12月5日開催のキックボクシング新イベント「KNOCK OUT」の対戦カードの2試合追加が9月30日の記者会見で発表されました。

リング上に描かれたKNOCK OUTロゴマーク

◆契約ウェイト未定5回戦

宮本啓介(橋本) vs 工藤政英(新宿レフティー)

森井洋介(ゴールデングローブ) vs ヨードワンディー・ニッティサムイ(タイ)

◆9月14日に発表された契約ウェイト未定5回戦2試合

T-98(今村卓也/クロスポイント吉祥寺) vs 長島☆自演乙☆雄一郎

大月晴明 vs スターボーイ・クワイトーンジム(タイ)

初回興行出場の4名、左からT-98、梅野源治、森井洋介、長島☆自演乙☆雄一郎

メインイベント出場予定の梅野源治選手については、10月23日(日)のREBELS興行に於いて行なわれるタイ国ラジャダムナンスタジアム・ライト級王座挑戦試合の結果を以って発表予定です。

RIKIX代表、小野寺力氏

キックスロード社長、花澤勇佑氏

メインイベント出場の大役を担う梅野源治選手

司会進行とテレビ実況担当の村田晴郎氏

ヨードワンディー・ニッティサムイ選手は6月25日、ローキックで梅野源治選手を苦しめた選手で、スターボーイ・クワイトーンジム選手は3月12日に、梅野源治選手からヒジ打ちでダウンを奪い、それぞれのNO KICK NO LIFE興行で引分けた選手で、梅野源治との絡みで実力が測れるのも、ファンが興味を持ち易い理想的な傾向でしょう。

ヒジ打ち有りルールの試合で今後、地上波テレビで放送されることに、「これで地上波に乗るのかな」という不安もあるという声があり、一般視聴者から見れば今迄と違った(ヒジ打ちの無い競技を見慣れている感覚)危険な見方をされる懸念について、小野寺力氏は「大流血になってもドクターとレフェリーが判断して試合が止められることや、UFCでもヒジ打ちの出血でも全然止めないですし、プロボクシングにおいてもパンチで顔面が切れることがあるので、そこまで心配する事案ではなく、格闘技としてある程度の出血は仕方ないところと思います。」といった回答をされました。

梅野選手も、「ヒジ有りがメジャーになり難いという懸念と、今後大きい舞台でのヒジ有り試合を驚く人もいましたが、ムエタイはヒジ打ち有りだから面白いと言う人も多く、僕もヒジ有りのムエタイの面白さというのは、どうにかして伝えたいなというのは以前から思っていたので、今回KNOCK OUTが始まるということで凄いチャンスと思うので、とにかく自分が激しい試合をしてムエタイの面白さを伝えられたらなと思います。」という内容の回答。

そしてまず梅野選手の、10月23日のラジャダムナン王座挑戦に関して「トレーナーや仲間たちがサポートしてくれて、目標にしていたラジャダムナンタイトルに挑むことができるので、10月23日はしっかり結果を残して、チャンピオンベルト巻いて12月5日に『ムエタイは本当に凄いんだぞ』という試合をしたいと思います。第1回大会ということでメインイベントを務めさせて頂けるということで、みんなの期待に応えられるような激しい試合をしてKNOCK OUTの名前どおり、ノックアウトでキッチリメインの大役を果たしたいと思います。」と抱負を語りました。

宮本啓介 vs 工藤政英戦は、8月のREBELS興行に於いての3回戦で、持ち味を出し切った引分けで、小野寺氏がその場で、両方のジムとプロモーターに交渉して、すぐ決定に至った経緯がありました。この辺は正に若い世代のジム・プロモーターの交渉で弊害が無く、纏まりが早いところです。

森井洋介選手も9月14日の発表会見試合で高橋一眞(真門)を豪快にKOして、初回興行出場を希望し、願い叶って強いタイ人のヨードワンディーと対戦が決定。

また会見に参加していたT-98(タクヤ)選手も、6月に後楽園ホールでラジャダムナンスタジアム王座を奪取した時のチャンピオン、ナーヴィー・イーグルムエタイと10月9日に、ダイレクトマッチで初防衛戦が予定されていましたが、挑戦者がプーム・アンスクンビットに変更となった模様。記者会見時点で「6月に奪取して防衛戦のことだけを考えてきたので、現役ラジャダムナンチャンピオンとして12月5日の出場を約束します。」と宣言していました。

9日のラジャダムナンスタジアムでの結果は、初回から右ローキックで徐々に圧力かけていたT-98(タクヤ)が3Rに右ローキックでプームが崩れるように倒れTKO勝利、日本人として初の現地での防衛に成功。外国人としては昨年の、ウェルター級チャンピオン.ジョイシー・イングラムジム(ブラジル)に次ぐ快挙となります。
これでT-98は晴れてラジャダムナン・スーパーウェルター級現役チャンピオンとして「KNOCK OUT興行」に出場することになりました。

10月9日、ラジャダムナンスタジアムで日本人初の防衛を果たしたT-98選手

取材戦記

追加カード発表会見ながら興味を引いたのは、ヒジ打ちに関する世間の意識と時代の流れでした。

昭和40年代にTBSで毎週月曜夜7時から放送されていたキックボクシングはヒジ打ちも頭突きも投げもありました。後楽園ホールでは、昔は後方の固定テレビカメラで南側と東側からだけの撮影で、ハンディカメラが使われるようになったのは昭和50年代に入ってからだったと思いますが、ヒジ打ちがあること自体、当時は放送が懸念される事案では無かったと思います。

現在のような解像力良く鮮明に映すカメラやハイビジョン大型画面とデジタル放送がある上、ラウンド外ではハンディカメラがリング内に入ってまで撮影し、ドクターチェックされる顔面アップまでカメラが追っていることもあり、ヒジ打ちで切れた顔面を捉える機会は多いに有り得ることで、「地上波に乗るのか」という心配が出るのも仕方ないかもしれません。

とはいえ、そこは放送の仕方、映像の捕え方で守れるように思います。ヒジ打ちが懸念材料になることに意外な印象を受けるのは年配者だけかもしれませんが、ヒジ打ちで眼球破裂という事態が起こりうる危険はあります。しかし、キックボクシングやムエタイは元から危険な競技で、ヒジ打ちは必要な技術であることは50年経っても変わらないと思います。キックとムエタイの技の多彩さと躍動感をテレビで伝えられたら喜ばしいことでしょう。

9月30日の記者会見第二弾は(株)ブシロードが入る住友中野坂上ビルの“2階”の予定が、前日に“6階”に変更発表されました。これは取材陣が増えて広いスペースに変更かと思いましたが、取材陣はいつもと変わらない格闘技専門サイト記者中心の10人未満のスペースでした。

マスコミの数というのも今後、どれほど一般誌やスポーツ新聞が関わってくるかも興味を引くところ。これから始まるKNOCK OUT、決して楽観的には見ていられない問題も起こるかもしれませんが、まずは第1回目の「KNOCK OUT」に期待したいと思います。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」