波賀宙也 vs ジョム・エスジム。波賀は技を駆使して攻めるが、ブロックや的を外すジョムの巧みさがムエタイの壁となる

波賀宙也 vs ジョム・エスジム。波賀にとって苦しい再起戦、ムエタイの壁となったジョム

選手だけでなく、若武者会プロモーターたちの宣戦布告であるかもしれない先月3日に続くDUEL興行。過去より比較的短い間隔、ディファ有明での開催も、ついに主要会場クラスに進出となりました。

◆波賀宙也 vs ジョム・エスジム

6月25日にWBCムエタイ日本スーパーバンタム級王座を失ったばかりの波賀は再起戦となる一戦。初回のローキックでのけん制から次第に距離が詰まっていく両者。組んでのヒザ蹴りも多くなり、互いの攻防はミドルキックやハイキックも繰り出し激しくなっていくが、波賀はジョムの距離に付き合ってしまっている印象。猛攻を掛けても芯を捕らえさせないジョムの上手さが目立った試合。

◆櫻井健 vs コンゲンチャイ

櫻井の蹴りにもパンチにも応戦するコンゲンチャイ。両者パワフルな攻防となるが、テクニックで優るコンゲンチャイが蹴られても蹴り返し、好戦的に前に出る。当初から5回戦と決められていたが、プログラムには3回戦とあり、3ラウンド終了時で「これは5回戦です」というアナウンスで戸惑う観衆。ただ選手と陣営は次のラウンドに入る素振りがあったので、当初から5回戦だったと感じる動きではありました。

後半は勝ちを確信した逃げかスタミナ温存か、ロープに詰まるように下がり始めるコンゲンチャイ。スタミナ充分な櫻井が圧力掛けるが、それでもコンゲンチャイは蹴りは強くムエタイ技を見せ劣勢に至らないコンゲンチャイが判定勝利。

エスジム所属のタイ選手のテクニックに翻弄されたメインクラスの波賀宙也と櫻井健でしたが、いずれも採点は2-1の接戦で、しかしこの差が大きく、これを乗り越えていかねばならない本場ムエタイへの通過点でもあります。

櫻井健 vs コンゲンチャイ・エスジム。重いローキックのコンゲンチャイ

櫻井健 vs コンゲンチャイ・エスジム。櫻井健も耐えて善戦するが、コンゲンチャイも怯まないで蹴り返して来る

バチ捌きは見事な連係、12分を戦い抜いた雄勝町伊達の黒船保存会の4名

ラウンドガール晴奈さん。リングも舞台も真剣勝負

KO決着は第1試合と第2試合のみ。パフォーマンスで目立ったのは毎度の鰤鰤左衛門。
鰤鰤は接戦の試合が多く負けの数も多いようですが、この日も接戦ながら勝利となりました。変則的な雰囲気を醸し出しながらしっかりとパンチと蹴りを持つ攻防でした。

アトラクションとして雄勝町伊達の黒船太鼓保存会による創作和太鼓の披露は、汗びっしょりになって太鼓を12分に渡りリズムに乗ってバチで叩き続けた4名の連係捌きが見事で、試合以外でも盛り上がりある興行となりました。リング上での披露はいつもと違った臨場感だったでしょう。

毎度のラウンドガール登場はDUELで2代目となる晴奈さんが登場。舞台やテレビ、映画出演が多い女優さんです。

◎DUEL.12 / 2017年10月1日(日) ディファ有明14:00~18:55
主催:NJKF若武者会 / 認定:NJKF

◆メインイベント 56.5kg契約 5回戦

波賀宙也(立川KBA/56.5kg) vs ジョム・エスジム(タイ/56.52kg)
勝者:ジョム・エスジム / 判定1-2 / 主審 多賀谷敏朗
副審:白神48-49. 中山49-48. 竹村48-49

◆ライト級 5回戦

櫻井健(習志野/60.8kg)
vs
コンゲンチャイ・エスジム(元・ルンピニー系バンタム級3位/タイ/60.6kg)
勝者:コンゲンチャイ / 判定1-2 / 主審 宮本和俊
副審 多賀谷49-48. 中山48-49. 竹村47-50

◆ウェルター級3回戦

NJKFウェルター級5位.Jun Da雷音(E.S.G/68.7kg)
vs
NJKFスーパーウェルター級6位.変わり者(東京町田金子/69.8kg)
勝者:.Jun Da雷音 / 判定2-0 / 主審 白神昌志
副審 多賀谷29-29. 中山30-29. 宮本29-28

◆58.5kg契約3回戦

NJKFスーパーフェザー級3位.大輔(TRASH/58.35kg)
vs
山浦俊一(新興ムエタイ/58.5kg)
勝者:山浦俊一 / 判定0-3 / 主審 竹村光一
副審 白神28-29. 中山28-29. 宮本27-29

◆バンタム級3回戦

NJKFバンタム級6位.淳士(OGUNI/53.2kg)
vs
同級9位.鰤鰤左衛門(CORE/53.4kg)
勝者:鰤鰤左衛門 / 判定0-2 / 主審 多賀谷敏朗
副審 白神28-30. 竹村29-29. 宮本29-30

淳士 vs 鰤鰤左衛門。アグレッシブに攻めた鰤鰤左衛門

接戦ながら勝利した鰤鰤左衛門

◆57.0kg契約3回戦

NJKFスーパーバンタム級4位.雄一(TRASH/57.0kg)
vs
NJKFスーパーフェザー級9位.真沙希(VERTEX/56.9kg)
勝者:真沙希 / 判定1-2 / 主審 中山宏美
副審 白神30-29. 竹村29-30. 多賀谷29-30

◆NJKF女子(ミネルヴァ) 52.8kg契約3回戦(2分制)

同・スーパーフライ級チャンピオン.伊織(T-KIX/52.1kg)
vs
同・スーパーバンタム級1位.小田巻洋子(クレイン/52.7kg)
勝者:伊織 / 判定2-0 / 主審 宮本和俊
副審 中山30-29. 竹村29-29. 多賀谷30-29

◆女子ライトフライ級3回戦(2分制)

RINA(谷山・小田原/48.6kg) vs YUKINO(トースームエタイシン/48.8kg)
引分け / 三者三様 / 主審 白神昌志
副審 中山29-29, 宮本30-29. 多賀谷29-30

◆55.0kg契約3回戦

永井健太朗(Kick Box/54.9kg) vs 中尾興慧(TGY/54.9kg)
勝者:中尾興慧 / 判定0-3 / 主審 竹村光一
副審 中山28-30. 宮本28-30. 白神29-30

インパクト勝利2人目、松谷桐

◆55.0kg契約3回戦

海人(E.S.G/55.55→55.35kg) vs 古村匡平(立川KBA/54.7kg)
勝者:古村匡平 / 判定0-3 / 主審 多賀谷敏朗
副審 竹村27-30. 宮本25-30. 白神27-30
海人は350グラムのオーバーウェイトの為、減点1が加算された採点

◆57.0kg契約3回戦

小田武司(拳之会/56.9kg) vs 山浦翔(新興ムエタイ/56.7kg)
勝者:山浦翔 / 判定0-3 / 主審 中山宏美
副審 竹村28-30. 多賀谷28-30. 白神28-30

◆スーパーライト級3回戦

野津良太(E.S.G/63.4kg) vs 岩橋伸太郎(エス/63.0kg)
勝者:野津良太 / 判定3-0 / 主審 宮本和俊
副審 竹村30-28. 多賀谷30-29. 中山30-28

◆フェザー級3回戦

吉田凜汰郎(VERTEX/56.5kg) vs 佐々木裕亮(光/56.5kg)
勝者:吉田凜汰郎 / 判定3-0 / 主審 白神昌志
副審 宮本30-24. 多賀谷30-24. 中山30-23

◆第2 フライ級3回戦

EIJI(E.S.G/50.6kg) vs 松谷桐(VALLELY/50.2kg)
勝者:松谷桐 / TKO 2R 2:25 / ノーカウントのレフェリーストップ
主審 竹村光一

松谷桐 vs EIJI。KO勝利2人目の松谷桐、飛び膝蹴りでダウンを奪い、再開後パンチで仕留めました

◆第1試合 バンタム級3回戦

鈴木力也(ZERO/53.3kg) vs 北田竜汰(光/52.6kg)
勝者:鈴木力也 / KO 1R 1:30 / カウント中のタオル投入による棄権
主審 中山宏美

鈴木力也 vs 北田竜汰。鈴木力也がハイキックで一発KO勝利、このカットではありませんが、逆方向からこんな形で決まりました

ハイキックKOは15試合中いちばんインパクトあった第1試合の鈴木力也

《取材戦記》

NJKF本興行から準ずる形の若武者会主催の第12回目と力を付けているDUELでした。今回はメインイベンタークラス以外にも注目して掲載してみました。今後もパワーアップして行きそうな若手のプロモーター興行です。

全15試合は14時から始まり、約5時間のちょっと長い興行となりましたが、早めの開始で19時に終わる興行としては帰りが遅くならない有難さがありました。

ひとつ苦言するならば、試合中のラウンド数変更は、キックでは伝達不足による原因でアナウンス訂正が有りがちですが、契約事項の確認、伝達の徹底は怠ってはならないでしょう。コミッションが管理管轄するプロボクシングでは起こり得ないことです。

日本 vs タイ国際戦もタイ選手側の幅広いレベルの差がありますが、以前から申すとおり、日本選手の壁となる、第一線級を退いてもまだまだ強いムエタイ戦士は貴重な存在と思います。

NJKFに於いて波賀宙也は2月の「KNOCK OUT」で小笠原瑛作(クロスポイント吉祥寺)に敗れ、6月にWBCムエタイ日本王座を小笠原裕典(瑛作の兄)に奪われ、今回の敗戦で3連敗となる中、今年27歳、WBCムエタイに於いてはまだまだ上位を目指せる存在。今後の踏ん張りを応援したいところです。

▼堀田春樹(ほった・はるき)[撮影・文]
フリーランスとしてキックボクシングの取材歴32年。「ナイタイ」「夕刊フジ」「実話ナックルズ」などにキックのレポートを展開。ムエタイにのめり込むあまりタイ仏門に出家。座右の銘は「頑張るけど無理しない」

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