6月15日発売開始『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

◆繰り返される被曝事故と再稼働強行の最中で

6月6日、日本原子力研究開発機構(JAEA)「大洗研究開発センター」で核燃料の貯蔵容器を点検しようとしたところ、中にあった袋が破裂しプルトニウムを含む放射性物質の粉末が飛散し。作業員5人のうち4人が放射性物質を体内に取り込んで被曝。1人の肺からは2万2000ベクレルの放射性物質(プルトニウムと推測される)が検出される大事故が発生した。

2005年12月25日佐賀県主催のプルサーマル公開討論会で、東京大学工学系研究科システム創成学専攻教授の大橋弘忠(元東京電力社員)が「プルトニウムは飲んでも大丈夫」と発言していたが、それに対して京都大学原子炉実験所助教(当時)の小出裕章さんが、「毒物は取り入れ方により毒性が変わります。プルトニウムの場合怖いのは鼻から呼吸で吸入する場合です」と指摘したうえで、具体的な数字をあげ、肺がん発生のリスクを説明している。

この映像は今回の事故に遭われた作業員の方には、充分に配慮して知って頂く必要がある。肺の中に呼吸により吸い込んでしまった2万2000ベクレルのプルトニウムが意味するところを、私はこれ以上明確に書くことができない。

これに先立つ5月17日関西電力は高浜原発の4号機を再稼働、「プルトニウム拡散事故」と同日には高浜原発3号機を再稼動した。1機の原発あたり過酷事故が起こる可能性は「2万年に一回」と主張していた推進派の定説からすれば、54機の原発を抱えるこの国での過酷事故確率は1/20000を54回足した割合であるはずだが、その数字は完全に机上の空論であることが、数々の事故という事実で証明されてしまった。

原発の過酷事故は多くの人の生活を奪う。わかった。しかし、原発で過酷事故が起こらなくても、核関連施設で少しの「手順間違い」があっただけで、現場の人々は生命の危険にさらされる。これが核の高毒性を示す明快な証拠だ。

◆特集は「暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪」

このように、またしても事故が繰り返されるなか、そして国会で「共謀罪」が強行採決されようとしている本日6月15日『NO NUKES voice』12号が発売となる。特集は「暗い時代の脱原発」だ。高浜原発再稼働の危機は、編集段階で視野に入っていたが、JAEAの事故など編集部が予想できるはずはない。特集では非常に厳しく冷徹な目前の現状を、多角的な視点から直視している。そこに希望はあるのか、打開策はあるのか。答えは本号をお読み頂き読者にご判断いただこう。

巻頭にご登場は、作家、編集者にして社会運動家でもある森まゆみさんだ。「私の《陣地戦》クロニクル」では、東京下町の魅力発掘から、日本中へ足を延ばし、さらには世界を広く「森まゆみ」の目から見てきたお話が繰り広げられる。シンプルにして実証的。そして現実に立脚した刺激に満ちている。

森まゆみさんが千駄木「記憶の蔵」で語る「私の《陣地戦》クロニクル」

 

 

  
◆泉田裕彦=前新潟県知事ロングインタビューと二人の元知事が語る対談「福島×新潟〈知事抹殺〉の真実」

森まゆみさんが、繰り出していただいた先制のジャブに連なるフックは前新潟県知事の泉田裕彦さんだ。新聞やテレビ画面の短い切り取りでは、決して伝わらない泉田さんの明晰さと穏やかなお人柄を余すところなくお伝えするインタビュー「日本はなぜ、事故検証と情報公開が徹底できないのか?」はもちろんだが、元福島県知事佐藤栄佐久さんとの対談「福島×新潟〈知事抹殺〉の真実」も極めて内容が濃密だ。短いセンテンスでは穏やかだが、総体で泉田さんの語ろうとしていることの真っ当でありながら、大胆な着眼点に読者は目を奪われるだろう。

本間龍さんの連載「原発プロパガンダとはなにか」、今号では「佐藤栄佐久知事と東電トラブル隠し」で元福島県知事佐藤さんを追い落とした広告戦略を解析する。

東電〈再稼働圧力〉を拒否し続けた泉田裕彦=前新潟県知事本誌独占インタビュー! 佐藤栄佐久=元福島県知事との公開対談「福島×新潟〈知事抹殺〉の真実」も同時掲載

◆「フェイクニュースでジャーナリズムは死んだのか?」(北村肇=『週刊金曜日』発行人)

次いで登場は『週刊金曜日』発行人の北村肇さんだ。左ストレートが炸裂する。論争盛んで右派からは叩かれることの多い『週刊金曜日』。多様な言論を目指し、異論を排さない点で鹿砦社や『NO NUKES voice』 と共通する方向性を持った雑誌発行にまつわる思想と、北村氏の現状認識に切り込んだインタビューは、闇の中に光のありかをさし示しているだろうか。

「フェイクニュースの時代は3.11を契機に到来した」(北村肇=『週刊金曜日』発行人)

 

 

  
◆山城博治さんに聞く、共謀罪を先取りする沖縄『見せしめ』弾圧

次いで浅野健一さんが不当長期勾留からようやく保釈された沖縄平和運動センター議長山城博治さんへのインタビューを中心に敵のパンチをかわし、クロスカウンターを見舞う。題して「保釈された沖縄の闘士、山城博治さんに聞く共謀罪を先取りする沖縄『見せしめ』弾圧」だ。本誌では10号でも逮捕前の山城さんへのインタビューを掲載したが、その後の弾圧について山城さんの厳しい指弾と警鐘を浅野さんが伝えている。

経産省前テント広場の三上治さんの「『いやな感じ』が増す日々の中で」と、本誌発行人、松岡利康の「ファシズムの足音が聞こえる」は、いずれも「もうあとがない」ロープを背にした体制からの起死回生を狙うアッパーカットだ。

時に怒り、時に踊る──山城博治=沖縄平和運動センター議長の抗い

◆原発社会を終わらせる──全編が全身全霊パンチの連打

後半戦は堅実なパンチを敵のボディーに集中する。山崎久隆さんの「朝鮮半島緊張と日米同盟 この道はいつか来た道 核施設を並べて戦争をするつもりか」、森山拓也さんの「改憲決定後も原発を拒否するトルコ・シノッブの人々」、中村順さんの「福島の土壌汚染を可視化する」、拙稿「4・27関電包囲全国集会と5・7高浜原発現地集会に参加して」、木村結さんは「反自連(原発ゼロ・自然エネルギー推進連盟)がスタート」、納谷正基さんは「再考……『学校は、誰のために、何のために存在するのか?』着々と堅実なパンチで敵に反撃を浴びせ劣勢を挽回する。

ここで板坂剛さんが例によって変則パンチを試みる「Xジャンプが脱洗脳の合図に見える」は敵のあごにヒットするか?

日本ではほとんど報じられていないトルコ・シノッブでの反原発運動を気鋭のトルコ研究者、森山拓也さんが報告

 

 

  
脱原発・反原発は長期の闘いだが、『NO NUKES voice』 は毎号が勝負だ。判定などに持ち込めば負ける。KOしか狙わない。後半戦では秘策、書家の龍一郎さんに「希望の花―『黒檄展二〇一七』を終えて」でリングへ上がっていただく。日ごろ鹿砦社のロゴなどを手掛けている龍一郎さんは、知る人ぞ知る「ゲルニカ裁判」を闘った闘士でもあり、普段の優しい揮毫とは別人のように「非合法」スレスレのアンダーグラウンドパンチで敵の虚をつく。

伝説の書家、龍一郎さんによる「希望の花」と「黒檄展」

再び登場、松岡は「『季節』をめぐる奇妙な再会」で、『NO NUKES voice』発行後、何十年も通信がなかった人との再邂逅を紹介し、ゲリラ的連帯パンチを繰り出す。最後は全国からの運動報告で、ひとりひとりがメインイベンターになれるような有名どころが、入れ替わりリングに上がり、足を止めて敵に間隙を置かず小刻みなパンチを上下に散らしたところで、レフェリーが試合を止めた。

現実でわれわれは「勝利」できているとはいい難い。しかし本号にご登場、ご協力頂いたすべての方々のご尽力で『NO NUKES voice』12号は、言論においてはKO勝ちできたと編集部は振り返っている。決して慢心はせずに。

▼田所敏夫(たどころ としお)
兵庫県生まれ、会社員、大学職員を経て現在は著述業。大手メディアの追求しないテーマを追い、アジアをはじめとする国際問題、教育問題などに関心を持つ。※本コラムへのご意見ご感想はメールアドレスtadokoro_toshio@yahoo.co.jpまでお寄せください。

6月15日発売開始『NO NUKES voice』12号【特集】暗い時代の脱原発──知事抹殺、不当逮捕、共謀罪 ファシズムの足音が聞こえる!

関電高浜原発ゲート前(2017年6月6日撮影=大宮浩平)

多くの人たちと共に〈原発なき社会〉を求めて『NO NUKES voice』