「私たちの大地が生んだウランがフクシマの人たちを苦しめている。本当に悲しい」オーストラリアの先住民族アボリジニの女性長老アイリーンさんは、遠い日本で起きた福島第1原発事故に今も心を痛めている。

オーストラリアの先住民、アボリジニは、我々の生き方にヒントを与えてくれる存在だ。
1770年にキャプテンクックがやって来て、白人支配が広がるまで、アボリジニは狩猟採集生活を行っていた。
文明が遅れていたわけではない。農耕を行うな、という先祖からの教えがあったのだ。農業は人間に必要な作物だけを大量に育てる。それは、自然の摂理に反している、というのだ。

オーストラリアというと、シドニーやメルボルンなど、過ごしやすい気候の街が思い浮かぶ。だが実際には、大陸のほとんどは、砂漠だ。
狩猟採集生活といっても、簡単なことではない。
どの季節にどこに行けば、どんな動物や植物があるか、アボリジニは絵に描いて伝えた。
それが今に伝えられる、独特なアボリジニアートだ。現代アート風な趣があり、ニューヨークのギャラリーに飾られていても、違和感はない。

そうした知恵があるために、労働は短時間で終わる。それ以外の時間は、家族や仲間たちと語らい、遊ぶのだ。労働そのものに、遊びの要素があった。
他の多くの文明と対極にある、「地球をそのままにしておく」という文明のあり方を、アボリジニは選択していたのだ。

アボリジニは、音楽の文化も豊かだ。
ディジュリドゥという楽器がある。白アリが食べて中が空洞になったユーカリを刈ってきて、乾かして彩色しただけの、きわめてシンプルな楽器だ。
1000年以上前に作られ、世界最古の管楽器ではないかと言われている。
音階という概念がなかったので、途中に穴はなく、メロディは吹けない。
だが、唇の形を変えたり震わせたり、さらに喉を震わせて、実に様々な音が出る。
素朴から多様性を生み出す、アボリジニの文化を象徴する楽器だ。

白人が来てから、殺されたり、虐待されたり、村や家族を破壊されたりと、アボリジニは様々な苦難を経験した。
2008年、当時のオーストラリア首相、ケビン・ラッドは議会で、先住民アボリジニに政府として初めて公式に謝罪した。

アボリジニ社会が白人に破壊された後では、アルコール依存の者が増えるなど、様々な問題が生じて、今に至るも尾を引いている。白人が来るまでアルコールを知らなかったアボリジニの身体には、アルコールを分解する酵素が欠けている、という説もある。
一方で、アルコールを一切断ち、ディジュリドゥやアボリジニアートを製作して、威厳を持って静かに暮らしているアボリジニたちもいる。
破壊されたものを、回復するのは難しい。

ウランの採掘に関して、アボリジニは被害者だ。
1970年代頃より始まった鉱山開発によって、先祖から受け継いできた大地を追われた。
採掘権による多額な金は、アボリジニ社会を激変させた。
「鉱山の採掘は私たちの生活を完全にひっくり返し、アルコールへの依存をもたらし、金をめぐってアボリジニの中で大きな争いを起こすようになった」
一方、ウラン採掘時に発生する放射性廃棄物の危険性や周辺住民のガン発生率などの健康被害についての実態調査はほとんど行われていない。

アイリーンさんは、語る。
「ここは私たちが先祖から受け継いだ大地、だが、泉は枯れ、動物たちは姿を消し、大地は放射能に汚染されてしまった」
そして日本の政府と電力会社にウランを買うのをやめて、原発を廃止してほしいと訴えている。

被害を受けたからこそ、アボリジニはフクシマの惨状に心痛めている。
それに引き替え、福島第一原発に責任のある超A級戦犯たちの居直りと逃げ隠れは、同じ人間としてとうてい許されるものではない。

ぜひとも、新刊委託配本拒否に遭った『タブーなき原発事故調書~超A級戦犯完全リスト』(鹿砦社)を、手に取っていただきたい。

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(FY)

▲写真は、アート製作にはげむアボリジニ