「日本のほとんど全部の原発が活断層の上に建っていることは、30年以上前から議論になってきた。まともに科学的検証が行われていれば、福島第一原発の事故もなかった。だから、今さらになって……、という感は否めないが、公に指摘された意義は大きい。稼働している大飯原発も、活断層の上に建っている。規制庁の発足も待たずに大飯を『自分の責任で』と稼働させた野田首相は、実際に何らかの責任を取るべきだろう」(脱原発活動家)
日本原子力発電・敦賀原発(福井県)の敷地内にある断層を調べていた原子力規制委員会の有識者会合は12月10日、2号機原子炉建屋の直下に活断層が通っている可能性がある、とする見解で大筋合意した。
敦賀原発の敷地内には1、2号機の原子炉建屋直下を含む約160の断層があり、さらに、活断層の「浦底断層」が原子炉建屋の約200メートル東を通る。断層は将来も動く活断層である可能性が高い。
規制委の田中俊一委員長は「今のままでは再稼働の安全審査はできない」と、現段階での再稼働は認めない考えを示した。耐震設計をめぐる国の安全審査の手引は「活断層の上に原子炉建屋など重要施設の建設は認めない」としている。敦賀原発2号機の運転再開は絶望的で、廃炉を迫られる可能性が高まった。
日本原子力発電は、即日「当社としては到底受け入れがたい」とコメントを出し、11日には、「科学的見地から疑問に思う点を透明性のある形で提示した」として、原子力規制委員会に公開質問状を提出した。地層のズレであり、活断層ではない、という、従来の主張を繰り返したものだ。対決姿勢を示した形だが、運転開始から30年に満たない敦賀2号機の廃炉を迫られれば、損失処理で多額の債務超過になり、経営危機に陥りかねないからだ。
報道を受けて、電力株は軒並み下落した。関西電力株が前日比で一時10%下落し、中部電力株が7%下落。日本原電への出資比率は東京電力が28%、関電が19%など9電力で合計85%だ。電力業界全体にとっても、打撃となる。
原子力規制委員会の判断は、電力業界だけでなく経済産業省にとっても「寝耳に水」だったようだ。
経済全体に与える影響はどうなのだろうか。
「電力会社は、持っている原発を動かした方が利益になるでしょうが、財界全体の動きは必ずしもそうではない。11月には、三菱重工業と日立製作所が、火力発電所向け設備を中心とした電力事業の統合に向けて検討に入っている。政治が脱原発を決断してもやっていけるように、という思慮もあるんでしょうけど、もともと彼ら専門家は、原発は発電コストが安い、なんてのがウソだって知ってますからね。大阪ガスは、電力事業が好調で、2013年3月期の連結純利益が、前年同期比35%増の610億円になる見通しだと発表しています。財界全体では、脱原発で困るなんて事はないんです」(経済アナリスト)
原子力規制委員会の専門家調査団は13日から2日間の日程で、東北電力東通原発(青森県)敷地内にある断層が活断層かどうか調べるため現地調査する。
原発を止めても、電力不足になることもなければ、経済全体に影響を与えることもない。
困ることと言えば、石原慎太郎が口にした本音の通り、核武装というオプションがなくなる、ということだろう。しかしそれでは日本は、ヒロシマ、ナガサキ、フクシマから、何も学ばなかったということになる。
科学の知見を無視して、政治が原発稼働の判断をする、などということがあってはならない。
原発即時撤退を決断できる、政権を待望したい。
(鹿砦丸)