次の月曜日。
先のことを考えては憂鬱になり家を出るのも億劫だったが、落ち込んでばかりはいられない。気分一新、今日から気合を入れていこう、と自分に鞭打って出社する。
「おはようございます」
社内は騒然としている。電話がジャンジャンと鳴り響く。
「お世話になっております。株式会社△△ですが、お宅のシステムに昨日から繋がらないんですけれども」
月曜の朝からサーバートラブルか。やれやれだなあ。回線の不調等でサーバーが止まってしまうことは稀にある。
「申し訳ありません。すぐ調査しますので、また折り返します」
と電話している間にまた別の電話が鳴る。みると何人もずっと電話の対応ばかりしている。どうなってるんだと思っているところに、尚坂が声をかけてくる。
「サーバーがね、殆どなくなってんのよ」
なくなってる、とはなんだ。
サーバールームをみると、数台残っているものの、本当に大半がなくなっている。
「社長のPCもね、なくなってんの」
「社長は?」
「出社してない」
確かに社長のデスク周りのものがなくなっていて、ガランとしている。電話をかけても「電波の届かない位置に」となり、メールも殆どがエラーで帰ってくる。唯一会社のメアドの一つは送信できるが、返事は返ってこない。またバカンスかとも思ったが、様子がおかしい。嫌な予感がする。
それを確認するため、金庫を開ける。鍵を持っているのは、社長と会計周りをやっている私だけだ。中にある小箱に、小口現金と銀行の通帳、カード類が入っているはずだった。中身は空っぽだ。
さらに、社員が入社時に書いた労働契約書や、ファイルしてあった給与明細など、かなりの書類が消えてなくなっている。ついでにタイ土産のゾウの置物もなくなっている。
(続く)
※プライバシーに配慮し、社名や氏名は実際のものではありません。
(戸次義継・べっきよしつぐ)