2016年12月22日(木)、新宿clubSCIENCEで間々田優、中村ピアノ、月野恵梨香のトリプルヘッドライナーツアー《三原色パンデミック~アイドル14歳の才能~》のセミファイナル公演が開催された。三人の女性ミュージシャンはそれぞれバンド形態でライブに臨む。三者三様の鮮烈な個性が力強いメッセージとなり師走の新宿に煌いた。

左から月野恵梨香、中村ピアノ、間々田優

月野恵梨香

◆昇華された嘆き――月野恵梨香

トップを飾ったのは月野恵梨香。白いワンピースに身を包み登場した月野が赤いハイヒールを脱いだ。裸足の彼女が歌い始めた瞬間、会場が熱を帯び始める。
長髪を振り乱して叫ぶ一曲目“過食症”。

「確かにあたしここにいる間違いなく 
どうなってもいいなんて思ってない 
本当はあー生まれてこなけりゃあよかったなんて思う自分慰めて」

歌詞の中で月野は「嘆いて」いる。しかし彼女は悲壮感に任せてウジウジするような真似はしない。時にはリズム隊のグルーヴの力を借りながら、細身の身体からは想像できないほどの深いヴォイスで叫び続けることによって観客を「嘆き」の共有者とすることに成功している。MCで月野は言う。

「明日のことは考えず今のことだけ考えて駆け抜けようと思う」

この言葉からわかるように、月野の持つエネルギーは刹那的な衝動を原動力としている。彼女は今この瞬間の「嘆き」を強烈なメッセージへと昇華させているのだ。
ラストにはニューアルバム『再起可能』からタイトルトラック“再起可能”をチョイス。跳ねるようなドラムのリズムに乗って観客は拳を振り上げ、場内のテンションはMAXに。歌い終わった彼女は脱いだハイヒールをステージに置いたまま去っていった。ハイヒールが熱いステージの残滓として静かに存在感を放っていた。
 

◎月野恵梨香「名古屋襟 これが名古屋のオリエンタル」(2013/09/18公開)

中村ピアノ

◆自問自答の果てに――中村ピアノ

続いて中村ピアノ。ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムのオーソドックスな月野のバンドとは異なり、中村は自身を含めたダブルキーボードのギターレスバンドである。現在ライブDVD『ナカムラホノグラム』が前日に発売となった勢いそのままにステージを繰り広げた。

髪型を両サイドでお団子にした中村が柔らかな表情で歌い始める。ロリっぽいアニメ声からドスの利いた低音まで実に幅広い声色を使い分けるのだ。さらには二つのキーボードが主張し合って、音数の多いカラフルな楽曲を披露していく。

彼女の流れるようなキーボードさばきはポップなアイドルなどとはとかけ離れていて、職人のような威厳さえ感じさせる。“ねぇ”のような比較的ローテンポの楽曲でもヴォーカルとキーボードが反発せずに、かといって小奇麗にまとまるのでもなく、エッジを利かせながらステージを彩っていく。

中村の歌詞は「自問自答」する。ひたすら自分の中で自分を問い続ける。しかし、堂々巡りをしているだけではない。自分の力で考え抜かれた結論へと辿り着いている点は秀逸だ。

ラストに披露した“キャンディキャンディ”には彼女の「自問自答」が結実している。

「夢の中での2人はもうとっくに恋人同士なのに
 本当はまだ声もうまくかけられない 〈恋は一方通行〉」

聞き流してしまえば淡い片想いの歌である。しかし、彼女は片想いのみには留まらない。後には以下のように続く。

「夢の中での私はあんなに強くて可愛いのに 
鏡に映るのは色気も華も無い可哀想な女の子」

自分の姿を客観的に捉え、「可哀想」だと言い切る。言い切ってしまうことに彼女のエネルギーを感じずにはいられない。彼女の「自問自答」は結論を出せずにもがいている全ての人たちの背中を押してくれるはずだ。


◎中村ピアノ「火傷」(2016/04/19公開)

間々田優

◆貫徹された反骨精神――間々田優

トリはデビュー10周年を迎えた間々田優。赤いハイネック姿でアコースティックギターを抱え、うつむいた間々田にスポットライトが当たった。彼女からほとばしる、世の中への反骨精神が会場に浸透し始めた瞬間である。ブルージーなメロディからシャウトへと転じる切れ味鋭い“八千代”で観客は彼女の攻撃的な世界観に引きずりこまれた。

「友死のうて 爪をかんで 
私には何の痛みもないよ 
刺してやろうか」

 自分を潰そうとしてくる世の中に対して、中指を立てるような強烈なメッセージが込められている。

MCで彼女は言う。
「私がニュースとして知ることができるのは遠くから運ばれてきたものです。でも今こんなに近くに皆さんがいてくれる」

デビューから10年の時を経て、なおライブ空間を共有してくれる観客への感謝の気持ちだろう。彼女は静かに話し終えると、一転“カシスオレンジ”では弦が切れる勢いでギターをかき鳴らし始めた。オンオフの利いたライブは聴く者を虜にしていく。

「弾き語りから始めて、今はバンドメンバーと一緒に音楽を生み出せることが幸せ」と言う間々田。

本編終了後観客からのアンコールを聞いて、間髪入れずに間々田は代表曲“アイドル”を歌い始めた。

「歌えぬ僕の意味など無い 
甘く優しい言葉で言うなら 
〈ほんとにおつかれさまでした〉」

と彼女は歌う。

「ほんとにおつかれさまでした」などと観客に言わせない、「歌手・間々田優」をこの世の中で用済みとは絶対に言わせない、というギラギラした反骨精神を最後まで感じることができた。

三人合わせて2時間弱とは思えない、怒涛のステージだった。三人の「原色」のような個性はぶつかり、転がりながら観客に大きなインパクトを与えたに違いない。
今年2017年の3月には新宿BLAZEで800人規模の追加公演が予定されている。三ヵ月後、さらにパワーアップした三人の姿を見ることができると思うと、今から待ち切れない。(伊東北斗)


◎間々田優「三原色パンデミックツアー」動画 (2016/11/10公開)

 

間々田優・中村ピアノ・月野恵梨香バンドツアー
 三原色パンデミック《~アイドル14歳の才能~》―追加公演~グランドフィナーレ~
2017年3月24日(金)18時開場/19時開演 at/新宿BLAZE
チケット絶賛発売中!:前売3,800円/当日4,300円 ※1ドリンク代500円別途
イープラス 
チケットぴあ(Pコード:313-216)

 

 

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