私たちは1970年に京都の大学に入りました。私は同志社大学、もうひとりの編著者・垣沼真一さんは京都大学—–もう50年近くも前の話です。昔話といえば昔話です。燎原の火の如く燃えた70年安保闘争、学園闘争の火は鎮火しつつあったとはいえ、まだくすぶっていた時期でした。特に京都では同大・京大を中心に意気軒昂でした。まだ沖縄が「返還」されていない時期で、沖縄(返還協定調印‐批准)─ 三里塚(成田空港反対闘争。第一次‐二次強制収用)─ 学費値上げ問題などが沸騰し、私たちも精一杯闘いました。
しかし、その後、叛乱の季節は収束し、連合赤軍の銃撃戦‐リンチ殺人、内ゲバなどで暗い時代に向かっていきます。私たちも、大学を離れ生活に追われ、背負った問題に呻吟しつつ生きてきました。そうして、齢を重ね60代後半に入りました。
このかん、私たちは、かつて背負った問題を整理し書き綴っていくことにしました。数年かけて書き綴りました。私たちなりの覚悟で<知られざる真実>も明かし、偽造された歴史に小さいながらも楔を打ったつもりです。
こうした私たちの意気込みに、尊敬する大先輩の矢谷暢一郎さん(元同志社大学学友会委員長、現ニューヨーク州立大学教授)が海の向うから玉稿を寄せてくれました。
A5判、2段組で300ページの堂々たる分厚い本になりました。ここには、私たちが若かった頃に培い、そして闘い、しかし挫折し背負ってきた<負債>が書き綴られています。どうかご一読され、時代は端境期、当時の<空気>を感じ取ってください。
本書第二章の「創作 夕陽の部隊」という短編小説で、私の当時の先輩のS・Kさんは、
「俺は、虚構を重ねることは許されない偽善だといったんだ、だってそうだろう、革命を戯画化することはできるが、戯画によって革命はできないからな」
と、当時の情況に対し本質を衝いた表現をしています。
60代も後半となり年老いた私たちは、気力、体力も衰え、再びこのような本を作ることはできないでしょう。私たちの最後の<政治的遺書>といってもいいくらいです。ぜひご購読お願いいたします。
学生運動解体期の物語と記憶
A5判/300ページ/カバー装
定価:本体2800円+税 11月4日発売!
本書は、学生運動解体期の一九七〇年代前半を京都(同志社大学/京都大学)で過ごし
潰滅的に闘った者による渾身の〈政治的遺書〉である。
簒奪者らによる歴史の偽造に抗し、
学生運動解体期=一九七〇年代 ─ 京都の物語と記憶をよみがえらせ
〈知られざる真実〉を書き残す!
[構成]
[特別寄稿]『遙かなる一九七〇年代-京都』の出版にあたって
矢谷暢一郎
第一章 遙かなる一九七〇年代-京都
松岡利康
第二章 [創作]夕陽の部隊
橋田淳
第三章 われわれの内なる〈一九七〇年代〉 甲子園村だより
松岡利康
第四章 七〇年代初頭の京大学生運動--出来事と解釈
熊野寮に抱かれて
垣沼真一
ところで、本書は、11月12日(日)に行われる同志社大学学友会倶楽部主催・芝田勝茂さん講演会に間に合わせることを私なりの義務感として刊行を目指しました。もともと本書は数年前から準備してきましたが、芝田さんとの再会が俄然モチベーションをアップさせました。本書には、芝田さんとの学生時代の日々、そして以降40数年のお互いの苦闘が底流になっています。なぜか? その〝回答〟は本書を紐解いていただければ分かるでしょう。人間、こうした具体的な目標なくしては力が入らないようです。3年前の同倶楽部の講演会に上記の矢谷暢一郎さんをアメリカから招きましたが、ここでも何とか矢谷さんの著書の刊行を間に合わせました。本が完成し京都に届いたのは前日でした。
講演会の内容は別掲の通りです。入場は無料、参加者先着100名様に芝田さんの単行本未収録3篇を収めた小冊子を贈呈いたします。関西近郊の方はぜひご参集ください。