「婚活」という言葉が世に登場したのが2007年だから、5年経った訳である。
女性の側からの婚活の苦労話を聞く機会があった。会ってみたら投資話を持ちかけられたり、宗教の勧誘だったり、というのは男性と同じだ。顔を合わせたとたんに、「イメージが違うから」と帰られてしまった、という、“テレクラでも、それは失礼だろう”レベルの話もある。

婚前交渉が当たり前の昨今。確かに、性の相性が合わないと結婚はうまくいかないから、必要だろう。楽しんでいるように見えたのに、「やっぱり合わないな」と去っていく男性も多い。そんなことを繰り返して、たくさんの女性を味わっている男性もいる。そんな男性は、婚活パーティで再会しても、「あなたもまだですか? 相性の合う人とはなかなか出会えないものですね」などと、シレッとしている。

36歳の宏子さんの場合は、切ない。婚活パーティで出会って意気投合し、交際を始めた4つ年上の男性の希望は、「子どもが好きだから、絶対に子どもがほしい」ということだった。
前の奥さんの間には、子どもができなかった。「離婚は女房の不倫が原因だけど、子どもがいればそんなことにはならなかった」と、まだ未練ありげな言葉には不満だったが、宏子さんも子どもが好きで、欲しいのは同じだった。
妊娠したら即結婚する、という約束で、2年に渡って交際を続けたが、結局、子どもはできなかった。
病院に行ったが、どちらにも異常はないとのこと。
自分が悪いわけでもないのに、宏子さんは「ごめんなさい」と言って、身を引いた。
相性は合っていていい関係だと思っていたが、「子どもは絶対」という彼の気持ちは変わらなかった。

女性の場合、高学歴高収入というのが、逆にネックになる。
38歳の綾子さんは、女医。
ネット上の婚活システムを利用しているが、20代や30代前半の年下からの申し込みがやたらと多い。
メールでやりとりしていると、やたらと「料理が得意、家事はなんでもできる」と強調してくる。主夫志願の男性が、やたらと多いのだ。

そんな中、5歳年上の男性から申し込みがあった。
そこそこの会社の管理職。メールのやりとりでもいい感じだったので、会うことにした。
奥さんとは死別。小学生の娘さんがいるとのこと。
フレンチレストランで楽しく食事をしたが、その後バーに行くと、鞄の中からレントゲン写真を取りだした。癌で亡くなったという、奥さんのもの。
「本当に妻は助からなかったんだろうか」と、それを見て確かめてくれ、と言うのだ。
頭に来て、帰ってきてしまったのは、言うまでもない。

高学歴でも定収入という女性もいる。
34歳の早苗さんは、東大の博士課程を修了し、早稲田大学で助教をしている。
給料は安い上に、ドイツの演劇が専門だから、しょっちゅうドイツに行かなければならない。
女性は、東大だというだけで、敬遠される。男性はたいがい、学歴コンプレックスを持っているからだ。東大生同士で結婚すればいいのだが、東大男子はたいてい、お嬢様大学出を望む。

早苗さんは、7つ年上のやり手の営業マンと、婚活パーティで出会う。
「自分は高校出で、実力で勝負してきた。受験戦争にも参加してないからコンプレックスもない」と言うので、頼もしく思い、何度かデートした。
海外旅行の話をしている時に、「何か、語学とかされてます?」と聞くと、「ええ、英語をやってます」と言われて、思わず、早苗さんは爆笑してしまう。
全く悪気はなかったのだが、早苗さんのいる環境では、英語はできるのは当たり前。高校生が今、九九を覚えます、と同じくらいのギャップがあったのだという。
早苗さんは一所懸命取り繕うとしたが、男性は2度と会ってくれなかった。

婚活は、男にとっても女にとっても、大変なものなのだ。

(FY)