読者に思わせるに十分な、美しい風景を見せてくれている。
昨年は、原発論議が沸騰する中、堂々と「御用学者」座談会をやってみせてくれた、週刊新潮。
ここに来て、その反・反原発の刃が鈍くなっているようなのだ。
週刊新潮の創刊以来の基本姿勢は、「どのように聖人ぶっていても、一枚めくれば金、女。それが人間」という、俗物主義。
「反原発」という聖人を、一枚めくってやろうという、反・反原発。
読売や産経のような、財界のメッセンジャーとしての、原発推進とは一線を画す。
手続きもメチャクチャな大飯原発再稼働には、普通のサラリーマンでも疑問を呈す、今日この頃。
週刊新潮の読者層にも、「反・反原発」は少し浮いてしまっているのだろうか。
(アスタルテ5号)