通常運転中でも下層労働者が被曝しながら作業しなければ、動かない原発。そもそもが人の道に反した代物だ。
利益を優先して安全対策を怠り放射能をまき散らすことになった、福島原発の事故はまさに人災である。

事故責任者=永久戦犯を全体に許さない、という志で作られたのが『東電・原発おっかけマップ』(鹿砦社)だ。
多くの人々の生活を犠牲にしながら、「原発は安全」というデタラメで得た金で、今ものうのうと暮らしている東京電力幹部や原発推進派。彼らの住所や自宅地図、家の写真、経歴などが収められている。
全国の書店への配本のカギを握る取次各社の自主規制=委託配本拒否にも関わらず、心ある読者や書店員の皆様方の動きで発売以来注文が殺到し、残りは僅かとなっている。

『東電・原発おっかけマップ』の最初に乗っているのが、当然のことながら、東電会長の勝俣恒久だ。
昨年12月25日、「会長・勝俣さんちにお手紙を届けよう」ということで、勝俣宅を訪ねるリアリティツアーが行われた。

手紙を携えて参加者たちが歩いていくと、外苑西通りから勝俣宅へと曲がる道には、警察官が横に並んでいて通れない。
公道を歩かせないことには、なんの法的根拠もない。
その辺り一帯には、ざっと200人ほどの警官がいる。

村を住めなくされた人々、田畑や牧場を放射能で汚染された人々、外では遊べなくなった子どもたち、住み慣れた街から避難していった人々……。
多くの人々を人災による事故によって不幸に陥れた張本人を、警察官が守っている。

怒りに集まった人々が声を上げると、「集会は止めなさい」と警察官が言ってくる。
カナダからの参加した女性は、「あれだけの事故を起こして、会長がそのまま居座っているとは、カナダでなら考えられない」と語った。

さすがに法的根拠もなく行く手を阻み続けることはできないので、警察官は5人ずつ通すということに応じた。
勝俣邸は表から見ると、窓もない要塞のような造りだ。抗議される日が来ることを、予想していたのだろうか。ガードマンに守られていて、ポストまでは行けない。参加者たちは、用意されていた箱に、手紙を置いてきた。

参加したのは、約150人。原発を巡る今の日本の状況を浮き彫りにした、と言えるだろう。

(F.Y)