前回に引き続き台湾ネタで恐縮だが、予告通り(?)、6月29日から7月2日・3泊4日の訪台レポをお届けする。

◆1日目は、日本料理と、ノスタルジックな街並みや人々に惚れこむ

羽田・台北間の移動に用いた台湾の航空会社「エバー航空」は、サンリオと提携しており、機体も機内もサンリオ三昧。鹿児島上空あたりで他の旅客機や船も見えた。台北松山空港にて「エバー航空」の子会社である「ユニー航空」のプロペラ機に乗り換え、台東空港へ。私は台湾を訪問するのは初めてだが、台北で空港の外に出ることはなかった。その後、バスで「台東富野渡假酒店(HOYA RESORT HOTEL)」に向かい、シングルルームと聞いていたが、ツインのベッドの片方に荷物を置く。夕食は「台東大車輪日本料理店(DCL Japanese Food House)」。店員さんは若い方が多く、日本語も話す。日本料理に台東の食材を用い、台湾流のアレンジが加えられているが、癖がなくおいしい。ただし、店頭ののぼりに書かれたカタカナの縦書き文字を見ると、「サーモンイクラ」の音引き(ー)が漢字の「一」のように横向きになっていたりする……。

台東縣は台湾の東南端に位置し、細長くて海岸線も長い。台湾総面積の10%弱を占める。自然にあふれ、原住民族の人口が3分の1に及ぶ。

南国風の空気、わずかに吹く心地よい風、ノスタルジックな風景、親しみを感じる人々、ゆるい世界……。渋いおじいさんたちが集まり、路上でテレビを観る風景も。わたしはいっぺんに、ここが好きになった。台東縣は台北よりも田舎だと想像していたが、本当に東京からタイムマシンに乗ったようだ。でも、日本、北京、ソウル、平壌、タイ、シンガポールなどの風景とも似たところがある。他は行ったことがないのでわからないが、やはり東アジアや東南アジアの文化はつながっているのだろう。

◆2日目は、ブヌン(布農)部落でコミュニティの文化を守る様子を知る

ブヌン(布農)部落の織物芸術センターにて

翌日は、まず、前回に酒井充子監督インタビューを寄稿させていただいたドキュメンタリー『台湾萬歳』(http://taiwan-banzai.com/)の舞台、台東縣での完成披露試写会・記者会見。この時には、社会派と人の魅力の相乗効果で、作品が深い魅力を湛えていると感じた。昼食は、娜路彎大酒店(Formosan Naruwan Hotel)にて会食。

その後、ブヌン(布農)部落で園内見学とアーチェリー体験。日本語の案内もある。園内にあるのは、手作り体験教室、織物芸術センター、射的場、シイタケの栽培場、部落劇場、キャンプ場、夏のみ営業している温泉プール、竹炭工房など。時間の都合でショーを見逃した。

台湾原住民は総人口の約2%で、2016年現在、狭義では16の民族が政府に認定されている。

「布農(ブヌン)文教基金会」について途中までまとめながら調べ物をしていたら、ネット上に日本語の資料がアップされていたので、こちらをご覧ください(なんと便利な時代だろう)。

「布農(ブヌン)文教基金会」を設立した牧師・白光勝さんにもお会いできた。彼はお金のない場所だと繰り返し語っていたが、支援のシステムをつくって「原住民」を守り、十分な教育が受けられるように子どもたちにもお金を与える。ほかにもいただいた『Asia Echo(アジアエコー)』2002年8月号の資料には山田智美さんによって、「台北から汽車で東回りに約6時間、飛行機なら約40分の台東県延平郷の山間にある小さな村、桃源村に『布農部落』はある。観光宿泊施設と住民の福祉教育の場を兼ねた小さな先住民族文化園である。」と書かれている。また別の資料によれば、ブヌンには、「軍功(たたかいの手柄)を讃える」精神があるそうだ。

「東京に住んでいる」といったら「お金がある」といわれたので「そんなことはない」と答えたが、農村から日本を見ると、まだまだそのように見えるのだと感じた。原住民のコミュニティを訪れることにより、私たちはさまざまなことを感じたり学んだりすることができ、彼らの支援にもつながる。私も次回は宿泊施設なども利用させてもらいながら、ショーや食事、アーティストさんの作品などをゆっくりと楽しみたいと思う。

夕食は米巴奈-原住民山地美食坊(Mibanai)にて原住民料理を満喫。個人的には、一般の台湾料理よりもクセがなく、味つけが和食に近いようにも感じた。スズランの食器が美しく、帰国後に調べたら「烤春筍」というヤングコーンをバラ肉で包んだものなど、味わい深く、特においしかった。

そして「ライトショー」に行くも、雨で開催されず。それでも同行者いわく台湾の方々は夜に集まることを好むそうで、大道芸などの小さなショーをみんなで楽しんでいる。あたかも大家族のよう。若々しい台東縣の知事はカリスマ性があってスピーチがうまく、彼の話にみんな熱心に耳を傾けているように見えた。

宿泊は鹿鳴溫泉酒店。客室の風呂も温泉だといわれたが、駈けこみで大浴場の温泉に入った。ドライのサウナに加えてミストサウナもあり、客室はベッドルームが階段を上がった階にあり、そこはロフトのような感じだ。

◆3日目は、熱気球フェス、漁港の雰囲気、歴史建造物を「体感」

さらに次の日には、お茶の産地として知られる鹿野高台で、「台湾国際熱気球フェスティバル」を見学。2011年より毎年6~8月頃に開催されているそうで、想定外の迫力やデザインのバリエーションがあり、楽しませてもらった。アミ族が多い地域で、スタッフもアミ族が担当していると聞いた。

海鮮中心の東海岸海景渡假飯店(East Coast Sea View Hotel)で昼食をとり、成功漁市では市場が休みの日だったにもかかわらず風情ある佇まいの漁師さんたちとインパクト溢れる魚たちに出会えた。成功漁港では10月になるとカジキ漁がおこなわれる。このカジキの「突きん棒漁」は日本の千葉県出身者らが伝えたものとのこと。わたしは千葉県出身なので、このあたりの風景や人に大きな親しみを感じる理由かもしれないとも考えた。その後、展示室で「突きん棒漁」などについてのレクチャーも受け、広場で実体験をおこなう仲間の姿も撮影。

そして、「成功鎮プチ旅行」として、新港教会歴史建築も見学。ここには、1932年に新港支庁長の菅宮勝太郎によって建てられた木造建築と、46年に医師の高端立と父の篤行が開業した高安診療所と彼らが建て直した新港教会が保存されている。95年に医院が休業した後には、そこも新港教会が買い上げて研修会館(霊修会館)となった。これらを保存し続けようと、現在、「新港教会歴史建築 夢のプロジェクト」が立ち上がり、訪問を受けたり、さまざまな活動を手がけたり、リフォーム経費を募ったりしているのだ。小芝居を観て、牧師さんの話もお聴きした。その後、1人ぷらぷらと、海岸などを散歩し、将棋だか囲碁だか(邪魔したくないのであまり近づけなかった)に興じる人や海の様子、そこを通る人々の様子をながめていた。

夜は、揚げ物が印象的だった三禾聚台菜食堂での夕食、国立成功商業水産高校活動中心・成功鎮での、観た3回とも印象が異なる『台湾萬歳』特別上映。上映では、町中の人々が集まってきたかのごとく盛り上がり、子どもから大人まで笑って楽しむ姿が印象的だった。東海岸海景渡假飯店(East Coast Sea View Hotel)に宿泊。ベッドはなんと天蓋つき! おろさなかったが。

コミュニティと歴史について、「自分の順番を生きる」ということとその不思議などについて、改めて考えさせてくれた1日だった。また、東京暮らしの幸福と不幸についても思い及んだ。

新港教会歴史建築

◆現在、成功鎮では映画とのコラボで割引サービスも実施中

最終日も朝食後、東海岸プチ旅行。まずは、エメラルドグリーンの海や橋を建設する労働者の姿を眺める。次に、日本統治時代の製糖工場である「台東製糖文化創意産業園区」を見学。資料によれば、「製糖工場の文化資産を再利用し工業地の景観を芸術へ置き換え、彫刻工房、手作り創作工房、原社手作り生活感など、芸術と人文の特色を組み合わせた芸術の領域が広がっています。」とのこと。実際、工場とアート、カフェ(茶屋)などが組み合わさっており、ユニークな場所だ。

台東製糖文化創意産業園区

最後に、交差点にバイクで届けてくれた台湾式お弁当を台東空港にて昼食としていただき、台北松山空港に移動。ホテルなどで買い損ねたお菓子などのお土産を購入して帰国。

今回の旅を経て、台湾、台東、成功鎮を体感することができた。案内の方によれば、「お好みでツアーを組むことができるし、これから1~2年で日本からの観光客にもっと対応できるよう準備を進める予定」とのこと。しかも成功鎮では、現在上映中の酒井充子監督ドキュメンタリー『台湾萬歳』のチケット半券か映画パンフレット持参でホテルや飲食店などでのさまざまなサービスが割引となるキャンペーンを実地中だという。わたしも帰国後の日本台湾祭りや上映の際に台東で出会った方々と再会し、改めて関心が高まっている。成功鎮で出会った林哲次先生の幼少期や戦時中に関する文章を日本で書籍化したい(鹿砦社さん、どうです?)とか、台東のガイドブックを制作したいなど、妄想(?)もふくらんでいる。台東にご関心ある方のご質問などあれば、どうぞ。


◎[参考動画]3部作最終章『台湾萬歳』ポレポレ東中野にて公開中ほか全国順次公開予定!(CINRA NET 2017年6月2日公開)

▼小林蓮実(こばやし・はすみ)[撮影・文]
1972年、千葉県生まれ。フリーライター、エディター。『紙の爆弾』『現代用語の基礎知識』『週刊金曜日』『現代の理論』『neoneo』『救援』『教育と文化』『労働情報』などに寄稿。労働や女性などに関する社会運動に携わる。ちなみに、定住に興味がなく旅を愛するが、それぞれの土地の文化には関心がある。小林蓮実Facebook 

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