10月16日、大阪は夏の暑さが戻ったようだった。最高気温は28度。

「僕みたいな市井の人間が難しいことは解らないけど」と何度も、何度も繰り返し断った上で、内田さんは「何となく感じる気持ち悪さ」、「普通に話せるはずなのに、そうはいっていない」状況への違和感を終始紳士的に語って下さった。

内田勘太郎さん(2016年10月16日大阪にて)

◆屈指のギタリスト内田勘太郎さんと大阪で会う

内田さんとは、憂歌団のギタリスト内田勘太郎さんのことだ。次回発行『NO NUKES voice』10号のインタビューに10月16日大阪市内で応じて頂けた。憂歌団を知っている若者は少ないかも知れないが、70年代から80年代関西で(いや関西だけでなく、全国で)音楽を聴いていた人ならば知らない人はいないだろう。内田さんは世界にも名を知られたギターリストだ。

これが日本の、しかも高校を出たばかりの若者が作った曲か、と仰天半分で彼らの楽曲を聞いた記憶がある。憂歌団の楽曲は40代、いや50代くらいの齢を重ねていなければ奏でるのが不相応にも思える、ある種「老成」したかに聞こえるブルースの珠玉の数々だ。でも私より年上の彼らが実際に、楽曲を織りなし、カルピスの瓶をはめた内田さんの左手はギターが、「こうも語るんだよ」と言わんばかりに独自の味わいを70年代から奏でていた。私は観客席から内田さんの演奏を何度も聴いたことがあるけれども、直接まとまった時間お話を伺うことができる機会が訪れるとは、幸運も極まれりである。

内田さんは1995年から沖縄に住んでいる。2011年3月、初めてのお子さんをもうけた。だから「2011年3月は大変な月だった」と語っていた。いつも頭の中で幾通りもの位相が織りなされて、片意地を張るわけではないけれどもモノを深く考えている人、優しい人だなあと感じた。

10月2日熊本で行われた『琉球の風』に常連ミュージシャンとして参加していた内田さんが、打ち上げの席で(酔った勢いのためか)、「『NO NUKES voice』いいですね。何でも協力しますよ!」と鹿砦社社長、松岡に声をかけて頂いたのをきっかけにこの日インタビューは実現した。詳しい内容は『NO NUKES voice』次号でお伝えする予定なので乞うご期待!


◎[参考動画]内田勘太郎「一陣の風」(2014年「DES’E MY BLUES」より)内田勘太郎さんオフィシャルサイト 

米山隆一=次期新潟県知事(NHK2016年10月16日付記事)

◆同じ日の夜、新潟県知事選で米山隆一氏当選という「一陣の風」

内田さんのインタビューを終えて帰宅後、夜は新潟県知事選の開票が気になっていた。国政選挙や知事選でも最近大手マスコミや、通信社の事前予測は与党候補有利の報道が当たり前のようになり、信用できない。また投票行動にもその影響は及んでいるだろう。しかし、新潟は先の参議院選挙で1人区ながら、野党統一候補の森裕子がギリギリ当選している。

米山隆一さん公式ブログより

保守大国、なぜか最近ちょっとした「田中角栄回顧ブーム」もあり、選挙の行方は自公が推す森民夫が有利に思われた。ところがパソコンの画面を眺めていると、予想外に早く米山隆一に「当確」が出た。

現職泉田知事は原発に関して、全国の知事の中で最も明確に「再稼働反対」を打ち出し、それが理由で元々自民党の一部も推していたのにもかかわらず、地元経済界や議会から大いに足を引っ張られていた。足を引っ張られていたなどという表現では軽すぎるだろう。「私は絶対に自殺はしませんから、遺書が残っていても自殺ではないから必ず調べてださい」とまで発言していた。

米山隆一さん公式ブログより

5月、別件の取材で新潟に出向いたとき、泉田知事はほかの地域から評価されているのと真反対に、地元では相当な窮地に追い込まれていることを人々から聞かされていた。地元紙、「新潟日報」の泉田氏攻撃が殊に激烈だと聞いた。だから泉田氏が「出馬をしない」と表明した時にも「ああ、そこまでシビアだったんだ」と残念ながらもその理由の一端は理解できた。

一方、米山候補は出馬への準備時間も短く、繰り返すがイメージとしては「保守大国」新潟でどこまで戦えるのか、当選は厳しいのではないか、と危惧していた。しかし、米山候補は「原発再稼働を止める」ことを公約とし、新潟県内に留まらず、全国の反原発陣営の応援も取り付けた。

米山隆一さん公式ブログより

反自公統一候補であると同時に「反原発」象徴候補として全国からの支援を取り付けることに成功した。広瀬隆氏(作家)、鎌仲ひとみ氏(映画監督)、佐高信氏(週刊金曜日編集委員)、山本太郎氏(参議院議員)らが応援しているのはなるほど、と頷けたが、なんと「政治は大嫌いです」と常々発言してきた小出裕章(元京大原子炉実験所助教)氏までが応援のメッセージを寄せていた。

反自公の野党統一候補が「原発再稼働反対」を公約に知事に当選した意味は大きい。新潟県民は中越地震を忘れてはいなかった。黒い煙を上げた柏崎刈羽原発事故を忘れていなかったのだろう。

もし、インタビューの後に内田さんと飲んでいればきっとこの話題で盛り上がったに違いない。


◎[参考動画]新潟県知事選 再稼働に慎重 米山隆一氏が初当選(ANN=テレビ朝日2016年10月17日)


◎[参考動画]新潟県知事選立候補者 米山隆一氏インタビュー(kenohcom2016年10月14日公開)

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。