政治や社会のことを、仕事では考えることが多いので、気の置けない仲間と会った時くらいは、関係のないこと、映画や文学、音楽、あるいは身の回りの些細な出来事を話したいと思う。だが、最近はどうしても、政治のことを話したくなってしまう。
いわゆる第三極で混迷している衆院選に向けた動きだが、今からはっきりしているのは「棄権党」が、最も勢力を伸ばすだろう、ということだ。
今、どんなにいいことを言っている政党があったとしても、「だって3年前も信じて、結局のところ騙されたじゃない」という声が、目の前にある現実だ。
国民の政治不信は今、絶頂に達している。
私は今まで、愚直に投票所に足を運んできた。自分の投票行動が、実際の政治にはまったく反映されないと、分かり切っていても。国民が選挙権を持つに至るまでに、流された血や汗、涙のことを思うからだ。そして今度も、同じように投票に行くだろう。
だが、身の回りに多くいる、投票に行かないという人々に、説得する言葉がない。
民主党の裏切りを初めとして、現実の政治が、あまりにもひどすぎる。
棄権党が増長すると、地盤や組織票を持っている政党が勝つということになる。
民主党には、労働組合という組織票があるが、これがどう動くかも分からない。
「裏切った民主党議員には、報いをこうむってもらう」
今年の5月29日、中部電力労働組合の大会に来賓として招かれた、東京電力労働組合の新井行夫・中央執行委員長はそう言い放った。
電力会社の組合の連合体である電力総連は、原発推進である。
2030年代という遠すぎる未来だが、原発の廃止を謳った民主党は、彼らにしたら裏切り者になるのかもしれない。
一応、電力総連の本部には「海江田万里」のポスターは貼ってあったが……。
いずれにしても民主党政権は、組織票にプラスして国民の期待があったから成立したわけで、今はそれはない。
そうすると、巷間言われているように、自民党が政権に返り咲き、ゾンビのように安倍 晋三が首相になるということになる。
安倍晋三という人は、昨年5月20日、自身が発行するメールマガジンで、福島第一原子力発電所事故での海水注入対応について「やっと始まった海水注入を止めたのは、何と菅総理その人だったのです」と書き、「菅総理は間違った判断と嘘について国民に謝罪し直ちに辞任すべきです」と締めくくっている。
しかし様々な検証で事実は明らかになり、『タブーなき原発事故調書 超A級戦犯完全リスト』でも詳述されている。
事故後の3月12日午後2時54分に、福島第一原発では、吉田昌郎所長が自身の判断で1号機への海水注入を指示している。
そうした現場の情報が、まるで上がっていないことがまず問題だが、海水注入が始まっていることを知らない官邸で、同日の午後5時頃、海水注入が検討された。
「海水を入れて再臨界をしないのか?」と菅に問われて、「再臨界の可能性はゼロとはいえない」と斑目春樹が答えたために、問題を検討することになり、判断は先送りされた。
官邸で判断する前の海水注入はまずい、と感じたのが、原発のプロとして東電から官邸に詰めていた武黒一郎フェローである。
「おいおい、やってんのかよ! 今すぐ止めろ!」「おまえ、うるせえ、官邸がグジグジ言ってんだよ!」
武黒は電話で、吉田所長を怒鳴りつけた。
止めたら日本の終わりだと思い、その指示を無視して、吉田所長は海水注入を続けた。
海水注入中止を指示したのは自分であることを、国会事故調査委員会で武黒自身が認めている。吉田所長も証言しているから、間違いない真実だ。
菅は、海水注入中止の指示などしていないのだ。
嘘をついていて、謝罪すべきなのは、安倍晋三のほうなのに、謝罪どころか、件のメルマガはそのままホームページに残っている。
首相どころか、一人の人間としての品格さえ、疑われる人物だ。
安倍晋三は愛国者だというが、本当なのだろうか?
愛国者なら、放射能に汚染された日本の山河を目の当たりにして、やはり原発は間違っていた、止めるべきだ、となぜ考えないのだろうか?
日本が原発を止められないのは、結局のところ、日本そのものはどうなってもいいから金儲けがしたい、というアメリカ原子力マフィアの圧力によるものだという。
安倍晋三は、愛国者の仮面をつけた、アメリカの犬なのではないか。
こんな人物が、日本のトップに立つなど、悪夢以外のなにものでもない。
棄権党の皆さん。その気持ちはよく分かりますが、今回だけでも投票に行きましょう。
原発は止めよう、と、当たり前のことを言っている、党や人物に入れましょう。
(FY)