東電は賠償の金をひねり出すのに手いっぱい。他の原発を抱えている電力会社も、稼働しない原発の維持費だけがかかるために赤字に転落している。
プラントメーカーや建設会社などが、その肩代わりをするなどという形で、原子力ムラのメディアコントロールは続いている。だが、独占企業で、勝手に世界一高い電気料金を取って、湯水のように金を使っていた電力会社のようにはいかない。
もっと金のかからない方法を、原子力ムラは取り始めたのかもしれない。
先日「NHK『おはようニッポン』森本アナ 痴漢で逮捕」というニュースがあった。11月14日の午後7時45分ごろから同55分ごろまで、東急田園都市線の渋谷?二子玉川間を走行中の急行電車で、女子大生(23)のブラジャーの中に手を入れ、胸を触った疑い、というものだ。玉川署によると、森本健成氏と女性は混雑する車内で向かい合って立っていた。女性が「痴漢です」と叫んで森本氏の右腕をつかみ、周囲にいた乗客の男性が押さえ込んだ。110番通報で駆けつけた警察官に、森本氏は逮捕された。
かねてから、痴漢冤罪の恐ろしさは伝えられている。女性が「痴漢だ」と声を上げて警察に引き渡されると、裁判でも女性の証言が重視され、やっていなくとも有罪とされてしまう。無罪を得るためには、身長差や位置関係から、絶対に触れない、ということが立証されなければならない。それまでには、おびただしい時間と労力がかかる。逮捕と同時に仕事を失い、無罪立証でやっと仕事に戻れる、というのも普通のことだ。
今回の件は、10分間も向かい合って胸を触っていたという不自然さから、ネット上でも「冤罪では」という声が多く上がっている。
森本アナは『NHK スペシャル”原発事故調 最終報告”』でメインキャスターを務めた。その中では黒川清氏(国会事故調・委員長 日本医療政策機構代表理事)が、「傍証もしたが、東電も書類やビデオを見ると、津波というのは簡単だがその前にも事故は起こっていた。あくまでも地震への備え、謙虚さがない」と発言した他、津波の前に地震で原発が壊れた可能性を理論的に示している。
福島第一原発は地震には耐えたが津波による全電源喪失で事故に至った、というのが原子力ムラの主張するストーリーだ。地震で壊れた、ということになると、どの原発も動かせないからだ。
原発の事故での死者はいない、と推進派は主張するが、津波の被害を受けなかった双葉病院の患者たちが、放射能からの避難の過程で死亡していることも、番組では図解で説明している。
報道では、最初は「やっていない」と容疑を全面否認容疑していた森本氏は、東京地検の調べに対し容疑を認め、16日午後に処分保留で保釈された。地検は「逃亡の恐れがない」として、今後、任意で捜査する、とのこと。もし冤罪だとすると、勾留され続け、長く続く裁判のことを思って、屈したということか。容疑を認めたのなら、当然失職ということになる。みせしめ、としては十分だろう。
今年2月には、東電に批判的な「東京電力偽りの延命」など特集していた、『週刊東洋経済』の編集長、三上直行氏がやはり、痴漢容疑で逮捕されている。その後の経緯は、全く報道されていない。闇から闇に葬られているのだ。
かつて電力会社は原発擁護の立場に立つ有名人には、インタビュー記事1本に500万円を払っていた。
痴漢冤罪なら、声を上げる女性、取り押さえる男性、それぞれに100万円も払わなくとも、引き受ける者はいるだろう。
それで、原子力ムラに逆らったらこうなるんだ、という見せしめとなるなら、安いものだ。
(FY)