財務省近畿財務局が学校法人に払い下げた大阪府豊中市内の国有地をめぐり、財務局が売却額などを非公表にしていることが分かった。朝日新聞が調査したところ、売却額は同じ規模の近隣国有地の10分の1だった。国有地の売却は透明性の観点から「原則公表」とされており、地元市議は2月8日、非公表とした財務局の決定の取り消しを求めて大阪地裁に提訴した。

 

朝日新聞2017年2月9日付け

 

朝日新聞2017年2月9日付け

◆神道の崇高な理念とはかけ離れた疑惑

朝日新聞、久々のビッグスクープだ。公示価格が14億2300万円の国有地が、1億3400万円で「森友学園」に売却されていたことが判明した。「森友学園」のHPからは改憲右翼の巣窟「日本会議」の大阪役員である籠池泰典総裁と、安倍首相の夫人であり三宅洋平氏のお友達(?)である安倍昭恵氏の名前が確認できる。

安倍夫人は現在、塚本幼稚園を運営しているだけの「森友学園」が4月からの開校を予定している「瑞穂の國記念小學院」の名誉校長として「森友学園」のHPに登場している。14億円余りの国有地が10分の1以下、1億円余りで払い下げられ、そこに校舎が建設された「瑞穂の國記念小學院」。同小学校は日本で初めて(同校HPによる)の神道小学校として開校する寸前だ。しかし朝日新聞のスクープにより、同小学校が掲げる神道の崇高(?)な理念からかけはなれた疑惑が明らかになった。

 

「森友学園」ホームページより

 

「森友学園」ホームページより

◆籠池先生を絶賛する安倍昭恵氏

「フフフ、御代官様もワルですなぁ」
「なにを申すか『森友屋』、おぬしの業突く張りにはかなわんわい」
「ハハハ」

と、勧善懲悪の時代劇、前半の悪代官と商人の密議の場面を見せられているような気分だが、関係者の発言がまたふるっている。安倍昭恵氏は「森友学園」ホームページの中で、

「籠池先生の教育に対する熱き想いに感銘を受け、このたび名誉校長に就任させていただきました。 瑞穂の國記念小學院は、優れた道徳教育を基として、日本人としての誇りを持つ、芯の通った子どもを育てます。そこで備わった『やる気』や『達成感』、『プライド』や『勇気』が、子ども達の未来で大きく花開き、其々が日本のリーダーとして国際社会で活躍してくれることを期待しております」

同校総裁・校長の籠池泰典先生を絶賛している

「日本人としての誇りを持つ、芯の通った子供を育て」るそうだ。この小学校の理念、私には気持ち悪い。しかしながらあくまで「私立」学校だ。文科省に認可されれば教育の内容は「学習指導要綱」の範囲内であれば自由だ。ただし、仮に彼らの主張(神道)に立脚すれば「日本の素晴らしさ」を小学生に教育する場所が「瑞穂の國記念小學院」であるはずだ。その「神聖なる場所」が不正払い下げによって薄汚く入手されたことは、「森友学園」の欺瞞性を物語るのみならず、犯罪を構成する疑いが高い。必ず検察が動くだろう。そんな場所で「崇高な教育」ができるのか。

◆籠池先生の明白な「差別表現」

そして、彼らが「崇高」と奉る「神道」とは、神話に立脚した「日本人優越意識」に凝縮される偏狭な人種優越主義にほかならない。籠池先生は、正直だからHPで「韓国・中国人等の元不良保護者」と記載して袋叩きにあったり、塚本幼稚園の保護者には「よこしまな考えを持った在日韓国人や支那人」との表現を用いた文章を配布していた。

これには「よこしま」であることにかけては人後に落ちない松井大阪府知事も「表現の自由があるにしても、下品な表現は使わない方がいい」とコメントしている。違うな。「下品」じゃなくて「差別表現」じゃないのか。松井知事自身、大阪府警の機動隊員が沖縄で「この土人が!」と発言したことを「差別とは思わない」人間だから「よこしま」に「よこしま」を諭させようとしても無理なのである。

◆嘘だらけの安倍「自己陶酔」政権

しかし、一番驚いたのは安倍晋三の発言だ。2月17日の衆院予算委員会で、国有地を格安で買い取った学校法人「森友学園」が設立する私立小学校の認可や国有地払い下げに関し、「私や妻が関係していたということになれば、首相も国会議員も辞める」と述べたのだ。この軽口叩き、与野党国会議員の中に正常な反応があれば、本国会終了時には首相も国会議員も辞めて「ただの人になる」と明言したのだ。

選挙違反で議員に疑義が及びそうになると「秘書がやった」、官庁で不正が起きれば大臣は「事務方の不正で報告がなかった」、甘利元経産大臣のように言い訳ができなくなれば、大臣辞任から入院へ。それでここしばらく「巨悪」は罪に見合った法的裁きや制裁を受けることなく、「どおってことないよ」と押し通してきた。

安倍は「南スーダンで自衛隊の死者や負傷者が出たら辞任する」とも述べている。その一方で派遣された自衛隊の「日報」が破棄されるか行方不明になる、という不可思議極まりない「不正」が行われている。

嘘だらけなのだ。どの口から「私たちは日本の歴史、それを裏打ちする自然・風土・慣習の素晴らしさを世界の人々に発信してゆく必要があります」だの「世界で歴史・伝統・文化の一番長い國である日本」、はては「その中で積み上げてきた日本人のDNAの中に『人のために役立つ』という精神が刻み込まれていますし、世界で一番混じりっけのない純粋な民族であります」などと平然と吐けるのだ「森友学園」総裁の籠池泰典よ!

日本会議をはじめとする「神道」信奉者(あるいは便宜的にそう装っている者ども)の本音は、戦前と何ら変わらぬ「日本は世界一」、「大和民族は世界一」の倒錯した差別と表裏一体となった低レベルの自己陶酔主義にすぎない。

だから、不正であろうが、嘘であろうがお構いなし。払下げに応じた役所の責任者は「ゴミが埋まっていたからその除去費用も考慮して価格を算定した」などと馬鹿以下の答弁しかできないのだ。

◆この国がもしも「普通の国」ならば「序・破・急」展開は必至

安倍明恵が「関与」しているかいないか。議論の余地などない。籠池先生にほれ込んで「名誉校長」を引き受けているのだから道義的に責任があるのは「普通の国」であれば当たり前だ。いいか、晋三の好きな「普通の国」ならばだ。一々議論するまでもない。世界各国で嘘八百を年から年中言いまくっている安倍晋三、今回の発言はそれにしても軽すぎたぞ。これで野党が安倍の首を取れなければ、全員「瑞穂の國記念小學院」入学からやり直せ!

時代劇ならこのあたりでお裁きが下る。背中の桜吹雪か、深夜の隠密道中か。21世紀進歩しているはずの人間に、時代劇でもお決まりの「序・破・急」を展開できないはずはなかろう。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

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