瀧澤博人vsHIROYUKI。右ストレートのカウンター、効いた瀧澤がこの後グラつく

HIROYUKIvs瀧澤博人。HIROYUKIと瀧澤のパンチの交差

HIROYUKI、二つ目のベルトで感涙

スターの扱い方も変化し、地方局、衛星放送などの出演も増え、今後のキックボクシング界を支える新しい展開に。

◎WINNERS 2017.2 nd / 2017年5月14日(日)後楽園ホール17:00~21:40
主催:治政館BeWell / 認定:新日本キックボクシング協会 / 後援:(株)ベストン
放送:テレビ埼玉(6月16日、ドキュメント番組を予定)

《主要5試合》

◆日本バンタム級タイトルマッチ 5回戦 瀧澤3度目の防衛戦

チャンピオン.瀧澤博人(ビクトリー/53.52kg)
       VS(0-3)
同級2位.HIROYUKI(=茂木宏幸/藤本/53.52kg)
勝者:HIROYUKI が第12代チャンピオン
主審:椎名利一
副審:和田45-50. 仲45-50. 宮沢45-50

前半はHIROYUKIが大胆な攻勢をかけ、やや優勢に進め、第4ラウンドに瀧澤はハイキックでHIROYUKIをグラつかせるも、迎え撃ったHIROYUKIが右ストレートでダウンを奪う。足にきてフラつく瀧澤、油断しなければHIROYUKIの勝利は動かない中、打ち合いを避けずに攻勢をかけたHIROYUKIが大差判定勝利で二階級制覇を達成。

◆70.0kg契約5回戦

緑川創(藤本/70.0kg)
VS
ドゥアンソンポン・ナーヨックエーターサーラー(タイ/70.95kg)
勝者:ドゥアンソンポン / 0-3 (47-49. 48-49. 48-49)
(ドゥアンソンポンは、現ルンピニー系スーパーウェルター級4位、ラジャダムナン系同級3位)

ドゥアンソンポンは前日の予備計量で1.4kgオーバー。これは落ちそうにないなと予測はできたが、当日でも950グラムオーバーで減点1が課せられる試合となりました。しかしランカーの実力は遺憾なく発揮、終始重い蹴りが緑川を突き放した展開。

ドゥアンソンポンvs緑川創。ドゥアンソンポン(左)の重いハイキック、ブロックしてもキツイ

志朗vsアドリアン・ロペス。右ローキックの蹴り合い、まだロペスは負けん気充分

◆ISKAムエタイ世界バンタム級(-55kg)タイトルマッチ 5回戦

チャンピオン.志朗(=松本志朗/治政館BeWell/54.9kg)
VS
スペイン同級C.アドリアン・ロペス(23歳/26戦18勝(9KO) 5敗 3分/スペイン/
55.4→55.1→55.0kg)
勝者:志朗が初防衛 / KO 3R 1:50 / テンカウント
主審:和田良覚

ロペスは前日計量で400グラムオーバー、30分ほど走り込み再計量で100グラムオーバー、その場でパンツを脱いで再々計量リミット一杯でパス。体調に問題は無い様子。

ロペスはパワーとスピードがあるが、一歩先読み打つ戦術は志朗が上手。ローキックでロペスの勢いを止めれば、へたり込むこと読める展開に崩しにかかり、青コーナーに詰めローキックからパンチ連打、ボディから顔面へ最後は左フックで倒す。ロペスはボディが効いたかのような、意識はあるが苦痛の表情で10カウントを聞く。

志朗vsアドリアン・ロペス。ダメージ与えコーナーに導き、パンチでKOに結びつける志朗

ヘルダー・ヴィクターvs麗也。ロープ際に詰め、足の弱そうなヘルダーを崩しにかかる麗也

◆52.0kg契約3回戦

日本フライ級チャンピオン.石川直樹(治政館/51.8kg)vs同級3位.幸太(ビクトリー/51.8kg)
引分け / 三者三様 (29-30. 29-29. 30-29)

麗也が王座返上以降、インパクトあるチャンピオンが存在しない感があるフライ級。倒せる技が無く、幸太を調子付かせてしまった石川は、次期挑戦者となる流れであろう幸太を今度は力でねじ伏せなければならない。

◆ISKAオリエンタル・インターコンチネンタル・フライ級(-53.5kg)王座決定戦 5回戦

世界6位.麗也(治政館BeWell/53.5kg)
VS
ヘルダー・ヴィクター(22歳/30戦25勝3敗2分/ポルトガル/53.35 kg)
勝者:麗也が王座獲得 / KO 3R 2:25 / テンカウント
主審:和田良覚

互いに距離感掴み難そうな中、麗也のローキックは有効な攻め。第2ラウンドには麗也がパンチとローキックの攻勢を強める。ヴィクターの長身を活かした打撃を注意し、第3ラウンドには更にボディ中心に攻めダウンを奪うが、ギリギリのカウント9で立ち上がるヴィクターを更にボディにパンチ、ヒザ蹴りで2度目のダウンを奪い、ヴィクターは再度立ち上がるも最初のダウンより戦意喪失気味に遅く立ち、カウントアウトされて終了。

麗也vsヘルダー・ヴィクター。ラッシュに結びつける展開へ麗也のパンチ

勝者HIROYUKIを祝福、認定証授与の後

HIROYUKI。お腹の子含めて4人でショット、守るものが増えた

《取材戦記》

この興行のプログラムに書かれていたサブタイトルが「再び3分5Rの時代へ」でした。タイトルマッチ絡みで4試合が5回戦組まれており、いつもより5回戦が多いだけでしたが、今後を何か予感されるようなフレーズでした(ボクシングシステムで運営される競技性上、“3分”とは書く必要無いと思います)。

興行的にはメインイベントは志朗の防衛戦、セミファイナルが麗也の王座挑戦、となるところが、この2試合は “スペシャルマッチテレビ埼玉杯”という枠だそうで、最終試合の日本バンタム級タイトルマッチがメインイベントでありました。
日本では慣習的に“最終試合がメインイベント”となること多いですが、“メインイベント=最終試合”と決まっている訳ではありません。

治政館(BeWell)がISKA路線へ走り出したのが2年前の5月。志朗を筆頭に後輩の麗也も続き、また二人のタイ・バンコクでの主要興行出場も続いているというBeWell戦略が今後も賑やかに盛り上げそうです。志朗は6月にルンピニースタジアムでのテレビマッチ出場が決定しており、多方面から出場交渉がある実力派です(BeWellは治政館が母体の姉妹ジム的存在、志朗の父、松本弘二郎氏運営)。

瀧澤博人の日本バンタム級王座3度目の防衛戦となった元・日本フライ級チャンピオン.HIRYUKIとの対戦は、複数王座に因縁が絡む好カードでした。2014年10月に瀧澤が王座を奪った当時のチャンピオンが重森陽太(伊原稲城)。その重森は階級を上げ、2015年10月に日本フェザー級王座を内田雅之(藤本)から奪いました。HIROYUKIは2014年8月に日本フライ級王座決定戦を麗也に勝利して獲得、初防衛戦で麗也に奪われた後バンタム級に上がり、この日、日本バンタム級王座挑戦に漕ぎ着け、瀧澤から王座を奪取に成功。何かと因縁が続くこの日本タイトル、老舗(旧・日本系)とは枝分かれはしていますが、この老舗を継承しているのが新日本キックボクシング協会で、“日本タイトル”を継承する団体です。昔も日本王座には、因縁ある変遷史がありました。全日本系でも同様です。

2階級制覇となったHIROYUKIは今後について「とりあえず防衛。他は要らない」とあっさりしたもの。試合後の応援団の祝福に囲まれての写真撮影が続く中での発言でしたが、一夜明けて落ち着けばまた更に目指すものが見えてくるでしょう。フライ級では防衛失敗しているので、目黒ジム伝統の「チャンピオンは防衛してこそ真のチャンピオン」をまずは果たさねばなりません。21歳のHIROYUKIはリング上で「妻のお腹には二人目の子が居ます」と発表。守るは家庭と王座。若くして責任重大です。

試合後、リングを降りてすぐ、応援してくれた仲間に御礼を言って回る選手は幾らか見受けられますが、裸のままでは汗も冷えるし風邪引く恐れがあります。
「試合が終わって時間が経つと身体が冷えるので、放送席に長く留ませ、インタビューが長引くのは好ましくない」という昔のボクシング記事を読んだことあります。

選手の皆さん、リング上の照明が消された後や、リングを降りた場所はかなり気温が下がっています。翌日は祝勝会かもしれませんが、身体を冷やさないよう気を付けましょう。

[撮影・文]堀田春樹

▼堀田春樹(ほった・はるき)
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

一水会代表 木村三浩=編著『スゴイぞ!プーチン 一日も早く日露平和条約の締結を!』

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