群馬県高崎市の創造学園大学の堀越哲二前理事長が、知人から預かった古美術品を無断で売却した横領容疑で逮捕された事は、新聞・テレビで報道されている。
この堀越哲二、極めて興味深い人物だ。仏様のような福耳をしており、この福耳に騙された人が多いようだが、よく見ると顔全体のイメージは、どことなく卑しさと欲深さが窺える漫画チックな顔だ。因みに人気アニメ『アンパンマン』の原作者のやなせたかし氏も、堀越哲二に騙されている。
堀越哲二が、堀越学園グループのトップになった経緯からしてイカガワシイ。学園の創設者だった堀越久良氏が亡くなった後、同氏の遺書を偽造し、残された遺産を横領したと言われている。堀越久良氏の夫人が、遺産や学園の経営を、堀越哲二こと小池哲二に委託した亡夫の遺書は、偽造されたものだと抗議すると、夫人も夫の後を追うようにして死んでいる。
堀越家の養子となった堀越哲二(旧姓小池)が、喪主となって行われた夫妻の合同葬儀の葬儀場では、関係者の間で「夫人は小池哲二に殺されたのではないか?」と囁かれていた。
小池哲二は、北海道の小樽商科大学を卒業した事になっているが、これも本人がそう言っていただけで、確認が出来ない。関係者の話では、小池哲二の出世地は、大阪の西成地区だったらしい。
地元の旧家の生まれで、教育者として知られていた堀越久良氏に、どうやって取り入ったかは、詳らかでないが、少なくとも久良氏の存命中は、忠実な腰巾着を演じていた。ところが、同氏が亡くなった後、前述の経緯で、学校の経営権を握ると豹変するのだ。
堀越哲二の乱脈経営については既に報道されているが、特筆すべきは、この男の性豪ぶりだ。学園の女性職員を、老若美醜を問わずに片っ端から自分の女にした。再就職先が見つからず、学園に留まった女性職員の殆どが、この男の餌食にされたらしい。
今回の横領事件の被害者とされる政界フィクサーの朝堂院大覚と堀越哲二の関係だが、もともと弘道会系ヤクザの事件屋に、20億円の学債を騙し取られた堀越哲二が、朝堂院に学債の回収を依頼した事が始まりだったという。朝堂院は、学園のキャンパス内にあった庄屋造りの家屋を気に入り、この屋敷を借り受け、横領された古美術品を飾っていた。
ただ、この話には奇妙な点がある。故・後藤田正晴の盟友で、広域暴力団幹部も一目置く朝堂院から、地方大学の理事長が盗みを働くなど、ジャイアンの宝物をスネ夫が盗むような話だ。また倫理観に問題があり、金に困っている男に、高価な美術品を預けるのが危険な事は、自明のことだ。朝堂院は盗まれるのを予想していたフシがある。
朝堂院は、GHQの武道禁止令で廃校になった私立大日本武徳会武道専門学校(京都市)のような学校を計画していた。朝堂院の目論見通りに事が運んでいたら、創造学園大は、宮下あきら原作の学園ギャグ漫画『魁!男塾』みたいな学校になっていただろう。
ところが、朝堂院が盗まれた美術品の盗難届けを提出しても群馬県警は、2年6ヶ月の間放置していた。群馬県警の幹部の中に堀越哲二と親しい者がいたらしい。
怒った朝堂院が群馬県警や群馬地方検察庁に乗り込んで、捜査担当者や担当検事を「何を愚図愚図しとる、証拠は揃っているだろうが、早く仕事をせんかっ!」と怒鳴り付けていたというから、本当に漫画みたいな話だ。
朝堂院の圧力で、しぶしぶ堀越哲二を逮捕したものの、群馬県警は法廷で堀越哲二に県警幹部との関係を喋られると困る立場にある。それゆえ、何とか穏便に済ませようと画策しているという。
堀越哲二も、群馬県警も、そして学校を喰いものにした暴力団や事件屋、詐欺師なども、まとめて正義の味方アンパンマンのアンパンチを受けるべきだろう。
(橋本征雄)