裁判の傍聴を趣味にしている山口在住の知人から先日、山口刑務所に勾留されている某男性被告人と面会して来たという連絡があった。彼は裁判の傍聴を重ねるうちに事件に色々疑問を持ち、一面識もなかったその男性被告人と面会し、直接話を聞いてきたのだとか。記者やジャーナリストでなくても、自分の目と耳で事実を確かめようとする行動力のある人は世の中にけっこういるものだが、彼もまた、そういうタイプの人なのだ。
こういう人からは何かと教わることが多いが、この時も1つ教わったことがあった。

「20分くらい面会できましたよ」
彼にそう聞かされ、「へえ、長いんだな」と意外に感じさせられた。筆者は過去、山口刑務所で“受刑者”となら面会したことがあり、その時は20分以上面会できた記憶があったのだが、“未決囚”の面会時間はもっと短く制限されているのだろうと思い込んでいた。過去に訪ねた刑事施設では、どこも未決囚の面会は1日に1回、10~15分程度とされていたからだ。

そこで、山口刑務所に電話で確認すると、受刑者も未決囚も面会時間は「30分以内」に設定されているという。しかも、1人の収容者に対し、1日に2回の面会が認められているとか。筆者が知らないだけで、もっと長く面会時間を設定しているところや、もっと面会できる回数の多い刑事施設もあるかもしれないが、少なくとも山口刑務所の収容者たちの面会状況は全国的に見てもかなり恵まれた部類に入るだろうと感じさせられた。

もっとも、刑事施設の収容者にとっては、面会時間の長さだけが暮らし心地の良し悪しをはかるバロメーターではないだろう。暖房や入浴の設備、手紙の発受、差し入れなど、他にも様々な比較検討ポイントはあるはずだ。

たとえば、山口刑務所の場合、本州最西端の県にあるにも関わらず、服役中の男性はこの冬、いつも寒さを嘆いていた。そうかと思えば、今年からいかにも寒そうな山形刑務所で服役生活を送るようになった男性はこの冬、手紙に「暖房があるので、寒さは大丈夫です」と書いてきた。あくまで筆者の推測だが、寒い地域にある刑事施設のほうが暖房設備が充実しており、意外と冬は暖かいのかもしれない。

また、差し入れに関しても、東京拘置所のように所内に立派な売店がある上、所外にも差し入れ店があり、お菓子からエロ雑誌まで様々な種類のものが手軽に差し入れできる施設もある一方で、広島拘置所のように差し入れに使える売店や差し入れ店が一切存在しない施設もある。広島拘置所でも収容者が希望すれば、収容者自身が所内でお菓子や本を購入できるそうだが、そういう品物を面会に来た家族や友人、恋人に差し入れしてもらうのと自分で購入するのとでは、収容者の気分もずいぶん違うだろう。

ただ、広島拘置所の収容生活も悪いことばかりではない。筆者が以前、ある未決囚に会うために通っていた際、同拘置所の面会時間は15分と比較的長かった上、その未決囚が事前に申請すれば、いつも1日に2回の面会が認められるなどしていたからだ。このあたりはおそらく、逆に広島拘置所が東京拘置所より恵まれている部分である。

こうした施設ごとの違いも色々ある上、刑事施設の場合、良くも悪くも現場の職員の裁量に委ねられているように感じるところが少なくない。筆者が過去に面会に訪ねた収容者の中には、担当職員に気に入られ、通常より面会時間を長めに認められていた収容者がいた一方で、担当職員に嫌われているらしく、面会が通常より早めに打ち切られることが多い収容者もいた。そういう意味では、収容者にとっては刑事施設そのものだけでなく、職員の当たり外れも暮らし心地を左右するのかもしれない。

最近、塀の中で暮らす人たちから手紙をもらったり、話を聞く機会が増えたが、全国にあまたある刑事施設のうち、筆者が知っているところはまだまだごく一部。もしも自分が獄中生活を送る羽目になったら、一体どこがマシなんだろうか? と、被告人や受刑者から処遇への不満などを聞かされるたび、ふと考えてしまうのだ。

(片岡健)

★?写真は、東京拘置所の前にある差し入れ店。