このところ、本当に「あいつは本当にダメだね」とほかのライターのダメなところを編集者にタレこむ話をする輩が多い。この連中は『自称・大物』という自覚があるのかないのかよくわからないが、自分が編集長よりも偉いと思っているのか、それともことさらに能力が低下したのをカバーしたのを隠すためか「あいつは取材していない」などと言い出す始末。てめえはどうなのか、と問いたくなるような連中だ。
「まあ、タレコミは偽計業務妨害に当たるんだろうが、それにしてもそういう話を聞くと、本当に出版は不況のような気がするね。もう昨年、出版社に入社した新人のうち4割が辞めたなんていう話が聞こえてきますし」(都内の私立大学の就職課)
◆猪瀬直樹がノンフィクション作家だった頃の悪評
こうした輩は昔からいたが、例外なく消えている。
「古くは猪瀬直樹がそうだね。すぐに他のライターの悪口を編集者に吹き込む。で、自分の自慢話を展開するんだ。昔の週刊誌は競争が激しくて、誌面の取り合いから殴りあいに発展することも少なくなかった。だが今の誌面の取り合いは、出版不況の下、もう生活がかかっている状況だからね」(出版社社員)
ある週刊誌のデスクによると「×のネタはこのライターには書かすな」と具体的に恫喝してくる連中もいるという。
「まあ、実力がないから、他人の悪口を吹聴して仕事を増やしたいんだろう。こういうライターに、万が一『編集者に金を借りた』なんてしゃべったらたいへんだ。2チャンネルあたりで『借金を返さないライター』として名前があがり、二度と編集からは声がかからなくなる」(同)
もはや40歳をすぎると「引退して故郷に帰る」という類のライター仲間が増えてくる。
「あと10年で書店が4000店舗になると言われている状況のもと、今『ライターをやめます』とか『編集をやめます』といわれても別に負け組とは思わない。むしろ、ちがう才能があれば、そちらを活かしたほうがいいのではないかと思います」(中堅週刊誌記者)
ただし、今年、大学を卒業した新社会人に聞くと、「出版社に入った同級生たちは、希望に満ちていた」というから、まだまだ「若者たち」がマスコミで実力を発揮するチャンスはあるのかもしれない。
「まあ、それにしてももう60歳すぎたら、後進のために引退したほうがいいのではないか。そうじゃないと編集もライターもちっとも育たないと思いますよ」(フリー編集者)
◆出版界でも「ダメな日本人よりも有能なアジア人を」の波
確かに、アベノなんたらかは不発らしいが、出版社の求人広告など新聞に掲載されていても数件だ。しかも、業界紙ばかりときている。いったいこの状況でどの党に入れれば、景気がよくなるというのか。民進党は「政権交代」を叫ぶが、よく考えれば経済の停滞をまねいたのは、直近ではほかでもない、民主党政権だろう(長いスパンでは自民党の責任だが)。
はてさて、失礼ながら、このところ中国人や韓国人のデザイナーやカメラマンを現場ではよく見る。もちろん有能だから版元は使うのだろうが、要するに「ダメな日本人よりも有能なアジア人を」というのが出版社や編集プロダクションのコンセンサスとして出てきたのだろう。もう有能なクリエイターは日本からは出ない。少なくとも出版の世界では、だ。
話を戻す。「あいつを使うな」と言われたライターは、きっと勝ち組だが、いよいよ世の中的にたとえばほかの業界で人材が枯渇しても「元出版関係者は使うな」と言われるほど、業界は凋落しているのかもしれない。
(伊東北斗)