ゆったりとしたバイオリンの調べに、チェロとビオラが重なる。ドラムがリズムを刻み始めると、ピアノ、エレキベース、エレキギターがサウンドを重ねていく。
Paix2(ぺぺ)の2人がステージに姿を現し、「ふるさと発あなたへ」を歌い出す。
2人を応援してきた者にとっては、万感の思いがこみ上げる瞬間だ。
客席千人の「かつしかシンフォニーヒルズ」で、Paix2のライブが10月18日、行われた。
今まで見てきたライブは、もっと小さな会場。バックサウンドは、録音された音に、まなみさんが弾くギターと、めぐみさんが吹くフルートが加わる、といった感じ。
もちろん2人は、千人規模の聴衆には慣れている。
12年あまりをかけて、刑務所、拘置所、少年院などをめぐったプリズンコンサートは、311回を重ねている。
ボランティア活動であるから、2人でステージを成り立たせてきた。
今回は、バックサウンドも、すべて生演奏だ。
ファンにとってはおなじみの曲、「元気だせよ」「逢えたらいいな」「花天女」「ともいき…未来」「おかげさま」……、いつもより、よりいっそう活き活きと響いてくる。
プリズンコンサートの実績から、人権コンサートやマタニティコンサートにも招かれるようになった2人。
東日本大震災の被災地でもライブを行っている。
その話も、ステージから語ってくれた。
気仙沼の体育館は、ダンボールの仕切りさえなく、皆、ただ毛布にくるまっている状態だった。
家もなくし、あるいは家族を失い、疲れ切っている被災者の前で、「元気だせよ」と歌っていいのかどうか、2人は悩んだが、思い切って歌った。
寝たままだった人が起きあがって、「元気だせよ」の声にあわせて、拳を振った。
ライブが終わって、男性に呼び止められた。
「今日はありがとう。僕もずっと皆に、元気だせよって言いたかったけど、言えなかったんだ。今日は歌に乗せて言えたんで、本当に嬉しかった。僕もすべてを失って、いちからのスタートなんだけど、頑張るよ」
Paix2の「元気だせよ」には、プリズンコンサートを積み重ねてきた、真実の力がこめられている。
ますますの活躍を期待したい。
(FY)