LCC(格安航空会社)の遅延の多さやサービスの悪さが世界的に問題となっている。11月末に成田空港から「スクート航空」(シンガポール)でタイのドンムアン航空にとんだ50代会社員A氏は怒り心頭だ。
「2時間前の午前8時に空港に着いたのに、到着するや否や10時00分発の便は『2時間遅れ』と表示が出ていました。ドンムアンへの到着予定時刻は14時55分で、計算するとどう見積もってもドンムアン空港から17時15分発のウドンタニ空港行きへの便がまにあわなくて、一緒にいった友達ともどもドンムアンからウドンタニ行きのチケットを2枚捨てて、もっと遅い便を買いなおすはめになりました」
遅れの原因は、「使う航空機が来ていない」とのことだが、当日、「つぎの便にまにあわないが補償してくれるのか」との問いに成田空港のスタッフは「遅延証明書なら出します」と問いとはまったくかみ合わない答え。
ただでさえ遅れていてイライラしているのに、飛行機内では座席上部のバケットが閉まらずに荷物が落ちそうになったり、そもそも「遅れたことに対して謝罪すらもない」とA氏の怒りは収まらない。
A氏の悲劇はさらに続く。帰りもスクート航空を使ったのだがドンムアンから成田空港への便でも55分遅延を食らった。
「私たちはさておき、配席がめちゃくちゃで、同じ席を2枚発行して振り分け直していたり、トイレの後ろの存在しない座席番号を渡された客が立ち往生して泣きそうになっていました。女子大生っぽいグループが『せっかくいい旅をタイでしてきたのに、帰りの便が友達とバラバラにされて幻滅です』と泣きそうになっていたのです」
後日、この2つの便については「一度くらいまともにつけや」「亀よりも遅いスクート航空へようこそ」などと炎上していたが、海外に出かけることが多い人たちに取材を続けるとスクート航空については悪評ばかりが飛び込んできた。
「機内食を運ぶキャリーにたたき起こされたが謝罪の言葉がまったくない」
「シートベルトを着用するように言われたが、なかなかしなかった客に対して断りもなく僕の眼の前にCAの腕が伸びてきて、強引に隣の客のシートベルトを締めた。スリかとおもった」
「積み込んだ荷物をなくされたが、『ラック(運)にもよります』とスタッフが言い放った」
などなど。とにかく「スクート航空を使って5月にシンガポールからシドニーへのチケットで乗りましたが、30分ほど遅れたのですが、到着したシドニー空港からラゲージが出てくるまで1時間30分待ちました。なぜ遅れているのかと聞くと『混んでいるから』という禅問答のような答えがスタッフから返ってきまいた。私も人間というよりも、荷物扱いをされているような感覚になりました」(40代デザイナー)
サービスが悪くとも、きちんと時間につけば文句は出ないはずだが、スクート航空は遅延の多さでネット上では炎上しているほどだ。日本支社に電話したが「日本語がわからないんでシンガポール本社に電話してください」とのこと。スクート航空のシンガポール本社に問い合わせて「遅延については改善しようとしているのか」と日本語専門ダイヤルに電話取材してみた。
「プレスですけど、会社としては遅延について改善、努力をするつもりはあるか」と聞いてみたが担当はなんと「このこたえは上司がもっていますが、英語のみになります」と日本語専門ダイヤルとしては予測しなかった答えがかえっきた。逐一、こちらが質問すると「上司に聞いてきます」という担当の女性は、「飛行機である以上、遅延はどうしようもないと上司が言っています」「3時間を超えれば遅延の補償の対象となりますが、それ以内は補償できかねます」と言い張るのみ。
それでは「遅延の補償はするつもりもないし、『I’m sorry』でもないのですね。それは会社としての見解ですね」と聞くと「いえ、もうしわけございません。なるべく時間を守るようにいたします」ととってつけたような答えが返ってきた。2013年には「Terrapinn Holdings」が発表した、アジアの「ベスト ローコスト キャリア」に選出されたこの航空会社。まさに看板に偽りあり、だ。
2020年の「東京五輪・パラリンピック開催」に向けてシンガポールから東京への便を増やすべく、ロビイ活動に精を出して自民党議員などに接触しているようだが、まずは時間通りに客を運ぶ努力から始めたほうがよさそうだ。
(伊東北斗)